マジすんません。
さて、今回はついにデート回ですよ!
この小説もやっとデアラらしくなってきました。
私、イギリスに行ったことはないので、とりあえずロンドンの名所を入れてみました。
「……普通にOK出しちまったけど、大丈夫かな」
ここはロンドンに八つ存在する王立公園の一つ、ハイド・パークだ。
その正面門で士道は体勢をこーでもないあーでもないと変えながら、エレンを待っていた。
エレンは別に士道の想い人というわけではないのだが、いざデートとなるとやはり緊張してしまう。
あまりの緊張につい大佐にわざわざ本日二度目の電話をして報告までしてしまうほどだ。
因みに大佐には、事が事なので全く信じてもらえなかった。
エレンによるデートの提案があった後、話しはとんとん拍子に進んでいき、その結果デートを企画した数時間後にそれが実現することとなったのだ。
予定が決まるや否や、逃げるようにピューっと去っていくエレンの姿が印象的であった。
「しっかし、まさかデートすることになるとはなあ。しかもこっちで」
士道はいまだに自分がデートをするという実感が湧かなかった。
大して交流関係を持っていない士道は、自分が異性とデートをすることなど一生ないだろうと思っていた。
勿論、妹との外出は除いてだ。
しかし何故かそれが実現してしまった。
それも
因みに士道は身元がバレないようにいつもメカメカしいマスクを被っているが、公衆の面前でいつも通りにマスクを被っていたら変な目で見られること間違いなしである。
なので、今日は風邪予防として一般的に使われる使い捨てマスクとフード付きのパーカーを併用して顔を隠していた。
目元は隠せてないが、そこまで隠したら不審に思われそうなので流石にやめておいた。
「少し遅れてるな……」
腕時計を見て、士道はそう呟く。
予定では12時にここで待ち合わせなのだが、その時間は既に過ぎている。
エレンはポンコツでかなりのおっちょこちょいではあるが、一応はDEMに務める立派な社会人であり、そんな彼女がほんの数時間前に立てた予定を忘れるとはとても考えられない。
以上のことから察するに何かしらのトラブルでも起きたのかと士道は訝しんだ。
だがそこまで考えて、士道はその懸念が早計だったと思い知った。
エレンが小走りで正面門に現れたからだ。
何かがあったわけではないのか、と士道は少し安堵する。
「おーい、エレン」
「!……シドウ、なのですか?」
士道が声を掛けると、エレンは本当に士道かどうか確かめようとする。
普段ずっとマスクで顔を隠している男が、そのマスクを外したのだ。
そんな反応になってしまうのが自然だろう。
「ああ、俺だよ。そう言えばお前の前でマスクを外したのは初めてだったな。いや、そもそもマスクを外した状態を誰かに見せること自体初めてか……」
「は、初めっ……そうですか」
エレンはほんの一瞬、嬉しそうな笑顔を見せるがすぐに口元を押さえて表情を隠した。
「すみません、少し準備に手間取ってしまって……」
「ん?……あ」
士道は改めてエレンを見て、思わず言葉を失う。
それはエレンが着ている服に原因があった。
純白のワンピースに上からは大人らしい黒いコート、靴は普段絶対履かないヒールと、かなり気合の入ったコーデであることがわかる。
「どうかしたんですか?」
「……いや、お洒落してきたんだなって。そういう格好したエレン初めて見たから、ちょっと驚いた」
別にエレンに見とれていたわけではない、無いったら無い。
士道は自分にそう言い聞かせる。
「……っ!」
そしてエレンは士道の言葉に少し顔を赤くする。
「ど、どうでしょう…か」
「あ、似合ってるよ」
恐る恐る聞くエレンに、頭を掻きながら答える士道。
さしずめ初々しいカップルといった様子だった。
「で、では早速行きましょう…」
仕切りなおすように咳払いをして、エレンはそう言った。
このクールぶりながらもおっちょこちょいなところを見て、相変わらずだなと士道は思った。
まあその部分があったからこそ、エレンとここまで仲が深まったのかもしれないが。
「ああ、それじゃあまず昼飯でも食べるか」
「はい!」
かくして二人のデートは始まった。
◇◇◇
まず二人がしたことは腹ごしらえだった。
今は昼の真っただ中なので、まずは昼ごはんを食べるということは事前に話し合って決めたことの一つだ。
その時のエレンの強い要望もあって、中々にお洒落なカフェで食事を取ることが決まったのだが……。
「すみません、このショートケーキと同じものをもう一つ」
「はい、かしこまりました」
「……………………」
―――こいつショートケーキ食い過ぎ
士道は能面みたいな顔をして辟易していた。
この女、カフェに来てからというものショートケーキをひたすら食いまくっているのだ。
しかもショートケーキ以外を食べたのは最初に注文したサイドメニューのサラダのみときた。
「お待たせしました、当店自慢のショートケーキとなります」
これにて本日5個目のケーキ、エレンはそれを食べて癒されているような柔らかな笑顔を浮かべる。
心無しか、士道の目にはエレンが二頭身のデフォルメキャラクターに見えた。
「シドウももっと食べないのですか?」
「いや、俺はもう遠慮しとくよ。これ以上食うと胃が重くなりそうだ」
何でもここのケーキは美味しいと前々から評判だったようで、エレンが態々このカフェで食事を取ろうと言ったのはそれが理由だったようだ。
士道もエレンにおすすめされて一つ食べてみたところ、噂に違わぬ味であった。
かと言って、エレンのように食いまくろうとは思えなかった。
「すみません、このショートケーキをもう一つ」
エレンは先程注文したケーキを食べ終わると、また同じケーキを注文した。
このままではワンホール食べてしまうのではないかと思ってしまうほどの勢いだ。
これではデートがカフェのみで終わりかねないのでは?
そう思った士道はいい加減話しを進めることにした。
「それで、この後映画を見に行くんだろ?時間もあるし、早いとこ見る映画を決めようぜ」
「もぐもぐ………んぐ、そうですね」
エレンはケーキを飲み込むと携帯で今日上映中の映画を調べ始めた。
映画を見るというのも事前に決めていたことなのだが、これはやることがないので取りあえず映画でも見ようという考えで決めたものだ。
そのため二人には特に見たいという映画は無く、見るときに決めようということになった。
「む……あまり知っているものがありませんね」
難しい顔をしてエレンは呟いた。
どうやら検索結果は芳しくなかったらしい。
士道はエレンから渡された携帯を見て、少し吟味する。
「……確かに知らないタイトルばっかだ」
英文が羅列されたサイトを軽く見た結果、士道はエレンと似たり寄ったりの反応をした。
エレンの言う通り、上映中の映画はどれも大して知名度のない一作限りなものばかりでシリーズ物は全く見当たらなかった。
仕方ないので、見た感じ面白そうな映画をエレンに提案しようと、士道は適当に画面をスクロールする。
「…………おっ?」
ある部分で士道の手が止まる。
「なあ、エレン」
「なんでしょう?」
「お前ホラー映画っていけるか?」
「ゑ?」
目を丸くするエレンに、士道は携帯の画面を見せる。
そこには風船を持った道化師が主体となったキービジュアルが映されていた。
「この映画、ホラー映画史上一番の大ヒットってテレビで紹介されててさ、せっかくだしこれでも見に行き………」
そこで士道の言葉は止まった。
「………………」
何故なら、目の前にいるエレンが未だかつてないほど顔を青ざめさせていたからだ。
「だ、大丈夫か?」
取りあえず士道はエレンを慰めようと話しを聞くことにした。
この調子じゃあ今日は映画は無理そうだなと思いながら。
◇◇◇
今日は映画は無理そうだといったな?
あれは嘘だ。
ウワァァァァァァァァァ……
結論から言うと、映画は見た。
士道は無理して見なくてもいいといったのだが、エレンは案の定聞かなかった。
「水でも買ってこようか?」
「ハァハァ……お、お願い…しますぅ」
そしてこうなった。
エレンは息を荒くしてぐったりしており顔色も悪い。
ぶっちゃけ見た目に関しては救急車を呼んでも文句を言われないレベルだ。
その実、恐怖による動悸が激しいだけなのだが、この場でそれを見抜けるのは士道だけだ。
「ほい、水」
士道は近くの自販機から買ってきた水をエレンに渡す。
エレンはそれを無言で受け取り、口に流し込んだ。
「ったく、怖いんなら無理して見なくてもいいって言っただろ?」
「こっ、怖くなんてありません。最強である私が道化ごときを恐れるわけないでしょう。仮に私が恐怖していたとしても、私は人類最強の
水を飲んで幾分か落ち着いたエレンはいつも通りの傲岸不遜な態度、もとい強がりを見せてくる。
「でも顔色悪いぞ。足も震えてるし……」
「これは恐怖によるものではありません!ただ突然出てくるのに驚いただけです!さあ!早く次の場所に行きましょう!」
エレンは必死な顔で言い訳をすると、そのまま映画館の出口にズンズンと歩いていった。
「……大したもんだよ、まったく」
エレンの相変わらずな態度に士道は苦笑した。
自分を最強最強と連呼するのはともかく、そのへこたれない精神は流石だと士道は思う。
一周回ってエレンをそう思ってしまうのはちょっとあれな気もするが。
少しぐらいは
出来ればデートは一話に収めたかったんですけど、流石に長いわってなったので急遽分割。
なので次は早く投稿出来る筈……!