革新者が幻想入り   作:小熊

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#3

 日が沈み空は暗くなった。

曇りの全くない空には星々が浮かぶ。

 とある森の奥深くに佇む一軒家。

まわりは木、草で覆われあまり人を寄せ付けない外観となっている。

窓と思わしき場所から微かな光が漏れている。

そこにはいかにも魔女な姿をした少女がいた。

黒い服。金髪。そして顔を全部覆うほどの大きな帽子。

 彼女が椅子に座りながら読む本は"魔法力の上げ方~地獄編~"。

その本は分厚く普通の女子が読むには少し辛いぐらいの重さ。

読書用の机に本を、隣にメモ用の手帳が置いてある。

 普通の魔法使い、霧雨魔理沙は今日も魔法の研究に時間を費やしていた。

 

 

 紅魔館から借りてきた本を読む。

勿論返すつもりはある、自分が一人前になる頃、いつになるか分からないが返すつもりだ。

借りる時毎回と言っていいほどパチュリーは文句を言ってくる。

正直、すまないと思っている。反省は勿論している。謝罪文もちゃんと送っている。許してよぉ。

そもそも私がずっと借りたいと思わせる本がたくさんあることがいけないことなんだ。

 

 本を読むことは好きだ。

魔法の次に私の人生の生きがいといってもいい。そこから得られる知識は私の脳に確りと刻まれていく。

ただ、自分は人間、魔法使いではあるけど人間なのだ。やっぱ眠気、疲れには勝てない。

本の続きはまた明日にする。

 キノコの絵が描かれたしおりを本に挟み、閉じた。背筋と腕をよく伸ばす。

本読んだ後のこれは実にいいもんだ。

 机のランプの火を消し、窓から見える空を眺める。

 

「ん~……」

 

 曇りの一切無いきれいな空。

星ってなんであんなに輝くんだろうなといつも疑問に思う。

 とりあえずそろそろ寝るか。早く寝巻に着替えて……あ、そうだ。明日は霊夢の所にでも行くか。この前の弾幕ごっこのリベンジしたいしな。

 

「……ん?」

 

 窓からのぞいた先、地面から少し離れた位置に淡々と輝く緑色の光、緑色の塊がそこに浮いていた。

魔法使いの性分、気になるものには近づきたくなる。

すぐさま椅子から起き上がり、すぐ近くの扉のドアノブへと手を掛ける。

そのまま光り輝くもとへと向かった。

 

 緑色に光る粒子はただただそこに浮いていた、虫でも何でもない何かが。蛍かなにかかとは思ったが違う。その粒子から、何か引き寄せられる力を感じる。

物凄く気になる手を伸ばし触れようとした瞬間、緑色の粒子は消えてしまった。

あれっと疑問に思ったと同時に突如、頭の中に酷い痛みと共に自分の知らない光景が浮かんできた。

 

「っ!な、なんだ!?……うわあっ!」

 

 襲ってくるのは激しい痛み。思わず頭を押さえた。

頭の中で見えてくる光景はなんとも不思議なものだ。

 

≪乱れ撃つぜぇぇぇ!!≫

≪反射と思考の融合だぁ!行くぜぇ!!≫

≪これは、人類が生きるためのっ!!≫

≪エースを、舐めんなぁ!≫

 

 人型の巨大な、人形……?に乗ったよくわからない服を着た人達が叫んでいた。

中には泣いている人、怒っている人、笑っている人……様々な人達が見えた。

ただ彼らに共通している点として何かに対して一生懸命になっているということ。

中には人形ごと鉄の塊に突っ込んで爆発している人なんていた。

間違いなく、死んだのだろう。命がなくなっていくこの光景に気分が悪くなる。

 

 青い星に向かっている鉄と思わしき何かに向かって、銃と思われるものから光弾が放たれ、また近づいてきた鉄の塊に向かって手に持った大剣で叩き切るなんてことをしている。

鉄の塊が向かう先は青くてでかくて綺麗な星。

 

 彼らは鉄の塊からこの星を守ろうとしているのか。

 

≪お前たちの目的はなんだ!答えろぉぉぉ!!≫

 

 次に映し出される光景は青と緑でカラーリングされた人型。そしてその搭乗者。

鉄の塊を生み出していると思わしき星の中で、私が見た緑色の粒子を放出している。

 

 場面が切り替わった。

さっきの青い星には一輪の巨大な花が咲いていた。

そして聞こえてくる誰かの声。

 

≪俺たちはわかり合うことができた……≫

≪争いの切っ掛けはほんの小さなすれ違いから生まれたものでしかない≫

 

 どうやらさっきの鉄の塊、ELSは青い星、"地球"と呼ばれる場所に資源を取る許可を貰いに来ただけらしい。

 人間へと接触をとってみたが、交流の仕方がわからない彼らは結果的に人を殺してしまっただと。

それが切っ掛けで戦争へと勃発、ELSはそれが地球の挨拶方法だと勘違いして攻撃。壮大なすれ違いによるものだった。

 さっきの二人はイノベイドとイノベイターと呼ばれる存在で、彼らだけの能力である

脳量子波を扱うことで異種間での交流に成功した。

 見せるものはここで終わりのようだ。

周りを見渡せば私の家。そして暗い森、虫の鳴き声、星々が浮かぶ空。

まるで何事もなかったかのようにいつも見慣れている森の景色へと戻った。

 

 なんというか、うん、すごい。

 結構、いや、というかかなり壮大じゃないか。

 そもそもあれはどの時期のものだ?見たこともないし幻想郷の異変でもあのようなことはなかった。ほんとなんなんだ?

 人が死ぬシーン見せられた時はうわってなったけど。

 

 考えてみるが、どうしてあの緑の粒子に触れただけでこんな光景が見えたのだろうか。私はなぜ見せられたのか。

 先程の光の粒子の研究をしようにしても、消えてしまった。何にもわからない。

 

「はあ、頭痛いなぁ……まあ、うん。取り敢えず寝よう、そうしよう」

 

 

 

 寝ようとしたときにあんな光景見せられるとは思いもしなかった魔理沙はともかくつらいと感じていた。短時間で一気に知識を詰め込まれて脳の疲労を嫌でも感じさせられた。頭を押さえながら彼女は家へと引き返していった。

 

 

 

 

 太陽の光が窓から差し込み、部屋全体を照らし出す。

霧雨魔理沙は今日も普通に起きる。

 上半身だけ起こし背伸び、腕も伸ばしておく。

体を解すことで血の巡りを良くすることで眠気がだんだんなくなることを感じた。

 

「うし!」

 

 自分の体温で暖まった布団のぬくもりを名残惜しく思いながらもベッドから降りる。

 昨晩のようなよくわからない事態が起きたが、一晩寝ればスッキリして頭痛もなくなって気分がいい朝を迎えられた。

しかし……あの光について色々と調べたかった。あのあまりにもなすんごい光景を

取り敢えず洗面所へ、近くの川から汲んできた水を使い顔をよく洗い、うがいをする。

 

 鏡をふと見る。

特に変わりもしない、幼さの残る顏がうつる。

しかし、気付いた。

 

「あれ……目が……?」

 

 そこに写っている自分の瞳の色に違和感を覚えた。

まるで吸い込まれるかのように、引き込まれてしまうような瞳を確認できた。

 

「金…色……え!?これ、昨晩の……え!?」

 

 

 

 

 チルノ達と取り敢えずまた会おうと約束してから別れた刹那は引き続き探索を行った。

 青と緑を強調した巨大な機械人形は空を飛ぶ。緑色の粒子は空気中へと静かに消えて自然と一体化していく。

雲より少し下の位置へと飛び上がったクアンタ。そのコックピットから刹那は幻想郷を見下ろした。

 広がるのは森、遠くに見えるのはいつぞや偵察に行った日本で見たことがある神社らしきもの、目が痛くなってくる程に真赤な館とその手前に広がる湖、雲よりもさらに高い山の上には建物らしきものが確認できた。

しかし、深く調べようとするとカメラにノイズが入り表示がまともじゃなくため何かしら嫌な予感を感じた刹那は調べることをやめた。

 ふとその中で先程確認できたどの建造物よりも、近い位置に多くの人の気配を感じられる村が見られたためまず手始めに刹那はそこに向かうことにした。しかし、先程会った彼女達はMSという存在に対して警戒など色々な感情で見ていたため迂闊にMSの姿を現すのはよくないと判断した。

 よって人里付近の森に誰にも見つけられない位置にクアンタを隠すことにした。

 

 クアンタに迷彩処理を施した後、人里にたどり着いた刹那は取り敢えず情報が欲しいため聞き込みを開始することにした。妖精から教えてもらった情報だけある程度把握はできているがもう少し欲しかった。

 人里の入り口に人間が見えた。取り敢えず話を聞きたいがために尋ねることにした。

 

「その、すまない」

「ん?なん……おや、このへんじゃ見なれない格好してるな?旅の方かい?」

「信じられられないかもしれないが、いつの間にかここにきていたんだ」

「いつの間にか?あんたそりゃ……いや、ふむ、ちょっと待ってくれるか?」

「ああ」

 

 村人はそう言うと人里の奥へと走っていった。

刹那は気にはなるが取り敢えず言われた通りにすることにした。

 

 


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