久々の投稿です。書き方が毎回コロコロ変わって読みづらかったらすみません。色々手探りでやっているので・・・
「
瞬間、数mはあろうかという巨大な何かが顕現した。機械じみているともいえる姿だが、確かに生命を感じる。そして、その圧倒的な存在感は、決してその大きさからくるものだけではなく、押しつぶされそうなほどの圧として感じていた楯無は、大きく目を開くしかなく、その瞬間には呼吸すらも忘れていた。楯無には知る由もないことだが、目の前にいるのはまさに大地そのものと言ってもいい大精霊、その存在感に圧倒されるのも無理はないことである。
「どうなってやがる!何に引っ張られてるって言うんだよ!」
先程までは、楯無が追いつけないと判断するほど距離があったはずだった。しかし、今は、何故かIS学園の方へ引き戻されて、葉や楯無の姿がうっすらと目視できるほど近づいていた。当然、スラスターの出力を最大限まで上げて抵抗しようとするが、引き寄せられるスピードには一切の変化が見られない。さながら逆再生のようになっており、遂には葉や楯無がはっきりと見えるほどまで近づいていた。最早立つ体力すら残っていないのか、片膝を床に着けたままだったが、それでもなおオータムに向ける葉の視線には力が、強い意志があった。その目を見てオータムは確信する。コイツだと。
「てめえかぁああああ!」
葉は口元に浮かべたわずかな笑みで返す。
重力により引っ張られるオータムは、抵抗するのをあきらめ、思考を切り替える。逃れるための最善の手段は、恐らく訳のわからない力で自分を引き寄せている葉を手始めに殺し、改めて逃げるというパターンだと判断した。動く気配もなく、徐々に近づく的を殺すことなど、今までの任務の中でも最も簡単な部類だと、自身の経験と照らし合わせることで、冷静さを取り戻す。
「ふう・・・」
焦りも、困惑も全てを吐息と共に吐き出す。冷静になったところで、葉の隣にいる楯無が臨戦態勢をとっていることに気づく。楯無が構えているのは大型のランス。当然遠距離に対応するための武装も積んでいるのだろうが、接近戦に自信があるからか、それとも近づいてくる相手を見て確実にしとめようとしているのか、目視できるのランスのみ。であれば、射程の差で、こちらの攻撃が早く当たるだろう。射程圏内に入った瞬間に一撃で仕留め、追撃が来る前に再び全速力で飛ぶヒット&アウェイの戦法で行くことに決めた。いつでも攻撃し、逃げる準備をしておきながら、射程に入るまでそれを悟らせてはいけない。緊張のせいか、汗がオータムの頬に流れる。
射程に入るまで、あと2、1。そこで、小さな声ながら、楯無の声が不思議と鮮明に聞こえた。
「ねえこの部屋、暑くない?」
何かに気づいたオータムだったが、もう遅い。妖艶な笑みを浮かべる楯無とは対照的に、オータムの顔は青ざめていく。その直後だった、《アラクネ》の胴、足、スラスターと次々に爆発が起きたのは。至近距離での爆発で絶対防御が発動し、シールドエネルギーが大きく削られる。手や足などが焼けるように熱いが、次いで来る楯無の槍に、痛みを感じている暇すらない。手数ではオータムの方が有利だったが、その程度で苦戦する楯無ではない。《アラクネ》のアームによる引掻きをランスで受け流すと、それを攻撃の起点として、一切の無駄のない突きが放たれる。オータムがリーチの差を活かした戦い方をしようとしても、間合いを離すことすら許さない。自身をこの場に留める謎の力はとうになくなっているが、それを気にしている余裕もなかった。
笑みを絶やさぬ楯無の猛攻に、オータムはじりじりと後ずさるしかない。スラスターは壊れ、逃げるには絶望的。それでも諦めようとしないのは、意地か、はたまた何らかの策があるのか。聞こえてくるのは金属のぶつかる甲高い音とお互いの息遣いのみ。オータムの意気は荒いが、相手の足運びから次の手を予測し、先回りすることで、何とか防戦に持ち込めていた。楯無も自分の口元が吊り上がって来るのを感じる。お互い万全ならもう少しいい勝負になっていただろうというほどの強敵との戦いを楽しんでいた。徐々にキレを増していくランスのキレに、オータムも追いつけなくなってきている。不意に―ランスの軌道がクンと跳ねた。ガードをすり抜け、オータムの左肩を貫く。痛みに声にならない声で叫ぶオータムだったが、その左腕は動かそうとしてもピクリともしなくなっていた。恐らく一時的に神経からの信号が遮断されているのだろう。
「残念だけど、これで終わりね」
「まだ・・・!」
オータムが叫ぶ声は、再び響いた爆発音にかき消された。展開されていたISが強制解除され、その場に力なく膝をつく。懐にしまっていた《白式》《マタムネ》も楯無が無事に回収、後はオータムをどうするかという問題だけだった。
「くそっ!!お前たちなんかに計画が邪魔されなんてな。私たちが、どんな思いでここまで来たと思ってやがる!なぁ、そこのガキ。いいよなお前らは。男性操縦者だからって、大した強くもないくせにちやほやされて。私たちはいつも死と隣り合わせ。こんな世の中、おかしいよな!」
「お前の事情なんて知らん」
「な・・・!?」
吐き捨てるように一言。オータムとしても、その返しは意外なものであった。言葉にしてはいないが、自分の体験してきた地獄のような世界、それと比べて、のうのうと生きているお前はどうかという問いをぶつけたつもりだった。相手の心にためらいや迷いくらいは起こせると思っていた。
「ただ、オイラは、オイラの仲間を傷つけるやつは許さん。オイラたちから奪ったものでさらに争いを起こそうって言うなら尚更な」
オータムが息をのむ。恐らく、計画の全てではないだろうが、何となく葉が気づいている様子に、葉の警戒度を一つ上げる。今は何としてでもここから脱出し、不思議な力のことも含めて麻倉葉のことを報告しなければ、麻倉葉一人で計画全体を大きく狂わす存在になり得ると感じて冷や汗が流れる。そんな時、突然天井を突き破って、オータムと楯無の間に光線が落ちる。天井の穴からは、深い青の蝶を纏った少女が見える。ISで覆っているため、顔はよく見えない。
「迎えに来たぞオータム」
「名前で呼ぶんじゃねぇと言いたいところだが、いいタイミングで来た」
「ほう?やけに素直だな?無様にやられて心でも入れ替えたか?」
「こっちにも色々とある。早く連れていけ」
「ふん」
蝶のようなISを纏った少女は、オータムの様子からただ事ではない何かがあったと推測していた。基本的に亡国企業には、プライドの高いメンバーが多いため、煽れば喧嘩になることも当然ある。その中でも、オータムとは特にその回数が多いのだが、今回はあれだけ言っても言い返して来ない辺り、ことは深刻なのだろうと感じていた。すでにISを起動できないオータムを拾い上げ、そのまま飛び去る。
楯無としても、悔しいがただ見ているしかなかった。動けない葉と倒れている一夏を庇いながら、オータムとの戦いで多少とは言え消耗している自分が戦うのは厳しいと見ていた。そう感じさせるほどに、目の前の少女は強いと確信していた。本来であれば、重要な情報源となるオータムを逃す手はないが、葉と一夏の安全を考えて、あえて動かなかった。逃げ去る敵を見つめる楯無の背中は、心なしかほっとしているようにも見えた―