一条家次男は第一高校   作:クッペ

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今回文字数だけは長めです

話はほとんど進んでませんが


入学編Ⅳ

 放課後となり、煌輝は風紀委員の巡回のため生徒会室へと向かった。煌輝が今日も巡回なのは偶然だ。きちんと非番の日も設けられている。

 生徒会室へ到着し入室するが一触即発の雰囲気が漂っていた。どうやら副会長の服部が達也の風紀委員会入りを断固として認めないらしい

 

「副会長、俺と模擬戦をしませんか?」

 

「何だと?」

 

「別に自分は何を言われても構わないのですが、妹の目を曇っていないことを証明するためならば、やむを得ません」

 

「雑草の分際で、身の程を弁えろ!」

 

「ふっ・・・」

 

「何がおかしい?」

 

「魔法師は、常に冷静にあるべきではないのですか?」

 

「ふん・・・いいだろう。その分を弁えぬ態度、どうやら矯正してやる必要があるようだ」

 

「私は生徒会長の権限により、二年B組の服部刑部と一年E組の司波達也の模擬戦を、正式な試合として認めます」

 

「生徒会長の宣言に基づき、風紀委員長として、二人の試合が校則で認められた課外活動であることを認める」

 

「時間はこれより三十分後、場所は第三演習室、試合は非公開とし、双方にCADの使用を認めます」

 

 どうしてこうなった?そう思わざるを得ない煌輝だった。

 

「一条、来てたのか」

 

「え、ええ。今日は巡回の日なので・・・」

 

「ちょうどいい、話を聞いてただろ?お前も来い」

 

「いや、あの、巡回は?」

 

「この試合が終わってから出構わん。なにより、面白そうだ。そうだ、第三演習室の鍵を借りてきてくれ。これが教室使用の申請書だ。これを職員室に見せてくればいい」

 

「・・・分かりました」

 

 ほんと、どうしてこうなった・・・

 職員室に赴き第三演習室の鍵を借りて第三演習室を開ける。しばらくは誰も来ないと思っていたら、鈴音、あずさの両名が思ったよりも早く来た。

 

「すいません、一条君。鍵を借りてきてもらったみたいで」

 

「いえ、それは構いませんが。状況がよく分からないのですが・・・どうして副会長と司波が模擬戦をすることになったんですか?」

 

「服部君が司波君の風紀委員入りを認めずに、そのことについて司波さんが怒って、あとは流れです」

 

 なんとなくわかっていたことなのだが、あの兄妹はブラコンシスコンの気が強すぎではなかろうか?確かに妹が馬鹿にされたりしたら俺でも切れるだろうが、模擬戦を申し込むほどか?と思う。

 別に一科生と二科生の差別というわけではないが、一科生と二科生の間には確かな実力差が存在する。一番顕著なのが魔法の発動スピードだ。模擬戦のルールは聞いていないから何とも言えないが、魔法を最初に相手に当てた方の勝ち、みたいなルールなのだろう。そうなると単一工程の発動スピードに特化させた魔法がこの模擬戦では有利ということになる。

 そしてここで問題になるのが魔法の発動スピードである。魔法の発動スピードは先ほども言ったように、基本的に一科生が二科生に劣ることは無い。二科生である達也が一科生である服部よりも早く魔法を発動できるというのなら話は別だが、恐らく副会長に抜擢されていることもあって服部の実力は相当なものなのだろう。

 模擬戦の結果を思案していたところ、服部と真由美が第三演習室へとくる。少し遅れて達也と深雪も到着し、達也はアタッシュケースからCADを取り出し、カートリッジを入れ替えている。

 

「ほう、君は複数のカートリッジを持ち歩いているのかね?」

 

「汎用型を使うには、自分の処理能力では足りないので」

 

 それを聞いて服部は微笑する。そして顎をあげて、相手を見下す姿勢を取りながらCADに手を添える。達也は対照的に相手をしっかりと見据えていて、CADを持ったまま手を下げている。

 その状況を見る限り、服部は完全に油断している。その自信は今までの自分の功績からか、煌輝から見たら傲慢でしかない。仮にここが戦場だとしたら先に死ぬのは達也でなく服部だ。

 そしてこの勝負、恐らく勝つのは達也だと思う。なんとなくそう思った。

 

「ではルールを説明する。直接攻撃、間接攻撃を問わず相手を死に至らしめる術式は禁止。回復不能な障碍を与える術式も禁止。相手の肉体を直接損壊する術式も禁止する。捻挫以上の負傷を与えない直接攻撃は許可する。武器の使用は禁止。素手による攻撃は許可する。蹴り技を使いたい場合は学校指定のソフトシューズに履き替えること。勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不可能と判断した場合に決する。双方開始戦まで下がり、合図があるまでCADを起動しないこと。このルールに従わない場合はその時点で負けとする。あたしが力ずくで止めるから覚悟しておけ。以上だ」

 

 双方ともに蹴り技は使わないらしい。開始戦の距離はおよそ十メートル。この距離を魔法の発動よりも早く詰めて体術に移行することはほぼ不可能だからだ。

 

「それでは、試合開始!」

 

 勝負は一瞬だった。服部が手を添えていたCADを操作し魔法を発動しようとする。しかし正面に達也はおらず魔法は発動できない。その間に達也が魔法を服部に当てて服部は気を失った。

 

「勝者、司波達也・・・」

 

 達也は一礼しCADを片付けるため、アタッシュケースを持っている深雪の元へと向かう。

 

「ま、待て!今のはあらかじめ自己加速術式を展開していたのか!?」

 

 それは無いと断言できる。達也がCADを操作したのは服部に向けて撃った魔法一発だけ。それまではサイオンの揺らぎはない。つまり魔法は使われていない。

 

「そんなことが無いのは、先輩が最も分かっている筈ですが」

 

「しかし、それではあれは・・・」

 

「正真正銘、ただの体術ですよ」

 

 体術で一気に十メートルの距離を詰めることができるものなのか?そう思っていると深雪が

 

「私も証言します。あれは兄の体術です。兄は忍術使い、九重八雲先生の指導を受けているのです」

 

 忍術使い、九重八雲の名声は煌輝もよく知っている。摩利も同様に知っているようで息を呑んでいた。

 そこで新しく疑問が浮かぶ。

 

「では服部君を倒したあれも忍術なのでしょうか?私にはただの想子波にしか見えなかったのですが」

 

「いえ、あれは忍術ではありません。想子波であってますよ」

 

「ではなぜあれだけで服部先輩が倒れた?ただの想子波ならば、倒れる程の衝撃は与えられないだろ?」

 

 煌輝も思わず聞いてしまう。ただの想子波で無力化できるすべがあるのならば、知っておいて損は無い。

 

「酔ったんですよ」

 

「酔い?何にだ?」

 

「想子の波にだ」

 

「波の合成ですね?」

 

「リンちゃん?」

 

 鈴音はどうやら分かったようで、ここにいる者の問いに答えていた。

 

「振動数の異なる振動魔法を三連発発射し、服部君に当たる時点で同時に当たるようにしたんです。振動数の異なる想子波を浴びて揺さぶられることによって、酔ったと錯覚し倒れたのでしょう」

 

「お見事です、市原先輩」

 

「ですがわからないことが一つ、どのようにして振動数の異なる振動魔法を同時に発射したのですか?それだけの処理速度があれば二科生であることはあり得ないと思うのですが・・・」

 

「あのお、司波君のCADってもしかして『シルバー・ホーン』じゃないですか?」

 

 今まで口を閉ざしていたあずさが達也に訊ねる。『シルバー・ホーン』はFLT社所属のトーラス・シルバーが開発したCADでループ・キャストを最適化されたCADだ。

 ループ・キャストとは同じ魔法を連続で使用することだ。あくまで『同じ魔法』なので、ループ・キャストでは振動数の異なる振動魔法の発動は不可能なのだが・・・

 

「振動数を定義する部分を変数にしておけば同じ起動式で『波の合成』に必要な、振動数の異なる波動を作り出すことは可能ですが、座標・強度・持続時間に加えて振動数まで変数化するとなると・・・まさか、それを実現しているのですか?」

 

「多数変化は干渉力にも、演算規模にもカテゴライズされない評価分野ですからね」

 

 今の戦闘の開設が終わったところで服部が目を覚ました。起きた服部を真由美が心配し、それに服部が過剰に反応するという一面もあったが、煌輝は別の事を考えていた。

 達也がCADをアタッシュケースに戻し、演習室をから退出したタイミングで声をかける。

 

「達也」

 

「煌輝か、どうした?」

 

「お前、今までに人を殺したことがあるか?」

 

「・・・なぜだ?」

 

「お前のCADは拳銃タイプの特化型だ。普通は銃弾が出ずに人を殺さないことが分かっていても、躊躇してしまうものだが、お前からはそのような気配が一切感じられなかった。だから少し気になってな。俺も、佐渡侵攻では敵をたくさん殺してきたからな」

 

「確かに、煌輝の言う通り人を殺したことがある。聞きたいことはそれだけか?」

 

「ああ、引き留めて悪かったな」

 

「それぐらいなら構わないさ」

 

 そうして一旦達也と別れて演習室へと戻る。全員が退出したことを確認してカギをかけて職員室に返却し、巡回のために風紀委員会の本部へと向かった。




煌輝の戦闘はエガリテのテロ組織が一高に攻め込んできたときです

それまでは小競り合い程度の戦闘しかしません
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