青の遊撃士   作:ホメロス

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プロローグ

 ギシギシと鳴る右腕の義肢に気を配りつつも、俺は目の前の獣を睨み据えた。手配魔獣として遊撃士協会に登録されてから、かなり長い時間討伐されていなかったやつだ。とても気味の悪い、巨大なミミズのような姿をしている。

 腰の両方にとりつけられたホルスターから二丁の拳銃を抜き去り、連続で撃ちぬいた。が、あまり効いてはなさそうっだ。反撃と言わんばかりに、地震を起こしてくる。

 

 

 

「……ッ!しゃらくせぇ!!」

 

 

 

 戦術オーブメントを起動する。できれば使いたくはないが……背に腹は変えられないだろう。体力が空気中へ逃げていくような、不思議な感覚がする。

 

 

 

「『ブルーアセンション』!!」

 

 

 

 堰を切ったように、大量の水がミミズのいる地面から湧きだした。胴体がひきちぎれんばかりの水圧をくらい、ミミズは痙攣している。ざまぁ、と思わなくもないが、この機会を無駄にはしない。

 すかさず銃を乱射し、ピンポイントで攻撃し続け、ようやくダメージが通ったようである。断末魔の叫びを上げて、ミミズはその身を横たえた。

 

 全く、どんな使い方をすればこうなるのか、と自分の行動を思い出して、思考をすみに追いやる。見事に右腕の義肢は、ベコベコに凹んでしまっていた。

 

 

 

「ままならねぇ……いつだってそうだけどよ…………」

 

 

 

帰り支度をしながら、この世に生を受けた時のことをふと思い出していた。

 

 

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……?

 

………………??

 

 

 

「あ!あなたー、ルッツが起きたわよー!」

 

 

 

……るっつ??

 

 

 

「おー!ようやく起きたか、このねぼすけめ!ほら、今日はママとパパと3人で時計塔に登る約束だっただろー?」

 

 

 

…………ぱぱ?まま?

 

 

 

「だぁう?(何を言ってるんです?)」

 

「ははは、可愛いなあ」

 

 

 

 ダークブラウンの髪をした優しそうな可愛らしい女性に抱えられていた俺は、青い髪に鋭い目つきをしたお兄さんに優しく問いかけられる……が、そうじゃねぇ!

 今、俺はなぜか言葉が話せず、体は縮み視界もぼんやりしている。そしてこの現状を鑑みて、一つわかったことがある。俺は、なんだか知らんうちに外人さんの赤ん坊になっていたみたいだ。

 

 

 

 

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 と、いうのが5年前だったわけだ。今の俺はすくすく育ち、つい先日6歳を迎えたところだ。現在は七耀暦1191年。初夏の香りがしてきたところで、徐々に汗ばむ気温に移り変わっている。

 そうそう、先ほど口走った七耀暦という言葉に聞き覚えはないだろう。これはずばり、俺たちの今住む世界での年号、のようなものだ。つまりは今まで生きてきていた地球と同じ世界ではないということ。まあ、それを決定づけたのは、もっと違う要因でだけど。

 

 

 

「ルッツ兄ーっ!!」

 

 

 

 向こうから大声で俺の名前を叫びながらやってくる少女に嘆息して、軽く手を振った。栗色のツインテールをブンブン振ってかけてくる、目をキラキラさせた少女。彼女の名はエステルと言って、見た通りの活発な少女だ。歳は1つ下の5歳。いや、まだ誕生日迎えてなくて4歳だったか……?

 

 

 

「おはよ、エステル。あ、新しいスニーカー買ったの?」

「おっはよー!うん!おかーさんが買ってくれたんだ!」

 

 

 

 なかなかに男勝りな趣味で、少し兄貴分として将来が心配だ。釣りとスニーカー集め、虫取りなどを好むエステルの、ペカーとでも擬音が付きそうな笑顔を見て苦笑する。

 今日は一緒に釣りをする予定で、彼女の住むブライト家まで迎えに来ていた。俺の家もあるロレントの街からは少し離れていて、滅多に出ないが魔獣もいる道を歩いてここまで来ている。別に彼女以外に友達が居ないというわけでもないが、遊んでいて楽しいのは彼女だから、仕方がない。

 

 

 

「あ、そうだ。今日は見せたいものもあったんだ」

「え、何々?」

「これ、戦術オーブメント。父さんの机にあったのを見つけて、借りてきた」

「わぁ!!」

 

 

 

 まあ、父さんに見つかったら怒られるだろうなあ。この世界で魔法を使うための道具、戦術オーブメントは、人が魔獣と戦うための術として開発されたものだ。戦術オーブメントに色とりどりの結晶、クオーツをセットすることで、魔法――アーツを行使することができるようになる。

 父さんの素養に合わせたものだから、属性としては水。俺にあっているのかは分からないが、ちと使ってみるかね。俺は初のオーブメント起動で、少々動悸した心臓を抑える。目の前には目を期待に輝かせた妹分がいるのだ。失敗は許されない。

 

 

 

「すぅ……ふぅ……『アクアブリード』」

「わぁ……わきゃ!?」

 

 

 

 どっぱーん!と、大量の水がエステルに降りかかり、俺も彼女もワタワタした。最初はどこからともなく現れた水球に2人とも目を奪われていたが、失敗だった。

 だがまぁ、被害者である彼女がケタケタ笑っていることだし、俺も今は笑っておこう。後日、エステルが風邪を引いて、親子で謝りに行ったが、それもこの時はいい思い出だ。

 それからも虫取りに行ったり、エリッサやティオなどエステルの友だちとも遊んだりと、青春を謳歌した。あぁ、このまま将来は何事も無く、雑貨屋や商人などになって一生を終えていくんだろうな。と、このときは日和った考え方しか持っていなかった。度胸もなく冒険心もない、ごくごく普通の少年としての精神を持ち、流されるまま、生きようとしていた。自分が転生して産まれたという意味も、考えようとせずに。

 

 

 そして、こんな楽しく幼い日々は、瞬く間に過ぎていくのだった。




どうも、はじめまして。ホメロスと言います。
今回は、空の軌跡のオリ主ものということで、筆を執らせていただいています。
お見苦しいかもしれませんが、生暖かい目で見守っていただけたらと思います。

さて、主人公のルッツ。名前の由来は旧約聖書のルツ記から取っています。
旧約聖書の中でも特に短い書ということで、本編の外伝的立ち位置のこの作品の主人公には相応しいかと。
聖書では女性ですが、この世界では男性として生きる彼は、どのような人生を歩むのか。
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