Re:雪のように白く、美しく 作:海童(ワダツミ)
辺りは既に一面の闇、遠くに見える月の光とブースターの炎がチラチラと輝く。不純物も無い真空の世界で刀魔は一人正面の衛星を見つめていた。
時は数時間前にさかのぼる。
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「結局俺はどうすればいいんだ?」
「まず私たちがこのアフタヌーン・ブルーで衛星を攻撃して、壁に穴をあける。そこからとーくんは侵入して、内部のコントロールルームにある機械を止めてきて。それと、そこにエクシアちゃんもいるからこのポッドで回収をお願いできる?」
「人使いの荒い……このジェガンは貰っていいんだな?」
ため息をつきながらも話を飲む当たり、刀魔は元はいい人なのだろう。
「装備はないけどいいの?」
「武器なら作るさ」
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「我ながら少し人が良すぎたか……と、あれがエクスカリバーか」
大きな4枚の羽には太陽光パネルらしきもがあり、上部とでもいうべきなのか、そこには大型エネルギータンクが3つ、開くように取り付けられている。
何よりも目につくのは、地上に向けられた一本のライフル口。先端に進むにつれそれは鋭利にとがり、それはさながら地球を貫く槍である。
「目標手前についた、撃て」
『わかったわ。全員、エネルギー充填! 3……2……1……シュート!』
通信で聞こえてくるカウントダウンに合わせて刀魔もビームサーベルを構える。
しばらくすると、刀魔の足元、地上から青い一筋の光が差し込む。光の奔流はただまっすぐに衛星に吸い込まれ、爆発を起こす。そこにはISが3機入り込めそうなサイズの穴が生まれ、すぐに刀魔も入り込んだ。
衛星内は部屋をいくつかのブロックに分け、円柱状のパイプ通路でつなげたような構造になっており、刀魔の突入した場所も含み外に面する場所はガラス張りになっている。今のところ他に誰かいるような気配はないが、攻撃衛星だからこそ内部の警備システムも存在するだろう。それを気付いているのか、隙一つ見せない。
侵入したところはちょうど部屋だったようで、間取りは広いが、大きな金属の箱が場所をとっている。
「まさかこれを破壊すれば何か作動するとかじゃないよな」
と言いながらもビームサーベルで次々とそれを切り捨てていく。滑らかに切断され、静かにずれていく金属製の箱はふわりと宙へ浮く。
「なるほど、まんまとはめられたな。このジェガン、ISか」
レイズコアを利用したパワードスーツは耐熱、耐衝撃はほどほどのうえ急激な気圧変動には対応していない。それは宇宙、深海での稼働を想定していない状態での開発ということである。だが、問題なく生体活動が行われている限り、これはISだと予想を立てても問題ないだろう。
もっとも、なぜ男である刀魔がISを使えているのかは謎だが、刀魔自身も今となってはどうでもいいのだろう。
なにせ、彼の目は今も殺意に満ち溢れているのだから。
次々と部屋を移動しているが一向に目的の部屋にたどり着かない。加えて、防衛機構の一つも見つからない。そろそろ問題になってくるのはエクスカリバーの攻撃のクールダウン。あまり時間をかけると地上のほうにも被害が及ぶ。
「―――やっと見つかった。よし、ぶち壊す!」
今まで部屋と廊下をつなぐ扉は近づけば開く自動型だったのに対し、この扉だけはそばに電子ロック式の鍵がついている。時間がないことに加えまったく見つからない苛立ち、ISを壊すという信念もあり、刀魔は一寸の迷いなくビームサーベルで入口をくり抜く。
蹴破って突入した先は、これまでの部屋とはやはり違った。等間隔に建てられた天井までつながるガラス管には黄緑に発光する液体、中央部分にはひときわ大きなものが建てられている。その中央のガラス管には一人の少女が入っている、おそらく話にも出てきたエクシアだろう。
「よし、さっさとこいつで回収してエクスカリバーもスクラップにするか」
ポッドを床に置き、ガラス管に手をつけようとするが、それは一人の攻撃によって阻まれた。3個連続で放たれる火球、急いで後ろに飛びのき、直撃を免れる。すぐに飛んできた方向を見ると、一機のISとその搭乗者が刀魔をにらむ。そのシルエットはかなり特徴的で、両肩には犬の頭があしらわれている。
襲撃者は、ヘル・ハウンドver2.8:ダリル=ケイシーだった。