Re:雪のように白く、美しく   作:海童(ワダツミ)

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新規部分は書くのめんどいな……


#12

多くのガラス管が立ち並ぶ異様な空間、2機のISがチェイスを続けている。次から次に火球を出しては投げつけるダリル、すんでのところでそれをかわし続ける刀魔。ガラス管を使ってうまく避けてはいるが、攻撃手段がビームサーベルしかないため、ずっと機会をうかがっているようだ。

 

「(そろそろ攻撃したいが、隙が無いな。そもそもこいつは例のリストに載っているISだから本来ここにはいないはず。さらに話す余地も無さそうなところから考えると……)」

 

思い切ったのか振り返り、反転。床を蹴りダリルへと接近していくが、当の本人は驚いた様子を見せない。

 

「あぁぁあ、邪魔、邪魔、邪魔なんだよぉお!」

 

――――もっともこの場合は、意思疎通すらままならない状態だが。

 

「(随分と精神状態が不安定だな。もとからこんな性格なのか、それとも何かがあったのか……)」

 

刀魔の脳裏には疑問が残るが、すぐに割り振り中心を狙い蹴りを浴びせようとする。が、蹴りが当たる直前にガーベラの脚部にひびが入る。一度も脚部にダメージは受けていないはずなのに、当然原因不明の損傷を受けることに驚き、蹴りの入りが弱くなる。

ダリルは叫びながらも刀魔の眼前に火球を生み出し即爆発、その反動で距離を置く。

 

「ぐっ、いよいよわかんねぇ……いや、今のは本当にISの攻撃か?」

 

データ上ではハウンドドッグは炎を操る、とまでしか表記されていない。しかし、ガーベラの損傷を見る限り、ヒートショックである。確かに現在は宇宙にいるがこの部屋には空気も存在するうえハウンドドッグの火球も存在できるから極低温の世界ではない。となると、火球によって温度が上がっている装甲を急激に冷やしたのは、

 

「搭乗者自身の能力っていうのか。そういう訳分からんのは管轄外だが―――邪魔をするのなら、消えてもらう。逃げるのも終わりだ」

 

手に持っているビームサーベルを握り直し、構える。

が、突如中央のエクシアが入っているガラス管がひときわ輝き、そこから緑色の粒子を放射状に噴出していく。それは逃げる隙を与えず二人を飲み込む。部屋一面を巻き込んだ光はしばらく残り、そして溶け込むように光は収まる。

光が晴れたころにはダリルはその場に倒れこんでいた。

 

「あっさりとした幕引きだが、まあいい」

 

ダリルに目もくれず中央まで歩いていく。改めて詳しく見ると、ガラス管内の少女は複数のコードでつながれ、やせ細った体がより一層弱弱しく見える。近くには液晶型のコントロールパネルがあり、どうやらエクシアのバイタル管理も自動で行われているらしい。画面を見る限り体調は問題なさそうだが、彼女はそれに反した見た目をしている。

刀魔は液晶パネルを触り、他の情報を探し始める。入口のロックといい、攻撃衛星であるという事実といい、この部屋にある情報も機密事項だと思われたが、パスワードがかけられていないためそこまでではないのだろう。

 

「(ISと人間の融合……これは、ISの破壊は無理そうだな。このシステムを破壊して、あとはこいつか)」

 

刀魔の見た先にはもう一人床に倒れ伏せている人物、そしてそれはISを纏っている。コールド・ブラッド、フォルテ。倒れた原因、この場所にいる理由こそ不明だが、おそらく彼女も回収対象に入ってくるのだろう。

刀魔はフォルテをいったん放置し手際よくパネルを操作、ガラス管を満たす液体は抜けていく。小気味良い空気音とともにガラスは下にさがり、エクシアはその姿を外に出した。

特に起きる気配もなく、寝息も聞こえるのを確認したため起きる前に救出用ポッドにその体を移す。

 

「(さて、そろそろイレギュラー二人を起こすとするか)おい起きろ」

 

強引にゆすって二人を起こそうとする。先に目覚めたのはダリルだった。

 

「ぐ……ぁあ、お前が何とかしてくれたのか、助かったよ。ところで顔を見せてくれると助かるんだが」

 

「……顔は見せんが、お前の協力者からの依頼だ。相方であっているんだったらそいつも連れて地球に帰れ。俺はもう一つ仕事が残っているんだ」

 

「あぁ、サンキューな」

 

ダリルはフォルテを起こし、コントロールルームから出ていく。二人の姿が見えなくなるのを見て、刀魔はビームサーベルでパネルを真っ二つにする。続けざまにあたりのガラス管も切り捨てていく。ポッドを抱え刀魔も脱出を試みるが、そう簡単にはいかないことを知らされる。

コントロールルームを出て直前の通路、壁や床から数基のタレットが損壊状態で点在している。壊したのはダリルだろうけれども、これでこの衛星内の防衛システムが作動しているのがわかった。

 

 

「これは、面倒だな」

 

 

 


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