とある科学のハードミサカ   作:イェス

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四章 大覇星祭開幕

愛し子(ダーリン)♡」

 

開会式本会場の連絡通路に選手宣誓を終えた一方通行(アクセラレータ)が佇んでいた。

私を視認すると一方通行(アクセラレータ)は怠そうにコチラに歩を進める。

能力で暑さを感じないと思うけど、控室でまさか何かあったのかな?

 

「控室にいないと思ったらどうしてこんな暑いところに?セクハラを受けたとか?」

「単に挨拶に来る奴らがうざかっただけだ。オマエは朝歌と聖七歌(ミナカ)と一緒に居なくて良いのかァ?」

「普通に学校違うし、特設クラスだから参加しなくても良いの。その代わりいろんな人の能力を学習して取り込まなきゃ!第一回戦は当麻のとことの対戦相手を見ようと思うの。スポーツ校の名門校なんだって!」

 

お互いに白髪だから目立つから断られるかな?

 

「ほォ。いいンじゃねェ?」

「意外と好印象ですねー。」

「距離は……飛んでいけばいいだろォしな。飛べるようになったンだろ?」

「飛べる事、なんで知ってるの?」

「なンでって、クソガキが喚いてたからだなァ。」

「サプライズしようと思ってたのにー。」

 

一方通行(アクセラレータ)と接触する事で能力が、権能が戻りつつあるみたい。

元々権能が超能力として出力できてたみたいだから、できると思うことなら何でもできるようになってるはず。

全てではないけれど。

私の能力は自分だけの現実(パーソナルリアリティ)の規模がでかい現実改変能力だからね。出来ると信じれば出来るのさ。努力論じゃないけど!」

「いきなりどうしたァ?」

「思ってることが口に出てた。」

「……。」

 

一方通行(アクセラレータ)が憐れみの視線を向けてくる。

イタイ子とかじゃないんだよぉ。単に自己暗示なんだよぉ。信じる心がパワーになるから許してくれぇ。

 

「空を飛ンで大丈夫なのかァ?宙に浮くとの、空を飛ぶのは勝手が違ェぞォ?」

「あんよが上手ってな感じじゃなくてリハビリだから。愛し子(ダーリン)の近くなら落ちても平気だしー。」

「下に人が居るだろォが。」

「え?うん?………あ、一般客もいるっけねー。」

 

大々的に宣伝していた開会式の選手宣誓だけを見に来た者たちで、道路は大混雑していた。

日陰で休む者や、建物の壁によりかかる者。

会場に入っている人を考えて、早めに出たほうが良いみたい。

 

・・

 

学生用応援席には第三位が先に座っていた。

常盤台の体操服姿はやけに目立っている。

 

「第三位だ。」

「キョロキョロしてなンだァ?アイツ。」

 

ブールーシートが地面に敷かれただけの簡易的な応援席にはまばらにいる当麻と同じ高校らしき人がいる。

別の学校生徒である私達を見る目は、物珍しい。といった色を見せてから、愛し子(ダーリン)を視界に捉えると場違いな登場に隣に座る友人とコソコソ話を始める。

 

「やだ、愛し子(ダーリン)大人気。よっ、

第一位!」

「あァ?」

 

周囲を気にせずにドカッと豪快に座った一方通行(アクセラレータ)が早く座れと目で訴えて来るので、素直に座っておく。

 

「アンタたち来てたの?あいつの応援?」

 

目敏く第三位が私達の隣、一方通行(アクセラレータ)の隣に人一人分開けて座り直す。

他校の生徒を応援するためわざわざ一人できた他校性から他校からそれぞれ応援に来た友人たちに変わる。

 

「ん?まぁね。第三位は?格下の戦闘を高みの見物?」

「言い方に棘があるわね。賭けよ。あいつは1回戦敗退じゃない。私が1回戦敗退。」

 

かける対象が悲惨。そんなんなら、次通る人が男か女かでかけるほうがまし。

 

「うっわ、すごく惨めな賭けだね。」

「でェ?何賭けたンだァ?」

「え?あいつが勝ったら、スフィンクスの餌の買い出しの手伝い。私が勝ったら男女二人組限定のゲコ太ストラップをゲットしに行くのよ。」

 

スフィンクスの餌を二人で買いに行くのか、ゲコ太ストラップをゲットしに二人で行くのか………あれ?

 

「………デートじゃん。どっちみちデートじゃん。」

「でででデートじゃないわよ!それだったらアンタたちいっつもデートしてるわけじゃない!」

「ん?」

「断念だったなァ。オレらはデートじゃなくてコイツが勝手についてくるンだよ。」

「ストーカー?」

「第一位取り巻きAでーす。」

「A、競技が始まるぞ。」

「おぉー。」

 

競技は棒倒しだ。

私は棒引きならやったことあるから、棒倒しなんて砂山に枝をぶっ刺して倒れたら負け。ってのぐらいしか分からない。

 

「何かあったのかァ?」

 

一方通行(アクセラレータ)が疑問に思うのもわかる。エリート校の面々とは違って、当麻の側は全員がまるで戦術を叩き込まれた兵士のように、いや戦士の顔をしている。

 

「え?あいつ何無駄にカリスマ性を引き出してるのよ?!!そんなに買い出しを手伝わせたいわけ!?」

 

呆れた顔をしながら驚いている第三位の傍らで、一方通行(アクセラレータ)が真剣に分析を始める。

そもそも買い出しの為にあそこまで士気を高められるのかな?買い出しなんて私に頼んだって良いんだし、買い出しの為の賭けにみんなしてあそこまで真剣になれるのか?クラス単位ならわかる。クラス別、しかも学年を超えてのこの一体感。人格者が別にいる。

 

「リーダー格は、発案者は当麻だろうけど…が理由は当麻じゃなさそうね。みんなの意識は一人に向いてるみたい。あの、ピンク色のチアガール。」

「アイツは教師の月詠小萌だったはずだァ。黄泉川とよく飲んでる。」

「当麻の視線が相手側の教師に向いたわね。」

「……この前の学会で間違いを指摘されていた奴だなァ。」

「あの有名な、素人目で質問なんですが?ってやつね!あの余裕の表情、嫌味を言うやつなのよ。エリート教師だからボロクソプライドが高くて、月詠に頭で勝てなかったから、教え子で勝とうとしてるのよ。あなたのところのお馬鹿な生徒さんは、ウチの優秀な生徒に絶対勝てませんよ。ってな感じに。」

「ひどい偏見ね。」

 

高らかに開始の合図がなると、一斉に動きだした。

人数戦になるとお互いの連携が重要になってくる。

テレパシー系統は支持を出す。遠距離系は補佐を。

体力に自身があったり、近距離系の使い手、レベル0は歩兵役として突っ込んでいく。

先頭集団は盾役を兼ねていて体格の大きいものや、肉体強化系の能力者だろう。

その次に中距離系、そして遠距離の突撃補佐ではない攻撃型の遠距離能力者。

そして防衛の為に残る者。

その中に仕切りに合図を出したりせわしなく動いている者が防衛陣の中に一人だけいる。

 

「……大将は当麻じゃなくてあの女子ね。」

「周りにいるのがテレパスとテレキネシスかァ?アイツが上条側の奴らの指揮をしてンのか。」

「支持が的確。彼女自体テレパスじゃなさそう。感じ、割り振りを全て把握してる見たい。」

 

衝突のたびに一般応援席の者共の歓声が聞こえる中、気にした様子もなく指示側は的確な判断で動かしている。

気迫と運と、何よりこの一線に全てをかける意気込みから勝てる。そう、当麻は勝てる。

相手側は優勝を勝ち取るつもりで体力の配分をしているだろうが、実力差を補うためだけ、この相手を打ち取るためだけに全員が全力を出すなら、この試合に当麻たちが負けるはずがない。

 

「第一回戦だからこそ勝てるってやつだなァ。」

「ジャイアントキリングというべきか桶狭間の戦いというべきか、いいものを見たわ。十年は忘れないわね。」

 

・・

 

競技を見届けてからは、屋台でなにか食べたくなったので、地面を歩く一般人や生徒の上を浮きながら背中に乗る一方通行(アクセラレータ)のナビを頼りにふわふわと進んで行く。一方通行(アクセラレータ)が私に跨ってるのは、低空飛行で通行人がかなりいるからだ。

 

「おーい、そこの二人ー!」

 

その途中で、警備員(アンチスキル)の軽装備を身に包んだ黄泉川に声をかけえられた。

ゆっくり降りていくと飛び降りた一方通行(アクセラレータ)が気だるそうに黄泉川の方に歩いて行く。

私は一方通行(アクセラレータ)の肩に手を置いて一方通行(アクセラレータ)の進むがままに引っ張られていく。

 

「ンだよ?黄泉川。」

「呼んだだけじゃん。」

 

一方通行(アクセラレータ)はムッとした顔でキッと黄泉川を睨む。睨まれた黄泉川あははは。と笑って片手でごめん。というポーズをとる。

睨むと言っても、本気で怒っているわけじゃないことを黄泉川は知っているから笑って済ませている。愛し子(ダーリン)の顔はとっても怖いけど。

 

「拗ねない。もう少ししたら吹奏楽のパレードじゃんよ。見てく?」

「なンか食いにいくンだよ。」

「そうじゃん?デートじゃんねー一方通行(アクセラレータ)。」

「そォだな。それだけか?」

「今日は遅くなるじゃん。お母さんを待って起きてる必要はないじゃんよ。」

「誰がお母さんだ。」

「ウチじゃんね。」

 

プンスカ怒りながら愛し子(ダーリン)は私に捕まってふわふわと浮いて道路を挟んだ反対側にやって来る。

一方通行(アクセラレータ)が買うのはフランクフルトとか唐揚げとか串焼きとか、とにかく肉。

 

「あーいたいた!」

 

唐突に声がかけられたと思ったら第三位が私を掴む。

 

「アンタの目、赤よね!」

「え?そうだけど。」

「借り物競走なの!いいでしょ!」

「いいけど、一方通行(アクセラレータ)――」

「追っかけるから行け。」

「よし!」

 

恐るべき身体能力と、ゴールの競技場が近かったのが合わさって、どうやら第三位が一等賞のようだ。

私は引っ張られるがままに浮遊しているだけなので、他の借り物よりは楽だと思う。

競技場はしっかりとした競技場らしく、大会を開いても申し分ないものだ。

客席も、報道用カメラも警備員もさっき見てた競技場の倍以上にある。

走者である第三位にタオルやら何やら至れしつくせりにしている係の子は完璧なサポーターのようで、テレビで放映されても見苦しさなど微塵にも感じさせない動作だ。

 

「へー、第三位一位じゃん。すごーい。」

 

達成感に満ちた顔をしている第三位の頬を押してやると、呆れたように私の手を取る。

 

「ありがとね。」

「よきにはからえ。」

 

浮遊している私の腕を取って、出口まで誘導した第三位は追ってきていて、どう入ったかわからないが出口と書かれた門のところにいる一方通行(アクセラレータ)に私を引き渡すと表彰台の方に歩いてく。

 

「すごいね。足早い。胸の抵抗がないからかな。」

「そォだな。」

「いやー、にしても今日は濃い一日でしょ。愛し子(ダーリン)も私もテレビに映るなんて!」

「映りたいか?」

「敬虔な信徒は喜ぶよー。」

「オマエの部下の事かァ?」

「まぁね。」

 

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