島村さんならどんな捻くれ者も浄化できる。   作:バナハロ

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事務所では(2)

 試験が終わり、それと共にプロデューサーも復帰。よって、試験期間を抜けた卯月は事務所に来ていた。試験の結果は、図書館での勉強会の後に、皐月がわざわざ指数関数対数関数も勉強して卯月に教えて、何とか平均点を2点越えることができた。関係ないが、皐月は英語32点と赤点をギリギリ回避した。生まれて初めてらしい。

 事務所にはレッスンをしに来ていて、今は休憩時間。飲み物を飲んで一息ついてると、スマホが震えた。皐月からのL○NEだった。

 

 古川皐月『テスト終わったんで一発目www』

『 古川皐月 が写真を送信しました。』

 

 その写真に映されていたのは、エクシアのRGだった。それを見るなり、卯月は目を輝かせて返信した。

 

 島村卯月『すごいですね!』

 島村卯月『カッコ良いです!』

 古川皐月『まぁ、RGだからね』

 島村卯月『良いなぁ、私も新しいの作りたいなぁ』

 古川皐月『買えば良いのでは?』

 島村卯月『買っても時間が無いんだよー』

 島村卯月『Pさん復帰して忙しくなるからね』

 古川皐月『Pさん?放送禁止用語?駐車場?』

 島村卯月『プロデューサーさんだよ!』

 古川皐月『あ、なるほど』

 

「………ふふっ、まったくおバカなんだから。皐月くんは」

 

 そんな事を考えながらスマホをぽちぽちいじってると、後ろから肩を突かれた。

 

「卯月ちゃん、何を見てるの?」

「あ、美穂ちゃん。響子ちゃん」

 

 後ろから声をかけたのは小日向美穂だった。隣には五十嵐響子の姿もある。

 

「L○NE見てたんですよ、皐月くんとの」

「皐月くん?」

「誰?」

「私の初めての男の子のお友達です」

 

 男の子のお友達、の時点で2人の目は恋バナを聞きつけた女子高生のような目になった。つまり、まんまな目だった。

 

「卯月ちゃんが⁉︎」

「彼氏⁉︎」

「か、彼氏じゃないよ!お友達ですよ!」

 

 顔を赤くして反論する卯月に、響子は「いやいやいや」と手を振った。

 

「男女間の友情は成立しませんよ。ね?美穂ちゃん」

「えっ?わ、私はよく分からないけど………。でも、確かに男の子と女の子が2人でいたら、そういう風に考えちゃうよね」

「そんなことないですよ!皐月くん、多分恋愛とか興味ないですし、私もそういうのはよくわからないですし………」

 

 それに、と卯月は少し不機嫌そうに続けた。

 

「大体、ここ数日は私と2人きりでも何回か勉強してたのに、皐月くんずっと無表情だったんですよ?お互い、そんな対象じゃないです」

「そ、そうなんだ………」

「いや、2人きりって時点でアウトでしょ」

「あっ、勉強と言えば、皐月くんって本当に英語できないんですよ?」

「「えっ」」

 

 急に楽しそうな表情になる卯月に、2人は困惑した表情を浮かべたが、構わず続けた。

 

「『あなたは野球をしましたか?』っていう英文を作るのに『Was you played baseball?』って英文を作って………。過去形ダブってるしbe動詞間違ってるし、受動態の間違いみたいになっちゃってたんですから」

「わ、わずゆー……?」

「でも、ちゃんとかな子ちゃんが教えたら、過去形くらいはできるようになってたので良かったです」

「あ、卯月ちゃんが教えたんじゃないんだ………」

「ていうか、かな子ちゃんとも知り合いなんですね……」

「うん。代わりに私も数学教えてくれて………あ、皐月くんってば変な所で律儀でね、英語教えてもらった代わりに数学教えるとか言って、まだ習ってない範囲を教科書読んで独学で勉強して教えてくれたんですよ」

「えっ、わざわざ?」

「はい」

「…………」

 

 響子も美穂も、間違いなく皐月が卯月の事を好きだと悟った。いや、好きまでとは行かずとも好意を寄せていることは明白だった。

 

「良い人ですよねぇ、皐月くん」

 

 しかも、その努力を「良い人」の一言で片付けられてしまい、顔も知らない男の子に同情までしてしまった。

 

「そ、それで、その子とL○NEをしていたと?」

「はい。ほら、見てください。皐月くんが作ったガンプラですよ」

 

 嬉しそうに卯月は皐月の作ったガンプラの写真を見せた。エクシアがGNソードを構えて立っている。

 

「おお……確かにカッコ良いね……」

「これだったんだ、卯月ちゃんのL○NEの画像が赤いロボットになってた理由………」

 

 美穂、響子と呟くと、卯月は微笑みながら頷いた。

 

「はい。今、ガンダムSEED見てるんですよ?キラさんが新しいガンダムに乗ってアークエンジェルの前に降ってきたところです」

「うん、言われても分からないから………」

 

 やんわりと美穂が断ると、「あ、そっか」と卯月は説明を止めた。

 

「ガンダム面白いから、二人も見ませんか?」

「いや、私はいいかな………」

「私も、別にそこまで………」

「そうですか……」

 

 ショボンと肩を落とす卯月。すると、スマホがまた震えた。

 

「あ、皐月くんからだ♪」

 

 画面を見るなり、声を弾ませてスマホを開いた。

 

 古川皐月『2作品目製作なう』

『 古川皐月 が画像を送信しました。』

 

 そのメッセージと共に送られてきた画像には、バウのプラモの箱が映されていた。直後、目を輝かせる卯月だった。

 

「見てください、お二人とも!カッコ良いですよね⁉︎」

 

 嬉しそうに画面を見せてくる卯月。2人とも画面を見ると「確かに」みたいな表情を浮かべた。

 

「カッコ良いにはカッコ良いですけど……」

「これなんのロボット?」

「ガンダムのMSです!」

「えっ、スーツなんですか?」

「違います。ガンダムの世界ではロボットをモビルスーツと言うんです!」

「そ、そうなんだ………」

 

 そのこだわりに関しては聞かないことにした。多分、聞いてもわからないから。

 なので、代わりに分かりそうなことを響子が聞いた。

 

「これはなんてロボットなんですか?」

「分かりません」

「えっ?」

「私もガンダムはSEEDしか見てませんし、今のところですけど、このモビルスーツは出て来ていないので何とも………」

「そうなんだ………」

「で、でも、いつかはガンダム全部見るので、いつか説明しますね!」

「いやそこまで知りたくはないから大丈夫だよ」

 

 そんな話をしてると、再びスマホが震えた。

 

 古川皐月『このモビルスーツはどの作品に出てくるでしょうか?』

 

 それを見て、卯月は眉をひそめた。

 

「………わかりますか?」

「いや、この中だと卯月ちゃんが分からないんだったら分からないんじゃないかな………」

「あ、奈緒ちゃんに聞いてみますか?」

 

 そんな話をしてると、またスマホが震えた。

 

 古川皐月『ヒント、Ζの後』

 

「がんだむ、ぜっと………?」

「聞いたことないですね」

「ゼータ、じゃないかな?」

「いや、にしても分からないけど………」

 

 議論してると、またスマホが震えた。

 

 古川皐月『って、ほとんど答えだなこれ』

 古川皐月『分かんなかったら神谷奈緒さん呼んでも良いよ』

 古川皐月『………見てる?』

 古川皐月『あ、仕事中か』

 古川皐月『ごめんなさい』

 

「……………」

「……………」

 

 あまりの連打に、美穂も響子も黙り込んだ。この人割とウザいな、みたいな。だが、それでも卯月は微笑みを絶やさなかった。

 

「皐月くんったら、L○NEだとお話ししたがるんですよね」

 

 楽しそうに『ごめんね、問題の答え考えてたんだ』と返信する卯月に、美穂は気まずそうに聞いた。

 

「あの、今更こんなこと聞くのはアレだけど………古川くん?ってどんな人なの?」

「良い子ですよ?私のために習ってない範囲の数学も勉強してくれて、直で会って話すと余り話してくれないんですけど、電話とかL○NEだと割となんでも言える子みたいで」

 

 それを聞くなり、2人揃って「典型的なヘタレな男の子だ」と思ったのは言うまでもない。

 

「あと、学校にお友達がいないみたいで、その反動なのか分からないけど、とてもおしゃべりさんなんですよ?」

「そ、そうなんだ………」

「一周回ってかわいいね………」

 

 美穂と響子が引き気味に呟いた。

 

「ですから、私が少しでも皐月くんのお話相手になられればなって思っています。皐月くんは良い人ですから、私ももっと仲良くなりたいですし」

 

 そうキラキラした笑顔で言われ、美穂と響子は思わずキュンとしてしまった。

 

「天使ですか………」

「天使なのかな……」

「へっ?」

「「な、なんでもないよ!」」

 

 とりあえず誤魔化してから、響子は聞き返してみた。

 

「そ、それより卯月ちゃん!それで、結局その古川くんのことを卯月ちゃんはどう思ってるんですか?」

「へっ?どうって?」

「好きか嫌いかですよ」

「それはもちろん………」

 

 好きですよ?と答えようとした卯月の口が止まった。何となく、好きというワードを言うのが恥ずかしいような気がしたからだ。

 だが、嫌いとも言いたくない。なので、若干照れつつも答える事にした。

 

「ま、まぁ、好きですよ?」

 

 その意外にも脈がありそうな反応に、2人は「おっ………?」と少し期待したような表情になった。聞いた感じだと、卯月大好きなカマちょウブ少年、という印象しかなかったが、卯月の中では違うようだ。

 その辺について、詳しく問い詰めようとしたが、トレーナーから声がかかったので、尋問は諦めた。

 

 

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