転生オリ主だけど一夏がホモだった   作:ニコウミ

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ホモ要素が少なかった(落胆)


野獣一夏先輩

 周りの生徒は皆が女性しかいない学園に行くことになった。天国か。

 一夏の衝撃的な告白から、なんかISを起動させると言う訳の分からない事を成し遂げてしまった俺は今、ロシアに来ていた。なんで? と言われれば、分からない。本当になんでだろうか。千冬さんの計らいから、紹介されるがままに来てしまったが、俺がロシアの代表候補生になるらしい。

 日本でいいじゃない。と進言はしたものの、日本の代表候補生は一夏がなる。あの千冬さんの弟だからこそ、分からなくも無い話だ。

 それに、何処かの代表候補生にならないと、俺の身が危ないとかなんとか。

 

「……まぁ、あの一夏から離れられるなら良いんだけどねぇ」

 

 一夏のアタックは痛烈を極めた(猛進)

 正直、親友の変わり身に枕を濡らしたのは二三回処の話ではない。

 

「もう少しでロシアに着くよん」

「……楯無さん、何故に裸エプロン? 襲って良いんですかねぇ……」

「残念! 下は水着なのだ!」

 

 無念とかかれた扇を俺に見せつけるこの人、楯無さんと言うらしいが、千冬さん紹介のロシア案内だと言う。

 中々に愉快な人で面白いは面白いんだが、一夏のあの恐怖から若干な恋愛恐怖症を発病した俺は近付けないでいる。もう全てが男に見えて仕方ない。ロシア留学も中山筋肉さんを思い出して恐怖しか感じない。俺ってホモに好かれやすいとか無いよな。

 

「ほらほら、それより一夏君の記者会見が始まってるわよ?」

「記者会見? アイツそんなのやってんのかよ……と言うか飛行機の中で見れるんですか」

「まぁ要人輸送機だしね。それくらいの設備はあるわよ、ほら、スイッチオン!!」

 

 点火と書かれた扇を広げながらテレビの電源をつける楯無さん。尻がエロい。尻、尻か、なんか嫌な想いが広がってくるな、可笑しいなぁ。

 そんな俺の想いを他所に、無駄に巨大なテレビの電源がつき、記者会見の様子が写される。千冬さんと一夏の姿がフラッシュに集られていた。

 

『で、では。一夏様は、もう一人の男性IS起動者、結城様に恋をしていると!?』

『はい』

「」

 

 脳が、震えた。

 

「………え?」

 

 楯無さんが俺と出会ってから初めて表情を固まらせた。え? 何言ってんのアイツ。全国放送なんだけど。全国ネットなんだけど。

 

『な、なんて決意の籠った視線なんでしょうか!? ま、誠に申し上げにくいのですが、その、日本では同性は認められてはいないのが現状です。姉である千冬様はどうお考えでしょう……?』

 

 記者の人がおそるおそる隣に座る千冬さんに質問を投げる、なんかこないだより千冬さんの瞳が大分濁っているのは気のせいでは無いだろう。

 千冬さんはゆっくりと手元にあるマイクを手に持つと口を開いた。

 

『良いんじゃないですかね』

『適当ッ!? そ、それは不味いのではないでしょうか!?』

『うん』

『千冬様ッ!?』

 

 なにあの覇気がない千冬さん。ラオウが酒場で飲んだくれてるみたいなイメージにしか見えないんだけど。何があったの。千冬さんと一夏の間に何があったの。

 と言うか辞めて。俺が、俺が。

 

「俺が何をしたって言うんだ……」

「……ナニを?」

 

 スッと呟く楯無さんの言葉に俺はこれから起きる未来に顔を覆った。

 

「あ、あぁ!? 嘘嘘嘘ッ!? わ、私が悪かったわ! ほら、泣かないで! ね!? お姉様が抱き締めてあげるから!!」

「うぇぇ………ひっぐ………」

「……どうしよう、予想してたより重い話に困惑する……ほら、お姉ちゃんに悩みを打ち明けてみなさい」

「親友がホモなんだ……」

 

 そんな俺は、知り合ったばかりの人の胸で泣いた。

 そろそろ涙腺が切れそう。

 学校行きたくないよ。

 

 

 

● ● ●

 

 一夏って可愛いよね。

 いや無理だわ。プラスに考えなさいってお姉ちゃん(楯無)に言われたけど無理だわ。だってもう、どう見ても男だもん。俺の正常な頭ではこれ以上の譲歩は無理だよ。

 

「よう!! 一週間ぶりだな結城!!」

 

 IS学園で出会ったコイツは何も変わっていなかった。ビックリするくらい。

 

「お、おう……久しぶりだな、一夏」

「あぁ、本当にな! そうだ、このクラスに箒も居るんだぜ」

「箒が?」

 

 篠ノ之 箒。俺と一夏の幼馴染みであり、一夏に恋していた女の子だ。あれから大分、経っているが、恋は陽炎とも言う。箒はまだ一夏に恋をしているのだろうか。いや、流石に十数年も片想いしていられる訳がないか。

 俺は一夏が指差す方向に目を向ける。

 

「……」

 

 あっ……(察し)

 何あの生気を失った瞳。箒はゆっくりと此方を見ると覚束無い足取りで俺の元に歩いてくる。大丈夫かコイツ、死にかけてるぞ。

 

「お、おい、箒?」

「……ゆ、ゆうちゃん……」

 

 懐かしいアダ名で俺を呼び、その両手で俺の制服を掴む。その身体は僅かに震えていた。

 

「ほ、箒……」

「……いう……だ」

「う、うん?」

「どういう事なんだよお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛おッ!?」

 

 藤原竜也かお前は。

 そのまま項垂れるように倒れ込む箒を俺は慌てて支える。どういう事と言われても、俺が聞きたいよ。どういう事なんだよ。

 

「ほ、箒。とりあえず気をしっかり持つんだ!」

「好きだった男がホモ……しかも相手は幼馴染み……なんなんだ……なんなんだ……この三角形……」

「望んでないからな、俺はこんな三角形望んでないからな!」

「全国放送で聞かされた私の気持ちがお前に分かるのか!?」

「悲しみなら分かち合えるくらいだよ!! 俺なんか町歩くだけでホモの人呼ばわりだぜ!? 違うからァッ!! ホモは俺じゃないからァッ!!」

「……え? ホモじゃないのか?」

「ん、ん? ホモだろ?」

「どっちなんだよお゛お゛お゛お゛お゛ッ!?」

 

 お前は地下カジノに連れていかれた藤原竜也か。お前が恋している一夏はホモだ。現実を受け入れろよ。俺は受け止めた。

 肝心の一夏と言うと、机に座り何やら思考している。何を考えているのか想像もしたくはないが。

 

「もうやだ……ゆうちゃんが女に興味が無いなんて……」

「いやいや、俺は女に興味あるからね!?」

「……ほ、本当に?」

 

 おそるおそる聞いてくる箒に頷く。なんか今すぐにでも解かなければならない誤解が生まれているような気がするんだが、なんなんだこの食い違いは。

 目の前で項垂れていた箒の瞳に生気が戻り始めた。

 

「あぁ本当だよ。俺はもう女にバリバリ興味がある」

 

 いくら幼馴染みとは言え、成長した箒の女性らしい体に私のマグナム(見栄)が震えているのは仕方ない。

 

「そ、そうか……ゆうちゃんはバイか」

「ちょっと待て」

 

 バイじゃない。違う。俺は健全なる女性派に生きる男だ

 

「分かった……うん。まだ頑張れるんだ……諦めるな箒……ゆうちゃん、私は負けないぞ」

「う、うん? あぁ、まぁ、頑張って一夏を落としてくれ、そして俺に幸せをくれ」

「あぁ、頑張って一夏を蹴落とす」

 

 なんかニュアンスが違う気がしないでもないが、流石は我等がメインヒロイン。この期待感は凄まじいぞ。あのホモを正気に戻してやれ。

 

「まぁ、それより、久しぶりだな箒。十年ぶりくらいか?」

「あぁ。そうだな、十一年と四十七日十三時間四分くらいだ」

「……お、おう。そうか、箒はすっかり美人になったよな。まさに俺のタイプそのものくらいだ」

 

 俺がからかうように言う。昔の箒なら顔を真っ赤にして怒っていたのだが、目の前の箒はさも当たり前のように頷く。

 

「タイプに合わせたからな……姉さんに頼んで色々と調べて貰ったんだ。あぁ、そうだ。朝のコーヒーをまだ飲んでなかっただろう? 私が買っておいたんだ、ほら、微糖のエメマンだ」

「……あ、ありがとう」

 

 なんでそんなことまで知ってるの?

 可笑しいな、箒と遊んでいた頃はコーヒーなんか飲んでいなかった気がするが。俺は妙に冷えた缶コーヒーを受け取ると、そのプルタブを開ける。

 

「あ、そういや…」

「砂糖だな。微糖に砂糖一個が日課とは、妙に子供染みた習慣だぞ?」

「……お、おう。いや、まだ苦くてさ、は、ハハ……」

 

 苦笑しながら、すっと箒から渡される長細く収納されている砂糖を俺は受け取る。

 いやいや、可笑しいだろ。なんで十年ぶりにあった箒が

一夏でさえ知らないそんな情報を知っているんだ。あれ? なんか思ってたんとちゃう。

 

「あ、ありがとう……あ」

「コーヒー牛乳ならあるぞ」

「」

 

 なぜ俺がコーヒーを飲み終わったらコーヒー牛乳を飲むことまで把握しているの。あれ、怖い。目の前で苦笑する幼馴染みが怖い。なにこれ。

 

「か、缶コーヒーと言えば、あ、朝のトレーニング忘れてたなぁ……ね?」

「うむ、だが一日くらい抜けていても問題はあるまい」

 

 なんで。

 俺が。朝にトレーニング。しているの知ってるの?

 あれ、思ってた幼馴染みの出会いとちゃう。思ってたんとちゃう。

 俺は目の前で微笑む箒を見ながら背筋に嫌な寒気が走った。

 

「む、そうだ。ゆうちゃんの携帯番号とアドレスなんだが……」

「あ、あぁ、教えようか?」

「いや、知っている。後で私がメールするから登録しておいてくれ」

「……お、おい一夏。やだなぁもう、アドレス教えるなら俺に一言くらいかけても良いだろう?」

「はぁ? 俺は教えてないぞ」

 

 笑えねぇんだよホモ野郎。

 

「じ、じゃあ千冬さんかな。なぁ箒?」

「む?」

「……なんで首傾げるんだ」

「千冬さんとはまだ会っていないぞ。ぬ、ゆうちゃん、汗だくじゃないか。そんなに暑いか? ほら、汗を拭いてやろう」

 

 額から流れる冷や汗を箒はポケットから取り出したハンカチで拭き取ってくれる。

 そしてそのハンカチをそのまま箒はそのまま舌をだし、ハンカチにしっとりと当てるとゆったり微笑みながら口を開く。

 

「変わらないなぁ、ゆうちゃん」

「な、何が……」

「――――――汗の味……」

「」

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺は教室を飛び出していた。

 

「ほ、箒。そのハンカチちょっと貸してくれよ」

 

 親友の寒気が走る言葉を聞きながら、俺は生徒会室に向かって走る。今はただ泣きたい。お姉ちゃん助けて。幼馴染みが別の方向で。もう、もう、どうしたら良いか分からないの。

 ベンチで座り込みただ無表情でコーヒーを飲む千冬さんを横切り、俺は泣き叫んだ。

 

 

 

 




箒ちゃんUC大勝利の予感。

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