転生オリ主だけど一夏がホモだった   作:ニコウミ

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自分、ブラックラビッ党なんで

 グーテンモーゲン(曖昧)

 ビバドイツイン俺。一人って素晴らしい。てな訳で、なんか目が覚めたらドイツ行きの飛行機に乗っていた結城です。あんまり昨日の記憶がないんだけど、また酒を飲んだとかじゃないよな。

 まぁ、さっき国の人から特別休養とか言う依頼が来たから間違いは無いと思うけど、代表候補生ってこんなのもあるんだな。さっきISも回収されちゃったし、今の俺はただの結城です。

 

「迷子だよ」

 

 ドイツにポツリと残されてどうしろと。お金は沢山渡されたが、通貨が良く分からない上に、ドイツ語とか話せないし、シュバルツ(曖昧)とかしか分からないよ。

 こんな、猿旅じゃないんだから、ヒッチハイクとかでなんとか知ろって言うのか。せめて旅仲間が欲しいな。旅仲間。有吉とか良いよね。

 

 このまま、立ち止まってても仕方無いか。さっき買ったソーセージを食べながら、ちょっと歩いてホテルでも探そうかなぁ。

 

「―――――ユウキとはお前か」

 

 ふと歩き出そうとした俺に誰かが話し掛けてくる。

 声の聞こえる方向に首を向けるが、誰もいない。だが、少し視線を下げると銀髪の眼帯をした厨二だけど物凄く可愛い少女が、大股を開いて片手を此方に向けていた。

 

「…………え?(困惑)」

「うむ、お控えなすって……私はラウラ・ボーデヴィッヒでごわす。以後宜しくござんす……うむ、日本の挨拶はやはり変だな。お前がムカワ・ユウキだな?」

 

 ちょっと良く分からない挨拶をされた。それなんか色々混ざってるよ。

 大体、十四くらいの年だが、白人美少女とでも言うのだろうか、まるで兎のように赤い瞳が俺を映している。端整な顔の娘だな。将来は千冬さん並みの美人になりそうだ。

 

「えっと、まぁ俺が武川結城だけど」

「やはりそうか。私が教官からユウキのドイツ観光案内を任されたラウラ・ボーデヴィッヒだ。ドイツ形式ではこう挨拶するのだ。知っておいてくれ」

「日本でも同じだけど」

「ッ!? 日本はまともな挨拶が流行ったのか……そうか、教官も喜ばれる。私の事は気軽にララと呼んでくれ。皆そう呼ぶ」

 

 ララ。

 あ……(察し) この娘あれだ。千冬さんに嘘の情報を教えられまくってるドイツの教え子だ。酒を飲んだときにそんな話をしていたよな。てことは今の意味分からない挨拶も千冬さんに教えられたのか。何やってんだあの人。

 

「あぁ……で、ララ。ドイツの観光案内って?」

「む、教官から何も聞いてないのか? 今日から約二週間、ドイツでの観光を楽しむ為に案内人がいるだろう。それが私だ。此所でのあらゆる面倒は私が見ることになっている」

 

 そう言って凛々しく微笑むララ。

 なるほど、確かに案内が居ないのは可笑しいと思ったが、流石は千冬さん。現地の人なら此所まで心強いことはない。ちょっと幼い気がしないでも無いけど、大分、大人びた少女だから大丈夫だろう。

 

「なるほど。そっか、んじゃよろしく頼むよ。日本語上手いんだな?」

「うむ、日本語は得意なんだ。何かあれば私に迷わず頼れ。これが現地での携帯だ、私の番号が登録してあるからな?」

 

 そう言って手渡せる簡易の携帯を受け取る。至れり尽くせりだな。

 とりあえず受け取った携帯をポケットに仕舞い込み、バックを持とうとすると、白く綺麗な手が、先にバックを持ち上げてしまう。

 

「あ、ララ。一応色んなもんが入ってるから重いぞ!?」

「ふふ、気にするな。慣れない飛行機旅で疲れているだろう? 私はこう見えて力持ちなんだ。ほら、其処に車があるだろう、ユウキの運転を私に見せてみろ?」

 

 ララは俺のバックを持って、軍用車のトランクに仕舞い込み、からかうように俺に言う。なんか、戸惑うな。ララは確実に俺より年下なのに、異様に包容力があると言うか。

 てか、ドイツの免許とか持ってないけど平気なのか。しかも高軌道Ⅱ型だし、そもそも一般人が乗って平気なんかな。まぁ、ララが良いって言うなら良いか。

 俺は助手席に乗るララを見ながら運転席に座る。

 

「ほら、車のキーだ。ドイツに滞在中は好きに使って良いぞ。私の車だが、まだ運転出来ない年齢では宝の持ち腐れと言う奴だ」

「ララの持ち物なのか!? ……もしかして結構偉い人?」

「――ふふ、さてな」

 

 口元を釣り上げてからかうように笑う。なんか、調子が狂うな。全く年下に感じられないんだ。何て言うか、これは。

 いやいや、馬鹿か俺は。

 頭を軽く振って、キーを差し込みエンジンをかける。流石は軍用車だけはあるのか、エンジンの音が普通とは違う。

 

「で、これから何処に行くんだ?」

「そうだな、好きに走ってみろ」

「へ?」

「折角だ。時間はあるし、初日でガチガチに観光案内されるのもあれだろう? 先ずは一番にドイツの街並みを見てみよう。ふふ、さぁ出発だ!」

 

 そう言って笑う、ララ。

 目的も無く海外で適当に走るか。言われてみればなんか凄く贅沢で良い楽しみ方だよな。なんだか無性に楽しくなってきた俺は、アクセルを踏み、車を発進させた。

 今は平日なのか、やたらと人が少ないのがドイツの街並みを輝かせているような気がする。

 ふと隣を見ればララは何故か楽しそうに街並みを見ていた。

 

「なぁ、ララってやっぱり軍人なのか?」

「あぁ、軍人と言っても普段は動くことのないIS部隊だがな。一応は隊長として働いてはいるが、やっていることと言えば料理に炊事に洗濯やら、たまに軍人の愚痴を聞くなんかだがな」

「へぇ、なんか母親みたいだな」

「こう見えても皆からはママと呼ばれてるんだぞ。ユウキも呼んで見るか?」

「い、いや。軍人用語で教官やらをママと呼ぶみたいなあれだろう? 俺が呼んだらマジもんの変態じゃねぇか……」

「ふふ、日本ではオカンが軍人用語だったか?」

「いや違うけど」

「ッ!? 日本では呼び方が変わったのか……」

 

 なんで騙されてたって選択肢が無いんだこの娘。純粋過ぎるだろ。千冬さん、ちょっとアンタ遊びすぎです。

 そんなことを思っていると、丁度赤信号で車を停める。顔を街中に向ければ子供達が無邪気に遊び回っている。すると、ララが突然、俺の膝に手を起き、身を乗り出して窓から顔をだした。

 

「ら、ララ?」

「ほら、見ろユウキ。彼処にフランクフルトの屋台がやっているだろう? あれは私の部下が趣味でやっているんだ。少し寄ってみよう」

 

 そう言ってララが微笑む。俺も視線をララが指差す方向に向けると、多分、十六くらいの女の子二人組がお客さん相手にフランクフルトを作っている姿が見えた。

 あの娘達も軍人なのか。にしては俺よりも年下に見えるけど。

 信号が青に変わると、俺は車を端に寄せて停車させると、キーを引き抜く。それに合わせてララが車からゆっくりと降りた。

 

「ミュリ、サーリャ!」

「ん、ママ!!」

「あれ、ママじゃないの!!」

 

 日本語なのか。いやいやいやいや。それよりなんでママとか呼ばれてるんだ? 教官を影でママと呼んでからかうなんて話は良く聞くが、平然と上の階級をママと呼ぶとは。

 てかどう見ても君らよりララの方が年下なんですが、それは。 

 ワイワイと話す三人に戸惑いながらも、俺は車から降りると、三人に近付く。すると、金髪の娘が此方に気付いた。

 

「あれ、もしかして貴女がママの言っていたお客様ですか?」

「あ、あぁ。武川結城だ。よろしく」

「ユウキ、コイツらは私の部下であるミュリとサーリャだ。年は十六、"私より"下なんだ」

「………え? ララより下ッ!?」

 

 ち、ちょっと待て、十六でララより下だって?

 驚く俺をララはまたからかうように微笑むと口を開いた。

 

「ふむ、私はこう見えても―――十八なんだぞ?」

 

 ドイツに来て、一番の衝撃が俺を襲った。

 十八。え。同い年。どう見ても十四か下かのララが同い年。う、嘘だろ。俺だって二十五とかに間違えられる事はあるが、下に見られたことはない。いやそもそも、ララの体が幼すぎる。

 

「ほらママ、絶対に驚くって言ったでしょ? これで賭けは私達の勝ち!」

「服買って貰うんだからねー?」

「ふふ、まぁ仕方無いか。あまり高いのは無理だぞ?」

「「やった!!」」

 

 待て待て待て。ステイ。

 マジで十八なのか? 千冬さんは確か十四やそこらとか言ってた筈だが、なんせ飲んでいた時の頭だ、正確では無いのかも知れないが。

 キャッキャッ言い合う三人は良くて姉妹だ、いや二歳違いなら姉妹だろ。なんでママとか呼ばれてるんだ?

 

「ほら、騒ぐのは結構だが、今の私達は客なんだぞ?」

「はーい。じゃあ一番大きい奴を私達のパパ候補にあげちゃうよ!」

「う、はい?」

「全く……気にしないでくれユウキ、コイツらは色恋に目敏いんだ。お前らも私と合わせて呼ぶとユウキが嫌がるだろうが」

「そんなことは無いと思うんだけどなぁ……」

「ほら、私達は観光に戻るからな。問題は起こすなよ?」

「はいはーい! ママもデート頑張ってね!」

 

 なんか女子高生絡まれる老夫婦みたいな流れだが。ララは疲れたような嬉しそうな笑みを浮かべ、二人に手を降ると俺を連れて車に戻っていく。

 なんだろうか。思っていたママの呼び方と違うぞこれ。

 

「ら、ララ。なんでママとか呼ばれて怒らないんだ?」

 

 車に乗り込みながらも恐る恐る聞いてみると、ララはフランクフルトの封を開けながら、苦笑する。

 

「そうだな……最初は教官から教えられたのか"とある人物"に憧れたからだが」

 

 あぁ、うん。ララね、ララ。なんとなく分かってたけど。

 俺はとりあえず車のエンジンを入れて、車を発進させる。ふと視線を先程の二人組に向けると、二人組は此方に大きく手を振っていた。

 

「……元気な娘達だなぁ」

「ふふ、あれでも軍の訓練を済ませてきた後なんだぞ?」

 

 軍の訓練ってことは激務な筈だけど、やっぱり本物の軍人の体力は違うんだな。

 その二人組が段々と見えなくなってくるのを確認しながら、俺は再び口を開く。

 

「それで?」

「ん、続きか。最初は只の悪乗りやらふざけだったが。何時だったかな、気が付けば私は周りに言われるほど、"母"のようになっていたのさ。私の部隊は所謂訳有りでな、孤児が多い。私も両親は居ないしな」

「……訳有り部隊って奴か」

「あぁ、母親を求めている子供の大人が多かったんだ。それで、二年も立てば私は何時の間にかアイツ等の母親だ。私と言う"母"に癒された奴もいる。例え仮初めな"母"だったとしても、今更拒むのも気が引けてな。私は"真似事"から"本物"になったんだ」

「真似事から本物に……?」

「母を知らぬ奴等の母になるんだ。年齢が近くとも、見た目が幼くとも、"母"と言う形は変わらんからな。人一人信じられないような奴も、私が"母"なら信じてくれる奴もいた。そうやって心を癒す、"仮初めで本物の母"に。こんな役目になってしまったら、一々怒っていられないだろう?」

 

 そう言ってララは、またからかうように微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 うん、天使じゃん(確信)

 俺だって伊達にミリオタじゃないよ。ドイツには人口受精で兵士を作ろうとしたって話は勿論知ってる。その所謂、人口ショックで孤児が爆発的に増えたってことも、ドイツが対処法として孤児を軍人にして職を与えるって政策で各国からバッシングを受けた話だって知ってるし、孤児がその間にどんな扱いを受けたのか、ネットで見ながらイライラしたのも覚えてる。

 

 そんな心を傷付けた子達をララは救ってきたんでしょ。天使じゃん(迫真)

 

 あんな臭っいIS学園にも存在しない天使じゃん(確定)俺の天使ランキングトップちーちゃんを越えて一位にララが躍り出た。天使じゃん(決定)

 

「……ララって凄いな」

「そうだろうか? 結局、私は仮初めだ。アイツ等を騙しているんじゃないかと想うときも少なくない」

「そりゃさ、確かにララはお世辞にも母親には見えないさ」

「……そうだな、だが…」

「でもさ、やっぱりララは母親なんだよ。さっきのサーリャとミュリだったか。あの娘達は間違いなくララを母親に見てたと想うよ。凄いよな……そうやって人を救えるなんて、憧れるし、カッコいい」

「そ、そんなに褒められる物では無いぞ!?」

 

 顔を赤くして首を降るララを見ながら、俺はふと疑問を覚えた。

 

「……ララは、誰か居るのか?」

「うむ? 誰か、とは?」

「頼れる母親みたいな」

「居ないし、いらんさ。私は母だ、娘に頼れば良いんだ」

「でもなぁんか、駄目じゃないか、それ? 俺も両親は居ないから良く分からんけどさ。母って父親、つまりは愛する人ってのに頼るんじゃないのか? 二人で支え合うみたいな」

 

 俺がそう言うとララは首をかしげながらも曖昧に頷く。両親と言う本当の形を知らない俺にも、曖昧にしか分からない物だが。

 

「そうだな、確かにそうなのかも知れん。だが私にはそんな人物は居ない上に、今後に現れるとも思えんな」

「んなことないだろ、ララみたいな可愛くてしかも母親みたいな奴に男ってのは弱いんだよ。直ぐに見つかるって。ララが頼れるような男が」

 

 そう言って笑うとララは何処か恥ずかしげにしながらも、微笑み返し、フランクフルトを小さな口で食べる。

 

「ふむ、そうだと良いがな」

 

 頬を赤く染めるララは、普通に可愛い女の子だった。

 

「と言うわけで、ララを可愛く染めます」

「む、む!?」

「今から服やらアクセサリーを買いに行くぜ!! 天使をこのまま小悪魔にしちゃおう作戦決行ッ!!」

「ちょ、ユウキ!?」

 

 一気にアクセルを踏み込み、スピード上がる車にララが僅かに驚き、俺を見てくる。そんなララに俺はからかうような笑みを浮かべて、ララが手に持っていたフランクフルトを手に取り食べる。

 

「さて、ショッピングに付き合ってくれよ、ママ?」

 

 そんな俺に、ララは困ったような、だが少し嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

「……――――仕方の無い奴だ」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 しかし、ドイツのアクセサリーって色んなのがあるんだな。ビールのアクセサリーとかどうしろと言うんだ。

 肝心なララはと言うと、こう言う店は初めてなのだろう。興味津々に彼方此方を見回している。やっぱ、こう見たら可愛い女の子だよな。

 

 さて、俺も何か買いたい所だが、女の子にアクセサリーなんか買ったこと無いんでね(悲報) 何買えば良いのか分からんぜよ。

 こう言うのはさ、女の子に「何が良いかな」とか聞いて「これかな?」とか女の子が選んだ奴を「じゃあそれをプレゼントするよ(キリッ」とかやると女の子は大抵は「ぽっ///」とかなるんでしょ。エロゲでやったから知ってる。

 

 だがな。甘いんだよ鈍感主人公。

 俺は貴様らのようは生温い男ではない。忘れては困るが、俺はこう見えても三カ国共有代表候補生。国から沢山の支給品として俺の好感度を獲るために渡された、ね。あるんですよ。そこいらの高校生には無い、金が(ゲス顔)

 

 

「と言うわけで此処から彼処までのアクセサリーを買います」

「待て待て待て待てッ!?」

 

 数百ある中から「これが君に似合うんじゃないかな?(キリッ」何て言うベストマッチングな一つを選ぶような鈍感スキルは持ち合わせてないんだもん。そしたら全部買って「この店の全部をあげるよ(サラッ」みたいな。あ、これ優男が女に捨てられるパターンの奴じゃん。

 愛は金で買えない(イワシメロン)

 

「じゃあ、ララが好きなの買ってあげるよ」

「い、いや。これくらいなら自分でも買えるぞ。大丈夫だ」

 

 駄目なんだよ、この天使ちゃんは謙虚で純粋過ぎてプレゼントと言う選択肢がそもそも頭に入ってない。

 やっぱり俺が選んで買うしかないのか。と言ってもな。女の子が喜びそうなアクセサリーなんて知らないし。

 

 そもそもキモカワイイとかグロカワイイとか言う意味不明支離滅裂相反なジャンルを欠片も理解出来ない俺が女の子の喜びそうなアクセサリーを探せるのか。

 

「オコマリデスカ!」

 

 ショーウィンドウに貼り付いて眺めてる天使ちゃんを見ていると、突然後ろから声をかけられる。絵に書いたような片言だが。

 振り向くと白人のこれまた絵に書いたようなドイツのおっちゃんがいた。日本語分かるのか。

 

「実は女の子にアクセサリーを送りたくて」

「ホホゥ! ではこのネックレスがオススメだぜ」

「日本語バリバリじゃねぇか!!」

「どうにもオコマリデスカだけ言いづらくてな」

 

 間際らしい。

 それはさておき、おっちゃんから手渡しされたネックレスには丸型の銀の卵形に何と十二個もの宝石がボタンのようにつけられた、一風変わったネックレスだ。

 

「ダサくないか?」

 

 卵に十二個のボタンが着いてるだけじゃん。確かにお洒落感はあるかも知れないが。

 

「チッチッ……甘いな兄さん。このボタンのようにつけられた宝石はボタンなんだ」

「ほう」

「ルビーのボタンやアメジストのボタン。この十二個の中に一個だけ正解のボタンがあるのさ」

 

 そう言っておっちゃんがルビーのボタンを押すと、銀の卵が開閉する。ほう、正解のボタンを押すと卵が開くのか。

 

「で、中から指輪が出てくると」

「ふむ、面白いな」

 

 ララが興味津々にそのネックレスを見ている。

 

「プレゼントする方が正解を決めて、貰う方がプレゼントした奴が決めた正解のボタンを押すのさ!! 勿論、正解のボタンは好きに決めれるぞ。普段も卵形のアクセサリーとして扱えるしな。オプションで中の指輪も変えられるんだ!」

 

 なるほど。

 十二個の内、一個だけ正解を決める。んで相手に教えずにプレゼント。相手は一個の正解ボタンを押して、中身をゲットと言う奴か。

 

「良いな、普通にアクセサリーを渡されるよりは私は好きだぞ」

 

 ララもなんか気に入っているようだし、うん。

 

「じゃあそれをララにプレゼントしよう」

「む、む? 大丈夫だ、それくらいなら…」

「買えるとかそう言うのじゃなくて。まぁなんだろ、ララと出会った記念みたいなアレだ。プレゼントさせてくれよ?」

 

 なんか恥ずかしいこと言っているが、ララは困ったような笑みを浮かべる。

 

「しかし……」

「ピザカードで(キリッ」

「まいどッ!」

「お、おいッ!?」

 

 有無を言わせず購入。多分、頷かないのは目に見えてるから買っちゃうの、金ならあるんで(ゲス顔)

 さっさと会計をしてしまう空気の読めるおっちゃんに感謝しながら、俺はララにからかうように笑う。

 

「受け取ってくれるだろ?」

「……ふぅ、仕方無い奴だな。お前は」

 

 そう言うと、ララはゆっくりと店からでようとする。あれ、怒らしたか。

 

「ら、ララ?」

「正解のボタンを知ってしまったら詰まらないだろう? 先に車に向かってるさ。私だって渡せるプレゼントを拒むほど嫌な女ではない……ありがとうユウキ。嬉しいぞ」

 

 柔らかい笑みを浮かべて、ララはそのまま歩いていってしまう。あぁ、なんだろう。この気恥ずかしい感じ。ラブコメ感って言うのかな。すごく、良いよね。

 て言うかさ、これが高校生のあるべき姿でしょう。ホモに好かれるとかメンヘラがいるとかさ、普通じゃねぇよ(再確認)

 もっとさ、毎日マイケル・ジャクソンとかLINKINPARKとかの音楽にハマったりする高二病だったり、恋したりさ、これが高校生の普通じゃん。今、俺って青春してるじゃん。

 

「おい兄さん、中身の指輪だが文字は掘るかい?」

「文字?」

「最近じゃ、指輪にメッセージを入れるのがドイツの流行りなんだよ」

「ふぅん……でもドイツのメッセージとか分からないしなぁ」

「シンプルにMoechtest du meine Frau werden?とかで良いんじゃないか?」

「長くない?」

「大きめの奴にすれば何とか入るさ」

 

 

 と言うか何語だよ。とりあえず分からないから頷いておく。感謝のメッセージみたいな奴だろ。

 しかしなぁ、ここで鈍感ラノベ主人公ならヒロイン全員にアクセサリープレゼントするんだろうけど、個人的にあげたいヒロインと言えば姉さんと千冬さんくらいなんだよな。

 やっぱり良いか。俺が何個もアクセサリーを決めれるほどセンスがある訳じゃないし。

 

「そんで中に入れる指輪は何にする?」

 

 ふむ、指輪か。

 

「ダイヤモンドかな」

「ほう、そりゃ高い買い物だが、なんでだい?」

「ララってウサギっぽいから」

「……ウサギでダイヤモンド?」

 

 おっちゃんは疑問に浮かべてるが、まぁ良いさ。正解のボタンも決めたし、後はプレゼントするだけか。

 いやぁ、青春してるね。このまま二週間、無事に過ごせたらきっと楽しくなる。

 

 

 

 

 

 ドイツって素敵やん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

外伝一"放置プレイ"

 

 

 

 

『えっと、一夏君とセシリアさんの試合は、セシリアさんの勝ちですね!』

 

 息を大きく吐きながら、銃を構え直す。

 既にBTは残り零となり、私に残された武器はスナイパーライフルとインターセプターのみ。一夏さんが彼処まで強いとは嬉しい誤算でした。

 だが、言ってしまった言葉は取り消せない。私はこのまま連戦です。彼のISはレーザー兵器に弱い。ですが私の武装は物理のみ。

 

「さぁ、結城さんを呼んでください!! 連戦ですわ!! 私の戦意は消えていませんの!!」

『結城さんは諸事情でいません』

「え?」

『よってセシリアさんの不戦勝です』

 

 試合を終わらせるブザーが鳴り響き、清掃が始まる。試合を観ていた生徒が思い思いに話ながら、会場から出ていく。

 熱く火照った身体は徐々に覚めていく。試合は終わったのだ。 不戦勝と言う形で。私は盾殺しに貫かれることも銃弾の嵐に襲われることもない。痛みはない。

 

 完全なる不戦勝。

 ついにはポツンと一人残される。注目も痛みもないのに。なにもされていないのに。いや、むしろ、完璧に無視されたからこその

 

 

「あ………あァ……ッ!」

 

 

 新たな快感。

 

 

 

 

 

 

 

 


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