8月20日午前6時10分。
時計の針が示す時間はそんなつまらない時間だった。
寄り道するには遅く、帰るには早い微妙な時間。
能力が他の研究所に露見し、検査依頼を必死に断りつつ奔走してこの時間。
今頃
「
「あれ、当麻どうしたの?」
「
と、必死にお願いする我がはとこの上条当麻と偶然遭遇した。
人を殺しそうなツンツン頭をブンブンと上下させている姿にちょっと引く。
「上条さん、ちょっと2000円札しか持っていませんでしてね?」
「2000円札って、珍しいわね?」
「あとできっちり返すから貸してくださいませ!」
「いいわよ!おごってあげるから少し暇つぶしに付き合ってー。お兄ちゃん変えるのが七時でそれまで暇なの。」
「ありがとうございます
「一つ上のね?今度紹介するわ。」
汗だくの当麻にはスポドリを私はきなこ練乳を選ぶ。
「きなこ練乳?」
「めっちゃ甘い。でもこの味好きなのね。私。」
「そういや、
「ふふ、聞きたい?聞きたい?私の能力は
「
ポツリと、当麻がラテン語を話し出す。なんでそんな単語があの上条当麻から出てくるのかはわからなかったが、たしかにそうだと思う。
「アンタ!どうしてこんなところでブラブラしてんのよ!」
私が怒鳴られた。
怒鳴る声に聞き覚えがある。
私の声によく似た声で、ごくごく最近感じたことのあるピリリとした雰囲気。
御坂美琴だ。
「なんだ?」
不思議そうに当麻が先にそちらの方を見た。
「誰だこいつ?
「私の名前は御坂美琴!あんたはさっさと覚えなさいこのどバカ!」
記憶喪失の当麻はわからないんだろう。
一度会ったことでもあるのかな?
「それよりも!何でここにいるの?実験は中止になったんじゃ……」
実験がなんのことやら分かりはしない。どちらにしても凍結されたんだ。
「あぁ、噂に聞いてますよ?数々の実験施設を破壊し回ってるとか?ですが私はその実験の現状を話す義理なんてないです。一つアドバイスをするなら、貴方が今できることはない。ですよ。」
凍結されたことなんて教えてやらない。せいぜい苦労するといい。だって襲ってきた人に何を話したって無駄だもの。
何より、貴方がもがき苦しむその姿が好き。
大きな力を持ってして、善良であると信じてやまず、自分の正義が当然だと信じてる貴方が好き。
暴れて壊して他人の命を奪ってその最後に、自分ができる事なんてはじめから無かったと思い知らされるその瞬間の顔が愛おしくて、待ち遠しくてたまらない!!
「
「あ、あー!次はなんですか?上条さんついていけないです!」
私と同じ声が聞こえた。
そこには御坂美琴の移し見、クローンがいる。
確かあれは、助けを求めてきたクローンミサカだ。
「え?増えてる?御坂2号?」
「ミサカの名前はミサカですが?と、ミサカは即答します。」
「御坂ミサカって名前なのか?ミサカってあんま珍しくない名前なのか?」
知らないっての。まぁ、珍しいんじゃないの?
「ちょっと、来なさい二人共。」
「その言葉に従う理由がミサカ達にはありませんよ。」
「そうです。と、ミサカは
『行ったほうがいいんじゃないかなー?/escape。』
ミサカネットワークを通じてミサカの一人が話しかけてきた。
一人、というのはおかしい。クローンミサカは体がたくさんある個体だ。私も似たようなものだからよくわかるが、必ず核が存在する。今話しかけてきたのはその核だ。
〈それはどうして?〉
『実権が、続いてるならもっと破壊工作するでしょ?/return。それなら
〈そんな、迷惑かかるじゃない?〉
『散々人生捻じ曲げて、性質さえ捻じ曲げていて何を言うかこの邪神め!/escape。』
〈なにをいうか、この
『いいの?/return。いいの?/return。いいのかな?/return。そっちが手を出さないなら私が手を出しちゃうぞ!/escape。』
〈くそ!くそ!やめろよ!
『な、人を痴女扱いだと?/return。ストーカーに言われたくねぇよ!/escape。』
〈神ってものはなあ!可愛い人間いたら、見守っちまうものなんだぜぃ!〉
『正当化するだとぉ!/escape。』
「なに?お前ら姉妹ゲンカか?」
「このミサカはともかく、私は竜宮だよ?まぁ、細胞レベルまで一緒よここ三人。」
「一人だけ、おかしくないか?なら。」
「学園都市の医学の高さよ。まぁ、
私の言葉を聴いて何か引っかかるところがあったのか、キョトンとして、お前体悪いのか?とそう聞いてきた。
「今まで、院内学校に通ってたぐらいか弱よ?一応、夏休み明けから正式に柵川中学に編入予定なのよねー!」
「なら、もう体の方は大丈夫なのか?」
「大丈夫とは言い難いわね。定期的に病院に通ってるぐらいよ?そもそも実験成功例が私しかなかった実験だったのよ。」
「医療実験って公にされてるのか?なんか、裏の組織が暗躍してーとかそんな感じがする。」
「されてるわけよ。公になると氏名とかはふせられるけど、そこにいる御坂美琴さんから提供されたDNAマップってゆーものから、万能細胞を取り出して体まるごと作って、そこに精神を移しちゃおうって言う実験よ。」
「すげーな、なんか。」
「そんで、私が
もともと隠れみのの実験だし、ほとんどの患者は
「そして、私だけが成功した。科学的には皆成功してたんだけれども精神が追いつけなくて発狂してそのまま絶命したそうよ。研究員も必死だったし、何より患者も必死だった。プロトタイプが成功したんだもの。」
まぁ、成功理由も私が体を乗っ取れたり、電子化されても活動できるからってのもあるんだけどさぁ。
「現代医学でも治せない筋ジストロフィーって知ってるかしら?徐々に筋肉が動かせなくなって、呼吸もできなくなって心臓が止まる。」
「っ!」
「実験したそのときなんか、骨格は曲がってひどいものよ。でもね?私はその実験があったからこそ、やっと自分の足でこうやって立てるの。感覚があるって最高よね。」
「その実験で多くの人が死んだわ。その人達はどうでもいいの?」
拳を握りすぎて腕がプルプルと震えている御坂美琴はそう、言葉をひねり出したと思う。
知ったことか。お前の主張なんてどうでもいい。
「貴方、何が言いたいわけ?私達は自らの意志で実験に参加したのよ?」
「それでも!それでも死ぬなら意味がないでしょ!?」
「受けなくても、受けても死ぬ!でも生きれる確率は受けたほうが低いのよ!貴方にはわからないわ!殆どが
あれは、人間には過ぎた技だ。当然人間が耐えれるわけがない。それも、それでも研究員は実例を信じて手術を行った。被験者は実例を信じて生きる希望を持って手術に挑んだ。
「見てたわ!協力金を渡すとき、大人はね?大人は!これで今のうち好きなことをしておきなさいって!あのね?研究員だって皆を死なせたくなくて、純粋に、純粋に助けたいと思って集まった人たちがほとんどな訳よ!一部が汚い欲にまみれた大人だった!
知ってたわ!私だけは
「それでも、努力して努力したら長く生きられたんじゃないの?!」
「黙れよ、人間。お前は結局この私に不満があるだけだ。それをあいつらを使って正当化するなよ?
関わるな、お前に自覚はないだろうが私と関わるほど、お前は無様になるぞ。私は用事がある。あとのことは頼んだぞクローンミサカ。」
「はい。とミサカは即答します。」
・・
『ちょっとちょっと!/return。どうするの?/return。あんなことしてさ、確かにあなたと関わる人間は性質が歪められるけれど/escape。』
「いいのよ。あの偽善者は囲いが思うよりもたくさんいるわ。こぞって出てこられるよりはこのほうがいい。」
『結局、楽しみがなくなっちゃうんじゃないの?/escape。』
「思ったより、私に侵食されてるのね、あなたってば。上位コードも使えるみたいだし、過ぎるようじゃあ、完全に私になってもらうわよ?総体ちゃん。」
『それはいやだなー/return。あなたってば結構えげつないことしてるだろうし?/escape。』
「まぁ、ね。本霊の方の蓄積したデータもアップデートで私に流れ込んでるし、結構やってるわよ?星単位で。」
『流石邪神/return。ところでここはなんの施設
/escape。』
「あぁ、ここ?レベルシフトを第二位で試そうって思ってる研究員のアジト。これで1から7776のミサカを復活させることができるのよね。安心して、理事長に頼まれたのだから。」