ハイスクールD×D Restart Welsh Dragon 作:ふくちか
俺はドライグ。
嘗ては最強と謳われた二天龍の一角だ。
さて、今日は俺の相棒である兵藤一誠の事について触れたいと思う。
相棒は前世で終末の獣――――トライヘキサを倒した。
…………だがその代償は、相棒を取り巻く全ての滅亡であった。
恋人であったリアス・グレモリーやその他の女達、尊敬する恩師、最高の友やライバル、果ては両親を失った相棒は……変わった。
――――いや、変わってしまったと言うべきか。
以前までの相棒は、何処にでもいる普通の人間であった。
異能などとは無縁の世界で生きていたのだが、俺を宿していた事により堕天使に殺された。
そして、相棒は悪魔となった。
それからという物の、相棒は一年足らずで様々な出来事を体験し、その度に強くなっていった。
……まぁ、悪魔になりたての頃はスケベ心から来る物であったが。
主であるリアス・グレモリーの乳房を吸う――――等と大それた事を抜かした時は耳を疑ったよ。
おまけに禁手へと至った強い切っ掛けが、その主の乳を指で突くと来たものだから、余りにも馬鹿馬鹿し過ぎて、ある種の感動を覚えたほどだ。
……流石に乳首からの光線でパワーアップは止めて貰いたかったが。
あの辺りは俺やアルビオンのメンタルはボロボロだったな…………今となっては懐かしい思い出だ。
だがそれでいて、他人の為に悲しみ、他人の為に怒る事が出来る相棒は出来た奴だ。
そこには何の打算も下心もない、兵藤一誠自身の人柄だからな。
そんな訳で以前までの相棒はエロい事――――取り分け、女の乳房に並々ならぬ関心を抱いていた。
だが先程も言った通り――――相棒は変わってしまった。
まだ小学生と言うのもあるだろうが、元来持っていた下心は鳴りを潜め、殆ど笑う事も無くなった。
両親の前では普通なのだが、俺が思うに、この年頃の少年としては異常なまでに喜怒哀楽が欠如している。
傍から見れば真面になったと思うだろうが……以前までの相棒の人柄を知っている俺としてはまるで別人のように見えてしまう。
それに、他人との間に見えない壁を張っているのだ。
両親の事はは普通に呼んでいるが、同級生や、前世で相棒を慕っていた女の一人「紫藤イリナ」の事も、名字でしか呼ばなくなってしまっていた。
そして何かに憑りつかれたかのように、相棒は以前以上に力を求め、己を鍛えている。
その時の相棒の瞳には、もう絶対に失いたくないと言う確固たる『信念』――――そして、底知れぬ『虚無』があった。
なぁ相棒…………俺は、そこまで無理を背負い込んで前に走るお前を、見たくない。
また以前のように…………底抜けに明るい、お前の笑顔が見たいんだ。
相棒…………………
ーーーー
イッセーだ。
今の俺は漸く、小学生となった。
赤ん坊の頃は……きつかった。
言葉は話せないわ、高校生の精神年齢で母さんの母乳を飲むわ、日夜父さんと母さんは励んでるのを聞くわ…………もう本当に辛かった。
だけど漸く体が発育してきたからな。
来るべき時に備えて、俺は体を鍛えてる。
因みに現状、禁手は扱える様にはなった。
だけどまだ体が成熟していない事から数分間が限界であるし、真『女王』やトリアイナ各種、ドライグの透過、以前に取り込んだアルビオンの力、そして龍神化は使えなくなっていた。
まぁトリアイナと真『女王』は悪魔の駒に由来した力だったから、今は人間である俺では使えないのは当然だし、何より今はない力を頼っても仕方がない。
オーフィスやグレートレッドの力に関しては、肉体が元の人間のものになったからだろうと推測…………まぁ、今の俺には宝の持ち腐れだから、なくても問題はない、か?
龍神化に関しては、おそらく未来から転移したと同時に喪失したのだろうとドライグは仮説を立てた。
過去のこの時間軸では、俺はオーフィスと対話を果たしていないし、あの力をくれたのは未来のオーフィスだ。
まぁ、さっきも言ったとおり、現状では必要ないだろう。
無用な力は、無駄な争いを生む火種にしかならないからな。
………あ、そうだ。
俺の家に、前世と異なり新しい家族が出来た。
「ニャ~」
…そんな鳴き声と共に、玄関にいた俺に近づいてくるのは、一匹の黒猫。
「どうした、黒歌?」
……前世では、小猫ちゃんの姉だったあいつと、同じ名前の黒猫。
偶然、近所の子供に虐められていたのを、俺が助けて、紆余曲折を経て家で飼うことになった。
最初の方は大分警戒されて、何度も引っ掻かれたけど、今は普通に信頼してくれているみたいだ。
……時折、夜中にこっそりと家を出て行ってるみたいだけど。
俺はすり寄ってきた黒歌の顎を撫でる。
「ちゃんとお留守番してるんだぞ?」
「ニャ!」
わかった!と言わんばかりに、元気よく返事をする黒歌。
…………多分、夜な夜な家を飛び出してるのは、小猫ちゃんを探してるんだろうな。
でも、小猫ちゃんはきっと大丈夫だ。
俺の脳裏には、優しく微笑む、紅髪の少女が映った……………が、その思い出は、一瞬で、今際の時の笑顔に切り替わった。
……………消せる筈も、無いか。
俺は頭を振って、外に出る。
そうだ、今度こそ守る――――そう誓ったじゃないか。
決意を再確認して、俺は走り出す。
今の俺は、皆を守る為に生きている――――俺の命に、それ以外の価値なんてない。
本編にはまだ入らないぜよ