制圧してくると言ったものの、どこで局地的に戦闘が起こっているか分からない煌輝はとりあえず本校舎を目指した。本校舎には実験室や実習室に置かれたCADなどがあるため、テロリストに狙われやすいと考えたのである。
案の定テロリストは本校舎で戦闘をしていた。教職員が抵抗しているが旗色が悪そうだ。援護をするために威力を落とした圧縮空気弾を放つ。テロリストたちはそれに吹き飛ばされるが、教職員は何とか防いだようだ。
「すいません、先生方。大丈夫ですか?」
「一条君か、応援に来てくれたのか?」
「ええ、先生方は下がってもらえますか?できれば校舎内に敵がいるかどうか見て下さると助かります」
「分かった、すまないがここは任せよう」
その場にいた教職員は校舎内に戻っていく。そして先ほど吹き飛ばしたテロリストたちが起き上がり、各々武器を取り出した。CADを持っていないことから、恐らくは全員が非魔法師なのだろう。
それならばここを制圧するのはたやすい。特化型CADをしまい腕輪型の汎用型CADを操作する。放った魔法は『叫喚地獄』。
叫喚地獄は広範囲の劣化爆裂みたいな魔法だ。爆裂は一瞬で気化させる魔法で、叫喚地獄は時間をかけて血液を沸騰させる。爆裂のように破裂はしないが、魔法師が無意識のうちに張っている情報強化で防げる程度の威力だ。ここにいる非魔法師は情報強化などは勿論張れないため、数秒で絶命する。
本校舎付近のテロリストをすべて始末し終えたところで摩利から連絡が入った。
「一条、今は動けるか?」
「ええ、ちょうど本校舎付近のテロリストどもを始末し終えたところです」
「そうか、ならば図書館棟の方へ向かってくれるか?達也君から連絡が入った。敵の狙いは魔法の最先端研究資料だそうだ」
「了解しました、今から向かいます」
煌輝は図書館棟へと急ぐ。連絡を聞いた限り、達也がすでに向かっているようだが、念のためだろう。
図書館棟へ向かう最中にテロリストと同盟の生徒が一高の生徒と戦闘を行っていた。一人の男子生徒が大立ち回りを演じているが、敵の数は多くすぐに片付かなさそうだ。
偏倚開放の威力をかなり落としたものを発動させる。テロリストと同盟生徒が入り混じってるため高威力では撃てない。
「大丈夫か?」
大立ち回りをしていた生徒に訊ねる。見た感じ外傷も制服も乱れておらず問題はなさそうだ。
「おう、大丈夫だ!お前は・・・」
「自己紹介は後だ。とりあえず、ここを早々に片づけるぞ」
「おう!背中は任せとけ!パンツァー!!!」
音声認識とはまた昔のものを引っ張り出してくる。そのままテロリストたちに突っ込み、敵を殴る。それを見て煌輝は驚かざるを得ない。
その生徒は魔法の助けを借りずに人を一撃で昏倒させる威力の拳を放っている。
負けてられないと思う煌輝はバトンで殴りかかってくる同盟生徒をベクトル反転の魔法で防ぎ、跳ね上げられた隙をついて鳩尾を殴りつけ気を失わせる。銃を持ったテロリストの攻撃は干渉装甲で防ぎ、テロリストには容赦なくCADの引き金を引く。それだけでテロリストは紅い花を咲かせ絶命する。
数分と経たずに煌輝ともう一人の男子生徒、名を西城レオンハルトの活躍で制圧が完了した。
「あれが『爆裂』か・・・恐ろしい魔法だな・・・あ、いや、そう意味で言ったんじゃねえんだ」
「いや、間違っていないさ。この魔法は人の命を奪うことに特化しすぎている」
「あー、そのなんつーか、悪いな・・・」
「別に、気にしちゃいないさ。周りにどんな目を向けられても仕方がないと思ってる」
「お前は、一条だろ?俺は西城レオンハルト。レオで良いぜ」
「ああ、よろしく、レオ。俺も煌輝でいいぞ。まぁ呼びたければ、だがな」
「気にしちゃいねえよ。この学校を守るためだろ。なら仕方ねえよ」
レオとの自己紹介が終わった時点で摩利から首謀者の生徒を捕まえたとの報告が入った。また図書館にいたテロリストも、達也と深雪が取り押さえ、逃げてきた壬生紗耶香も千葉エリカが取り押さえたとの報告が入り学校に来襲してきたテロリストの制圧は無事完了した。
* * * * * * * * * *
保健室に運び込まれた沙耶香から話を聞くために、一高の首脳陣である真由美、摩利、克人と取り押さえた現場にいた達也、深雪、エリカ、そしてそれなりの規模の戦闘を制圧したレオと煌輝が保健室に集まっていた。
沙耶香から聞いた話によると、剣道部の主将の司甲からエガリテの勧誘を受けた。その時は差別撤廃に関することしか話しておらず、最終的にここまでの規模にまで膨れ上がるとは思っていなかったそうだ。その時期には剣道の手合わせを摩利にお願いしたらしいのだが摩利がこれを固辞。
このことに関しての沙耶香は『自分じゃあ渡辺先輩の実力にまだまだ及ばないから、相手をするだけ時間の無駄だ』と解釈したらしい。
しかし摩利は『剣の腕に関しては壬生の方が数段上だ。魔法を絡めれば私に軍配が上がるだろうが、純粋な剣の腕ではお前にはかなわない。そんな不釣り合いな私と手合わせをしても時間の無駄だから、自分の実力に釣り合った相手とやると良い』という意味で固辞したらしい。
ここまで認識に差が有るということは、やはりマインドコントロールを受けていたのだろう。沙耶香が自分を卑下し始めたところで達也が沙耶香に
「強くなるきっかけは人様々です。確かに壬生先輩が身につけた力は哀しい強さかも知れませんが、ここまでの努力を否定してしまったときにこそ、その努力に費やした日々が本当に無駄になってしまうのではないでしょうか」
「司波君・・・」
達也を見上げる沙耶香は涙を流し続ける。
「司波君、少しこっちに来てくれないかしら?」
「こうですか?」
「もう少し・・・ちょっと・・・ごめんね」
そうして堪えられなくなった嗚咽を鳴き声へと変える。
しばらく泣いてすっきりしたのか、紗耶香は今回のテロ事件の黒幕がブランシュであることを明かした。
「あっけないと言いますか、予想通り過ぎると言いますか・・・」
そして達也の目つきが鋭くなる。
「問題は、今彼らがどこにいるかということですが」
「・・・達也君、まさか彼らと一戦交えるつもりか?」
「その表現は妥当ではありませんね。一戦交えるのではなく、叩き潰すんですよ」
「危険だ!学生の領分を超えている!」
「このことは警察に任せましょう!」
「そうして壬生先輩を、家裁送りですか?」
その一言に、真由美も摩利も言い返せない。
「司波君、私のためなら辞めて。それはあまりにも危険すぎる」
「壬生先輩のためではありません。自分の生活空間が標的になったんです。俺はもう立派な当事者ですよ。俺は、俺と深雪の日常を損なおうとするものを、全て駆除します。これは俺にとって、最優先事項です」
あまりの迫力に、一同は声を出せなくなる。しかしその沈黙を克人が破った。
「確かに、警察の介入は好ましくない。だからと言って、このまま放置するわけにはいかない。だがな司波、俺たちはわが校の生徒に、命を賭けろとは言わん」
「もとより、部活連も風紀委員の力も借りる気はありませんよ」
「一人で行こうというのか?」
「そう言いたいところなんですが・・・」
「お供します、お兄様」
「私もよ」
「俺もだ」
次々と参加表明をしていく。
「しかしお兄様、敵のアジトを、どのように突き止めればよろしいでしょうか?」
「知らないのならば、知っている人に聞けばいいさ」
おもむろに保健室の出入り口に向かい、扉を開ける。そこに立っていたのは小野遥先生だった。
「小野先生・・・?」
「九重先生秘蔵の隠し子から隠れおおせようとするなんて、やっぱり甘かったか・・・」
「隠れているつもりもなかったでしょうに・・・」
達也が呆れながら遥に言い放つ。少し気まずそうにしながらも、遥は沙耶香に向かって歩みを進める。
「ごめんなさいね、力になれなくて・・・」
その言葉に沙耶香は首を横に振る。
「地図を広げてくれるかしら?その方が説明しやすいから」
端末の地図を拡大し、とある一転を赤い点が示す。これがブランシュの今のアジトなのだろう。
それは一高から少し離れた廃工場で、目と鼻の先に構えられていた。
「車の方がいいだろうな・・・魔法は探知されるだろうしな。ならば、車は俺が用意しよう」
「え?十文字君も行くの?」
「十師族に名を連ねる十文字家のものとして、これは当然の務めだ」
「十文字殿、俺も同行してよろしいでしょうか?俺も、一条ですから」
「構わん、頼りにしているぞ」
「なら私も・・・」
「七草、お前はやめておけ」
「この状況で生徒会長不在は流石にまずい」
「・・・なら摩利、あなたもダメよ。まだ残党が校内に隠れているかもしれないのだから、風紀委員長に抜けられるのは危険だわ」
意趣返しとでも言わんばかりに摩利へ参加を諦めさせる。
「今からいくと、日が暮れるかもしれんが?」
「大丈夫です。そこまで時間は掛けません」
「そうか」
こうして克人、達也、深雪、煌輝、レオ、エリカの参加が決定し、各々が準備を始め校門前に向かう。
最後の達也が到着した時点で、達也はとある人物の存在に気付く。
「よお司波兄。俺も参加させてもらうぜ」
「どうぞ」
それは部活動勧誘期間の初日の因縁がある、桐原武明だった。
急いで書いたのでほぼ確実に誤字ってます。
すいません・・・