零や3rdやった人は、なんとなく展開が分かるんじゃないかと。
ぐいっ、と額から滴り落ちる汗を袖で拭い、前で悠然と構える弟分を見つめる。二刀を使いこなす彼の戦闘スタイルはスピード重視の連撃。私――――エステル・ブライトの戦闘スタイルである中距離からの棒術を掻い潜って来るから、なかなか有効打を与えられない。
と、逡巡している間にほら、瞬く間には直ぐ目の前で振りかぶっているのだ。まずい。
「そう何回も、同じ手でやられてやるもんですかっ!」
「うん、エステル。キミなら防いでくれると思っていたよ」
手に持つ棍で斬撃を防ぐが、何故かそれほどの衝撃が来ない。しまった、罠だ!!
「ああっ!?」
「はい、終わり」
そのまま棍をカチ上げられ、手から離れていってしまう。一撃目は囮、本命は上からの衝撃に備えた私の意識の隙を突く、二撃目だったのだろう。結局のところ、いつまで経ってもこの弟分は私の一枚上手を行く。まったく、可愛げのない弟ね!
「またヨシュアに負けた~!」
「はは、まだまだ負けないよ?」
「むっ、生意気ねぇ。弟のくせに」
「弟って、同い年じゃないか……」
場所は私たちの家の裏手。少し広い、拓けた場所には、私たちが充分に暴れられるようなスペースがある。昔からここは、私にとって文字通りの「庭」だ。
ヨシュアは、私たちが小さい頃に、突然ウチにやって来た男の子。父さんがボロボロのヨシュアを抱えて帰ってきたときは、びっくりした。最初はとても無愛想で、何をしてもむっつり顔だったのに、今ではすっかり柔らかく笑う好青年に育った。なかなかこれでもモテる男に育って、姉としても鼻高々だ。
そう、弟で思い出したけど、私にはかつて兄貴分が居た。少しおっとりしたところのある、タレ目に青い髪が特徴の少年で、小さい頃はずっと彼の後をついて回ってたっけ。
だけど彼は、私たち家族から大事な光を奪ったあの事件で、全てを失った。天涯孤独になり、腕を失い、笑顔を失い……そうして、ロレントから姿を消した。
父さんは行方を知っているみたいだったけど、今頃彼はどこに居るんだろう?もし、また会えたら。昔みたいに笑い合える関係に戻りたい。私の憧れだった、静かにみんなを見守る月のような彼と。
「エステル?どうしたの?」
「……ううん。ちょっと、昔を思い出していただけ」
「大丈夫?」
「…………モチのロンよ!」
感傷に浸っていただけ。そう、あの日から私は、大切な人たちを守るために強くなるって、決めたんだ!そのためにはまず、遊撃士にならなきゃね!
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くく、くくく。
暗い室内に笑い声が響く。手には、青い液体。それを幼い少女へと投薬する。
さあ、飲むんだ。はい、よろこんで。
「楽園」での実験は、その昔失敗した。忌々しいカシウス・ブライトと、あの若い青獅子によって。
あぁ、心配しなくていい。実験ができる舞台は、まだまだある。
そうだな、手始めにあの青獅子へ嫌がらせでもしてやろうか。