ハイスクールD×D Restart Welsh Dragon   作:ふくちか

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随分お久しぶりです。こちらの作品からのあいさつになりますが……更新途絶してしまい申し訳ありませんでした。




3話「愛される存在」

 

 

――――深い、深い闇の中。

 

虚ろに落ちた俺の深層意識の中に、そいつはいた。

 

『………………』

 

物言わぬそれは、暗黒の巨体に獅子、熊、豹、龍に似た7本の首と10本の角を持つ――――俺がこの世で、前世から一番憎み続ける存在。

 

それは巨大な4つの腕を伸ばし、俺を掴みかかろうと――――

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「……ッ」

 

目が覚めると、そこは何時も見慣れた天井――――俺の部屋だった。

身体に走る痛みに顔を顰めながら起き上がると、ドアが開かれた。

 

「……イッセー………?」

「…母、さん」

 

お盆を持っていた母さんは、手を震わせながらお盆を落としてしまう。が、それに構うことなく、母さんは涙を流しながら俺を抱きしめた。

 

「イッセーッ!! 良かった、本当に良かった……ッ!!」

「いっ……!」

 

抱きしめられた事で、傷を受けた部分が悲鳴を上げるが、母さんは気付く事無く俺を力いっぱい抱擁している。

 

『あれだけ心配をかけたんだ、自業自得だと思って諦めろ』

 

ドライグ……俺、助かったのか?

 

『あぁ。流石に肝を冷やしたがな……あの猫娘にも感謝しろよ』

 

猫娘……まさか黒歌が? そう思い至った時、部屋にもう一人誰かが入って来た。

 

「…イッセー! 目が覚めたのね!!」

「ぐぅ……!」

 

二人目の来訪者、黒歌もまた、目尻に涙を溜めて俺を抱きしめた。

 

さ、流石に苦しい……そう思いながら、この責め苦から早く解放されたいと願う俺であった。

 

 

 

 

数分後、何とか落ち着きを取り戻した俺は、仕事から帰ってきた父さん、そして正体を明らかにした黒歌も(何故か)交えての家族会議が開かれることに。

 

「黒歌ちゃんがまさか妖怪だったのは驚きだったけど……」

「お前に伝説のドラゴンが宿っているなんてな、本当にびっくりしたぞ」

 

そう語る父さんと母さんの前に座る俺は、気まずさから肩を縮こませる……左手には籠手を展開させながらだから、シュール極まりないけど。

 

「……全部話したのか。ドライグ」

『でなきゃあれほどの怪我は説明しきれんだろう』

「ついでに私の事もねん。普通の医者だったらお金だってかかるし、下手したら大騒ぎにゃん。だから仙術でパパーッと治したの」

 

…どうやら俺が未来から転生した事は話してないらしい。それに関しては一安心だ。

 

『話した所で御伽噺過ぎる……俺の存在もだがな』

 

――――曰く、俺はドライグを宿している事で狙われた悪い連中に襲われ、それを逃げ回りながら対処している最中に重傷を負った、けどそれでも何とか襲ってきた連中を倒して、血みどろで家に帰って来た――――

 

と言う事で説明を付けたそうだ……後は三大勢力の事とか、妖怪とか。

 

最初は信じられないと言った感じだったけど、籠手を出現させたり、黒歌が何時もの黒猫状態に両親の目の前で変化した事で納得してもらえたらしい。

 

 

………ちなみにその事で俺が大怪我負った経緯を説明した後、ドライグは父さんと母さんに滅茶苦茶責められたそうだ。

 

『憑依する人間は俺にも選べん、と言ったんだがなぁ……』

 

ドライグは心底疲れ果てた様子でそう呟いた。

 

「そりゃそうにゃん。自分達の愛する息子にそんなおっかないドラゴンが取り付いてて、しかもそのせいで半死半生の目に遭ったなんて聞いたら堪らないでしょ」

『そう言われると返す言葉がない……』

 

ドライグは気落ちした声音だった……昔を思い出すな。

 

『相棒、その事には触れるな』

『分かってるよ』

 

もうあんな出鱈目なパワーアップはしないさ……客観的に見ると、ホントどうかしてるよな、あの頃の俺って。

 

「……父さんと母さんは、何とも思わないの?」

「「ん?」」

「…俺が、そんなおっかない存在だって言うのに」

 

前世の時と同じだ――――リゼヴィムのクソ野郎に両親が戦場に拉致されて、俺の正体を見せつけた時と。

 

何時かは来る、そう覚悟していた筈なのに――――俺の声は……僅かに震えていた。

 

「…何だ、そんな事か」

 

父さんは最初は呆気に取られた様子だったけど、次の瞬間には呆れたように笑っていた。

 

「お前がどんなモノを宿していようが、どんな化け物になりかねないとしても!――――お前は俺と母さんの子だ」

「お父さんの言う通りよ。最初は確かに信じられなかったけど……それでもアンタは私達の子でいてくれた。だって普通はそう思っているなら私達を避ける筈なのに」

 

それは……母さんの言葉に、俺は返事が出来ない。

 

「ま、例えアンタが私達に気を使って避けようとしても、絶対に目を背けないわ。だってアンタは――――私達の、愛しい子供なんだから」

 

…………

 

「俺は……二人の子で、いて良いの…………?」

 

 

 

「勿論」「当たり前でしょ?」

 

 

父さんと母さんは、俺を抱きしめる。自分達にとって、俺は必要な存在なんだと分からせるように、強く、強く。

 

柄にもなく俺は……久しぶりの涙を流した。

 

「う”う”~~~っ、良かった、よがっだわねぇぇ………」

『そんな濁声みたいな泣き声上げたら雰囲気ぶち壊してないか?』

 

貰い泣きしている黒歌と、呆れたように黒歌に突っ込むドライグの声をバックに聞きながら。

 

 

 

 

「あぁ、そうだイッセー。黒歌ちゃん、改めて家で暮らす事になったから」

「え、何で?」

「何でって、娘みたいで良いじゃない? それに仙術で肌のハリとかも保てるって言うし」

「…黒歌、そんな理由で良いの?」

「オールオッケーにゃん♪」

 

 

そんな感じで、我が家に新しい家族が出来ました。

 

 

 




もう次からは現代編に行くつもりです。因みに黒歌は原作と同じ理由ではぐれ悪魔ですが、冥界側としては主側の契約の裏切りが発覚して黒歌への罪はある程度軽くなっております(本人はまだ知りませんが)。

そんでサーゼクスに小猫ちゃんを預けた……と言う感じです。

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