とある科学のハードミサカ   作:イェス

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二章 情報

「なるほど?魔術師を名乗る男が一方通行(アクセラレータ)に接触しようとしたと?」

 

ミサカは一方通行(アクセラレータ)に付き纏う男と対峙した時の状況を話してくれた。

外途中で、援軍としてたまたま通り語ったお兄ちゃんが助けに入ったのだと。

 

「はい。変態であると確信し、すぐに間に入りました。と、ミサカはあのときの光景を思い出しながら答えます。」

「彼は他に何か言ってなかった?愛し子とか、素体とか。」

 

その問いに、どこか不安げな表情のような雰囲気のミサカが弱々しい声で

 

「そういえば、とミサカは思い出しながら考えてみます。ミコのソタイと。」

 

そう言った。

 

「御子の素体……御子が仮称【宇宙からの御子】だとすれば、一方通行(アクセラレータ)を贄にして呼び出そうってことか。竜宮のやつかもしれない。」

 

重くお兄ちゃんの言葉が伸し掛かる。私が育てた魔術家系が私の不利益になる。実兄(オレ)にも言われたことこある『お前は詰めが甘い。』という状況だ。

 

聖朝歌(ミサカ)。間違えないんだな?」

「間違いないよ。」

 

私を受肉させる為の器自体が、一方通行(アクセラレータ)のクローン。

どこからかその情報を嗅ぎつけて接近してきた?

こちとら科学者に忙しいってときに?

外にいる竜宮のくせに………まさか、科学者と繋がってる?

 

一方通行(アクセラレータ)ば、狙う科学者共をそっちはわかってる?」

「はい。とミサカは頷きます。」

 

少し不安は残るけど、ミサカネットワークの力を借りてどうにかしなきゃ。

 

「科学者は任せる。魔術師は私がヤル。」

「まて、魔術師には俺も加わる。魔術は使えないが、俺には重力漕手(グラビティキー)があるからな。」

 

・・

 

とりあえず黙ってるより動いたほうがいいというお兄ちゃんの独断で街に繰り出したわけだ。

 

「それにしてもお兄ちゃんが帰ってきてくれてミサカ嬉しいよ。ミサカのこと嫌いになったって思ってたもん。」

「最近まではな。今は好きだ。お前の有り難みをよくわかったってやつだ。お前が理不尽なキレ方してもまぁ、俺より何年も生きてるからその積み重ねと齟齬が生じてんだな。違う種族だしって思えるけど、一般女子は違った。」

「ミサカの中で、お兄ちゃんの株が大暴落。リーマンショック並の不経済に到達しちゃったよ。こうなるとすべてが嫌になる。さてはお兄ちゃんスケコマシってやつだな。」

「まぁこの顔だ。モテる。」

「わかる。」

 

お兄ちゃんは完全にママに顔がそっくりだが、どことなく漂う雰囲気が竜宮のものだ。

そもそもアウターゴッツも竜宮も系譜をたどれば、一度途切れたとかそんなことがなき限り、私に行き着くようになる。

竜宮も魔術師の家系というよりは祈祷師の家系だ。それがいつしか魔術師を名乗って祈祷も魔術として扱われたから今は魔術師だけど。

ともかく神の系譜だからめちゃくちゃ顔の整いが良い。うれしい。

 

「あれ、ミサカさん?」

 

と、そんな声が聞こえた。

声からして知り合いではない。そもそも、入院生活が長かったため、私のことをミサカさんなんて呼ぶ女の子の声なんてありえない。

人違いだろうと振り返った先には、大きな花冠をつけた少女が立っていた。

 

「あっおぉ。こんな知り合いいませんわ。」

「人違いだろ?あの腕章見えるか?風紀委員(ジャッチメント)だ。絡まれるとうざい。」

「厄介になったことが?」

「痴話喧嘩に巻き込まれて少し。」

 

そう言うとお兄ちゃんは携帯を取り出して「あっちが近道なんだ。」と路地裏を指さして私の手を引っ張っていく。

そして路地を2、3回曲がったところで私を抱き上げて高く飛んだ。

重力漕手(グラビティキー)の能力のようで、体に感じる重量が弱まるのがわかった。

滞空時間が長く、壁などを蹴って風紀委員(ジャッチメント)の少女を飛び越えて、もとの路地に戻ってきた。

 

「そうだな、昨日おそわれたという場所に行ってみよう。ホントはあの猫口野郎に会っとけばよかったんだが、流石に無理だな。」

「猫口??」

「ニャーニャーうるさいシスコンの変態だ。金髪のサングラスでアロハシャツを着てる……」

 

すごい、印象が最悪な人物だな。途中で話が終わったけど、どうしたんだ?……居たよ。居ましたよ。該当人物らしき人、少し手の長い高校生ほどの背格好で、金髪グラサンアロハシャツ。

 

「やー、朝歌っち奇遇ですにゃー。で、お隣が噂の病弱な妹ちゃんかにゃー?俺は土御門元春ですたい。」

「お初にお目にかかります。朝歌の妹の聖朝歌(ミサカ)です。土御門さん。」

「朝歌っちと聖朝歌(ミサカ)ちゃんが知りたいことはわかってるにゃー。着いてくるといいぜい。」

「……ミサカ、俺より前に出るんじゃないぞ?いいか?」

 

と、お兄ちゃんは妹を変態から守るときの顔をしてそう忠告した。土御門はそれを見て少し悲しそうな表情をしただけだった。

 

・・

 

個室サロンに案内された私達は、とある小説を目の前に出された。

今、有名になりつつあるゲームのもとになった小説だ。

 

「ニャルラトホテプって知ってるかにゃー?」

「あぁ。トリックスター。千の貌を持つもの。」

「邪神の一柱にて、常に主を嘲笑う、それでいて気まぐれな、()()()()()()フィクションのクトゥルフ神話の神。」

「昨日第一位を襲おうとしたのはこいつですたい。

自称ではあるがにゃー。」

 

この世界には、クトゥルフ神話の神話生物及び旧神や旧支配者。外なる神の存在を確認できていない。

ルルイエさえ、ドリームランドさえない世界線なのだ。

たとえニャルが紛れ込んだとしてもそれは私の元々の世界で、とりあえず私を確認するはず。

それでいて、私が目をやってる一方通行(アクセラレータ)を狙うのはらしくない行動だ。

 

「それで、これがやつの容姿だにゃー。」

 

そして自称ニャルラトホテプの写真を見せられる。はっきりと映し出された顔からして、ニャルらしくない微妙な美形の部類に入る男。

 

「こいつなら、また接触しようとするだろうな。」

「なら、そこで殺る。決まりだね」

 


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