IS 全ては兄の為だけに   作:白ウサギ

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4話

 今の私は非常に機嫌が悪い。それはやはりあの男の所為だ。

 クラスでは一つの話題で持ちきりになっている。それは『月末の学年別トーナメントで優勝すれば織斑一夏と交際ができる』というものだ。

 別に内容に興味はない。あんな男とデートしたいとも思わない。

 機嫌が悪いのはそんな幼稚な感情が理由ではない。

 では何か。それはその噂が兄様にまで来ているということだ。

 『織斑君と交際できるなら、もしかしてデュノア君やボーデヴィッヒ君も?』と馬鹿な考えをし出す輩も出てきているのだ。まあ、あのフランス人はどうでもいいが、兄様はダメだ。

 そもそもどうして兄様まで話が及ぶのかが理解できない。

 あの男への因縁がまた一つ増えたな。

 それも私が優勝すれば良いだけの話だがな。

 

 

 

 

       † ☆ †

 

 

 

 日に日に奴への不満が溜まっていく。最近の奴の行動は目に余る。

 あれだけ拒絶しておいたのにも関わらず、未だに兄様を何かと誘おうとする。その度に私と口論になる。しかし私が負けた事はない。

 そろそろ寛容な私とて我慢の限界というものだ。アイツには色々と恨みがあるからな、教官のことを含めて。

 ではかねてより考えていた、奴を徹底的に叩きのめす作戦でも行うか。そうすれば馬鹿な彼奴とて自らの愚かさに気づくだろう。

 さすれば、教官も……。

 さてそうと決まれば次は誰を獲物(ターゲット)にするかだな。

 奴と親しい者でなければ、奴は私と戦わないだろうな。……中国かイギリス、フランスいずれかの代表候補生を獲物(ターゲット)にするか。

 事を起こすなら今が最良か。兄様は副担任に呼ばれていらっしゃらないからな。

 とりあえずアリーナに向かうか。

 

 

 

       † ☆ †

 

 

 

 こうも簡単に事が運ぶとはな。アリーナに来てみればイギリスと中国はいた。

 あの戦い方を見るに、二人同時に相手をしても問題はなさそうだな。奴らには悪いが、私の憂さ晴らしの為、織斑一夏を叩きのめす為、全力で行かせてもらう!

 

 

「――はっきりさせましょうではありませんか」

 

「そうか、では遠慮なくいかせてもらうぞ」

 

 

 不意打ち気味にレールガンを放つ。

 

 

「「!?」」

 

 

 しかしそこはやはり代表候補生、少し慌てたものの回避はした。いや、機体の性能に助けられただけか?

 

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ……」

 

 

 イギリスの奴が顔を強張らせて私の名前を言う。

 

 

「……どういうつもり。いきなり攻撃してくるなんていい度胸じゃない」

 

 

 中国の奴が武器を肩に預けてそう言う。

 私は奴らをゆっくり見て、少し考えて思った事を言う。

 

 

「中国の『甲龍(シェンロン)』にイギリスの『ブルー・ティアーズ』。やはりデータで見た時の方が格段に強そうだな。操縦者のせいか?」

 

「何? やるの? わざわざやられに来るなんて良い心構えじゃない。大したマゾっぷりね。ジャガイモ農場にいるとそういう思考になるの?」

 

「あらあら鈴さん、この方はどうも言語を理解できる脳をお持ちでないようですから、いじめすぎるのは可愛そうですわよ? 犬でも人間の言語を多少なりとも理解しますのに」

 

「ごたごた言わずにかかってこい。ふたりがかりでいいぞ。貴様らのような種馬を取り合う雑魚に負ける私ではない」

 

 

 下らない舌戦もこれくらいするか。奴らには1×1が所詮1にしかならんという事を教えてやろう。

 そう思い、戦闘状態へシフトしようとした時、聞き捨てならない言葉を聞いた。

 

 

「守られるだけの兄を世話すると、妹はこうも野蛮になるのかしらね」

 

 

 中国の奴がそう言った。

 私が野蛮であると貴様に思われていようがどうでもいい。だが奴はあろうことか兄様を『守られるだけの兄』と侮辱をした。

 予定変更だ。痛めつけるだけですましてやろうかと思ったが、止めだ。兄様を侮辱した事を後悔する程完膚なきまでに叩きのめしてやる。

 

 

――――ゾクッ

 

(アイツの雰囲気が変わった!?)

 

(あちらも本気のようですわね)

 

 

 奴らは何かを感じたのか、身構える。いい判断だ。流石に私もただ突っ立ているものに向かって撃ってもつまらんしな。

 

 

「とっとと来い!」

 

「「上等!」」

 

 

 先手でレールガンを撃とうとしたが、中国の女が先に空間作用兵器・衝撃砲『龍咆』を撃ってくる。甘いな。

 停止結界を発動させ不可視の衝撃砲を防ぐ。

 

 

「え? ウソ、龍咆が……」

 

 

 呆けている中国の女に今度こそレールガンを放つ。実践ならその一瞬が命取りだぞ。

 

 

「鈴さん! 呆けてる暇はありませんわよ!」

 

「――ッ! そうね、ありがとうセシリア。助かったわ」

 

 

 イギリスの女が中国の女の手を引き、何とか避ける。だが甘いな。私は相手に情けをかけるほど優しくはないぞ。

 六機のワイヤーブレードを展開し、奴らを攻撃する。

 

 

「くっ、鬱陶しいわねっ!」

 

「インターセプター! 鈴さん、この武器を全て請け負ってくれませんか? わたくしは後方から射撃をしますので!」

 

 

 四機のワイヤーブレードを捌いている中国の女にイギリスの女が問いかける。

 どのような攻め方をしようが構わないが、私に全て筒抜けだがいいのか?

 

 

「はぁ!? 今の状態でもきついのにもう二機ってふざけてんじゃないわよ!」

 

「ですからこの戦いを早く終わらせるためにはこれが最善ですの!」

 

「ああもう、分かったわよ! こうなったら全部相手してやるわよ!」

 

 

 イギリスの女が後退し始める。無論、見過ごすわけがないので奴を追尾する。しかしそれを邪魔するように中国の女が割り込んでくる。

 中国の女を避けてワイヤーブレードの何機かをイギリスの女の方に向かわせようとするが、奴の龍咆がそれを許さない。

 結果、奴らは作戦――と言っていいか分からないが――を成功させた。今からでも簡単に倒せるが、ブルー・ティアーズの性能には興味がある。それを見てから奴らには兄様を侮辱した罪を償ってもらう事にしよう。

 

 

「隙がありましてよ!」

 

 

 イギリスの女がそう言う。隙? ある筈がないだろう。

 後ろに停止結界を展開し、奴の特殊装備『ブルー・ティアーズ』を一機止める。それにしても、わざわざ『今から攻撃します』と教えてくるとは馬鹿だな。

 停止結界を使ったことにより、どうしてもワイヤーブレードの方が疎かになってしまう。その隙を逃さず、中国の女は私との距離を一気に詰めようとする。

 イギリスの女も止められた特殊装備――ビットはどうやっても動かないと判断したのか、残りの三機を操り私を撃とうとする。

 攻撃を受ける義理はないので停止結界を解除し、先ほどまで止まっていたものを右手のプラズマ手刀で破壊する。

 破壊した後すぐにレールガンを中国の女に放つ。

 

 

「くっ、セシリア! もっとばれないようにしっかりやりなさいよ!」

 

「わたくしだって精一杯やっていますわ! 文句なら向こうに言ってください」

 

「仲間とのお喋りは終わったか?」

 

「なっ!」

 

 

 奴らが話している隙に瞬時加速(イグニッション・ブースト)で中国の女に接近する。

 そして右手のプラズマ手刀で斬りかかる。が、これは防がれる。

 シュヴァルツェア・レーゲンの武装を考え、一旦後退する。

 

 

「鈴さん、退いてくださいまし!」

 

 

 その言葉に反応して中国の女が避ける。なるほど、中国の女を壁にして私が見えていないところへレーザーを撃ちこもうという魂胆か。確かに有効な手だな。ただ、それが阿吽の呼吸で出来ればの話だが。

 それが出来ずとも、プライベート・チャンネルを使おうとは思わんのか? まあ、使わないほうが私にとっては好都合だが。

 そう思いつつ難なく私も避ける。

 

 

「これも避けますか……!」

 

 

 イギリスの女が吐き捨てるようにそう言った。アイツは馬鹿か?

 

 

「少しは当たりなさいよ!」

 

 

 そう言って、中国の女が龍咆を撃つ。学習しないのか?

 再び停止結界で相殺する。

 

 

「……やっぱり駄目ね」

 

「そろそろこちらからも行かせてもらうぞ」

 

 

 ワイヤーブレードを中国の女の片足に絡ませ、振り子のように扱い、周りにいるビットを散らす。最後は用なしの女を壁にぶつける。

 

 

「鈴さん!」

 

「仲間の事を心配している場合か?」

 

「くっ」

 

 

 奴は私の言葉になんとか反応しレールガンをかわす。そしてカウンターでレーザーを放つ。

 全く以て狙いが甘いな。そんな事では私に一撃も入れることは出来んぞ。

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)で距離を殺す。そしてプラズマ手刀で斬りかかる。奴はレーザーライフルを盾にすることによって一撃だけ凌ぐ。

 

 

「どうした? いつまでも受身では私には勝てんぞ」

 

「わかっていますわ!」

 

 

 続けざまに斬る。

 奴はなす術なく無様にそれを喰らう。どうやら接近戦はずぶの素人と遜色ないらしい。

 

 

「ブルー・ティアーズは六機ありましてよ!」

 

「それくらいデータで見ている」

 

「きゃぁぁぁぁ」

 

 

 腰にミサイルがあることは把握済みなので、上昇し回避した。

 そしてターゲットを失ったミサイルは後ろから私を攻撃しようとして近づいていた中国の女に当たる。フレンドリーファイアとは情けないな。

 

 

「セシリア、何するのよ!」

 

「鈴さんこそ何故いるのですか!」

 

 

 フレンドリーファイアの次は仲間割れか。その程度で私に挑むとは片腹痛いわ。

 それに注意が散漫しすぎではないか?

 まあ、それを注意するほど私はお人好しではない。一気に終わらせるとしよう。

 ワイヤーブレードで体の自由を奪う。

 

 

「「ぐっ」」

 

 

 思いの外あっさりと成功した。同じ代表候補生としては情けなく感じる。

 中国とイギリスはよっぽど良い人材がいないのだろうな。

 さて、今からこいつ等には自分がどれ程の罪を犯したのかを分からせてやらねばな。

 

 

「貴様等が、兄様の何を分かっているというのだ。所詮、生ぬるい環境で生きてきた貴様等が分かったように喋るな」

 

 

 そう言いながら殴る。ここ最近溜まっていた鬱憤を晴らす。

 暫くすると機体維持警告域(レッドゾーン)を超え、操縦者生命危険域(デッドゾーン)に達する。ここまでにするか。

 そう思い、奴らを縛っていたワイヤーブレードを解除する。地に伏せた奴らを見下しながら私はアリーナを去った。

 

 

 

       † ☆ †

 

 

 

 翌日、私は休み時間にあの男、織斑一夏に呼び出された。恐らく、昨日の事だろう。

 そしてあまり人目に付かない場所へ来て、奴は言った。

 

 

「昨日、鈴とセシリアをやったのはお前だろ」

 

「鈴? セシリア? ああ、昨日の雑魚どもか」

 

「お、お前ぇぇぇぇ!」

 

 

 操縦者には全く興味がなかったのでな、名前を言われてもすぐには顔と一致しなかった。

 その事が気に障ったらしく、奴は私に殴りかかってきた。

 殴られるつもりはないので、私は奴の殴りかかってきた手を掴み、背中へ回し、奴を壁に押し付け無力化する。

 

 

「肉弾戦なら勝てるとでも思ったか?」

 

「ぐっ」

 

 

 さて、これから奴をどうしようか。どうしようか思考を巡らせていると声をかけられた。

 

 

「そこまでにしておけ、ラウラ」

 

「……」

 

 

 教官に言われたので渋々奴を放す。

 

 

「織斑も大人しくしていろ」

 

「こんな所で私闘をするとはな。これだからガキの相手は疲れる」

 

「千冬姉! でも!」

 

「事情は知っている。だが暴力沙汰にされても困るのでな。今月末の学年別トーナメントで決着をつけろ。それまでの間、私闘は一切禁止だ。解ったな、ラウラ」

 

「はっ」

 

 

 教官が仰るなら、それに従うまでだ。それに所詮私に敗北するまでの時期が延びたにすぎん。

 

 

「織斑、それでいいな?」

 

「……解った」

 

 

 帰っていく間際、奴はこちらを睨んできた。学年別トーナメント、楽しみにして待っていろ。

 尚、今回の学年別トーナメントはペアで行うようだ。

 その話を聞いた私は迷わず兄様とペアを組んだ。奴はフランスの男と組んだ。




初めての戦闘シーン。ぶっちゃけ原作とほぼ変わらないから省こうかと思いましたが、自分の戦闘描写がどれ程のものか学年別トーナメント前に再確認しようと思い、書きました。
あとラウラは原作よりも強くはなっています。
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