てかヤバい。
このペースで投稿してたらマジで一生完結しない。
まだ原作すら開始してないのに。
「はあッ!」
裂帛した掛け声とともに一筋の斬撃が繰り出される。
斬撃を繰り出したのはアルテミシアだ。
「遅い!」
その前方に位置していた士道は、体を横にして放たれた斬撃を難なく回避した。
「ほら、足元がお留守だぞ」
「くっ!」
士道は剣を振りかぶるアルテミシアの足を払い、転ばした。
アルテミシアは負けじと素早く体勢を立て直して士道の足に蹴りを入れる。
士道はアルテミシアの素早い蹴りを驚異的な反応速度で読み取ったが、反撃せずに足に力を入れて蹴りを受けた。
二人の足が激突した瞬間、ガンッと目を閉じて聞いてみれば金属音とでも思ってしまいそうな重い音が響いた。
そのアルテミシアの蹴りは
片や士道は
どちらにアドバンテージがあるかは明白だ。
だが蹴りをモロに喰らった士道は、全く微動だにせず本来走る筈の痛みに身悶える様子もない。
「蹴りそのものは悪くないけど力がまだ足りないな」
アルテミシアの蹴りの威力は鉄の様に硬い士道の足を傷つける事は出来ず、衝撃は受け流されてしまった。
そして今度が士道が拳を握る。
「ッ!」
アルテミシアがそれに気付いた時には既に手遅れ、士道の拳は放たれてアルテミシアの整った顔の前で止まっていた。
「ほい、俺の勝ち。もっと冷静になれよ」
「う、うぅ~、あと少しだったのに」
アルテミシアは張り詰めた意識を解いてその場にペタンと座り込んだ。
「そんな闇雲に攻撃してたら精霊には勝てないぞ」
「そ、そう言われても……」
アルテミシアの言い訳も最もだろう。
二人での訓練が始まってもう二か月程経とうとしているが、模擬戦はこれが三日目なのだ。
それまでは
言うまでもないが戦闘技術云々を抜いた状態でもアルテミシアは士道に勝つことができない。
まず肉体能力が比べ物にならないのだから当たり前の話だ。
「まずちゃんと相手の隙を突け。そうしないとさっきみたいに防御されて終わりだ」
「隙……ですか?」
「そう。相手に隙を作らせて、そこに有効打を叩き込む。基本的にはこれを狙ってけ」
事実、士道はそうやって二亜の足を切り、〈ベルセルク〉を追い詰めたのだ。
「隙を作らせろと言われても……具体的にはどうすればいいんですか?」
アルテミシアは眉を寄せて疑問を口にした。
まあ詳しい説明も無しに隙を突け、と言われてもそれは困難だろう。
「ん~、例えば……ってイリシャじゃねえか」
「えっ、イリシャさん…きゃん!?」
「嘘だよ」
士道は後ろにある訓練ルームの出入り口を見て、まさしく隙だらけになったアルテミシアの後頭部にチョップを振り下した。
「え?……ず、ずるいです!」
自分が何をされたのか徐々に把握出来たのだろうか、アルテミシアはぶたれた後頭部を抑えて抗議してくる。
「まあまあ、こんな感じだ。実際の戦闘でこんなアホな方法を使えって訳じゃないけど隙を作るってのはこういう事だ。相手の意識を意図的に別の箇所に向けて、手薄になったところを狙う。これが隙を突くってことだ」
怒ったアルテミシアを宥めながら士道は詳しく解説した。
「隙を……突く……」
基本的に真面目なアルテミシアは、顎に手を当てて言われた事をしっかり記憶しようとしている。
すると突如として士道の後ろを指差した。
「あっ、中佐!後ろに隊長が!」
「いや、騙されねえよ」
出入り口はアルテミシアの後ろにある。
そのアルテミシアの向かいに居る士道は誰かが入ってくれば分かるのでここに大佐が居るわけがないのだ。
このアルテミシア、普段は真面目なのだが若干天然ボケが入っていることを士道はこの二か月間で理解していた。
「……ちょうどいい時間だ。キリも良いし、昼メシでも食おうぜ」
「そうですね」
士道は腕時計を見て時間が12時を過ぎたことを確認すると訓練室の端にある長椅子の左側に座った。
そしてアルテミシアは右側に座り、その長椅子の下に置いておいたバスケットを持って、自身と士道の間にポンと置いた。
「今日はサンドイッチです」
「そうか、じゃあいただくよ」
士道はバスケットの中にあるサンドイッチから一つを取り出して口に入れた。
パンに挟まれているのは卵とレタスとスタンダードなものだ。
「うん。うまい」
ここ最近の訓練ではこんな感じでアルテミシアが昼食を作って来ることが多い。
アルテミシアが自主的に始めたことだが、士道としてはわざわざ食堂に行かなくて済むので願ったり叶ったりだった。
イリシャが心なしかシュンとしているように見えたのが多少の気掛かりではあったが。
因みにアルテミシアは過去に一度、宇宙の辺縁を漂っていそうな真っ黒い物体を昼食として出した事がある。
本人曰く、ビーフシチューとのことだったが士道の目からはとてもそうには見えなかった。
あれ以来、士道はアルテミシアに昼食を作るなら必ずシチューは作るな、と言明した。
そのアルテミシアは今、サンドイッチを片手に端末をじっと見ている。
「また観測情報見てんのか」
「むぅ……そうですけど」
士道の呆れた様な声にアルテミシアは不服そうに答えた。
アルテミシアは暇さえあればこうやってずっと空間震の観測情報をチェックしている。
「いや、別に駄目って訳じゃねえけど四六時中見なくてもいいんだぞ」
「でも精霊を討滅するための対精霊部隊でしょう?」
「……まあ、そうだな」
精霊を討滅するための対精霊部隊、SSSを客観的に見ればそういう言葉が出てくるだろう。
だが深く知りすぎた士道は内心全くそう思ってはいない。
「でも精霊なんて早々に現界するもんじゃないし、時事ニュースでも調べた方が勉強になると思うぞ」
「それぐらいは見てますよ。……最近ではロンドン市内の死亡者数が急増中って、テレビでやってましたね」
死亡者数の突如とした急増、それは昨今ロンドンで騒がれている問題だった。
その死亡者の約半数は原因不明の不審死で、警察も解決の糸口を見つけられずに頭を悩ませている。
しかもそれだけではなく殺人まで増えているのだ。
犯人らしき人物は数人逮捕されているが被害は未だに収まっていない。
「不審死と殺人、何か接点でもあるんでしょうか……」
「さあな……そう言えば、警察から軍に応援要請が来たって大佐が言ってたな」
イギリスの首都、ロンドンを管轄する警察が軍に協力を求めることから、今回の異変がどれだけ大規模なのかが伺える。
「おまえも前みたいに夜に外を出て訓練なんてするなよ。まあ軍事基地で殺人なんて起こらないと思うけど」
「い、言われなくてもわかってます」
サンドイッチを食べながら話す士道にアルテミシアは前の自分を思い出したのか少し恥ずかしそうに返事をした。
一拍置くとアルテミシアは更に続けた。
「それにしてもこれだけ大規模な異変、もしかしたら精霊の可能性も……」
「……精霊、か」
精霊。
かつてユーラシア大陸に大穴を開けた破壊の権化。
確かにこんな異変は人間一人や二人が起こすのは不可能だろう。
なら人外たる精霊が首謀者の可能性も出てくる。
原因不明の不審死も何かしらの天使を使ったと考えれば説明はつく。
「……出来れば精霊はやめてほしいな」
「えっ!?」
アルテミシアが驚きの声を出す。
「どうしてですか?普通、精霊が現界したなら私達としては、待ちのぞんでいたようなものじゃないですか!」
「いやそれはそうだけど、精霊は現界しないのが一番だろ」
「それは……そうですけど、私達は対精霊部隊じゃないですか」
絞り出すように声を出すアルテミシア、士道はその姿に危うさを感じた。
精霊の討滅を焦っている。
心にまるで余裕がない様子だ。
「なあ、アルテミシアは何でSSSに入ったんだ」
「私は……空間震に巻き込まれた被災児なんです」
アルテミシアは悲壮感漂う様子で話を始めた。
「幸い大きな怪我はなかったんですけど……それで治療の際に
SSSに入った、アルテミシアはそう言っているが恐らくはほぼ強引に、だろう。
アルテミシアほどの適正値を持つ人間を、そのまま放っておく筈がないからだ。
だが話から察するに、アルテミシアは対精霊部隊に入隊することに随分と好意的だったようだ。
「私は人々が平和に暮らせる世界を作りたいです。その為には精霊を倒さないといけません」
「だからSSSに入ったのか?」
「はい!」
士道の質問にアルテミシアは笑顔でしっかりと肯定の返事をした。
しかし次の瞬間にはその笑顔が苦笑となった。
「でも私の目標を聞いた人は全員言うんです。夢物語、理想論だって」
「………………」
確かにそう言われても仕方のない事だろう。
そもそもの話、精霊が世界から姿を消したとしても世界は平和にならない。
精霊を倒しても世の中の悪が消える訳ではないからだ。
平和な世界の実現はある意味、精霊を倒すよりも難しいだろう。
士道も
だがそれは当たり前のことなのだ。
世の中の悪は、人類が存在する限り消えない。
そういうふうに出来ている。
「確かに理想論だな」
「そう……ですよね」
アルテミシアは少し俯く。
「でもいいんじゃないか」
「えっ?」
「少なくとも俺はそんな大層な夢なんて持ててないし、そんな夢を本気で実現させようとしてるのは凄いと思う」
夢を持つことは誰でも出来る。
だがそれを現実にするとなれば、途端に難しくなる。
「だから別に精霊を倒すのにそこまで必死にならなくてもいいんじゃないか」
「………………」
アルテミシアは無言だが、何か熱を帯びたような視線で士道を見つめる。
それに気づかない士道は、いつの間にか中身のサンドイッチが無くなっていたバスケットを長椅子から床に降ろした。
「何か眠くなってきたな」
日頃の不眠が祟ったか、サンドイッチを腹いっぱい食べたからか、もしくはその両方か。
マスクの口元部分に手を当て、欠伸をするような仕草をした。
今は昼食休憩だし、仮眠をしても特に問題はないだろう。
そう思いながら、士道は上体を後ろの壁にくっつけて腕を組んだ。
そしてしばしの間、眠りにつこうとすると―――――
「って、アルテミシアさん?」
あまりにも強い驚愕に士道は思わず敬語になってしまった。
アルテミシアが士道の頭部を自身の太ももに押し付けたからだ。
「あの~、何をしていらっしゃるんでしょうか?」
「何って、膝枕ですよ。寝心地にあまり自信はありませんが、壁よりはいいと思います」
士道の問いに、アルテミシアは顔を少し赤くして答えた。
膝枕。
それをされた士道に少しの羞恥心が湧く。
「いや確かにそうかもしれないけどこれはちょっと……」
マスクがあるからこそ、今は分からないが恐らく士道の顔は、少なからず赤くなっていることだろう。
「少しお疲れのようですし、別にこのまま寝てもいいですよ」
「えぇ……」
士道は困った声を上げる。
アルテミシアの太ももは柔らかく、普段通りの心境なら自然と眠りにつきそうだったが、この数分間の出来事で眠気は完全に吹っ飛んでしまった。
つまり寝るに寝れない。
「俺の頭、多分マスクでゴツゴツだろ」
「気になりません」
「その上、金属でできてるから重いだろ」
「中佐と訓練してますからこのぐらい平気です」
「……………」
士道は暫し無言になると、観念したように頭の力を抜いて頭部の重さをアルテミシアに委ねた。
どうやらアルテミシアは意地でも膝枕をやめるつもりはないらしいので、士道は仕方なく膝枕を続けることにした。
だがそれは直ぐに終わりを告げた。
士道はふと部屋に近づいて来る気配を感じた。
そして気配に気づくと同時に部屋の扉が開いた。
「いますか、シドウ。少し話があるのですが―――――」
その透き通った声は、酷く聞きなれた声だった。
それと同時に、少し懐かしい声でもあった。
士道は入口を見る。
そこにはエレンが立っていた。
確かエレンはDEMの本社に戻っている筈だ。
本来ならここにいない人物。
士道はその事を疑問に思ったがそんな事を考える余裕は直ぐになくなった。
「シドウ……その女は誰ですか?」
エレンの声音が、絶対零度の如き冷たさと鋭さを纏っていたからだ。
それを聞いた瞬間、士道は飛び跳ねるようにアルテミシアの膝から起き上がった。
アルテミシアは士道に対しては敬語です。
一応、階級的には士道の方が上なのでこうしてます。
違和感しかない。
因みにアルテミシアは士道より一つ年上らしいです。
それとアルテミシアの過去話はオリ要素です。
原作で特に説明がなかったので仕方ない。