IS 全ては兄の為だけに   作:白ウサギ

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お久しぶりです。
それにしても前回は驚きました。何がと申しますと、2~4話までは投稿したらその日に20ぐらいお気に入りが増えてたんです。
ですが5話投稿後は一気に50件近く増えました。さらに凄い事に日刊ランキング12位に一時的にですがなりました。
最終的には5話投稿後から100件お気に入りが増えました。びっくりです。そんなに良かったですかね?

今回はこれまでの中で最長です。疲れました。そして前回が人気すぎて、若干投稿するのを躊躇いました。


6話

 六月最終週、遂にこの時がやってきた。

 あの出来事以来、織斑一夏が兄様に絡んでくる事は殆どなくなった。フランスの男と練習をしているそうだ。無駄なことをしていると思う。

 

 

「うわっ、すごい数の人だね」

 

 

 モニターを見て兄様がそう呟く。私はそれに「ええ、そうですね」と言って返す。

 今私と兄様がいる場所は更衣室だが、織斑一夏たちとは別の場所だ。かと言って女子の更衣室かと言ったらそうでもない。私が見つけた空き部屋だ。

 初めての戦いという事で兄様も緊張していらっしゃる。私にはそれが分かる。

 なるべく一試合目は早く戦いたいものだ。勝てば兄様も多少緊張が解れるだろう。

 

 

「あれ? ラウラ、眼帯外すの?」

 

「ええ、私も本気で行きます故」

 

 

 何時戦うにせよ、一試合目は兄様の初陣。負け――は万が一にもないだろうが、兄様が怪我をされては大変だ。だから私も本気で行く必要がある。

 兄様の初陣、そこに出し惜しみをする必要性など皆無だ。

 

 

「あ、対戦相手が決まったみたいだね」

 

「そうですね、兄様」

 

 

 トーナメント表に変わったモニターを見る。

 

 

「……ほう」

 

 

 そこには織斑一夏とシャルル・デュノアの名前があった。

 

 

 

       † ☆ †

 

 

 

「一戦目で当たるとはな。待つ手間が省けたというものだ」

 

「そりゃあなによりだ。こっちも同じ気持ちだぜ」

 

 

 織斑一夏と言葉の交わす。直情的になってくれればそれだけ戦い易いというものだ。

 やつのパートナのフランスの男を一瞥する。物静かながら闘志を見せていた。恐らく中国とイギリスの女の話を聞いたのだろう。

 最後に兄様を確認する。落ち着いて戦いに臨めているように見える。

 兄様の機体は私のシュヴァルツェア・レーゲンの兄弟機だ。兄弟機どころか見た目は一部を除いてほとんど同じだ。見た目の唯一の違いと言えば、兄様の機体には左手に大きなシールドが装備されてる所だ。

 

 四、三、二、一 ――――開始。

 

 戦いの幕は切って落とされた。

 開始早々、奴は私との距離を詰めてくる。開始早々ならば私に一撃入れられるとでも思ったか?

 甘いな。

 しかし幾らヴォーダン・オージェを使っているとはいえ、停止結界で奴の武器の『雪片弐型』だけを捕らえる事は少々リスクがある。

 なので私は武器ではなく奴そのものを捕らえる。

 

 

「開始早々の先制攻撃、分かり易いな」

 

「……以心伝心でなによりだ」

 

「……下らん。さっさと堕ちろ」

 

 

 レールカノンの照準を奴に合わせる。しかし奴は絶望や諦観の表情を浮かべてはいなかった。

 分かっている。分かっているさ。

 

 

「させないよ」

 

 

 フランスの男がいるのだろ?

 私を貴様のような直情の馬鹿と一緒にしてもらっては困る。戦況ぐらいはしっかり把握している。

 焦らずに後退し、アサルトカノンの射撃をかわす。後退しながらも一発、織斑一夏に放つ。

 

 

「――くっ」

 

「逃がさない!」

 

 

 織斑一夏は何とか避ける。

 私が後退した直後、フランスの男が左手にアサルトライフルを呼び出し、撃ってくる。

 私はそれを停止結界で受け止める。

 

 

「うおおおおっ!」

 

 

 体勢を立て直した織斑一夏がこちらに突っ込んでくる。

 それをプラズマ手刀で受ける。

 

 

「今だ、シャルル!」

 

「うん」

 

「ちっ」

 

 

 再びフランスの男がマシンガンで掃射してくる。停止結界で受け止めることもできなくはないが、かなりの隙を見せることになるので後退する。

 織斑一夏はこれを好機と判断したようで、更に斬りかかってくる。

 

 

「もらった!」

 

 

 奴の攻撃は別段すごい訳ではない。避けようと思えば避けれる。しかしそうすればフランスの男の餌食になるだろう。かと言って受け止めても同じだろう。

 ならばくらうか? 否。

 

 

「貴様ら、何か忘れていないか?」

 

 

 刹那、弾丸が飛来する。

 ガキィィィィン

 

 

「なっ!」

 

 

 金属音が響く。そして奴の剣の軌道は大きく逸れて、そのまま地面に突き刺さる。

 撃ったのは誰か。勿論、兄様しかいない。兄様が精確に当ててくるとは思ってもいなかった織斑一夏は驚愕の表情を浮かべる。

 

 

 

       † ☆ †

 

 

 

 兄様のIS『シュヴァルツェア・シュネー』は支援機だ。この機体は一対一の戦いをあまり想定されていない。自軍が二機以上の場合において、その本領を発揮する。

 これは兄様のお体が弱い事に起因する。あまり激しい運動の出来ない兄様。それはISでも同じだ。

 ならばどうするか。支援機にしてしまえばいい。

 大枠が決まった軍だが、一つ重要なことがあった。

 時間が圧倒的に足りない。

 仮にも男が乗る機体だ。お粗末な物を使わせる訳にはいけない。しかしシュヴァルツェア・レーゲンも開発しており、そちらはまだ未完成。

 ここでレーゲンを諦めればドイツは『イグニッション・プラン』において大きく遅れを取る事になる。しかし新たなISを開発しなければならない。

 そうした葛藤の末、出した答えが両立させることだった。

 レーゲンを予定通り開発し、更にレーゲンから派生させ、新たなISを造る。

 

 兄様の機体が支援機だと聞いた私はその日から動き始めた。

 兄様の訓練だ。

 IS学園の行事を見て、学年別トーナメントがあると知った私は考えた。

 私はなるべく参加させないつもりだが、万が一という事もある。その場合、兄様が惨敗するのではないかと。

 そうして射撃の訓練を始めた。射撃と言っても簡単なものだ。エアガンで的を当てる。ただそれだけだ。

 ISの補助があるので、操縦者がすることと言えば正確に当てることだ。

 ならば、それに本物の銃を使わなくとも、エアガンで十分だった。

 無論、ただ止まっているだけの的を精確に当てても実戦では意味がない。なので止まっている的に慣れた後は、動く的で訓練をした。

 

 

 

       † ☆ †

 

 

 

 初陣で訓練の成果を発揮できるとは……流石兄様です。

 大きな隙ができている奴にプラズマ手刀で一撃を入れる。

 

 

「――くっ」

 

 

 このまま一気にダメージを与えてやろう。

 

 

 ズガガガッ

 

「一夏、大丈夫?」

 

「ああ、多少シールドエネルギーを持ってかれたけどな」

 

 

 しかし、そうはさせまいとフランスの男が私と織斑一夏の距離を離させる。

 そして奴らは何か作戦を決めたようで、二手に分かれる。

 織斑一夏は私の方に突っ込んでくる。そしてフランスの男は私から大きく離れていく。狙いは兄様か!

 フランスの男をレールガンで狙い撃つ。よし、これで多少なりとも奴の足を止めることができた。そう思っていたがその予想は覆される。

 

 

「なっ、瞬時加速(イグニッション・ブースト)だと!?」

 

 

 馬鹿な! データにはなかったぞ!

 フランスの男と兄様の距離は更に縮まる。兄様も迎撃するが、フランスの男は全く意に介さない。

 近づいてくる織斑一夏をワイヤーブレードで牽制し、フランスの男の方へ向かおうとする。

 

 

「お前の相手は俺だろ? 悪いけど、付き合ってもらうぜ」

 

「ちっ、面倒な事を!」

 

 

 何とかして奴を引き離そうとするが、中々離れない。

 兄様の方を確認すると、フランスの男は接近戦に持ち込んでいた。

 まずい! 兄様は接近戦は苦手だ。このままでは分が悪い。

 兄様の救援に行きたいが奴が離れず行くことは叶わない。

 

 

「さっさと落ちろ!」

 

「鈴たちの分もまだ返してねえんだ。そう簡単に落ちるかよ!」

 

 

 意外にも奴は手強かった。無論、私が倒せない。または、私に大ダメージを与えるような強さではない。

 しかし、私は奴に決定打を放つことは叶わない。

 普段の私なら間違いなく倒せる。しかし今は状況が状況だ。一刻も早く兄様の方へ行きたい私は冷静を欠いていた。それが余計に長引かせていた。

 

 

「――――っ! しまった!」

 

 

 奴との戦闘の最中、兄様の方を見れば、かなり危うい状況になっていた。フランスの男は近接ブレードを呼び出す。不味い。少々手荒だが、こうなれば形振りかまっていられない。

 プラズマ手刀で大きく薙ぐ。私から離れなかった奴だが、これには流石に少し後退する。私にはそれで十分だった。

 その一瞬の隙を突き、瞬時加速(イグニッション・ブースト)で以って奴と距離をとる。そしてワイヤーブレードを展開し、今まさに近接ブレードで切りかかろうとしているフランスの男に向ける。

 フランスの男はそれを見て、慌てて後退する。

 しかし、私の目的はフランスの男ではない。空振りに終わったワイヤーブレードを操り、兄様の胴に巻きつける。無論、兄様が痛がらない程度に力加減してある。

 仕上げにそのワイヤーブレードを私の方に手繰り寄せる。

 

 

「あ、ありがとう、ラウラ」

 

 

 窮地を脱した兄様はそう仰る。

 普段の私ならこの言葉を聴けば、それこそ天にも昇る気持ちになっていたことだろう。

 しかし私の心には歓喜の念はなかった。そこにあったのは罪悪感と自責の念だけだった。

 どうして私はもっと上手くやれなかったのだろうか?

 力をつけたのは何の為だ。護るべきものは何だ。

 兄様の為に決まっている。

 だが現実を見てみろ。兄様の機体は見ただけで劣勢だったと分かるほど、損傷を受けていた。

 

 ――織斑教官ならどうしていただろうか?

 ――私のように無様な戦いを見せていただろうか?

 ――否。あの人がそんなはずない。もっとうまく、それこそ完璧に護り切って見せただろう。

 

 やはり驕りだったのだろうか。私が兄様を全てから護るなど。

 嗚呼、私も、私も――――

 

 

「ラウラ、織斑君たちが来てるよ!」

 

 

 兄様の声に我に返る。何を考えている。ここから大逆転をすればいいだけだ。これ以上の失態は許されない。

 心にそう決め、兄様の前に出る。

 織斑一夏が教官のものと同じ『零落白夜』を発動させ、私に切りかかる。私は停止結界で奴の動きを止める。

 と同時にフランスの男は左手にショットガン、右手にマシンガンを持ち、それらを兄様に向けて放つ。

 兄様はシールドを掲げ、攻撃に備えようとなさる。

 安心してください、兄様。このラウラが身を挺してお護りいたします故。

 私は躊躇することなく停止結界を解除し、フランスの男と兄様の間に立つ。予想した通り、停止結界を展開させる時間はないようだ。

 

 

「えっ?」

 

「ラウラ!!」

 

 

 今の攻撃で減ったシールドエネルギーを確認する。大丈夫、まだ余裕はある。

 お返しにレールガンを放つ。私の行動が余程意外だったようで、フランスの男は直撃した。

 

 

「シャルル、大丈夫か」

 

「うん、全然平気。心配かけてごめんね」

 

 

 暫くして奴らは動き出した。

 フランスの男が私に向かって先ほどのように撃ってくる。

 今度は冷静に停止結界で無力化する。織斑一夏がこちらに突っ込んでくるので、プラズマ手刀を展開し、備える。

 だが、奴は私を無視した。二度同じ手をくらってなるものか!

 奴に追いすがろうとした私の視界にオレンジが映る。

 反転し、近接ブレードを受ける。

 

 

「邪魔だ。貴様と戯れている暇などない!」

 

「残念だけど、もう少し僕と遊んでもらうよ」

 

 

 ワイヤーブレードを全て放出する。六機の攻撃を暫く凌ぐが、私の方が上だ。六機のうち一機をフランスの男の右腕に巻きつける。

 そしてそれを振り子の原理で壁に叩きつける。

 邪魔者を片付けた私はすぐさま兄様の元へ向かう。

 私が着いた時、兄様は数太刀浴びていた。奴も私に気が付いたようで、兄様に警戒しつつもこちらを向く。

 

 

「思ってたより早いな。シャルルは――――」

 

「安心しろ、貴様もすぐに倒してやる」

 

「じゃあ、俺は鈴たちの分を返させてもら――――っ!?」

 

 

 奴の動きが止まる。私が停止結界を使ったわけではない。奴とは距離が離れすぎている。

 

 

「ライラか」

 

「……ごめんね、織斑君」

 

 

 兄様は奴の気が私に逸れた一瞬を突き接近し、停止結界を発動したのだ。

 そして兄様は自分が卑怯な手を使ったと思い、奴に謝罪をしているが、これはタッグマッチなのだ。隙を見せた奴が悪い。

 

 

「ラウラ!」

 

 

 兄様が大声で私に呼びかけなさる。その声は私に攻撃を促すようなものではなく、危険を知らせるよなものだった。

 フランスの男か……! 壁に叩きつけた後にレールガンで追い討ちをしておくべきたった。詰めが甘かったか。

 しかし、所詮は第二世代。一撃でレーゲンを落とすことは不可能だろう。

 その考えは打ち砕かれた。

 その考えに至ったと同時に、フランスの男が行動する。それは私の想像していたものだった。

 

 

「『盾殺し(シールド・ピアース)』か……!」

 

 

 フランスの男はその破壊力だけならば第二世代最強と呼ばれた武器を構える。そしてさらに瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使い、接近してくる。

 確かに早い。更にその一撃は強力だ。しかし当たらなければ――――いや、当てさせなければいい。『ヴォーダン・オージェ』を使っている私にはその一撃を停止結界で止めれるだろう。

 しかし今回は相手が瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使っているので、ピンポイントで止めなければならない。無論、失敗は許されない。

 失敗すれば、兄様に被害が及ぶ。失敗するなよ、ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 『盾殺し(シールド・ピアース)』が迫ってくる。全神経をこの一撃を止めるために研ぎ澄ませる。

 

 まだ早い。

 まだあと少し待て。

 よし、今だ! 

 

 絶好のタイミング。停止結界を発動しようとした瞬間、失敗するイメージが湧いた。恐らく今回の失態があったので、咄嗟にこんなことが頭に浮かんだのだろう。

 何にせよ、私はその一瞬が命取りとなり、止めることが出来なかった。

 

 

 ズガンッッ!!

 

「がはっ……」

 

 

 思ったよりも重たい一撃が叩き込まれる。だが、まだシールドエネルギーは尽きてない。

 

 

 ズガンッ! ズガンッ! ズガンッ!

 

 

 続けざまに三発放たれる。シールドエネルギーがぐんぐん減っていく。

 私は負けるのか? こんな無様に。

 私が倒されれば、兄様もやられてしまうだろう。滑稽だな。あれだけ護るなど言っておいて、実際は護れなかった。いい笑い話だろう。

 

 嗚呼、私も、私も――――教官のように強くなりたい。

 あの人のように家族を守れるような力が欲しい。

 

 ドクン……と何かが蠢くような感覚がする。

 そして、その感覚の主であるそいつは言った。

 

 

『――願うか? 汝、自らの変革を望むか? より強い力を欲するか?』

 

 

 無論、言うまでもない。よこせ、その力を。対価なら何でも払ってやる。だから力をよこせ!




次回、VTシステムの一件を終了させ、二巻を終わらせるつもりです。……早く四巻の内容書きたいなぁ。


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