すまぬ。
次の更新はいつになることやら。
そして誤字報告、ありがとうございます。
「おっさん。ミートパイとカスタードプリン一つずつ」
「あいよ」
午前中の訓練を終えた士道はいつも通り
食堂と言ってもSSSの
「ところで、最近よくここに来るがそんなに俺の作る料理が美味いのかい?」
「おう」
「おお!SSSの
店主は得意気な顔をして鼻を擦った。
だが次の瞬間、その気分はぶち壊された。
「まあイリシャの作った料理の方が美味いけどな」
「……………………」
「……………………」
二人は真顔になった。
◇◇◇
店主の逆鱗に触れ、プリンが無しにされた士道は溜息をついた。
「ったく、冗談が通じないな」
「あら、冗談だったの?」
「うわっ!」
気付いたら士道の隣の席にはイリシャがいた。
言っている事からしてさっきの会話を聞いていたのだろう。
「ちょっと、気配消して近づいて来るのは止してくれよ」
「ごめんなさい。つい魔が差しちゃって」
イリシャは悪びれた様子も無く、言い訳をする。
「それに最近、精霊が現界しないから暇でしょうがないの」
「ああ、そういや今5か月連続で出動無しなんだよな?」
「そうね。隊長は空間震が起こらないから、復興に予算を使わずに済むって喜んでるけど」
「あー……あの人ならそんな事言いそうだな。隊長って割とケチ……倹約家だし」
ミートパイの生地と肉を纏めて食べながら士道は、サミュエル大佐がホクホク顔で喜んでいる姿を想像して苦笑する。
隣を見てみるとイリシャはタッパーからスコーンを取り出してそれを食べていた。
タッパーに入っているという事は恐らくイリシャが自分で作って持ってきたものだろう。
するとイリシャはタッパーからもう一つスコーンを取り出して―――――
「はい、あーん」
「………………え?」
イリシャは悪戯っ子のような笑みをしてスコーンを士道の口に向けた。
頭の回転は悪くない癖に、変なところで鈍感な士道でも、イリシャが何をしようとしているのかは直ぐにわかった。
「……まず聞くけどこれ食べていいのか」
「ええ、遠慮なく食べていいわよ」
「じ、じゃあ普通に食べるから」
「あーん」
「いや、あーんじゃなくて「あーん」
どうやらイリシャは士道に食べさせる事を諦めるつもりはなさそうだ。
「……いただきます」
士道は手を合わせてそう言い、フルフェイスヘルメットの口元からイリシャの手にある拳大のスコーンを一口で頬張った。
「美味しいです」
「ふふっ、良かった」
士道の言葉を聞いてイリシャは、見てるこっちの頬が赤くなりそうなぐらい可愛げな笑顔を作った。
士道はイリシャに向けていた視線を逸らし、頬をかくのだった。
その後はイリシャに食べさせられることも無く、順調に昼食は食べ進められていった。
お互いの肩が触れるほど近かったのが気になったが、士道は深く考えないようにした。
そして昼食を全て食べ終わり、そろそろ片付けようと思った時、イリシャが再び口を開いた。
「それで、隊長から話は聞いたのよね?件の
「ああ……相変わらず話が突然すぎて、思考が停止寸前になったけどな」
「仕事がいつも突然なのがここのモットーよ」
「……転職先考えておこうかな」
そんなものをSSSのモットーにしたら堪ったものじゃない。
「ふふっ、冗談よ。彼女の教育、頑張ってね」
「冗談っておまえ……てか彼女?友達なのか?」
「いいえ、友達ってほどでも無いわ。ほんの少しだけ話した事があるだけよ」
「ふーん。やっぱり女子か……」
何故かは士道も知らないが
その為、SSSの
故に教える相手が女性だと知っても士道は特に驚かなかった。
「世界トップクラスの
「へぇ……お前にそこまで言わす程の奴なのか」
イリシャの言葉に引かれ、士道も少しだけ興味が湧き始める。
基本的にイリシャは無頓着な性格で、興味がないものにはとことん気を掛けない。
そんな彼女がそこまで言うのなら士道の教える相手というのは余程の特異性を持っているということだろうか。
気になった士道はイリシャに問いかけた。
「その子の名前は?」
「名前はアルテミシア……アルテミシア・ベル・アシュクロフト」
イリシャは一息おいて言葉を続けた。
「成長すれば私達にも届きうる、世界最大の
士道はどこかそれが含みある言い方に聞こえた。
◇◇◇
「あー、終わった終わった」
結局イリシャはあの後、彼女が落とされないか心配だとか、士道には意味が理解できないないこと口にして去って行った。
その後、特に何事も無く午後の訓練も終えた士道は18時頃、帰路についた。
精霊を捕獲し、撃退した士道は今や階級も中佐に上がっており、最近は裏方の事務仕事をすることもある。
そのため最近は定時で帰れていない時もあり、今日はその日だった。
冬場の18時ともなれば気温は昼間よりも更に低下していた。
太陽も既にその姿を消していて辺りはかなり暗く、道に設置されている照明だけが唯一の光源だ。
そのせいだろうか、朝に歩いてきた道を逆行しているだけなのに、士道にはまるで別の道を通っているように感じられた。
そんな薄暗い帰り道を歩いていると次第に風切り音が聞こえるようになってきた。
「誰だ?こんな時間に……」
士道はそれが気になり、音がする方向に歩いていく事にした。
道を外れて少し歩く。
そしたらすぐに風切り音の出所に辿り着いた。
人口で作られたひとけのない森の開けた場所で一人の少女がレイザーブレイド、〈ノーペイン〉を振るっていた。
「…………」
士道はそれを見て珍しいと感じた。
SSS所属の
その訓練は真面目にやっているが、帰らずに訓練を続ける奴は士道の記憶に無かった。
「……何か御用でしょうか?」
するとその少女が士道に話しかけた。
腰まで伸びる長い金髪と碧眼が特徴の美少女である。
どうやら思考に浸っていたら気づかれてしまったようだった。
「いや、こんな時間に何してるのか見物しに来ただけだ」
「見物?あなたほどの人が……ですか?」
「ん?お前、俺の事を知ってるのか」
「この基地にあなたを、シドウ・ウォーリバーの事を知らない人なんて居ないと思いますよ」
この少女が言っている事は最もなことだ。
現在、士道は二度も精霊と対峙し、その全てで勝利を収めている。
〈ベルセルク〉との戦いに関して士道は勝ったと思っていないが噂には尾びれが付くものだ。
そしてワンオフ品のフルフェイスヘルメットと
「まあ……そうだな」
士道は頭を掻きながらそう言った。
「俺はもう帰るよ。ちょっと寄り道しただけだし、用事もある」
最もその用事は深夜アニメの視聴なのだが目の前の少女が知る由はない。
士道は体を反転させて、来た道を戻ろうとする。
「そうですか」
少女は再び〈ノーペイン〉を構え、素振りをしようとする。
が、しかし少女は構えたまま数秒ほど硬直した。
そして、何かを思い立ったように構えを崩すと、こちら背を向けて帰ろうとする士道に声をかけた。
「どうせなら訓練に付き合ってくれませんか」
「え?」
士道は振り向いて再び少女を見る。
「言っただろ。用事があるって」
「一回の模擬戦で十分です。どうかご教授を」
「……わかった」
少し考えて、士道はそれを了承した。
SSSのトップ
偶には誰かの訓練に付き合うのもいいだろう。
士道は足を動かし、大体少女から10メートル離れた辺りに足を固定した。
「じゃあ、何時でもいいぞ」
「えっ!」
その言葉に少女は少なからず驚きを覚えた。
何時でもいい、つまりかかってこいと言う意味なのだろう。
だが今の士道は素手、何の武装も持っていないのだ。
いくら精霊に勝利したとは言え、素手で
続いてほんの少しの苛立ちが沸き上がる。
これではまるで自分が見くびられているかのようじゃないか。
少女は自身の目が自然と細められていくのを感じた。
その小さな変化から少女の意思を汲み取ったのか、士道は言葉を続けた。
「いや、別に君を侮ってる訳じゃない。ただこれで十分だからだ。必ず防ぐから、本気で来いよ」
「ッ!後悔しないでくださいね」
そう言うと少女は
そして〈ノーペイン〉を構えて、士道に走り出した。
だが士道には全てが見えた。
「えっ」
少女が驚愕の声を漏らす。
それも無理はなかった。
振るわれた〈ノーペイン〉を士道が手で掴んだからだ。
それだけで少女の勢いが全て殺され、その場に停止した。
「驚いた。並の
士道は掴んだ〈ノーペイン〉を叩く。
すると少女の手から〈ノーペイン〉がすっぽ抜け、明後日の方向に飛んで行き、木に刺さった。
魔力の供給が無くなった〈ノーペイン〉は光の刀身が消え、地面にカランと柄が落ちた。
「嘘……」
「伊達にSSSの
驚愕で動くことが出来ない少女を横目に、士道は歩いて飛んで行った〈ノーペイン〉の柄を拾い、少女に差し出した。
「筋は悪くない」
「………………はい」
少女は〈ノーペイン〉の柄を受け取ると、考え込むようにそれを見つめる。
「じゃあ俺は帰る。君はどうするんだ?」
「……私はまだ自主訓練を続けます。私の辿り着く場所が見えた気がしますから」
「………………」
そう言うと少女は士道から離れて〈ノーペイン〉の光の刃を構成、再び素振りを始めた。
「君は毎日自主訓練をしてるのか?」
「はいッ……精霊を倒すにはッ……努力しないといけませんから!」
素振りしながら少女は問いに答える。
士道は少女が発したその言葉に、どこか鬼気迫るものを感じた。
「……君、名前は?」
「アルテミシア・ベル・アシュクロフト、階級は少尉です」
「!……アシュクロフト……君が」
アルテミシア、それは奇しくも今日イリシャから聞いた名と同じものだった。
士道は今日サミュエル大佐から受け取った封筒を取り出す。
ボタンに巻かれた紐を解いて封筒の中に手を入れると紙の擦れる音がする。
中身を出すと書類が二枚、クリップで止められていた。
士道はその書類に軽く目を通す。
「……こりゃあ」
書類を見て士道はある数値に目を見開いた。
この書類に書かれていることが正しければ、目の前の少女はエレンやイリシャに匹敵するということになるからだ。
士道は改めて少女、アルテミシアの訓練風景を眺める。
素振り一つ見ても、その身体能力はそこそこのものだという事が士道には分かった。
だが技術的には荒削りな部分が多いようだ。
士道は少女に近づく。
「他に何か?」
「…………」
士道はアルテミシアを、正確には〈ノーペイン〉を握っている手をよく見る。
「あの……シドウさん?」
「ダメだ」
「えっ?」
突如として言われたダメ出しにアルテミシアは声音に困惑の色を滲ませる。
「ああ、ダメなんだよ。お前の剣の持ち方は。そんな持ち方じゃあさっきみたいに、ほんの少しの衝撃でどっかに飛んでいっちまう」
「えっ?」
アルテミシアは突然言われた事に困惑した頭が追いつかず、再び呆けた声を出す。
そして士道は腰元から〈ノーペイン〉を引き抜き、柄を実際に持って見せる。
「何ボケッとしてるんだ。俺の持ち方を真似してみろ」
「あっ、はい!」
士道の言葉に従い、アルテミシアは手を見て持ち方を合わせた。
「もう少し握りを強くしろ……そうだ。剣の持ち方なんて基本中の基本だからな。絶対覚えろよ」
「はい!」
「それと闇雲に訓練し続けるのは脳筋のやることだ。何の為に休みがあると思ってる。夜はちゃんと休め」
「はい……すみません」
幾ら頑丈な人間でも体力の限界は存在する。
その体力を回復させるには休息が必要不可欠。
車が走り続けたらガソリンが必要なように人間も疲れたら休みが必要なのだ。
「ああ、分かればいい。あと素振りはもっとコンパクトにしろ。モーションが一々大きいから隙だらけだぞ」
「えっと、こう……ですか」
「そうそう。それを体に覚えさせろ」
その調子で士道は指導を続けた。
用事と言うよりかは日課と言ってもいい事を完全にド忘れして……
士道は指導を続けた。
しどうだけに……なんちゃって(・ω<)テヘペロ