服部と達也の模擬戦が終了し、各々がそれぞれの仕事へと戻っていく。煌輝も巡回のため風紀委員の本部へと向かい、巡回のためのレコーダーと腕章を身につけ巡回へと向かう。校舎を一回りして巡回を終了させて風紀委員の本部へ行くと、本部にはあり得ない光景が広がっていた。
「・・・委員長、ここって風紀委員の本部ですよね?」
「そうだな。ここは間違いなく正真正銘風紀委員の本部だ」
「なんか、すごく片付いてますね」
煌輝も入学式の日に少し片付けたのだが、それでも片付けたのは机の周りの書類のみだ。棚に無造作に放られたCADや書類などは片付けられずにいつか手が空いているときに片付けようと思っていたのだが、何やら端末にCADをつないで調整をしている人物がいた。恐らく彼が片付けたのだろう。
「すまない、達也。配属された初日に部屋の片付けなどをさせてしまったようだな」
「煌輝が入学式の初日に少し片付けてくれたんだろ?それで少し楽をさせてもらったよ。もっとも、放置されてるCADなんかは流石にどうしようもなかったようだが」
「おはよーっす」
「おはようございます!」
達也と煌輝が談笑をしていると、一科生の男子生徒二名がそれぞれ挨拶をして本部へと帰還した。
「委員長、本日の見回り終了しました!逮捕者、異常共になしです!」
一人が報告をしている中、もう一人の男子生徒は何やら呆けていた。
「・・・もしかしてこの部屋、姐さんが片付けたんで?」
やはりこの部屋の光景に唖然としていたのだろう。
そして当の摩利はどこからか出したノートを丸めて姐さんと呼んだ男子生徒の方へと歩みを進めて、丸めたノートでスパーン!と小気味の良い音を効果音にして叩く。
「何度も言ってるだろう、鋼太郎!私を姐さんと呼ぶな!」
「痛ってえ!分かりましたよ、姐さ・・・委員長!だからそう何度もポンポン叩かないでください!」
コントみたいなやり取りが終わると、摩利が煌輝と達也を、今いる男子生徒二人に紹介する。
「二人とも、ここにいるのが新しい風紀委員会の一条煌輝と司波達也だ。一条の方は言わなくても実力の方は分かるだろう?それに達也君の実力もなかなかのものだ。先ほど服部が足元をすくわれた。二科生だからと言って、油断していると寝首をかかれるぞ」
「そいつはすげえや!」
「逸材ですね!委員長!」
その一言に達也の方が唖然とする。この状況に少なからず驚いているようだ。
「驚いただろう?なにも一科生だからと言って、全員が差別意識に毒されているわけじゃない。幸い真由美も十文字も私がこんな性格だってことは分かっているからね。差別意識が少ない奴がここには集まりやすい。教員推薦枠に限ってはどうしようもないのだが、まぁここは君にとって居心地がいいところだとは思うよ」
「三―Cの辰巳鋼太郎だ!よろしくな、一条、司波!」
「ニ―Dの沢木碧だ。歓迎するよ、一条君、司波君」
握手を求めてくる辰巳と沢木。沢木の方は耳元で何かを囁いてくる。
「くれぐれも僕の事は名字で呼んでくれ・・・名前で呼ぶと、どうなるか分からないからね・・・」
「了解です、沢木先輩」
達也にも同じことを囁いているのだろう。そしてその握手に達也が少しばかりのお返しをすると、沢木が驚いたように飛び退る。
「ほう、大したもんじゃねえか。沢木の握力は百キロ近いっていうのによ」
「魔法師の体力じゃありませんね・・・」
達也の方も、問題なくなじめそうだ。
* * * * * * * * * *
次の日の放課後、今日から部活動勧誘期間だ。煌輝が聞いているのは、『地獄である』ということだけだ。
風紀委員本部には他学年の風紀委員も含めて、全風紀委員が集まっていた。一年の風紀委員は部活連推薦枠の煌輝、生徒会推薦枠の達也、そして教員推薦枠の森崎である。
何が言いたいかというと、一科生と二科生の差別意識が徹底して刷り込まれている森崎が教員推薦枠に選ばれていることから想像がつくだろう。
「何故お前がここにいる!?」
「いきなり失礼過ぎるだろう」
二科生の達也に突っかかる。森崎の性格を考えれば誰でもわかることだろう。
「うるさいぞ新入り!」
一科生と二科生の差別に関して面白く感じていない摩利がこうなるのもまた必然だ。先日の校門で灸を据えられて恐怖がまだ抜けきっていないところに、この説教である。ビビるのも当然というものだ。
恐れられていることを面白く感じていないため、ため息をつく。風紀委員が全員集合していることを確認して、会議机の上座へ座り、今日の会議を始める。
「今日から地獄の一週間、部活動勧誘期間の始まりだ!去年は風紀委員自ら騒ぎを大きくしてくれた輩もいるが、今年はそういうことはしてくれるなよ?」
目をそらす上級生がいた。恐らく、というかほぼ確実に彼が戦犯なのだろう。
「今年は幸い人員の補充が間に合った。紹介しよう、立て」
一番下座に座っている煌輝、達也、森崎が立つ。煌輝と達也は落ち着いているが、森崎は緊張しているのか、ガチガチになっている。
「紹介しよう。一―Aの一条煌輝、森崎駿、一―Eの司波達也だ。一条は言わなくてもわかるだろう。ここにいる誰よりも腕が立つ。司波の実力もこの目で見ているし、森崎のデバイス操作もなかなかのものだ」
「役に立つんですか?」
この言葉が向けられているのは達也に対してだろう。先日摩利が話していたように、部活連と生徒会推薦枠からは比較的差別意識が少ないものが選ばれているが、教員推薦枠はそうもいかない。教員推薦枠では実力が第一に考えられるため、差別意識については二の次だ。一年の森崎がいい例だろう。
「そんなに信用が無いのなら、お前が付いてやれ」
遠慮しますよ、というように肩をすくめる。
「何か質問はあるか?ないな。司波と森崎はこのあと少し話すことがあるから残ってくれ。それでは出動だ!」
今日中に上げる?ちょっと無理そう。年明けと同時に上げることにします