ドラゴンボールY 逆行のヤムチャ 作:枝豆豆腐
フリーザがこの星にやってきた時に何に一番驚いたかと言われれば、間違いなく来た時点で既に最終形態に変身してやがった事だろう。
よく考えればそりゃそうだ。俺たちは特に気を隠す事もせずにナメック星にいたんだから、フリーザ軍は俺たちに会う前からフリーザ自身(第一形態)より強い人間がいるのは察知できていた訳で、そんなところにわざわざ相手より弱い姿で来る筈がない。変身する前に殺されればいくら真の姿が強かろうとそれで終わりなのだ。
結果として、無駄と知りつつも一応退去するように警告を行おうと接触した俺たちは最終形態のフリーザに度肝を抜かれた訳である。俺もこの姿の事を知っていたし、全力のフリーザを倒すつもりではあったが、変身の隙をついてこちらの準備も整えるつもりだったのだ。予定が崩れて動揺したのは否定できない。
ましてやいきなりこの理不尽な程の気を察知してしまった他の仲間たちの衝撃は想像に難くない。ベジータ達サイヤ人は最近気の察知を覚えた事もあり、圧倒的な力の差を感じてしまったダメージは大きかった。特に第一形態のフリーザを想定して自分が格上だと思っていたベジータは既に心が折れていた。おそらく他の2人より実力があり、才能があった事も災いしたのだろう。力の差がより正確に理解できてしまったのだ。
しかし地球の戦士達はその程度で折れるほど柔なメンタルをしていない。形ばかりの交渉をフリーザと行い、決裂した瞬間に全員が行動を起こしていた。地球の戦士達にとって自分達より格上との戦いなんて珍しいものでもない。勝算がなかったとしても他人や自分の信念の為に命をかけられる奴らだ。前回の歴史では地球を守る為に遥かに格上のサイヤ人相手に命を捨てて戦い、例え自分では勝てないと分かっていても人造人間やセルとの戦いに赴いた。この世界でもその性根は変わらない。相手がいくら格上だろうと、誰1人として躊躇する者はいなかった。
……お前は人造人間からもブウからも逃げてただろって?だから後悔してこうしてやり直すハメになってんだ。言わせんなよ恥ずかしい。
とはいえ、クリリン達も無策で動いた訳ではない。未だ完全には信用されずに奥の手を知らされていなかったサイヤ人達と違い、このフリーザ相手でも勝ち目があると理解していた。そして、それを完成させる為の時間稼ぎとして真っ先に動いたのだ。
中心にいたのはピッコロだった。現状のフリーザをまともに相手にできるのはヤムチャと悟空を除けば、同化によってパワーアップを果たしたピッコロのみだ。
同化でのパワーアップした力を更に限界まで引き上げた界王拳で強化したピッコロは、流石のフリーザも無視できなかった。更に脇ではクリリンが戦闘力差を無視して致命傷になり得る気円斬で、天津飯が新気功砲で隙を作り巧みに援護する。
悟飯と餃子は周りのフリーザ以外の敵をまとめて相手取っていた。身体は小さくとも、超能力によるトリッキーな戦術で戦う餃子と、潜在能力を解放させたことで爆発的に気を上昇させた悟飯のコンビはいくら数でかかろうと崩されない。
地球の戦士達が培ってきた力と連携がこの戦いで遺憾無く発揮されていた。
悟空と俺も勿論遊んでいた訳ではない。仲間達の作った時間で場所を探し、気を整え、そして2人でフュージョンを成功させた。
事前の準備と言っていたがなんのことはない。俺と悟空がナメック星にきてからやっていたのはフュージョンの練習だった。万が一どちらかが欠けた場合に備え、ピッコロにも練習に参加してもらっていたが。
フュージョンについては界王様から教わったということにした。実際界王様はフュージョンについて知っていたし、本人にも口裏合わせしてあるから問題ないだろう。そんな細かいことまで気にする奴らでもないしな。
ナメック星に着いてからクリリン達にはフュージョンについて話していた。もしフリーザが1人で勝てない程の強さだった場合、フュージョンして戦うという事で悟空も納得させた。クリリン達はその為に俺と悟空がフュージョンする時間稼ぎとして前に出たのだ。本番の前に既に練習で何度かフュージョンしてその力を知っていたからこそ、フリーザの力を感じてもクリリン達も迷わず行動できた。
フュージョンする為の僅かな時間でも、本気のフリーザの足止めをしていたピッコロたちはギリギリだった。フリーザもこちらの様子から俺と悟空が何かする事に気付いていたのだろう。遊び無しの本気で俺と悟空を止めようと動いていたのだ。ピッコロは俺たちが駆けつけた時には片腕を失い、ダメージから肩で息をしている状態だった。あと少しでも遅れれば突破されていたと予感させるのは十分だった。しかしここは本気のフリーザを相手に時間稼ぎを成功させたピッコロ達を褒めるべきだろう。
フュージョンを成功させた後の展開は一方的だった。流石に素の状態では未だにフリーザが上回っていたものの、界王拳を使えばフリーザを圧倒した。
俺が悟空とのフュージョンに拘ったのはいくつか理由がある。今の実力はピッコロの方が上であり、勝つ為だけにフュージョンするならピッコロで良かった。しかしそれでも悟空に拘った理由といえば、悟空をスーパーサイヤ人にする為だ。
クリリンはピッコロ大魔王との戦いで死んでいないし、そもそも完全に状況が違う。悟空がフリーザとの戦いで怒りからスーパーサイヤ人に覚醒するのを期待するのは少し難しいだろう。案外放っておいてもその内勝手になってるかもしれないが、歴史を変えた張本人としてはそれはちょっと無責任だ。
だから、スーパーサイヤ人について知っている俺がフュージョンを利用して無理矢理悟空をスーパーサイヤ人に目覚めさせようと考えた訳だ。
スーパーサイヤ人へのトリガーは怒り。悟飯も精神と時の部屋の中で怒りのイメージで目覚めたというし、ベジータは自分への怒りがきっかけだったという。それなら案外いけるかも、と考えたのがこの案の始まりだ。自分の不甲斐なさへの怒りなら俺もベジータに負けちゃいない。
結果から言えば、スーパーサイヤ人になる事はできなかった。正確にいえば兆しはあったのだが、地球人の俺とフュージョンした状態だったのが悪かったのか、それとも怒りが足りなかったのかは定かではないが、中途半端な状態で変身が止まってしまった。それでも戦闘力は大幅に増大し、フリーザはスーパーサイヤ人と勘違いしていた様子だったが。
それはともかく、界王拳の状態で既にフリーザの全力を凌駕していたのだからそうなれば結果は見えていた。30分という縛りもあったし、俺たちは早々にフリーザにトドメを刺して決着をつけたのだった。悪いが一度見逃してやる程優しくはない。
そうしてフリーザに勝利し、フリーザ軍の残党は逃げていった。俺たちは全員で勝利を喜び、健闘を讃えあった。幸いにも悟空はアレで何か掴んだようで、暫く練習した後スーパーサイヤ人に変身することができるようになった。流石一度スーパーサイヤ人ゴッドになっただけで1人で変身できるようになる男である。やっぱりこいつ何もしなくてもよかったかもしれない。
何もできずに震えていたベジータは自分の情けなさに怒りを覚えていたようだ。ついでにちょっとスーパーサイヤ人に覚醒しそうな気配がしたが、すぐに収まった。残念ながらまだスーパーサイヤ人のバーゲンセールとはいかないようだ。
かつて悟飯の潜在能力を引き出した老界王様によれば、スーパーサイヤ人に変身して力を引き出すのは邪道に当たるらしい。潜在能力を解放した悟飯が変身無しでスーパーサイヤ人3の悟空を上回る力を発揮したように、本来はそうした力の引き出し方が正道なのだとか。
なんでそんな話をしたのかというと、今回俺が悟空とフュージョンした目的の一つがそれだからだ。悟飯は潜在能力を引き出す感覚をスーパーサイヤ人になる時のものに近いと言っていた。一度スーパーサイヤ人になる感覚を感じる事で、俺もそれを掴めないかと思った訳だ。一石三鳥狙いのフュージョンだったということだな。
今すぐに何か成果が出るものでもないが、なんとなく感覚的な部分で掴んだものもある。どちらにしろこれから先は界王拳だけであいつらについて行くのは不可能だ。というか、悟空がスーパーサイヤ人に目覚めた時点でもう逆転されている。俺も何かスーパーサイヤ人とは別の力を手に入れる為に模索している段階ということだ。
スーパーサイヤ人については超の最新の設定でS細胞がどうとか色々出てきているらしいですがよくわからないのでこの小説では無視します
中途半端な変身については『絶望への反抗!! 残された超戦士・悟飯とトランクス』で修行中のトランクスやアニメで精神と時の部屋で修行中の悟飯がスーパーサイヤ人になりかけた時のような状態を想像してます