一条家次男は第一高校   作:クッペ

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ヒロインは深雪です、異論は認めん

そして達也のヒロインはリーナです


九校戦編Ⅳ

 九校戦の会場に到着後、バスに乗っていたレギュラー、作業車に乗っていた技術スタッフは次々と車から降り割り当てられたホテルの部屋へと向かっている。深雪は会場に到着しても目を覚まさずに気を失っている煌輝のことを心配し達也の元を訪れていた。

 

「お兄様、少しお時間よろしいでしょうか?」

 

「ああ、構わないよ。どうしたんだい?」

 

「先ほどの事故から一条君が目を覚まさないのですが・・・何が原因か分からなくて・・・あの、どうすれば――」

 

「とりあえず煌輝の元へと向かおうか。まだバスに乗っているんだろう?」

 

「ええ、目を覚まさないので・・・」

 

 達也と深雪はバスへと向かい煌輝の容体を確認する。

 

「これは急激な想子枯渇で気を失っているな・・・深雪、煌輝は想子を大量に使うようなことをしていたか?」

 

「『術式解体』を使っていました。車を止めるために無秩序に放たれた魔法の相克を抑えるために千代田先輩と雫の魔法式をそれで吹き飛ばしていました」

 

「深雪も知っているだろうが、『術式解体』は大量の想子を圧縮して弾丸として放ち、魔法式を吹き飛ばす対抗魔法だ。煌輝の想子保有量ではぎりぎり打てる程度の想子量なんだろう。覚えてるか?入学してすぐに森崎達に絡まれたとき。ほのかの魔法を吹き飛ばしたのは煌輝の『術式解体』だ。ただの想子枯渇だから、しばらくしたら目を覚ますよ」

 

 その言葉に深雪は安堵する。目を覚ましたらどこへ向かうかの書き置きを傍においておき、達也と深雪はホテルへと向かっていく。

 その約三十分後、煌輝は目を覚まし傍に置いてあった書き置きを見て自分の荷物をまとめて割り当てられた部屋へと向かう。煌輝と同室なのは達也である。

 

 想子枯渇による気絶から目を覚ました煌輝は、まだ倦怠感は残っているものの一応は動ける程度まで回復したのでホテルの部屋へと向かう。これ以上回復しなさそうならば懇親会の参加は見送りたいが、久しぶりに将輝達に会えるとあって無理をしてでも出ようと思っている。

 部屋に到着しノックをする。ドアは自動ロックで部屋の鍵は先に部屋に行った達也が持っている筈なので自分で開ける手段が無いのだ。

 ドアに近づいてくる足音を聞き自分の名前を告げる。達也がドアを開け煌輝は謝辞を告げながら部屋へと入る。達也は何やら機械をいじっていた。機械にそこまで詳しくない煌輝は何をしているのか分からなかったが。

 

「俺は一旦寝る。まだ体が怠くてな。俺のことは気にせず、来客が来たら通してくれて構わないぞ」

 

 言いたいことだけを伝えベッドへと潜り目を閉じる。眠気はすぐに襲ってきて煌輝は深い睡眠を取り始めた。

 

* * * * * * * * * *

 

 懇親会が始まって三十分ほどになり煌輝は目を覚ました。先ほどよりも倦怠感は良くなっており、全快とは言えないものの普段通りの振る舞いができる程度までは回復したため慌てて制服を着用し、会場となっているホールへと向かう。

 遅れて会場に到着すると各校に別れて飲食をしながら談笑をしていた。三校の所へ向かおうかとも思ったが、最初は遅れてきたことを会長である真由美の所へ向かい謝罪をしてから深雪の所へ向かい礼を言う。幸い真由美は各校の会長への挨拶を終えた所のようだ。

 

「七草会長、すいません。遅れてしまいました」

 

「あら、一条君。もう大丈夫なの?」

 

「ええ、全快とは言えませんが日常生活を問題なく過ごす程度には回復しました」

 

「それなら良かったわ。バスではありがとう。おかげで助かりました」

 

 真由美が軽く頭を下げながら礼を言ってくる。しかし自分がやったことと言えば二人の魔法式を吹き飛ばしたこと位だ。その後は気を失っていてあまり役には立てなかった自覚があるため素直に受け取りがたいものがある。

 

「いえ、早々に気を失ってしまって申し訳ないです。あまり役には立てませんでしたので頭をあげて下さい」

 

 余りここに長居はできない。他にも会いたい人は何人かいるのだ。軽く一礼をしてその場を去り、深雪の姿を探す。深雪は達也とエリカと何やら話していたようだった。

 

「達也、深雪さん・・・とエリカか?」

 

「煌輝か、もう大丈夫なのか?」

 

「ああ、問題ない。深雪さん、書き置きありがとうございます。助かりました」

 

「一条君、随分と遅い到着みたいだけど何かあったの?」

 

「来る途中の事故未遂は聞いてるか?それで想子使い過ぎて気絶してたんだよ」

 

 あんまり声を大にして言いたくはない。これは自分の魔法師としての最大の弱点だ。本来なら自ら弱点をさらすようなことはしないのだが、ばれているのならば言っても問題は無いと判断した。

 

「とにかく助かったよ。それじゃ」

 

 そう言ってその場を去る。向かう先は三校のスペースだ。余談だが飲食のスペースは特に定められてはいないが、例年懇親会は各校が各校で固まって飲食をしていることが多い。他の学校の所に行って談笑している学生もいないわけではないが、それは結構なレアケースである。

 つまり何を意味するかというと、自分の学校のスペースに違う学校の学生が来ると嫌でも注目を集めるということである。さらに煌輝は一条、十師族の次期当主候補であり容姿も将輝と瓜二つだ。そのため三校のスペースは煌輝が来たことによりどよめきが大きくなる。

 そんなことは一切気にせず目的の人物の場所へと向かう。しかし少し様子がおかしい。とある一点、というより人物だろうか。それを見つめておりこちらの来訪には気が付かない。

 

「一体どこを見てるんだ?せっかく弟が兄のもとを訪ねてきてやったというのに」

 

「うお!?煌輝?いつからいたんだ?」

 

「たった今だよ、直で会うのは久しぶり、将輝。ジョージも久しぶりだな」

 

「久しぶり煌輝。一高の方は良いの?」

 

「別に他の学校の所へ行ってはいけないとは言われていない。友人と兄に会うことは何も問題は無いだろ?」

 

 それもそうだねと相槌を打つ。

 吉祥寺真紅郎。『カーディナル・ジョージ』の異名を持ち将輝と煌輝からは『ジョージ』とあだ名で呼ばれている。佐渡侵攻の際に一条家が中心となった義勇軍に助けられて以来交友が続いている。机上の空論と言われていた『四系統八種』による『基本コード』のひとつをを発見した天才だ。

 少し将輝と真紅郎と談笑をしていると三校の学生の視線が集まってきている気がしてきた。何やらこちらをちらちらと窺っているようだが・・・

 

「えっと・・・どうかしたか?」

 

 このまま放置というわけにもいかない気がするためこちらから歩み寄ってみることにする。

 

「一条君と吉祥寺君とどういう関係!?」「というか一条とそっくりじゃねえか!」「でも一高の制服着てるよね・・・もしかしてスパイ?」「ドッペルゲンガー?」

 

 次々と思い想い聞いてくるため対応できない。てんやわんやになる前にこちらから自己紹介をした方が早いと判断した。

 

「第一高校の一条煌輝だ。将輝とは双子で俺が弟、ジョージとは昔からの幼馴染でな。それとスパイじゃない。将輝とジョージと話しに来ただけだよ」

 

 軽い自己紹介が終わり、次々と自己紹介を受けるが、覚えきれる自信が無い。でも久しぶりにこんなに他人と会話したことに若干の驚きを感じながらも、どこかで喜んでいる自分に煌輝は気が付いていた。




すいません、昨日あげるつもりだったんですが寝落ちしました。

いや一昨日ですねごめんなさい

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