デート・ア・ライブ 士道ウィザード   作:みたらし団子が好き

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タイトルがそのままなのは何時ものこと。

今週から高校が始まるので投稿ペースが更に遅くなるかもしれません。
本当に申し訳ないm(_ _)m


決着

士道はペンデュラムを思いっきり地面に振り下ろした。

そして夕弦と名乗る少女もペンデュラムとともに地面に叩き付けられる。

 

「かはっ!」

 

夕弦の苦痛の声に手応えを感じた士道は内心でガッツポーズをとった。

だが遠目から見てみると夕弦は未だに身を捩じらせ、体を動かしている。

どうやら動く力と気力があるらしい。

それに気付いた士道の行動は素早かった。

腰のポーチから投擲用のナイフを二本取り出し、素早く狙いをつけて片手で投げ放った。

 

ナイフは暴風の中でもぶれることなく進み、数秒で夕弦の目前にまでたどり着いた。

自身を刺し貫こうとするナイフを止められない事に気付いたのだろうか。

死を覚悟したように夕弦は目を瞑った。

戦闘中に目を瞑るのは諦めたという事と同じだ。

その様子を見た士道は体から力を抜きかけた。

だが目に映った光景に再び臨戦態勢を維持する。

 

もう一人の〈ベルセルク〉がナイフの射線に割って入ったからだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

ガキンッ!

 

二つの重い金属音が耳に入った。

 

―――ああ自分は死んだのか。

 

夕弦は意識が少しずつ遠のいていく様な気がした。

あの男との度重なる激闘で霊装はボロボロになっていた。

それこそただのナイフすら防げない程に。

 

―――……金属音?

 

夕弦はおかしな事に気付いた。

何故金属音が聞こえたのだろうか。

精霊の肌が鉄で出来ているのなら話は別だ。

だがそんな事はない。

 

―――一体何が?

 

夕弦は重い目蓋をゆっくり上げた。

そこには今まで幾度と争ってきた耶倶矢の背中があった。

恐らく耶倶矢が投げられたナイフを防いだのだろう、と夕弦は推測した。

 

「耶……倶矢」

 

夕弦は小さく名前を呼ぶ。

その事に気付いた耶倶矢は後ろを向くとギラついていた目を多少緩和させた。

 

「夕弦!無事?」

「……返答。無事と言えば無事なのでしょうが」

 

意気消沈したような様子で夕弦は返事をした。

夕弦はもうほとんど諦めかけていた。

認めたくはないが相手が強すぎるのだ。

耶倶矢が戦いに復帰したものの、それでも全く勝てる想像が出来ない。

その様子を耶倶矢が見かねたのか声をかけてくる。

 

「と、とにかくこれ一つ貸しだかんね!」

「むっ、心外。夕弦はさっき耶倶矢を助けました。今のでお相子です」

「で、でも私は空飛ぶ奴壊したし!夕弦よりも活躍してるし!」

「反論。あれは夕弦が囮になっかからです。耶倶矢一人じゃ出来ませんでした。言うなれば夕弦は耶倶矢に手柄を譲ったのです」

「ぐ、ぐぬぬぬぬ~!」

 

二人は敵をそっちのけで言い争いを始める。

夕弦は得意気に腕を組んでいる。

耶倶矢はそれに対抗するべく必死に反撃材料を探す。

だがここで一人の乱入者が現れる。

 

「いや、どっちかというと君の方が奮戦していたと思うぞ」

 

その乱入者が誰なのかは言うまでもないだろう。

その男は夕弦を指差して発言する。

まあ奮戦していたというより単純に戦ってた時間が夕弦の方が長かったと言うだけだ。

奮戦と言う意味では耶倶矢も負けてはいない。

 

「!……宣言。どうやらこの勝負は夕弦の勝ちのようです。我ら八舞と戦った本人が言うのだから間違いありません」

「う、ううぅぅぅ……って何であんたが話に加わってるのよ!」

「ん?……何だよ。文句あんのか?」

「大有りに決まってんでしょ!」

 

耶倶矢は男が当然と言わんばかりに会話に入ってきている事に異議を申し立てた。

 

「いや……いけるかなって」

「指摘。何がどういけるのか意味がわかりません」

 

男の意味不明な返答に夕弦は首を傾げる。

 

「……ゴ、ゴホン……ではそろそろこの答弁も終いとし、この戦いの勝者を決めようではないか!」

 

この場の空気を仕切りなおすべく耶倶矢はわざとらしく咳払いをする。

ついでに口調も仕切りなおした。

 

「同調。改めて、八舞二人も揃ったことですし今度こそコテンパンにしてあげます」

「おう、知ってるか?それフラグって言うんだぞ」

『五月蠅い!』

「……ひっでぇ」

 

二人の声が重なると、その心情が表れるように周囲に強風が吹き荒れる。

それは苛立ち。

だが男はそれに萎縮する様子も見せないどころか愚痴をこぼした。

そして再び〈デストロイヤー〉を右手に持ち、それに加えて〈ノーペイン〉を左手に持つ。

 

それを見て耶倶矢と夕弦も同じく天使を構える。

だが自分たちから仕掛ける事はしない。

否、出来ないのだ。

ついさっき見せつけられた圧倒的な力量の差が二人を動かせない。

その姿を小バカにするように男は口を開いた。

 

「どうした?さっきまでの威勢は?」

 

明らかな挑発、それに二人はピクリと肩を動かす。

その反応を見た男はさらに言葉を続ける。

 

「いやーもう勝ったな。精霊とかクソ雑魚以下の生命体だぜ」

 

男は笑いながら子供が数秒で考えたような罵りを二人に浴びせる。

その二人は肩のピクつきが収まったかと思うと今度は不敵な笑みを浮かべた。

 

「あのさ、夕弦」

「応答。なんでしょう」

「やっちゃう?」

「同調。やっちゃいます」

 

そういうと耶倶矢は左手を、夕弦は右手を出して二人は手を繋ぐ。

すると二人の背中に生えていた機械のような翼が同じく繋ぎ合わされる。

そして夕弦のペンデュラムが二つの翼の先端を繋ぎ、耶倶矢の巨大な突撃槍がペンデュラムに継がえられる。

 

それは余りにも巨大な弓だった。

弓が組み立て終わると同時に矢となった槍に極大の風が纏わりつく。

 

「!……ははは」

 

それを見た男は理解した。

あれを喰らえば死ぬか良くても重傷か。

間違いなく自身に届きうる矢だと。

だがそれでも男は笑い、余裕を崩さない。

 

「貴様……名を何という」

「……シドウ・ウォーリバーだ」

「そうか……ではシドウよ。矮小な人間の身でよくぞここまで我ら八舞を追い詰めたと褒めてやる……だが」

「指摘。この戦いも遂に終わりです」

 

二人は言葉を投げ掛けると弓の弦を引いた。

その弓は耶倶矢と夕弦が真に手を結ぶことで使用できるまさしく最大最強の一撃だ。

 

「そうか……だったらそれを真正面からぶち破る!」

 

士道は怖気づく訳も無く、それどころか二人に向かって走り始める。

ほんの数秒で最高速度に達して二人との距離をどんどん縮めていく。

 

夕弦はその愚直な姿にもう驚愕を通り越して呆れすら感じた。

だが先程感じたような恐怖は湧いてこなかった。

 

最初の風を淡々と迎撃する姿は、恐ろしく冷徹で機械のような人間と言う印象を受けた。

機械の如き見た目も相俟って生物ではないのでは、と言う疑念すら湧いた。

だが言葉を交わし、腹が立ったことでそれは違うことがわかった。

あの男も空気を吸って吐き、心臓を脈打たせ、脳を使って思考する夕弦と同じ生命体なのだ。

なら決して無敵などではない。

超人的な絶技の使い手ではあるが勝つ術も存在する。

 

士道は暴風を引き裂き、八舞姉妹まであと残り数十メートルというところまで達した。

だがそこで弓の弦が最大限に引かれた。

それがこの戦いの終わりの合図だった。

 

『〈颶風騎士(ラファエル)〉―――【天を駆ける者(エル・カナフ)】!』

 

高らかな声が響くと共に矢が発射された。

矢は最初にして最大の敵である士道を射抜かんと、これまでにない速さで前へ進んでいく。

回避するのは不可能だった。

そもそも士道に避ける意思がないので尚更だ。

 

士道は渾身の力で矢に〈デストロイヤー〉を振り下ろした。

その瞬間、周囲に今までで最も強い風が吹き荒れた。

 

「ぐおッ!!」

 

士道はまず腕が悲鳴を上げている事に気付く。

そして腕に掛かる負荷が徐々に全身に回っていく。

天を駆ける者(エル・カナフ)】と〈デストロイヤー〉、二つは拮抗していたがそれはほんの数秒だった。

 

ピキッ

 

嫌な音と共に魔力で出来ている〈デストロイヤー〉の刀身に少しずつ罅が入っていく。

 

「んな!?」

『いっけええええぇぇぇぇぇ』

 

二人の咆哮に答えるように矢は勢いを増し、〈デストロイヤー〉の刀身が粉々に砕け散った。

そのまま矢は進み続け、地の果てに消えていった。

 

「……確認。やりましたか?」

 

夕弦はつい言葉を漏らす。

一見すると周囲に男の姿は見えず、気配も感じない。

今、この場にいるのは耶倶矢と夕弦だけだった。

矢を射った方向は岩石地帯とその先にうっすらと見える森まで更地になっている。

 

さっきの男の焦りようを見る限り【天を駆ける者(エル・カナフ)】を避けたとは思えない。

精霊二人を相手取った男と言えども、今頃遥かかなたへ吹き飛ばされている事だろう。

だとすれば戦いは終わった。

 

「ふっ……やはり勝利の女神に愛されていたのは我らの方であったか」

 

耶倶矢は何回目かの大仰な口調で結果を述べた。

力が抜けたように座り込んでしまったので微妙に恰好がつかなかったが。

 

「苦戦。かなり疲れましたが……これでッ!?」

「えっ?…………」

 

余りに突然の出来事に誰も反応することができなかった。

投げられた〈ノーペイン〉が夕弦の肩を掠めたのだ。

夕弦は苦悶の声を上げ、反射的に肩を抑える。

耶倶矢はその突然の出来事に一瞬、思考を停止させた。

 

「ゆ、夕弦!?……大丈夫?」

「ぐっ……応答。少し掠っただけです」

 

夕弦の肩からひたひたと血が流れ落ちる。

二人は矢を射った方向の後ろに顔を向ける。

そこには先程夕弦の肩を傷つけたであろうレイザーブレイドが地面に突き刺さっている。

少しすると青い刀身が消え、柄がカランと地面に落下した。

二人の脳裏に、これを投げた人物など一人しか思いつかなかった。

 

―――次は仕留める

 

武器から既にいないあの男の声が聞こえてくる気がした。

 

「進言。とりあえずは手当をしたほうがいいかと」

 

夕弦はいち早く次の行動に体を移そうとする。

二人とも激闘の末、霊装はボロボロで今なら拳銃でも通りそうだった。

その上、体力も気力も使い果たし、疲労困憊な状態だ。

何時、追撃が来るかわかったものでもないのでここは体勢を立て直すのが先決だ。

 

「そうであるな。ひとまず、むっ……」

「狼狽。これは……」

 

何かに引っ張られる感覚がするとともに二人の体が薄くなる。

それに二人が動揺を表したのは一瞬だった。

次の瞬間には二人の姿はこの世界から消えていた。

 

消失(ロスト)

 

精霊の意思とは無関係に発生する現象だ。

偶然か否か、二人は運良く隣界へ姿を消したのだった。

一目見て解る程の災害の跡を残して、その場は一転して静寂に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無意識に体が震えてしまう程冷たく、光を通さない闇の中。

 

そこに士道は居た。

士道はここはどこか、を朦朧とした意識で考える。

最後に士道の記憶にあるのは〈ベルセルク〉の最大の一撃に打ち負けた自分。

消えゆく意識の中で最後っ屁と言わんばかりに〈ノーペイン〉を投げたのを皮切りに士道は気を失った。

 

士道の記憶の中に、答えにたどり着くキーワードは無い。

だが今もなお着用型接続装置(ワイヤリングスーツ)とヘルメットを着用していることから少なくとも地獄か、あるいは天国ではなさそうだった。

一通り考察すると士道は段々と息苦しさを覚えるようになる。

 

士道は考察をやめ、今度は目を動かし、辺りを見た。

よく見るとヘルメットのヘッドアップディスプレイに表示されている温度の計器が5度を下回っていた。

これでは寒く感じるのも無理はない。

そして士道は上にほんのりと光を見た。

 

それがスイッチとなり、士道の頭が急速に回転を始める。

ほどなくして士道はこの場所に検討がついた。

士道は脳内で顕現装置(リアライザ)に指令を出し、随意領域(テリトリー)を展開して上を目指した。

 

高度が上がっていく程、光も強まっていく。

そしてその光が最高潮に達した瞬間、

 

「ぷはっ!ごほっ」

 

士道は大きく息を吸う。

少しすると眼球が光に慣れ、士道は周囲の景色を見た。

そこは士道の読み通り、海だった。

全方向を見渡しても陸らしきものは見えない。

 

「何だここ……まさか最近流行りの異世界転移か?」

 

もちろん違う。

回りの風景を見て徐々に意識が目覚めていく。

それとともに全身を激痛が襲った。

 

「ッ!!」

 

士道は顕現装置(リアライザ)で体の状態を探る。

すると全身が打撲、両腕が骨折、左の脇腹が削れていることが解った。

かなりの重傷である。

士道は激痛に耐え、腰から端末を引き抜く。

国軍で使われている端末はもしもの時に備えて防水対策が施されており、不調を感じさせることなく起動した。

位置情報を調べると現在地が判明する。

 

「ノルウェー海……マジか」

 

どうやら士道は戦闘機で〈ベルセルク〉を追跡しているうちに北欧まで来てしまったらしい。

次に士道は上司であるサミュエル大佐と連絡を取ることにした。

端末を操作して大佐に繋ぐと数秒で声が聞こえた。

 

『シドウか!?一体何があった!30分以上前から連絡が取れなくなってたぞ!』

「まあまあ。落ち着いて下さいよ、大佐。全部説明しますから」

 

士道は戦闘機が木っ端微塵になったこと、〈ベルセルク〉と直接戦闘になって戦いの末に海まで吹き飛ばされた事、そして今の自分の状況を伝えた。

 

『……成程な。解った。まずお前には救出を送る。それと〈ベルセルク〉は消失(ロスト)した。残念だがお前が与えた手傷は無駄になった』

「そうですか。……救出をお願いします。ちょっと今までで一番ヤバそうなので」

『解った。すぐ送る』

 

そう言うと大佐は通信を切った。

端末の位置情報を元に捜索を行えば救出隊が士道を見つける事もそこまで苦ではないだろう。

とりあえずボート無しの漂流生活なんてものは送らなくてすみそうだった。

 

「いってぇ」

 

だが士道は未だに痛みに苛まれていた。

同時に意識が少しずつ消えかかる。

もしここで気を失ったら随意領域(テリトリー)を維持出来ずに士道の体は再び海に沈む事になるだろう。

士道は再度、周囲を見渡した。

 

「……あれって」

 

士道は離れた場所に何かを見つけた。

随意領域(テリトリー)を操作し移動する。

その場所にたどり着いた士道はそれを持つ。

それは木の板だった。

間違いなく人の手が入った物だろう。

ただの板きれではあるが浮きにはなりそうだった。

士道は木の板によりかかった。

 

「これで大丈夫……か」

 

少しずつ視界が霞んでいく。

そして体も動かなくなっていき随意領域(テリトリー)も解除される。

 

「…………………………」

 

士道は意識は再び暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず士道が感じたのは鼻腔を突く消毒液の匂いだった。

そして見えたのは清潔感のある白い天井だ。

士道は重い体を何とか起こす。

 

「ここは……医務室か?」

 

士道の両腕にはギプス着けられていて体の至る所に包帯が巻かれていた。

 

「目が覚めましたか?」

 

士道の耳に凛とした声音が響く。

横を見るとそこにはエレンがいた。

エレンは士道が横になっているベットの隣にある椅子に座っている。

士道は何故かエレンの様子が妙にしおらしく感じた。

 

「エレン……久しぶり?」

「何を言ってるんですか」

「あぁ……すまん。何か暫く会ってなかった気がしてな……っともう五時か」

 

士道は医務室の時計を見て呟いた。

 

「そうです。もう三時間以上寝ていたんですからね」

 

エレンは何やら文句がありそうな様子だった。

 

「全くもう……あまり心配を掛けないでください」

「あぁ……すまなかった」

 

士道は頬をかきながらそう言う。

何故か気恥ずかしくなり少しの間無言が続く。

 

「邪魔するぞー……ってマジでこれはお邪魔か?」

 

そう言って医務室のドアから入って来たのはサミュエル大佐だ。

 

「いや……別にそんな事はないですよ。何故そう思ったのか少し話を伺いたいところですけど」

「そんな感じの雰囲気だったからな。お前は気付いてないかもしれんが、メイザースがこっち来んなオーラ出してたぞ」

「えっ」

 

士道はエレンを見る。

その途端、エレンは残像が残る程のスピードで顔を横に逸らした。

身体能力は皆無の筈なのに、不思議な事もあるものだ。

士道はそんな大して重要でもない事を考えながら今後のことについて考えていた。

 

「そんな事よりお前ボロボロだな。大丈夫か?」

「大丈夫な訳ないでしょう。これって労災適用されるんですか?」

「お前何言ってんだ。SSSは陸軍の秘匿部隊だぞ。労災なんてある訳ないだろ。SSSじゃなかったら間違いなく適用されるだろうけどな」

「ですよね」

 

大佐の言葉に士道は肩を落とした。

労災については議論の余地もなさそうだった。

 

「あと一応もう一回言っとく。〈ベルセルク〉は消失(ロスト)した。こればっかりはどうしようもない」

「ええ、そうですね」

「で?どうだったよ。初めての空の戦闘は?」

「疲れました。出来ればもう二度とやりたくないです」

 

今日で士道は戦闘と言うものを嫌と言う程、思い知った。

既に半年以上前の二亜との戦いは遊びだったと言わんばかりに今回の戦いは激しかったのだ。

エレンとの戦闘も真の意味で敵と言う訳ではなかった為、決して全力で戦った訳ではない。

だが今回の〈ベルセルク〉との戦闘はまさに死力を尽くしたと言えるものだった。

 

「できれば一か月ぐらい休みが欲しいですね」

「……まあ考えてやらんこともない。あと怪我の事だが医療用顕現装置(メディカルリアライザ)を使ったから外傷はもうほとんど治ってる。でも腕の骨と脇腹はまだ治ってねえから気を付けろ、って感じだ」

 

かなりの重傷に士道は溜息をついた。

 

「これぐらいで俺は失礼させてもらう。仕事があるんでな」

 

最後にそう言い残すと大佐は医務室から出て行った。

 

「……それで、実際のところ休みは取るんですか?」

 

まるで大佐が居なくなるのを待っていたようなタイミングでエレンが口を開いた。

 

「いや休まねえよ。正直休暇取ってもやることないしな」

 

本音は負傷したのを理由に休みたかったが、士道は自身の技量の劣化を嫌う。

〈ベルセルク〉に見せたような神業の如き戦闘力を維持するには鍛錬を怠るわけにはいかないのだ。

 

「それにまだエレンに苺のショートケーキ奢ってないしな」

「!……てっきり忘れられたかと」

「流石に断言したことを忘れるほどバカじゃない」

「ほう……そうですか」

 

その瞬間エレンの目がキュピーンと光ったような気がした。

それと同時に疑わしい視線を士道に向けてくる。

 

「ち、ちゃんと約束は守るから!」

「……そこまでいうのなら……契約を」

「ん?」

 

士道は契約という言葉に首を傾げる。

するとエレンは小指を出してそれをフックのように曲げる。

士道は少し考えた後、その意味を理解し、同じく小指を曲げた。

そしてお互いの小指を引っ掛け、絡めあわせる。

これは所謂、指切りと言うものだ。

 

エレンの顔が喜色に染まる。

これだけ見てれば非常に可愛らしいのだがその本質は残念美少女だと言う事を士道はもう知ってしまっている。

 

「ってことで定時だから帰る」

「はい………………えっ!?」

 

そう言うと士道は両腕のギプスを外し始める。

それも自力で。

 

「ふ、普通ここで泊まるのではないのですか?」

「……俺にも色々あるんだよ」

「今の若干の間は何だったんですか?」

 

真面目な話をすると明日は平日、つまり学校があるのだ。

その為、士道は日本に戻らなくてはならない。

 

「まあそう言う事だから、また明日」

「どういう事ですか?」

 

エレンは困惑した表情だ。

士道はギプスを外すとベットから降りてすぐに医務室から出て行った。

そして寮に向かって足早に歩いて行く。

だが屋外に出たところで士道はある事に気付いた。

 

「そう言えば昼ご飯食べてなかった」

 

〈ベルセルク〉のごたごたですっかり忘れていたが思い出した途端、空腹感が士道を襲った。

ひとまず帰る前にどこかで食べて行こうと士道は方向転換した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……以上が〈ベルセルク〉の件の全容です」

『ふむ……そうか』

 

エレンは電話の相手が頷いたのが何となく分かった。

今エレンが行っているのは定期的な上司への報告だ。

 

『まさか今まで難攻不落だった〈ベルセルク〉を追い詰めるとは……我が社が誇る世界最強の魔術師(ウィザード)を倒しただけの事はあると言うことか』

「そうですね」

『おや?君がそれを認めるとは、心変わりでもあったのかい?』

 

エレンの上司にあたる人物は大層珍しそうに声を上げた。

 

「いえ特には。ただ事実を申し上げただけです」

『ほう、彼の力量は君が素直に認めるほどなのか……ますます興味が湧いたよ』

 

男はとても楽しそうに声が弾んでいる。

おそらく電話の向こうではその口角も釣り上がっているだろうとエレンは推測した。

 

『シドウ……シドウ・ウォーリバーか。彼には是非とも会って見たいものだ。……ではエレン引き続き、彼との訓練に勤しんでくれたまえ』

「はい。それでは……………………アイク(・・)

 

士道の次の戦いはもう、すぐそこまで迫っていた。




ちょっと最後あたり雑な感じになった気がする。

というわけで前振りも含めれば4話も掛かった八舞編もようやく終わりました。
ちょっと予定より長くなってしまったよ。
当初は2話か、長くても3話ぐらいの予定だったんですけど。
ちょっと章の構成を変更するかもしれません。

因みに士道はずっとヘルメットを着けてます。
治療の時に外さないのか?だって?
本人の指紋がないとロックが解除出来ないと言う事にしておこう。
取ってつけたような設定ですみませんw

そして次回からオリキャラを登場させる予定です。
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