月香が導く悪夢の果て(旧タイトル:夢の続き)   作:マリア様良いよね

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月の香りの狩人

———たった一度きりの夜の間に全てを終わらせる責務を持つ者

魔神・沖田総司

———たった一度きりの召喚のために霊器を調整された決戦英霊


どこか似た境遇の者、惹かれ合わぬ道理無し


黄金の輝きと血の歪み

 

 

 

 

「………英霊、サーヴァント、魔術師、マスター。聖杯戦争、か。ずいぶんと大層な儀式もあったものだ」

 

「言っておくが、お前の手にしている『聖杯』とは訳が違うぞ。起動と同時にダンジョンが形成されるとか、魔神さんは聞いたことがない」

 

「私の知る聖杯とはそういうものだが……あらゆる願いを叶える願望器、だったか?俄には信じ難いが、覚えておこう」

 

 

 

出会いこそ一方的で突然ではあったが。沖田オルタはそもそも二人を害する気が無いことを示し。また、情報が不足していた狩人は、彼女がもつ現状況の説明を求め今に至る。

 

 

 

「しかし、聞けば聞くほど、私の知らないことばかりだ。物語や神話の英雄を擬似的にとはいえ蘇らせ、従えるなど。まぁ、私も似たような事(古狩人の召喚)が出来なくはないが、詠唱で呼びかけるのではなく鐘を鳴らすだけなど、些か聞き劣りしてしまうな……」

 

「いや、待て。個人の範囲とはいえ、先人を呼び出す手段を持っている?鐘を鳴らすだけで召喚可能、だと?………そうか、そういうもの(召喚方法)も、あるのか」

 

 

 

驚くことばかりだ……と、同時に呟く。お互い、自身の常識から乖離した知識に混乱していることがわかり、どちらともなく破顔した。

 

 

 

「正直、信じ難いことばかりだが、私は嘘には敏感でね。貴公の語りには、何一つ偽りが含まれていないことはわかる。———ありがとう。貴公は、いや。君は、信用に足る御仁のようだ」

 

「気にするな。私も、一度聞いたものだけが全てではないと学ぶことが出来た。しかし、感謝される、というのは……少しこそばゆいものだな」

 

 

 

先程まで漂っていた疑心を探るような雰囲気は霧散し、やがて穏やかな空気が流れ出した。ルーナの警戒する気にあてられ、知らず緊張の糸が張っていた桜も、ホッと息をついた。

 

 

 

 

「ところで。貴公もサーヴァントならば、マスターは居るのか?」

 

「? あぁ、居るぞ」

 

「では、ここに居るのはマスターの指示なのか?」

 

「……? いや、私は私の意思でここに居る。むしろ、居てはダメなのか……?」

 

「む。別にそういう訳ではないのだが……」

 

「……よかった。()()()()は私を必要としてくれるんだな……」

 

「……………んん?」

 

 

一通り説明を受けて、ふと疑問に思ったことを切り出したルーナだが。沖田の反応に少し、戸惑う。何か、認識に齟齬がある様な、まるで自分が勘違いをしているような……

 

 

「……貴公、質問ばかりですまない。この世界に呼ばれて、最初に見たものはなんだ?」

 

「目の前で横たわるマスターの姿だな。気を失っているようだから起こそうとしたんだが、誰かが近付いてくる気配を感じて咄嗟に霊体化して、うっかりそのままだった。魔神さんのミスだ」

 

「………………マスターには、令呪と呼ばれるサーヴァントへの絶対命令権があるそうだが、具体的にはどういう代物なんだ?」

 

「サーヴァントの持つ能力は個人差はあれどどれも凄まじい。それを御する為のものではあるが、使い方は他にもある。まず———」

 

「いや、使い方ではなく。どういう見た目をしていて、何処に現れる?」

 

「……??? 赤い痣の様な紋様が手の甲に刻まれる筈だ」

 

 

しばし左手を凝視するルーナ。やがて、ゆっくりと、緩慢な動作で篭手を外し、手袋を脱ぐと———

 

 

「…………………ままならないものだ」

 

 

自身がよく知るカレル文字、「導き」にも似た紅い刻印が、手の甲に刻まれていた。

 

 

「魔神さんとしたことが、大事なことを後回しにしてしまっていた。すまない。

 

では、改めて————我が銘は、魔神・沖田総司。消え逝く定めだった私を現世(うつしよ)につなぎ止めてくれた主よ。その恩に報い、この身の霊器が砕け散るその時まで、共に闘う事を誓おう。これからよろしく頼むぞ、マスター」

 

 

クラスはアルターエゴだぞ、そう告げる沖田の声が、心なしか遠く聴こえるような気がした。

 

 

 

 

 

———————————————————————

 

 

 

 

 

不吉な鐘の音は、未だに鳴り響いている

 

命を、生命あるもの尽くを呪うが如く

 

耳について離れぬ木霊の様な鐘の音だ

 

 

何故、狩人呼びの鐘ではなく、共鳴する不吉な鐘を鳴らしたのか?

 

それは、狩人自身の特殊な在り方に起因する

 

そもそも。世界の理において、自身と全く同一の存在が同じ世界、同じ場所、同じ時間に存在する事など有り得ない。

例外を除けば(オルタナティブ)

 

狩人が彼の地にて相手取るのは、なにも獣だけではなかった。人々を脅かすものであれば、狂人であれ上位者であれ狩り尽くす。しかし、獣も上位者も、己のみで殺めるには些か手に余る時もある。

であれば。平行世界に存在する己自身そのものを呼べばいい。自分であって自分ではない別の可能性の自分そのものを。

 

 

結論を述べる。不吉な鐘を鳴らすと、それに呼応するのは平行世界へ無数に存在する狩人であり。彼等・彼女等は、呼ばれた世界で己が好きに振る舞うだろう。()()()()()()()()

 

呼ばれる者は、確かに平行世界の狩人であり、不吉な鐘に共鳴すればまず敵対するだろう。ただし、それはあくまで狩人同士での話。

呼ばれた狩人からしてみれば、自身が狩りをする際に邪魔なものは消したくなるはず。ましてや、しばし先の時間を体験している者ならば尚更に、野放しにすれば厄介な芽をたとえ己の世界でなくとも狩るはずだ。取り返しのつかないことを体験した者ならば、その元凶を腹いせに殺すだろう。

 

何故、不吉な鐘を鳴らしたのか?

 

答えは単純、自身が把握していない厄介事の種を事前に摘む為だ

 

 

 

 

 

———————————————————————

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

「———この(オレ)を睨むか。その不敬、万死に値するぞ?剪定事象からの除け者(逸脱者)

 

 

遠坂邸にて

アサシンの脱落を()()した直後、鐘の音が鳴り響き、血に濡れた紅い気を纏う者が現れた

 

相対するは、

 

———この世全て己がものと宣う人類最古の英雄王

 

 

「そのまま消えていれば良かったと、直ぐに後悔させてくれよう。光栄に思うが良い。身の程を知らぬ雑種如きが、我が財を目にする幸運に恵まれたのだからな」

 

 

「………………」

 

 

「———疾く失せよ」

 

 

瞬間、黄金の波紋(砲門)が無数に展開される

波紋より召喚されるは古今東西の英雄達の武器宝具

 

対し、血に濡れた気を纏う者、否

 

()()()()()()()がその手に握るのは、

 

 

———己が血に濡れた刀一振り

 

 

「………敢えて言おう。オレは貴様を()()()()が、手足の一つ二つは貰い受ける」

 

 

「……ほう。その大言壮語、いつまで持つか見物だな。精々死に際で我を興じさせてみせよ、雑種!」

 

 

「———来い」

 

 

血に狂った狩人は駆ける

迎え撃つ宝具の嵐の中へ

 

 

 

———英霊狩りが、幕を開ける

 

 

 







狩人「(いつの間にかマスターになってるとか)」

聖杯「(何故、アイツが令呪を宿しているのか)」


狩人&聖杯「「知らない」」


抑止力「ふざけるな」

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