【完結】銃と私、あるいは触手と暗殺   作:クリス

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書いていて思うこと、おまゆう


二十五時間目 休息の時間

 辺りを見回す。年季の入った床や壁、バーカウンターの奥では如何にも貫禄のある店主がカップを磨いている。視線をテーブルに置く。如何にも年季の入ったシックなテーブルだ。

 

「代金は私が支払うから好きなものを頼みなさい」

 

 その声に顔を上げる。仕立ての良いスーツに全てを見透かすかのような瞳、顔こそ笑っているが目が全く笑っていない。私の通う椚ヶ丘を統べる男、浅野學峯。彼が目の前に座っていた。

 

「ん?私の顔に何か付いているのかい?」

 

 一つ言おう。どうしてこうなった。

 

 

 

 

 

 寺坂の一件の起きた週の日曜日、私は唐突に陽菜乃に呼び出された。特に用事もなかったため待ち合わせ場所に向かったのだが、そこで私は地獄を見る羽目になった。罠にはめられたのだ。

 

 待ち合わせ場所にいたのは陽菜乃を筆頭にカエデ、矢田、神崎、しかも何故かビッチ先生まで混ざっている始末。悪寒を感じて逃げた私は悪くないだろう。だが、彼女達は巧みに私を捕らえると、まず初めに美容室に連行された。

 

「修学旅行の時の約束、覚えてるわよね?」

 

 そう言って、何故かビッチ先生に髪を切られた。どうやら美容室はビッチ先生が巧みに男の美容師を誑かして借りていただけらしい。そして私はそこから一時間みっちりビッチ先生に髪を弄られ、メイクまで施された。その時の屈辱は絶対に忘れない。

 

「ふぅ、やっぱり私の思った通りね。鏡見てみなさい」

 

 そう言われて鏡を見ると私が映っているべき場所に見知らぬ人物が映っていた。乱雑に切られていた髪は元の髪型の印象を残したまま綺麗に整えられ薄く施されたメイクは私の顔をまるで別人のように見違えさせた。

 

「ビッチ先生凄い!臼井さんこんな綺麗だったんだ!」

「ま、私の手に掛かればこのくらい朝飯前よ!じゃ、次行きましょ」

 

 そう言って連れて行かれたのはアパレルショップだった。ワンピースやら、妙にふわふわした防御力皆無のシャツなど凡そ二時間に渡って私は皆に次から次へとまるで着せ替え人形のように、いや、事実私は皆に着せ替え人形にさせられた。

 

「さっちゃん、さっきの服より全然似合ってるよ!」

「こ、この格好は、は、恥ずかしいんだが……元の服に着替えていいか?」

「駄目だよ祥子、今日一日はその服で過ごすこと!」

 

 その後は任務でもなければ絶対に行きそうにない可愛らしいレストランやら、大よそ想像すらしたことのない場所に連れて行かれた。何でこんな目に遭わされるのか聞いたところ、

 

「祥子、寺坂君の時一人で無茶したでしょ?だから罰ゲームとして今日一日は女の子らしく過ごしてもらいます!」

「ちなみに誰が考えた」

「カルマ君だけど……って、祥子顔怖いよ!」

 

 冗談抜きで殺してやろうかと思った私は悪くない、絶対にだ。

 

 

 

 

 

「ごめんね、疲れたよね」

 

 しばらくして皆が落ち着いた後、私が一人ショッピングモールの広場にあるベンチでぐったりしていると巻き込まれた神崎が私の横に座った。手には二本の缶ジュースを持ち一本を私に手渡した。

 

「ありがとう。うん、率直に言えばかなり疲れたよ。体力は私のほうがあるはずなのになぁ」

 

 缶ジュースを飲みながら記憶を振り返る。同性のはずなのにこうも違うと本当に同じ生物なのか疑問に思ってしまう。

 

「ふふ、でも今の臼井さん凄い可愛いと思うな」

「か、可愛いか……」

 

 改めて自分の姿を見る。いつものコンバットブーツは可愛らしいサンダルに変わり丈夫なタクティカルウェアーはフリルの付いた丈夫とは程遠いワンピースと取り換えられた。足元の紙袋には似たような服が大量に詰まっている。ちなみに代金はビッチ先生持ちである。これだから金持ちは。

 

「やっぱり、恥ずかしい……」

 

 顔を覆う。ギリースーツを着ても何とも思わないのに何でこんな服如きで狼狽してしまうのか。慣れてないにもほどがある。自分がどれだけ世間とずれた生活をしてきたのかをまざまざと見せつけられる。

 

「ふふ、やっぱり臼井さんも普通の女の子なんだね」

「どういう、意味だ?」

「私、臼井さんのこと鉄で出来てるんじゃないかなって思ってたときがあるの。でも勘違いだったみたい。ごめんね変なこと言って」

 

 鉄、か。泣くことも笑うこともしなかった私は正に鉄のような人間だったのだろう。だがここに来てからは私は泣いてしまったし笑うことも多くなった。兵士から人間になろうとしている。

 

 それがたまらなく怖い。今まで戦うことによって自分を確立してきた。だがそれを失ってしまったら何が残る?戦う以外の自分を想像できない。そう考えると怖くて怖くて仕方なかった。

 

 まるで呪いだ。兵士じゃなかったらこんなことで悩むことなんてなかったのに、何も考えず生きられたのに、なのになんで私だけこんな目に遭わなくちゃならない、私が何をした。何で殺さなきゃいけなかったんだ。

 

 違う、何を考えているんだ。境遇を恨むな。境遇のせいにするな。殺してきたのは紛れもない私の殺意だろうが。それを履き違えるな。どんな理由があろうと人殺しは人殺し。一度日の光に背を向けた者に日の光は二度と振り向かない。私は何者だ?そう、私は兵士だ。

 

「臼井さん?」

「え?あ、ああ、なんだ?」

 

 思わず思考の海に沈みかけていたところを神崎に引き戻される。

 

「凄い苦しそうな顔してたけど大丈夫?」

「いや、大丈夫だ。それよりも神崎は知りたくないのか?」

「なにを?」

「おかしいと思わないか?何でただの中学生がこんなに戦い慣れてるんだとか、色々あるだろう?」

 

 隠すにしても限度があるだろう。どう見たって私の振る舞いは一般的な中学生とはずれている。赤羽にも言われた、このままでいられると思っているのか、と。その通りだ。いつか絶対に言わなくてはならない日が来る。皆に人殺しだと罵られるのは怖くて仕方ない。あの笑顔が侮蔑に変わるのを想像するだけで寒気がする。

 

 糞、弱くなったな……

 

「大丈夫だよ」

「え?」

 

 唐突に神崎に手を握られた。どうやら震えていたようだ。荒れた私の手とは違う、温かく柔らかい女の子らしい手だった。

 

「怖がらなくて大丈夫。臼井さんが何を隠してるのかは知らない。でも、どんな過去があっても臼井さんは私たちの友達だから。だから怖がらないで、ね?」

 

 それは、私の本性を知らないからだ。そう言いたかった。でも言えるわけがない、言ってしまえばきっと軽蔑される。でも、怖がらないでと優しく語り掛ける神崎に私の恐怖心は次第に薄れていった。

 

「ありがとう、もう大丈夫だ。本当に、ありがとう……」

「わかった。でも、もう寺坂君の時みたいに無茶はしないでね?私達凄い心配したんだから」

「善処するよ」

「善処じゃ駄目!」

「……わかった」

 

 渋々了承すると神崎は何が面白いのか笑い始めた。なんだか尻に敷かれることが多くなってきた気がする。

 

「なんだか臼井さんって妹みたいだね」

「おい、君までそんなこと言うのか……」

 

 妹扱いするのはカエデだけで十分だ。自然と顔が険しくなる。

 

「ご、ごめん。で、でも一回だけお姉ちゃんって言ってみてほしいなあ、なんて」

「…………わかった、ね、姉さ「臼井さーん!神崎さーん!置いてくよー!」そういうことだそうだ」

 

 空気を読まない矢田のダイナミックエントリーに私の言葉が遮られる。間が悪いとしか言いようがないかった。

 

「あれ、神崎さんなんでそんなに残念そうな顔してるの?」

「何でもないの、本当に何でもないから……」

 

 その後、矢田は立ち寄ったゲームセンターで神崎に格闘ゲームで完膚なきまでに叩きのめされたとさ。どうやら神崎はあの見た目に反してゲームが大の得意らしい。ちなみに私がパンチ力を測定するゲームを遊ぼうとしたところ皆に全力で引き止められてしまった。不思議だ。

 

 

 

 

 

 帰り道、皆とは既に別れ私は一人街を歩いていた。道中何故か私に声を掛けてくる男が二人程いたが“丁重”に断っておいた。あれが噂に聞くナンパというやつだろう。路地裏に連れ込んで問答無用で強姦しないだけましだがあまりいい気分ではないな。

 

「まったく、もの好きな人間もいたものだな」

 

 そんなことを考えていると丁度隣を走っていたリムジンが私の少し先で停車した。最初は刺客でもやって来たのかと思い警戒したが、すぐにその考えを改め普通に通り過ぎようとした。

 

「奇遇だね、こんな所で会うなんて」

 

 声を掛けられ、振り向く。ドアの窓は開いておりそこには知っている顔が私を見ていた。全てを見通す瞳に得体の知れない気配。

 

「理事長、先生?」

 

 浅野學峯その人だった。

 

 

 

 

 

 そして今に至るというわけだ。正直訳が分からない。理事長なんて私にとっては雲の上の存在だ。目を付けられるようなことをした記憶はないんだが。それとも私の過去がばれたのだろうか?正直この人なら一晩で私の経歴を丸裸にしても納得できてしまう。

 

 ロヴロとも違う存在感に自然と警戒してしまう。例えるなら宇宙人と言えばいいのだろうか。だが正直言って勝てない。銃で撃とうが格闘を仕掛けようがナイフで斬りかかろうが容易く制圧されるだろう。

 

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」

 

 どうやらこのくらいはお見通しというわけだ。仕方ない、腹を括るか。思考を兵士に切り替える。それは目の前の理事長にも伝わったらしく少しだけ目を見開いていた。

 

「なるほど、良い目をしている」

「御託はいいです。何の用ですか?」

「君、中東で黒い悪魔と呼ばれていたそうだね」

「……そういうことですか」

 

 私の中東でのあだ名を知っているということはつまりそう言うことだ。少し目立ちすぎたかもしれない。さて次になんて言うのだろうか。退学しろとでもいうのだろうか。正直何を考えているのか全く分からない。

 

「臼井さんの経歴は調べさせてもらった。少年兵だったみたいだね。アフリカでは10万ドルの賞金まで懸けられていたそうじゃないか」

「用件をはっきり言ってください。退学しろとでも?」

「いや、そう言うわけではないよ。ただ単純に臼井さんとは一度話してみたかったんだ。それで今日さっきたまたま君を見かけて、こうして声を掛けたというわけだよ」

 

 話をしたい?話すって一体なんだ。そんなことを考えているといつの間にか理事長が注文していたコーヒーが運ばれてきた。

 

「遠慮しないで飲みなさい。ここのコーヒーは評判が良いんだ」

「そうですか、では」

 

 カップに口を付けコーヒーを流し込む。確かにこれは美味いな。理事長の発言から考えるに私の傭兵の話を聞きたいのだろうか。でも、何故?

 

「残念ながら私が調べられたことは断片的な情報だけでね、是非とも話を聞きたいんだ。君さえ良ければ話を聞かせてくれると嬉しい」

「はぁ、意図が今一つ理解できませんが、まあいいでしょう。ですがあまり気持ちのいい話ではありませんので悪しからず」

 

 それから私はこれまでの半生を理事長に語った。彼は時折質問をしたが基本的に黙って聞いていた。とても真剣だったので少し意外だった。改めて客観的に自分の過去を振り返ると酷い過去だな。まるでギャグなんじゃないかってくらい運がない。

 

「それは……大変だったね」

 

 私の話を聞き終えた理事長はただ一言そう言った。ここでかわいそうにとか言わないのが嬉しい。安っぽい同情をされるのが一番癪に障る。

 

「何か質問は?」

「じゃあ聞いてもいいかい?どうして君はそんなに強くあれたんだい?」

 

 強くあれた、か。難しい質問だな。私は確かに強いがそれは戦闘能力に限っての話だ。それ以外はまるっきり駄目で、他に自慢できるのは精々勉強くらいだ。

 

「そうじゃないと生き残れなかっただけです。と言っても私はそこまで強くない。今先生に飛びかかったところで軽くあしらわれるのがおちだ。殺せんせーにも勝てなかった。私の強さなんて所詮その程度ですよ」

 

 兵士に求められるのは強さではない、兵士に必要なのは任務を遂行するための能力だ。それを履き違え殺せることを強さだと勘違いする輩が非常に多い。殺した数だけ強くなると勘違いしている。昔の私がそうだったからよくわかる。

 

「言い方が悪かったようだ。私が言いたいのは何故そこまで普通なのかということなんだよ」

「普通?私のどこがですが?はっきり言って日本には大して馴染めてませんよ」

 

 自分でもわかるくらい悪目立ちしまくっている。どうにも生きていた世界が違うせいで常識が噛み合わないのだ。これでもマシになったほうなんだ。一年生の頃はそれはもう酷かった。暴力事件を起こさなかったのが奇跡だ。

 

「確かに、一年生の頃はかなり目立っていたようだね。でも、そこなんだよ。逆に言えばどうしてそのくらいのズレで落ち着いているのか不思議でならない。精神が崩壊したって全くおかしくない、むしろその方が自然だ。少年兵の社会復帰がどれだけ難しいのかはよく知っている。万全のケアをしたとしても復帰には何年もかかるんだ。それなのに君という人間は、人の悪意を見続けたという割には余りに真っすぐだ。それは一体何故なんだい?」

 

 予想以上の食いつきように私は理事長という人間が分からなくなった。平気でE組という差別階級を作る冷酷さと目の前にいる人物が線で繋がらないのだ。

 

 彼に言われたことを考える。確かに、理事長の言っていることは一理ある。普通に考えればこの程度のズレですんでいることのほうが不自然なのだろう。だが一つだけ彼は勘違いをしている。

 

「最初は泣きましたよ。助けてくれ、死にたくないってね。でもね、気づいたんですよ。誰かが助けてくれることなんてないって、そして人が死ぬのは当たり前だということに」

 

 思い浮かぶのは地雷で吹き飛ばされる同い年の子供、何の価値もなくただの偶然に殺された子供。その肉片を浴びた私は気づいてしまった。人が死ぬのは当たり前ということに。それからは戦うのが楽になった。諦めたとも言うべきか、死ぬのが当然だと考えれば怖くなくなったのだ。

 

「人が壊れるのはギャップに苦しめられるからです。私にとって殺したり殺されるのは当たり前のこと、日常に他ならない。ライオンが獲物を狩るのに負い目を感じますか?つまりはそういうことですよ」

 

 平和な日常があるから戦争という非日常に苦しめられる。だが、戦うことが日常になってしまえばそれは苦行ではなくなる。最早ただのライフワークだ。だがそれは強さではない。ただ諦めただけなのだ。

 

「君は、本当に強いんだね……その強さは尊敬に値する。臼井さん、君には強者としての素質がある」

 

 何故か褒められた。どうにも理事長は強さに固執しているようだ。確信は持てないがそんな気がする。

 

「確か中間テストでは41位だったそうだね。惜しいな……本当なら君のような強者にこそA組で学んでほしいんだが……どうだい、A組に戻る気はないかい?もし移籍する意思があるのなら私が直々に推薦してあげよう」

 

 そうきたか。まさか理事長直々に移籍の誘いを受けるなんて夢にも思わなかった。しかも、微妙に威圧感まで感じる。私じゃなかったらきっと二つ返事で了承してしまうことだろう。だが、このくらいの威圧感は私のとってはそよ風となんら変わりない。

 

「お気持ちは嬉しいですがお断りさせて頂きます」

「理由を聞いても?」

 

 確かに私にとって戦うことは日常だ。だが、それだけじゃないことを知ったのだ。まだまだ学んでいる途中だが私はこれを知らなくてはならない。それを知ることで私は本当の意味で生きていると言うことができる。

 

「戦うだけが日常じゃないと気が付いただけです。今はまだ勉強中ですが……それを学ぶにはA組では駄目なんです」

 

 言いきった。何というか気分がよかった。過去に踏ん切りがついたわけではないが、また一歩前に進めたと思う。戦うことこそが私の生きる意味。だが、多分このままでは駄目なんだ。

 

「そうか、そこまで言うなら仕方ない。でも気が変わったらいつでも言いなさい。君が結果を出す限り私は全力で応援させてもらおう」

「そうですか……」

「それと、臼井さん。君がE組に行った理由なんだが、どうやら中東に行ってたそうだね。駄目じゃないか、自立するのは立派だが勉学を疎かにするのは感心しないな。それにうちはアルバイト禁止だ。過去のことについては言わないが今度明るみに出たら然るべき処罰を下すので注意しておくように」

「わ、わかりました……」

 

 個人の渡航履歴まで知られているのと戦場に行くのをアルバイトと同じ扱いにすることに困惑する。とは言っても正論なので頷くしかない。そんなことを考えていると理事長が鞄から何やら書類を取り出し私に手渡した。

 

「これは奨学金申請用の書類だ。勿論返済は不要。本来なら成績優秀者にしか許可が下りないんだが、今の君の実力なら問題ないだろう。もしお金で困ることがあれば遠慮なく頼りなさい」

「あ、ありがとうございます」

 

 何だかえらく気に入られたなあ。心なしか理事長の仮面みたいに張り付いた笑顔が本来の笑顔になっている。ような気がする。まあ気のせいだろうけど。

 

「時間を取らせてすまなかった。だけどとても有意義な時間だったよ。よかったら自宅まで送っていくが」

「いや、すぐ近くなんで大丈夫です」

「そうかい。なら私は先に失礼させてもらおう。代金は多めに支払っておくから何か好きなものでも頼みなさい」

 

 そう言って理事長は席を立つと店主に代金を支払って扉に手を掛けて私に振り返った。

 

「最後に一つだけ、もし君がルービックキューブの色を揃えるならどうする?どんな手段を使ってもいい。なるべく簡単にそれも沢山だ」

 

 ルービックキューブ?ああ、あのパズルのことか。どんな手段を使ってもいい、か。なら決まりだな

 

「ナイフで分解して並べ直します」

 

 手段を問わないのならそれが一番手っ取り早いだろう。私がそう答えると理事長はとても楽しそうに笑った。

 

「なるほど、そう答えるんだね。本当に惜しい生徒だ。じゃあ私はこれで。期末テスト頑張りなさい。特に君は国語を勉強したほうがいい」

 

 そして理事長は本当に帰っていった。狂気じみた合理主義者で強さに拘る変人。E組を作った張本人だと言うのに私はどうにも理事長が嫌いになれなかった。僅かに残ったコーヒーを飲み干す。すっかり冷めていた。

 

「にがっ」

 

 口直しにケーキでも頼もうかな。

 




用語解説

(解説するべき用語は)ねぇっていってんだろこのイグアナ野郎!

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