「冥界のクリスマス」後日談的な時系列のアルテラさんの独白。
このアルテラさんは弓テラから剣テラに戻った設定です。
ただ破壊すること……。
それだけだと思っていた私だったが、
此度は何の因果かサンタクロースなどと似合わない役を仰せつかった。
熱に浮かされ、冥界の飾りつけに心躍らせ、マスターと共に征く道は楽しかったのは確かだ。
だが、浮かれた心に杭打つ不安もあった。
この霊基に刻まれた「破壊」の体現。
破壊そのもの、それが私だ。
それ以外に努めたいと言ったことは嘘ではないが、しかしそれでも、
私はすでに亡者であり、今の世を生きる者ではない。
変われるものか。私が駆けた後に残るのは、荒れ朽ちた荒野だけだ。
そんな私がサンタクロース?
子供らに渡す贈り物を、触った端から壊す未来しか私には見えない。見えなかった。
――案外うまくいっていたのではないか?
サンタクロースという新たな役割が、私の破壊を抑えていてくれたのかもしれないな。
そうだとすれば、ああ、クリスマスはいい文明だろう。
こうして前向きに考えることができるなんて、思ってもなかったことだ。
驚け、マスター。
こうしてカルデアに帰り、今回のクリスマスを思い返して、気付いたことがあるんだ。
聞いて、もう一度驚くといい。
エレシュキガルは己を受け入れ、それを誇りにさえ思い、
お前の昨日、お前の窮地に言葉通り駆けつけた。
羨ましい、とさえ思ったよ。
私が通った後には荒野が広がり、あいつが駆けた後にはお前の希望があった。
嫉妬――いや違うな。
おそらく、これも破壊だろう。人間らしい感情など、私には似合わない。
ここで止まれば、いつもの私だっただろう。
だが、夢を見ることは――夢は特別だ。
醒めない夢などないが、だからこそ見る夢に無聊の慰めを求める。
私もそのクチだ。ちょっとだけ、夢見てしまったんだ。
私が――お前の、マスターの未来を、導くことができたんじゃないか、なんてな。
私の破壊という性質も、今回ばかりは冥界の門を砕くことに役立ったのではないか?
だとすれば、深淵へマスターを送り届けることができた。そう思っても、罰は降らないだろう。
戸惑うような都合のいい思考だということは充分理解している。
それでも、と。夢を見るのが我々人間というものなのだろう。
さて、語りすぎた。
マスター。
わざわざこんな戯言に付き合わせてすまないな。おやすみ。
……起きてはいないな?
これからどういう未来がお前を待つか、私にはわからない。
だが、そうだな。いい夢を、見ていたいものだ。違うか?
私は違わない。
――おい、目を開けたらどうだ、マスター。
なにか言いたいことがあるなら起きて言え。
寝言は許さん。
…………ふ、ふふ。なるほど、そうか。
お前は、私のくだらない夢のことを、そう言ってくれるのだな。
いや、そうだな、これは、やはり破壊だ。
心配するな、なにも傷ついたと言っているわけじゃない。
ああ、そうだな。そうだとも。
お前はいつも、私の駆けた後を続いてきてくれたのだった。
必死で、追いかけてきてくれたんだな。
ずいぶん走りにくかったろう。
怪我をすることもあったろう。
なにせ荒野だ。人がその足で踏破するには、厳しすぎる。
――ああ、それでも、と願ってくれたのだよな。
……さて、そろそろ寝ろ。
明日も引っ越しの手伝いがあるのだろう。
皆が熱病で寝込んだせいもあって、日程も押していると誰も彼もが嘆いていた。
おやすみ、だ。マスター。
…………心配はいらない。お前がそう信じる限り、私は存分に破壊し続けるとも。
お前はその後を追えばいい。
私の「荒野」を、お前が「道」と呼ぶ限り、この約束は壊さない。
――壊せないさ。きっとな。