月香が導く悪夢の果て(旧タイトル:夢の続き)   作:マリア様良いよね

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月光とは、導きの光であり
月光とは、破滅の兆しである



嘗て狩人の根幹を築いた一角、医療教会最初の狩人であり、英雄として語り紡がれたルドウイーク

彼は、暗闇に蠢く血と獣の中で、唯一輝き続けた

偏に、己の(よすが)で在り続けた光の糸を一切の疑心無く信じた故に

嗤われ、憎まれ、蔑まれ、それでも前に進み続けた







果てに、その身が獣へ堕ちようとも







誰も報われないと嘆こうと
誰もが不憫だと哀れみを抱こうと
誰も救われないと義憤に駆られようと



真に救いを求めるべきは、英雄(咎人)である己だろうに








だが、()にとっては

英雄を堕落へと誘った導きの光が

その破滅こそが、夢を終わらせる為に必要だったと





今も、何の根拠も無く信じているだろう

———受け入れ難い真実をその背に負いながら







それは、とても細く儚い

 

 

 

「………ふむ」

 

 

 

 予想通り、探し始めて然程もかからずに空き家を見つけることができた。つい最近まで生活の痕跡が所々に残された家だ。着替え用の衣服に、食事に必要な材料、休息に必要な寝具、暖房設備等。その他見慣れない物も多いが、暮らすことに関しては文句無しの実に素晴らしい家……と、言いたいところだが。いかんせん腑に落ちないこともある。

 直ぐに見つかるだろうとは言ったがそれはあの排他的で荒廃した街を見てきた私自身の感性であり。本来ならそう簡単に人の有無を察して家を見つけ、あわよくば利用するなど不可能だ。獣狩りの夜も無い世界で、後から帰ってくる可能性も考慮せず、ただ人がいないだけで居座るなど話にならない。

 にも関わらず、何故態々生活感が色濃く残るような家に居るか?単純な話、家主も暮らす者も消えたことを確信しているからだ。恐ろしく巧妙に隠滅を計ったようだが、僅かに"血の匂い"が残っている。

 

 そもそも、ここへ来たのは住まいを探す以外に別の理由があった。

 

 ()だ。獣の臭いが、ここから漂っていた。感知した気配の主をみすみす逃す様な真似はしない。本当はこちらが本命だったんだが……徒労に終わったらしい。

 蓋を開けてみれば、既に誰かに狩られた後。死体も狩られた痕跡も、消えかけの血の匂い以外は全く残っていない。誰かは知らんが只者では無いだろう。

 なにせ、獣の臭いを嗅いでから()()()()()()()()()()()()というのに目に映るのは普通の家。

 明らかに異常。臭いを嗅いだ時はまだ生きていた筈。微かな血の匂い以外、一切の痕跡も足跡も残さず去るなど尋常じゃない。

 

 結論として、『拠点は見つかったが、新たに危険な因子もまた見つかった』という事だ。

 

 そのナニカについて、今はどうしようもない

優先されるのは少女の休息だ。寝室のベッドへゆっくりと降ろし、冷えないように毛布をそっと掛けてから、部屋を出る。

 

 私は取り敢えず、簡易的な工房を作成した後、この世界について知識を得ることにしよう。無知は時に救いになる事もあるが、そんな状況はかなり極端な例と言える。何も知らないというのは、何も出来ないとイコールにはならない。

 何も知ろうとしない、現実から目を逸らすことこそ罪になる

 

なにより知ることに損は無い筈だ。あの悪夢とは違ってな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………綺礼、それは事実か?」

 

『はい。アサシンが集めた情報と照らし合わせましたが、間違いありません。』

 

「そうか。すまない、君とアサシンを疑う訳ではないが、俄かに信じ難くてね。」

 

『心中お察しします』

 

魔術礼装越しに届く報告の声がいやに遠く聴こえる

 

数時間前、マスターの情報収集も兼ねてアサシンを冬木の各地に向かわせたところ、思わぬアクシデントが起きた。

 

 

 あの間桐臓硯が殺され、間桐桜が拐われた

 

 

桜についてはまだ分からなくもない。あの娘、いや、彼女が秘めた可能性は、推し量るに余りあると言って過言ではない程だ。

 

聖杯戦争は既に始まっている

 

その才能を見るや攫い、利用する輩が居る事も考えられなくもないだろう。だが、解せないのは間桐の翁の死だ。あれ程の御仁が並みの英霊如きに遅れを取るとも思えない。それも召喚されて間もない者などに。つまり、件の下手人は相当の手練れで間違えようもないと考えられるが、該当する人物はやはり———

 

『残されていた()()()()()()()()()()……察するに、これは恐らく……』

 

「あぁ、君の想像通り。()()()()の仕業と思われる。……全く、我々の想像以上の事をしてくれたな」

 

 

衛宮切嗣

 

魔術師としての才がありながら、それを道具としか見ない、哀れで愚かで卑劣な魔術師殺し。

 

彼ならば、恐らくあの間桐を出し抜く事も可能だろう。目的の為ならば手段を問わない陰湿な男故に。とはいえ、これで確定するわけにはいかない。他に我々の知り得ない凶悪な何かが存在し、誰に気取られることも無く暗躍する者が居ることも無いとも限らない。

 

 

「敵とは言え、御三家が狙われたんだ。いつ我々に牙を向くともわからない。引き続き警戒と情報収集を続けてくれ」

 

『かしこまりました、我が師よ』

 

 

 桜が攫われたのは予想外だったが、問題はない。情報戦でアサシンの右に出る手札は他にないのだから焦る必要もない。とはいえ、相手はあの間桐臓硯を殺す程の手練れ。衛宮切嗣だろうと、別の者だろうと、油断出来ない存在がいると再確認したのだ。用心するに越したことはない。

 言ってしまえば、その程度の事だが。

 

 

———依然、私の勝ちは揺るがない

———此方には、彼の王が居られるのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あぁ、誰か

 

……誰か、聞こえているかね

 

 

 

 

………おぉ、君は聞こえているかね?

 

此処は灯りが消えて久しい……故に暗い

 

私の姿は見えないだろうが……寧ろ僥倖と言える

 

私の姿は、見るに堪えない醜悪さだからね……

 

でも、君の姿は、少しだけだが分かるよ

 

 

………そう卑下することはない

 

可愛い雛鳥の様に尊いものだろう

 

こんな……いや、今は関係ないな

 

 

……少し、愚者の話を聞いてくれないかね?

 

こうして人と会うのも久しい……耳を傾けてはくれまいか

 

つまらない男の下らない末路だが、それでも聞いて欲しい

 

 

………ありがとう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———少女よ、光の糸を見たことはあるかね?

 

 

 

 

 

 











桜ちゃん(スヤスヤ)

狩人「折角だ、簡易的な工房も作ろうか」


とっきー&麻婆「「衛宮切嗣だな」」

キリツグ「……?」


聖杯「うーん、どうすっかねー?」

抑止力「………妙な真似をしたら処理する」

聖杯「はぁ、保留ね。じゃ、あのアサシンはどうすんの?」

抑止力「今は様子を見る、が……」

聖杯「?」

抑止力「そもそも、退去する様に言ってもきかなかったし……」

聖杯「………………は?」

抑止力「………好きにさせるよ」

聖杯「」
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