青の遊撃士   作:ホメロス

2 / 3
ちょっと駆け足で申し訳ないです。


プロローグ2

 七耀歴1192年、リベール王国 地方都市ロレント。俺の第2の故郷となったこの街は今、地獄だった。

 

 

 

「急いで2人とも!はやく!!」

 

「はぁ、はぁ、おかーさん待ってよ!」

 

「エステル、行こう!とにかく今は走るんだ!!」

 

 

 

 栗色の髪をした、一瞬エステルと姉妹かと見間違えるほどに若い女性、レナ・ブライトさん。実はエステルの母親だというのだから驚きである。今、この人とエステル、俺でとにかく走ってロレント郊外へと逃げていた。周りも逃げ惑う人々で阿鼻叫喚。もはや逃げ道すら分からない、本物の地獄絵図だ。

 ――――戦争。隣のエレボニア帝国が攻めてきたのだ。それは突然だった。ロレントが爆撃を受けた。少し見回しただけでも、血だらけになって横たわるロレントの人々が目に映り、吐き気を催す。

 

 

 今日は雑貨屋を見に行って、そのままエステルの家でお菓子を作る予定だったのだ。確かに不穏な世情ではあったが、あまりにも平和な、平凡な日々。それがこんなにも簡単に、一瞬で崩れてしまうなんて。

 父さんは無事だろうか?母さんは?エリッサ、ティオ、他にも友人たちは多くいたが、彼らは無事だろうか?

 いや、今は考えるな。とにかく今は、逃げるのが先だ。郊外に逃げられれば、森に隠れられれば、なんとか逃げおおせるかも…………。

 

 

 

「あぅっ!」

 

「エステルッ!」

 

 

 

 と、時計塔の前に差し掛かったところで、俺のすぐ後ろを走っていたエステルが転ぶ。レナさんが悲鳴にも似た声を上げて助け起こそうとしたとき、俺はその光景を見てしまった。

 爆撃が時計塔の上部に当たり、崩れ落ちてくる。嫌にゆっくりに感じる。大きな大きな石の塊が、下にいる俺達めがけて、ほら……。

 

 

 

「2人とも危ない!」

 

 

 

 グシャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 痛み。

 

 

 

「――――ッ!?」

 

 ズグンッと右腕に走る強烈な痛みで目を覚ます。俺は先ほどまで立っていた地点から2~3メートル離れたところに倒れていた。どうやら気絶していたらしい。

 とにかく立ち上がろうと、右腕を支えに立ち上がろうとするが……どうやら力が入らない。折れているのかもしれない。ならばと、左腕でほふく前進して、少し前にいる見慣れた茶髪に近づく。

 

 

 

「えっく、えっく、おかーさん……」

 

 

 

 あぁ、妹分が泣いている。早く慰めなくては。

 そういえば、レナさんはどこだ?気絶する前に、俺とエステルがレナさんによって突き飛ばされ、破片を回避することができたのは覚えている。とにかく命は助かったみたいだし、お礼が言いたい。

 

 

 

「おきてよ、おかーさん……」

 

 

 

 あと少し、あと少しでエステルにたどり着く。たどり着いたらまずは、頭を撫でてやらなきゃ。そして、そしてレナさんを一緒に運んで、3人とも休憩しよう。もう、疲れたから……。

 そのとき、物音に気付いてか、エステルが泣き腫らした顔でこちらを向いた。ただひたすら泣きじゃくっていたであろう顔は、俺を見た瞬間に驚愕、次いで絶望の色に彩られた。

 

 

 

「ルッツ兄!ルッツにぃ、やだ!やだぁ!」

 

 

 

 どうした、落ち着いて喋ってみなさい。そう言おうとして口を動かすも、かすれた声しか出てこない。エステルは顔面を蒼白にしながらも、俺に駆け寄ってきた。良かった、目立った傷はなさそうだ。しかし、あの向こうに倒れている女性、レナさんに似てるなぁ。頭から血を流して、横たわったまま微動だにしないけど、大丈夫だろうか?

 

 

 

「やだやだやだ!おかーさんも、ルッツ兄も居なくなるなんてやだぁ!」

 

 

 

 あぁ、かわいそうに。そんなに泣いたら目が腫れてしまう。

 頭を撫でようとして右腕を――――そうか、動かないんだった。なら左腕だ。持ち上げ、エステルの頭の上に置く。ただ、それだけで力尽きたように、体は動かなくなってしまった。エステルが、目に見えて焦る。

 

 

 

「そ、そうだ!腕!ルッツ兄の腕!どこ!?くっつけなきゃ!!」

 

 

 

 うで……?首を動かすのも気怠いが、なんとか右腕を見る。そこには……何もなかった。

 そうだ、動かなかったのは折れてたからじゃない。なかったからだ。

 今まで気づかなかったのは、無意識に現実から目を背けていたからだ。

 夥しい量の血が流れていく。だんだん、体全体が冷たくなってきたように感じる。寒い、寒いよ……。

 

 

 

「ルッツ兄いいいぃぃ!!」

 

 

 

 

 

>>>>>

 

 

 

 

 後に百日戦役と呼ばれるこの戦争は、俺から多くのモノを奪っていった。故郷、友人、レナ・ブライト、そして。

 

 この世界の、俺の両親。

 平和ボケしたルッツは、この日死んだ。理不尽を決して許さない。俺は、もう決して失わない。




さて、これでプロローグは終了です。
次話で一気に話は飛びます。
役者はルッツが一旦そでに引込み、主人公たちのターンです。
では、また。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。