とある科学のハードミサカ   作:イェス

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六章 愛される者

操作場はとある気配で溢れかえっていた。

そりゃそうだ。この空間には()()()のクローンミサカが揃っているのだから。

プラン外とやらの、実験の破壊活動により得た新たな妹達(シスターズ)達に1号から7776号までの記録をインプットさせて蘇らせた彼女たちはやっぱり私に侵食されたままだった。

 

「風が少し吹いてきましたね。とミサカは退屈紛れにつぶやきます。」 

 

傍らにいるのは何かと私のサポートや一方通行(アクセラレータ)に接触していた、ミサカ7777号。彼女は誰よりも感情を芽生えさせていた。本来の体で一方通行(アクセラレータ)と対峙した最後の個体がこの個体だ。そしてこれからは

 

「あのあと、結局どうなったの?」

「もう顔を見たくないと言われてしまいました。とミサカは思い出して落ち込みます。感情というのも悪くないものですね。これでも。とミサカは感謝を吐露します。」

「あ、今の感謝なのね。てかさー、あんたってばこのミサかと暮らすんだからね?現実いじってミサカと双子になるんだからねー竜宮聖七歌(ミナカ)ちゃーん。」

「ミナカですか。このミサカは聖七歌(ミナカ)という名をもらえたのですね。と、聖七歌(ミナカ)は嬉しく思います。」

 

他のミサカとは違い聖七歌(ミナカ)は私の双子枠で戸籍を得た。そこは当然私の能力を使ってジリジリと人々の認識をずらしたのもあるし、一番一方通行(アクセラレータ)に好意を向ける個体。恋愛的な意味で。

その観点から見て一番戸籍を得るに最適と理事長にわがままを言ったのだ。

他の個体は恋愛的な意味では無く、どちらかといえば家族に近い愛を、好意を向ける。庇護すべき弟のような、儚い兄のような感覚で。しかし彼女は違う。

総意の観測からしても、彼女だけは違っている。

 

「しかし良かったのでしょうか?」「私達ミサカはすでにこの世にいない身」「愛し子(ダーリン)に負担がかかるのでは?」

 

そう、ミサカたちは言う。良い反応だ。私と関われば何かと歪む。御坂美琴は狂気的に実験に噛み付いて、一方通行(アクセラレータ)は庇護される立場となり、妹達(シスターズ)は侵食された。

1号から7776号までの個体は死してなお一方通行(アクセラレータ)を愛おしく思っているのだ。

 

「私達ミサカは一方通行(アクセラレータ)を愛している。それさえあれば生死など関係ないのよ。」

『そうだね/return。私達が生まれたときに植え付けられた価値観だからね?/return。それでも私達は構わないと思うよ/return。だって本当にあってみれば、この気持ちが抑えられないから/escape。』

 

「あァ?呼び出されて来てみればなンですかァ?ハッ!やろうってかァ?」

 

とても愛おしく、遠かった存在が近くにいるのがわかる。私の愛し子(ダーリン)、そして帰還の道標(カガヤケルホシ)

世界が新装され、聞こえなくなっていた声が聞こえてくる。

全権を取り戻すには行かないものの、この距離だけで世界の声を聴くことができるようになる。

心のどこかに空いた穴が塞がるように、なくしていたパズルのピースが見つかった時のように、ひび割れた大地に雨が降り注ぐように、体に力が戻りだす。

失われていた魂のエネルギーが、彼を経由して本霊からのラインを確保できたようだ。

ならば祝福を。さらなる祝福を与えなければならない。

 

姿が見えた。その肌は陶器のように美しく、その髪は光を受けて煌めく純白の白。真っ赤な瞳は紅玉の秘宝の如く彼の魅力を倍増させていた。容姿は抽象的でか弱い印象をうける細身の体から発せられるいかにも不機嫌で鋭利なナイフのような口調のギャップで再三惚れさせられる。

 

「ここにいるクローンミサカは全2万と1体です。私はクローンミサカの人格モデルになった義妹(シュヴェスター)です。」

 

ミサカを代表して私が前に出る。

一人だけ真っ白な私に少しだけ表情を困惑させたものの、何かを思い出したように少しだけ目を大きく開いた。

 

「あ?この感じ、お前かァ?オレに付き纏ってた気配は?」

「なにを。私はあなたに呼ばれたんですよ?助けてくれ。と、その声に随分遅くなってしまいましたけどね。今日あなたを呼んだのは、私との再開とミサカの送別のためです。凍結され、ミサカは世界各地の協力機関へと送られます。そのための送別です。」

「二万体。って言ったよなァつまり、あいつらは」 「えぇ。肉体が使い物にならなくなれば新しい器を用意すればよいのです。彼女たち恥ずかしがってるんです。あなたを傷つけてしまった事実に。」

 

多くのミサカが一方通行(アクセラレータ)を優しく見ていた。それに気がついたのか一方通行(アクセラレータ)は舌打ちをして下を向く。

 

「ミサカ達は一方通行(アクセラレータ)のことが大好きなんだよ?さぁ、顔を上げて愛し子(ダーリン)。わかってるわ、あなたは一人でもう戦わなくていいの()()()()()()()()()()()。あなたならもう傷つけなくてもいいの。遅くなってごめんなさい助けに来たわ。」

 

愛し子(ダーリン)の手に触れる。当然愛し子(ダーリン)の手に私は触れることができる。

 

「神?そンな、聞いてやがったのかァ?本当にいやがったってのかァ?あンなもン子供の戯言だろ?」

「戯言でも確かに私には貴方の声が聞こえた。聴こえてきたの。だからね?助けたくなっちゃった。これは私のエゴ、そしてこの世に私を降ろしてしまった貴方の罪。貴方はここに居るミサカや黄泉川の好意を受け取らなければならない。」

 

聖七歌(ミナカ)がそっと近づいてきて私の手の上に手を重ねる。顔を真っ赤に照れさせながら。

 

「このミサカは新しく聖七歌(ミナカ)と名前を貰いました。と聖七歌(ミナカ)は自己紹介をします。」

「お前、最後の実験のやつだなァ?。」

「ハイ。貴方に救われた命です。と聖七歌(ミナカ)は……私はそう思います。」

 

これは、契約完了より二人の仲を縮ませる方向がいいぞ。

 

私はすっ。と、二人の手の間から手を抜き取り一歩下がる。

 

聖七歌(ミナカ)は両手で一方通行(アクセラレータ)の手を握りしめてから跪いた。まるで騎士が主君に誓いをたてるように、あるいは愛の告白のように。

 

「ミサカは、妹達(シスターズ)は気がついてました。貴方が私達を救おうをしてくれていた事に。守ろうとしてくれていた事に。」

 

「だからこそミサカたちは」「次はこのミサカ達に」「本当に守れるかはわかりません」「それでもミサカは」「助けたいとミサカは」

 

聖七歌(ミナカ)に続くように周囲のミサカが声を上げる。

 

「他の私もそうです。義妹(シュヴェスター)の言ったとおり、ミサカを受け入れてください。ミサカが付いてます。」

 

当の一方通行(アクセラレータ)の方は、俯いて唇を噛み締めていた。可愛い。

 

「クローンごときが俺を守る?そンな事、できるわけねェだろ?」

「喧嘩ならミサカにまかせてください。あれですここはあなたが出るまでもありません!と言うやつです。」

「なンだそれ。」

「あまり私達クローンミサカを舐めてんじゃねぇーよ。って事。好きな子ぐらい守ってみせないと軍事クローンの名がすたるんだぜ?」

「好きな子ねェ?オマエらホント馬鹿だよなァ。」

 

瞼を涙で濡らしながら彼はそう言う。この姿を見て誰が怪物と言うのだろうか?

彼もまた、救われたかった人間だ。

もう遅いと決めつけていた人間だ。

彼の手が血で汚れていると言う人間が居るなら、こう言ってやれる。彼の汚れは助けたかった人の血だと。

汚れていても、穢れてはいないのだ。

たとえそれが私のエゴであってもだ。

 

「わかっていただけただけでも嬉しいです。ここにいるミサカの殆どは貴方と思い違いをしたまま遠方に旅立つのかと心配していました。」

 

「遠方からあなたを支援します。とミサカは誓います。」

 

どのミサカもつられて同じことを言った。

 

「同じ顔で同じ事、何回も言ってんじゃねェ。俺はもう――」

 

一方通行(アクセラレータ)は言葉を途中でと切らせた。

その言葉の続きはなんだろうか?その場にいたミサカはそう思った。

 

《今更ながら、恥ずかしいと気がついたのでしょうか?とミサカは想像します。》

《ミサカはその意見に同意します。》

《同じく。とミサカは同意します。》

 

だけど違う。一方通行(アクセラレータ)の視線の先には一人の少年が立っていた。

上条当麻が。

 

「離れろよテメェ。」

 

溢れんばかりの怒気を体から放出させて、まるで一方通行(アクセラレータ)を攻撃するように。

 

「今すぐ御坂妹から、離れろっつってんだ。きこえねぇのか。」

 

当麻の言葉に嫌そうに眉をひそめた一方通行(アクセラレータ)はゆっくりと聖七歌(ミナカ)視線を移した。

聖七歌(ミナカ)は決意したように一方通行(アクセラレータ)の補助を受けながら立ち上がると、頭につけたゴーグルを下ろした。

けど待ってほしい。ここは私に花を持たせてほしい。

 

「ここは聖朝歌(ミサカ)がやる。さぁ、契約完了のときです。あなたはもう一度あの言葉を。」

「あのときの言葉だァ?」

 

当麻のことなんか完全に無視を決め込むようで、思い出すかの様に、俯く一方通行(アクセラレータ)

 

「そこにいるのは聖朝歌(ミサカ)か?なんでここに?離れろ!そいつは――」

 

当麻が何かと吠える。やっと私を見つけたのね。

こちらの声は聞こえてない様子だ。

 

「もたもたしてねぇで、離れろっつってんだろ、三下‼」

 

まるで信じられないような物でも見るかのように一方通行(アクセラレータ)は当麻の顔を見る。

ついでに私の方を見て、何を言ったのか、教えてほしいといった顔で。

 

「離れろ。三下だそうよ?」

「なンで?」

聖七歌(ミナカ)が好きなんじゃない?」

「そォなのかァ?」

「でも、私がなんとかする。さぁ、私を降ろしたあの言葉を、本契約完了を。」

 

その声はか細く、当麻には到底聞こえないだろう。

 

「神様がいるなら、どンな奴でもいい。オレを助けてくれ。」

 

それでも彼の言葉は私の髄に響き渡る。

世界が一変して、すべて手に取る用にわかるようになる。

契約が完了し、本霊との道が一方通行(アクセラレータ)を門として完全に繋がれた。

私は人間から神格に舞い戻るということになる。

体の重さの感じ方が変わる。

 

義妹(シュヴェスター)?」

妹達(シスターズ)、ここはこのミサカがやります。あなた達が使える武器はライフルのみ。彼は私のはとこですしねぇ?」

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