モモンガさんが異世界で神となって冒険するそうです。   作:フューリアス

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第5話 王国戦士長

村の広場に居た人々や森側の入り口近くに居た騎士は、声がした方へ一斉に視線を移す。

そこには、黒髪の美しい女性‥‥モモンガが歩いて向かってきているのだ、その姿を見た人々は、一時目を奪われ、静かに見入っていた。

一方、一斉に視線を向けられたモモンガは、内心怯んでいた。

 

(うぉ‥‥一斉に視線が集まるとさすがにびっくりするな。)

 

表情に出さないようにしながら、一度立ち止まり、広場を見渡していると、ガルムが静かに村人たちの壁になるように騎士との間に移動しているのが見えた。

村人も恐怖のあまり口を押えて黙っている。

それ見て、命令通り動いてくれていることにほっとし、村人には申し訳ない気持ちになりつつ、一度、こほんと一つ咳払いしてからモモンガは話し始めた。

 

「初めまして、皆さん、私はしがない旅の者で、そちらにいる狼犬の主です。」

 

モモンガがガルムの方を指さすと、騎士たちは、その指先に視線を向ける。

 

「ひぃ!」

「いつの間に!」

 

村人の前で陣取っていた騎士達は、いつの間にか後ろに回られてことに驚き、味方の騎士達がいる方に後ずさる。

騎士達が恐怖で判断能力が鈍ってそうなので、何か情報を引き出せる可能性があると思い、質問することにした。

 

「騎士様方、一つお尋ねしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 

先ほど、後ずさった騎士のうちの1人がその問いに答えた。

 

「‥‥なんだ」

「おい!」

 

答えようとした同僚を制止しようと他の騎士が、その騎士と軽く小声で何か話し、その後、制止しようした騎士は下がった。

やり取りからして、何か仕掛けてきそうな気配があり、実際に動きがあった。

ガルムから思念が送られてきており、どうやら比較的近くに居た騎士が静かに背後に回ってきているようだ。

つまり、このやり取り自体は時間稼ぎとこっちの意識を向けさせるのが目的‥‥思いのほか冷静に対応してくる騎士達に当てが外れたと思いながら、とりあえず、背後の騎士はすぐに対応できるようにし、聞けるもの聞いておこうと対応を続ける。

 

「すまない、待たせた。 で、何が聞きたいのかな?」

「それでは‥‥」

 

質問をしようとした瞬間、背後から向かってくる金属鎧の音が聞こえた、背後から近づいて来ていた騎士であろうと判断し、すぐさま振り返り、騎士を雷撃魔法を放ち、撃ち貫く。

雷撃を受けた騎士は、短く悲鳴をあげるとその場に倒れ、動かなくなる。

倒れて動かなくなったことを確認し、視線を戻すと目の前の騎士は、舌打ちをしつつ叫ぶ。

 

「魔法詠唱者だ!」

 

その瞬間、援軍を呼ぶための角笛が吹かれ、同時に周りに居た騎士達がモモンガに殺到してきた。

モモンガは、角笛の意味を悟りつつ、自分に向かってくる騎士達を素早く雷撃魔法で迎撃する。

 

(しまったな‥‥たぶん、あれは別の騎士を呼ぶための合図だよな、村人を守りながら捌ききれるかな?)

 

敵の騎士が増えることを考えつつ、どう対処するか考えながら、騎士を倒そうとしたが、最初に仕掛けてきた騎士達以外、攻撃してくる気配がない。

疑問に思って、見渡してみると周辺を見ていると、ほとんどの騎士が足を止めており、中には腰を抜かして尻もちついてるものまでいる。

どうやら、先ほどの対応を見て、恐怖で固まってしまった者がほとんどらしい。

 

「次はどなたから来ますか? 来ないならこちらから行きますよ?」

 

こちらから仕掛けようとした時に、馬の足音共に同じ鎧を着た騎士と弓騎兵達が入り口付近から入ってきた。

敵の援軍が到着したようだ、さすがに数が多いと判断し二重化して魔法を放つ。

 

「《 魔法二重化(ツインマジック)・ 魔法の矢(マジック・アロー) 》」

 

モモンガの周りに幾つもの光弾が出現し、撃ちだされる。 

光弾は軌跡を残しながら的確に騎士の胸を貫いていく、それを見た援軍の騎士は、モモンガを障害と判断し、弓騎兵に命令し弓矢にて、攻撃を開始しようとしたその時、馬が駆る音が轟音となって響きわたった。

騎士達はいったい何事かと動きを止め、音のする方を向くと、軽装鎧を身に纏った戦士達が馬に乗って勢いよく広場に向かってきた。

 

「突撃!」

 

先頭にいる屈強な男が号令をかけると、戦士達は剣を抜き騎士達を攻撃し始めた。

騎士達は先ほどの恐怖もあり、目の前のモモンガに対して隙を作ることが出来なかったため、次々と討ち取られていく。

モモンガは敵かどうか判断が付かなかったため、ガルムに村人の近くで警戒するように思念を送り、自分も何かあった時に対応できるように近くの騎士を倒しながら、村人の近くに移動する。

ガルムと合流し、周りを警戒しつつ、騎士と戦士の戦いを観察した。

戦士達は、騎士達は違い練度が高く、統制の取れた動きをしている、何より連携の息が合っており、隙をなるべく出さないようにしている。

特に屈強な男は、他と比べることもないほど強く動きに隙が少ない。

 

「さあ、勝負はついた! 投降せよ!」

 

これ以上の戦闘は無意味と感じたのか、屈強な男が一喝する。

生き残った騎士達は、すでに戦意はなく、一斉に剣を捨てて投降する。

それを確認した男は、次の命令を出す。

 

「全員捕縛せよ!」

 

命令に従い、戦士たちが一斉に動き出し、怪我している騎士にもお構いなく縄をかけていく。

 

(あの人が指揮官みたいだな。)

 

モモンガは的確に指示を出していくを眺めていたら、副長らしき人に指示を出して、こちらに向かってきた。

 

屈強な男‥‥ガゼフ・ストロノーフは、村人を守るように立つモモンガと、その後ろからいつでも援護に入れるように身構えるガルムの下に向かっていた。

突撃時に敵対しているのはガゼフも確認していた、騎士が倒れていたのも後ろにいる狼犬か、あるいは魔法によるものだろう。

 

(まだ距離があるというのに冷や汗が出てくるな‥‥抑えてないと震えてしまいそうだ‥‥何て強大な力を持つ狼犬なんだろうか、そして、その狼犬を従えてる女性はかなりの実力者なんだろう。)

 

戦闘の後なのに怯えた様子もなく、多少は警戒しているものの自然体と見れる態度で自分が近づいて行っても動じる様子がない。

 

(全く疲労の色も見えないとは、大したものだ。)

 

まずは、これ以上争いが発生しないように、女性と話しをしなければと考える。

 

一方、モモンガの方は、近づいてくるガゼフからは悪意は感じられず、こちらに害を及ぼすことはないことがわかったので、ガルムを落ち着かせて襲わせないように気を付けながら、先ほどの戦いを思い出していた。

 

(あの戦いっぷりと指揮の出し方からして、実戦経験が豊富なんだろうな‥‥。)

 

今までの経験の積み重ねを自分の力として発揮されたのだろう、まさに歴戦の戦士という風貌に、かっこよさを感じいていた。

 

「お初にお目にかかる。 自分はリ・エスティーゼ王国にて王国戦士長を拝命されたガゼフ・ストロノーフと申します。 村人の危機を救っていただき感謝の言葉も無い。」

 

感謝の言葉と共に頭を下げ、頭を上げ名を訪ねる。

 

「よろしければ、貴女様の御名をお聞かせ願いたい。」

 

決して相手の事を下に見ず、礼節を持って相対する姿勢。 要職にありながらも先に名乗り、見知らずに自分に頭を下げて礼を言う行動。

これらを行動はモモンガの好感度もぐんぐんと上昇した。

そして、次は自分の番である。

名前の関しては大いに悩んだ、普通にモモンガと名乗った人は偽名と思われてしまうかもしれない、かといって即席で思いつくような名前もない。

なら、こちらに来ているかもしれないギルドメンバーの目印になるよう、この名前を使おうと決めて、その名前を告げる。

 

「ご丁重なるご挨拶、痛み入ります。 私はしがない旅の者、名をアインズ・ウール・ゴウンと申します。」

 

その顔には、自信と覚悟が現れた笑顔が浮かび上がっていた。

 

 


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