Re:雪のように白く、美しく   作:海童(ワダツミ)

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修学旅行での一件から1週間、特になにも起こらなかった。しかし、あの日以来、一夏の頭のなかはいろんなことでぐちゃぐちゃになって、授業中も上の空である。

 

『またね、巻紙一夏君』

 

『その答えはお前の意思か?』

 

『今のお前はお前じゃない』

 

授業中であるというのに頭の中では全く別のことがこびり付くように残る。

 

パシーン

 

気がつけば一夏は出席簿で殴られていた。

 

「私の授業で他所事とは、いい度胸をしてるじゃないか? 織斑」

 

「す、すいません…………」

 

クスクスと笑い声が聞こえる。しかし、注意されたのも関係なく一夏には笑い声どころか、千冬の言葉すら頭に入らなかった。

 

「さて、次のところは――――」

 

教室の扉が開く。IS学園の教師の一人、榊原菜月が教室に入ってくる。

 

「榊原先生、まだ授業中なんだが……」

 

「織斑先生、それとオルコットさんに用がある、という人が来ました。自らをチェルシー・ブランケット、と名乗っています」

 

「チェルシー!? チェルシーがこちらにいらして!?」

 

その名を聞いたセシリアがすぐさま反応する。

 

「……話を聞こう、以降の授業は山田先生に変わってもらう。オルコットは私についてこい、――――それと、専用機持ちもだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園保健室。

 

「チェルシー! 大丈夫ですの!?」

 

駆け足でチェルシーの元に駆け寄るセシリア。

 

「お嬢様、私は問題ありません。少しばかり、大したことのない打撲をしただけです」

 

そこにいたのはメイド服を着た女性だ。確かに右腕のところに湿布が張ってあるあたり、目立ったケガはそこだけのようだ。しかし

 

「織斑先生、これを」

 

榊原は千冬に一つの端末を渡す。そこにはISの情報が記されていた。ダイヴ・トゥ・ブルー、イギリスの開発した第3世代にしてブルー・ティアーズ3号機。

しかし、そこにある情報はひどいものだった。腕部・脚部に大きな外傷、ブースターユニットの損傷、武装の完全破壊…ダメージレベルはC、いや、C以上かもしれない。

 

あまりの事態に千冬も何も口を出せない。代わりに話しだしたのはチェルシーだった。

 

「……申し訳ありません、お嬢様。――――イギリスが、墜ちました」

 

「――――――え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日のイギリス時間午前1時頃、突然IS開発の研究室が襲われました。イギリス全勢力をあげて迎撃したのですが、無様にも全滅、しかも………たった一人に」

 

一夏とラウラ、簪、そして千冬はあの機体を思い出した。

 

「――――被害はどれ程でして?」

 

「不思議なことに死者は零人、怪我人も軽い打撲や擦り傷程度です。ですが、ISコアはもちろん、運用データの入ったコンピュータはすべて破壊されました。現在イギリスが所有しているコアは私の専用機とお嬢様の二個のみです。申し訳ありません、私たちの力不足で――」

 

「そんなことはありませんわ」

 

そっとチェルシーを抱きしめるセシリア。その目はわずかだが潤んでいる。

 

「誰も命を落としていないのでしょう? 私がいない間、よく耐えてくれましたわ。むしろ謝るのは私のほうですわ、一大事に駆けつけることもできずに……」

 

「お嬢様……」

 

このとき、一夏はある言葉を思い出した。

 

『………何を勘違いしている? 俺は『シュヴァルツェア・レーゲン』を攻撃しただけで『ラウラ』を攻撃してはいない』

 

「(まさか、本当にISだけを狙っているっていうのか……)」

 

 

 

少し落ち着いたのか、セシリアとチェルシーは手は握られたままだが離れる。それを見てようやく千冬も口を開いた。

 

「わかった。チェルシー・ブランケット、しばらくこのIS学園に残ることを許可する。…………お前たち、次に襲撃を受けた情報が入り次第、お前たちも戦線に出てもらう。理由としては、お前たちの機体性能のほうが現地にあるISよりも高い。まぁドイツのハーゼ隊なら問題ないかもしれんが、他の国に関してはいくら国家代表がいたとしても機体性能で押し負ける可能性がある」

 

「織斑先生、でも私たちもそこまで戦闘経験があるわけではありません。他に対処法があるのでは……」

 

シャルロットが提案する。

 

「……確かに我々教師陣がでたほうがいいかもしれん。しかし、そうなるとIS学園の防御が弱くなる。IS学園にはISに関するデータのほぼすべてが残されている。お前たちにそれが守れるのならいい。

―――敵が一人でイギリスを無力にできる実力を持っていることが腹立たしい……」

 

その言葉を聞いて、誰も反論することはできなかった。

 

 

 

 

 

 

セシリアとチェルシー以外が保健室を離れたころ、チェルシーは話す。

 

「お嬢様、もしよければ聞いていただきたいことがあります。……本当の、イギリスでの事件を」

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

時は遡ってイギリス時間午前1時。

イギリス国IS開発研究所が見えるビルの上、そこにガーベラは立っていた。すでにメガ・ビーム・ランチャーの銃口はその建物の方を狙っている。

 

「…………まさか、あの辺りに見張りで生身の人間なんていないだろうな………当たってくれるなよ」

 

ランチャーから高密度のビーム粒子が放たれ、研究所入り口に大きな風穴を開けた。すぐさま刀魔が高性能スコープで確認する。

 

「よし、血痕はない。――――狩りの時間だ!」

 

 

 

 

 

 

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