序章 キタブ=アル・アジフ
病院の一室。
病室が集中治療室から一般病棟に移って、外出も許可されたことで病院内を出歩くことが許されたのはつい5分前のこと。
夕暮れ時で夕焼けの日差しが眩しく、焼けるような色をした西と夜になりつつある東の空のグラデーションがとても美しく見える。そんな天気だった。学園都市の天気予報では夜中は星がきれいに見えるとのことで、ラストオーダーを誘って星でも見ようかな?と考えている。
脳の損傷が激しくしばらくは歩くこととうまく喋ることが出来なかったため久しぶりに
ノックをしたら部屋の主が返事をしたのでそのまま入っていく。
「久しぶりね!」
喉あたりに包帯を巻かされている
「あン?
「動き回っていいって!」
「でェ?中学の方はどうだったンだ?」
「実はというと、編入先が変わって夏休みと変わらずの日常を歩むことに。能力開発主力に。」
「へェ?能力開発なら霧が丘中学かァ?」
「そうにございますー。」
「ラストオーダーは定期検診だぞう。あぁ、私がいない間にいろいろと暴れまわってたそうね?駄目でしょ?」
「クソ野郎がいたから潰してやったンだ。」
「それで再手術したのはどこの誰かさんかな?」
「オレですゥ。」
「もー!入院期間伸びたら退屈なのはそっちじゃないの?」
コンコン。
「あァ?」
コンコン。と窓をノックする音が聞こえた。テラスもベランダもなく、窓の外は空中というこの部屋でノックはおかしい。
そもそも折り紙がコンコンなんて音を出すはずもない。
近くによってみて見れば、魔術的な伝達術式のもので、窓を開けて招き寄せると、私の目の前で折り鶴が振動して音を伝えてくる。
『こちら【異界より
異界より来る純白は昔から私の子孫に作らせた
私の信奉者が集う会社でほとんどが私の子孫となる。
それは竜宮生物研究所も変わらないけど。
「なンだ?」
「私の下僕。これは電話の代わり。聞こえるかしら?」
『はい。現在追っております。』
「配送ご苦労。回収はこちらでするから研究所に向かってなさい。」
『はい。恐れ入ります。』
「あと、手に持ってる折り鶴はその場においておくように。」
しょんぼりとした返答を聞くと、折り鶴はなんの変哲もない折り鶴に戻ってしまい、ポトリと地面に落ちた。
………やばい。キタブ=アル・アジフは私のコレクションの中でもとびきりやばい
あまり公にしたくない代物だ。
その本は本来13世紀にはすべて破棄されている事になっている。今残っているものは不完全な写本だけ。
取り返さなければならない。絶対に。
「とりあえず現地に行ってくるから。」
「オレに言うのかよ?」
「できる
同じ折り鶴の元にテレポートする。
魔術回線が途切れて間もないので誤差二メートルほどの場所に飛ぶことができた。
今回奪われたキタブ=アル・アジフは元々私が書き写した魔術書だ。
その魔力もずいぶん昔に覚えている。
また防衛機能として血縁以外が所持した場合に限り一定間隔で周囲にマーキングを行う。めったに被らないとして
それを追っていけばすぐに犯人にたどり着くことができるというわけだ。
しばらく追跡を続けていると路地裏で
近寄ってみると、コルクスクリューが少女に突き刺さっている。
声をかけようとしたところで、その少女がやっとのことで起き上がる。
「あら、お姉様?っ、すみません人違いでしたわ。」
「救急車を呼びましょうか?」
「いえ、ありがとうございます。」
男の方を見やると、その衣服に旧き印のマーキングされていた。
「失礼、この男達の何かを物を持っていませんでした?」
「?関係者ですの?」
「仲間が回収したとか?めんどくさいな。」
ジッと視線を感じて少女を見る。
「それにしてもズタボロさんね。病院に連れてってあげようか?子猫ちゃん。」
「いりませんわ。わたくしはここでリタイアするつもりはありませんの。それに、わたくし聞いてますのよ?貴方は関係者ですの?」
キャンキャン騒がしいな。
少女が怪我をしているのは、怪我か酷いのは右肩、左脇腹、右太腿、右ふくらはぎ。
その他のかすり傷にはウチのスプレーで傷を塞ぐ。
「ちょっ、何をしますの?」
「あぁ、これ?パパの会社の商品よ。宣伝も兼ねて持ち歩いてるのさ。」
「パパ?……それはアウターゴッツの液体絆創膏?」
「そう。この前発売した新商品。」
「アウターゴットの令嬢ともあろう方がこんなところに何故いますの?」
「探し物。って、こんなことしてる暇ないでしょ?どこに行けばその傷を治せるの?」
「……私の寮ですわね。」
・・
彼女は常盤台の生徒らしく、外の常盤台の寮に送り届けた。
意外と近く、回復しつつある身体能力で向かってみると、信じられないという顔をされた。
衝撃は行かないように能力で操作したにも関わらず。
「あそこが私の部屋ですの。」
「OKOK。」
「ここからはわたくし、自分で行くのでここで待っていてください。」
「おや、付き添わなくてもいいのかな?」
「えぇ、待っていてくださいませ。」