IS 全ては兄の為だけに   作:白ウサギ

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投稿が遅れて申し訳ありませんでした。
言い訳をさせてもらいますと、前回の後書きで言っていた閑話を書こうとしまして、途中で行き詰ったわけです。そしてそのままセンター、受験と続きまして全く執筆できる状況ではありませんでした。
本当は閑話投稿時にそのことを伝えようとしたんですが、その閑話できず何の音沙汰もないままでした。
無事、滑り止めには合格しましたので、安心してこちらに取り組むことができるようになりました。
そして前回から言っていた閑話はまだ行き詰っているので、出来上がり次第という形にさせてもらいます。重ね重ね申し訳ありません。
ということで今回は3巻の内容です。


8話

 いつも通りの時間に起きた隣りのベッドを見て私は違和感をどうしても感じてしまう。兄様がいないのだ。

 シャルル・デュノアが実は女で、しかも本名はシャルロット・デュノアと言う。まあ、後者は私としてはどうでもいいがな。

 しかしだ。そのせいで『いくら兄妹だからといっても、やはり部屋は分けるべきだ』という意味の分からん理屈が通り、デュノアと兄様が部屋を交替したのはもうどれほど前だっただろうか?

 何回目か判らない溜め息を付く。ミリオンは()うの昔に超えたはずだ。しかし、最近はめっきりと兄様と会う機会が少なくなってしまった。教室に食堂、そして暇な時間に兄様の部屋に行く時しかない。ダメだ、少な過ぎる。そろそろ私も限界に近い。もう三日も経ったのだ。

 兄様、ラウラはもう一度など言わず、一生兄様と一緒に暮らしたいです。

 

 

 

       † ☆ †

 

 

 

「――ッ!?」

 

 隣りを見れば安らかに眠る兄様のお姿。な、なんだ夢か。まったく、嫌な夢を見たものだ。あれはもう解決したではないか。

 数日前、部屋割りをどうするのか会議になったそうだ。そしてそこであの夢のように兄様と離れ離れになる所だったが、ある教師――私は教官ではないかとおもっている――が「ライラは体が弱いので、彼のことをよく知っているラウラが同じ部屋の方がいい」と進言したと教官から聞いた。織斑一夏のことはデュノアが違う部屋に移ることで話が決まったらしい。

 

「すぅー、すぅー」

 

 兄様はまだ寝ていらっしゃる。低血圧なのだから仕方ないな。しかし、このままでは遅刻してしまうな。

 私は兎も角、兄様のためにも遅刻はよろしくないだろう。準備でもしておくか……。

 

 

 

       † ☆ †

 

 

 

 特に何もなく朝食を摂取し、普段通り登校した。いや、少し兄様が疲れ気味だったな。私としてはあまり思い出したくない先日のことが十中八九原因だろう。

 そしてデュノアが俄かに信じがたいことだが、ISを校舎内で使用して罰を喰らった。

 

「今日は通常授業の日だったな。お前たち、赤点なんぞ取るなよ?」

 

 赤点……確か成績が悪いとなるやつだったな。私とは無縁のものだろう。兄様に関しても私がしっかり教えて差し上げるので問題はない。

 

「それと来週は校外特別実習期間だ。全員準備を怠って忘れ物をした、などという事がないようにしろ。それと三日間だが学校を離れるからといっても、羽目を外し過ぎないようにしろ」

 

 もうそんな時期だったか。気がつけば臨海学校が間近だったな。さて、初日の自由時間をどうしたものか。

 ――――ッ!!

 しまった! 今更になって大変なミスを犯していたことに気がついた。くそっ! 何でもっと早く気づかなかったんだ。

 後悔をしていると兄様が私を見ていた。きっと顔に出ていたのだろう。とりあえず平気だということをアピールしておく。

 若干、疑ってはいたがどうやら納得してくれたようだ。はぁ、私もまだまだだな。

 

「ええっ、山ちゃん一足先に――」

「ずるい! 私にも――」

 

 クラスの女子が何やら喚いているが私にそんなことに構っている余裕はなかった。これは後でクラリッサとじっくり話をする必要があるな。

 

 

 

      † ☆ †

 

 

 

 ここ最近は昼食を織斑一夏、篠ノ之箒、凰鈴音、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、兄様、そして私のメンバーで食べることが多い。篠ノ之、凰、オルコットとはそこまで仲は良くないがな。兄様が楽しんでいるのだから良しとしよう。

 

「そうだ、織斑一夏。お前に聞きたいことがある」

「一夏でいいんだけどな……。で、聞きたいことってなんだ?」

 

 生憎、まだそこまで信用している訳ではないからな。名前では呼ばん。とは流石の私でも今の状況では言わない。

 

「呼び方など今はどうでもいい。まあ、聞きたいことというのはだな……お前、嫁はいるのか?」

「はぁぁ!?」

「どうした、一人ぐらいいるだろ」

 

 先ほどまで楽しく喋っていたデュノア達が急に黙りこくった。どうした? 私は何か変なことでも聞いたか?

 織斑一夏もさっさと言ってしまえばいいものを。何を黙っているんだ?

 

「ラウラ、一夏はまだ結婚もしていなければ、許嫁もいないのだ。嫁がいる筈なかろう!」

「そうよ。箒の言うとおりよ! 大体『一人ぐらい』って二人もいたら問題よ!」

「貴様ら、なに早合点している。私は好きな奴はいるかと聞いただけだ」

 

 再び黙りこくる私を除く女たち。ん? 何やら納得できていないみたいだな。

 

「ラウラ、もしかしてラウラの言ってる『嫁』って篠ノ之さん達が言ってる『嫁』と違うの?」

 

 みな黙っている中、静寂を破ったのは兄様だった。

 しかし嫁の意味が違うだと?

 

「兄様が言っている嫁はどういう意味ですか?」

「えーっと、結婚した女性のことだけど」

「ふむ、私はクラリッサから気に入った相手を嫁にするという風習があると聞きました」

「それ絶対違うわよ。てかそのクラリッサっていう人、随分偏った知識を持っているのね」

「どういう意味だ、凰」

「知らない方がいいわよ」

 

 クラリッサが日本通なのは揺ぎ無い事実だ。まさかあのクラリッサが私に間違った情報を与える訳がない。

 

「話を戻すが、織斑、貴様の嫁は誰だ」

「……ら、ラウラはどうなんだよ」

 

 苦し紛れの言い逃れだな。その程度で私をかわせると思っているのか? だとしたら貴様の認識は甘いぞ。

 

「私は後で――」

「一夏、ラウラはそんなに簡単にアンタを逃がさないわよ。ここは素直に答えておきなさい。じゃないと面倒なことになるわよ」

「そうだ、一夏。遺恨を残さない為にもここは答えておくべきだ」

「一夏さん、ここは鈴さんや箒さんの言うとおりにしておくべきですわ」

「僕も箒たちの意見に賛成かな……」

 

 珍しいこともあるものだ。全員が味方するなど――いや、別に不思議なことでもなかったか。

 きっとこいつらは自分を選んでほしいだけなのだろう。ここは誰を選ぶか見ものだな。

 しかしそうなると誰か一人を選んだ瞬間、乱闘が起こることは間違いなさそうだな。

 

「と、いうわけだ。さっさと吐け」

「ま、まだライラがいるだろ?」

 

 今度は兄様に助けを求めたか。残念だったな、援軍はないぞ?

 

「えっと、僕も聞きたいなぁ」

 

 織斑一夏が絶望しているな、いい気味だ。奴からしたら安全牌を選んだのに失敗したのだからな。当然といえば当然か。

 私からしてみれば、最初から分かりきっていたことだがな。

 兄様は長い間ベッドの上で過ごしてこられた。私がいる時は私が話し相手になっていたが、私もいつもお側にいられるわけでもなかった。そしてそんな時、兄様は一人だった。

 しかしそんな環境も数年前に変わった。シュヴァルツェ・ハーゼができたのだ。シュヴァルツェ・ハーゼはIS配備特殊部隊なので当然ながら隊員も女だけだ。

 そんな隊の中で兄様はマスコット的な存在――私としては不服だが――として扱われていた。そのお陰で暇な時間はほぼなくなったといっていい。

 しかし私以外の女子のする会話など、お菓子の話、化粧品の話、服の話など限れてくる。しかし兄様から聞いた中で一番多かった会話の内容は――恋愛の話、いわゆる恋バナだ。

 その所為か、兄様は他人の恋愛話は大好物なのだ。

 恐らく、他の類の話なら兄様も織斑一夏の味方をしていただろう。運が悪かったな。

 

「これで誰も阻む者はいないな。さっさと吐いてもらおうか」

「お、俺は――」

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 織斑一夏が漸く言おうとした時、タイミング悪く予鈴が鳴った。

 

「も、もう時間だし、そろそろ戻ろうぜ」

 

 あからさまにほっとした様子で織斑一夏はそう言う。それとは正反対に不満そうな織斑一夏を好いている奴らは仕方なく頷いた。兄様もがっかりした様子だ。

 

「そうだな、戻るとするか」

「は、早くしようぜ」

「ああ、この続きは後でゆっくり、じっくり聞かせてもらうがな」

 

 

 

       † ☆ †

 

 

 

 戻る途中、シャルロット・デュノアが唐突に聞いてきた。

 

「ラウラ、一夏が『お前はどうなんだ』って聞いた時、何か言ってたみたいだけど、何を言ってたの?」

「ん? ああ、あれか。『私も後で話してやる』と言おうとした。そうすれば奴も言うだろうと思ってな」

 

 まあ、結局は無駄だったがな。

 

「ラウラの嫁って誰なの?」

「無論、兄様だが」

「……だよね」

 

 興味津々だった表情が一気に落胆に変わったな。それ以外の答えがあると思ったのか?

 

「嫁で兄って性別が矛盾してるよ……」

 

 確かに。兄は男にしか与えられない。そして嫁は女にしか与えられない。矛盾しているな。

 ……いや、待てよ。クラリッサが興味深いことを言っていたな。

 

「兄様は男の娘だ」

「え?」

 

 素っ頓狂なデュノアの顔が印象的だった。

 

 

 

       † ☆ †

 

 

 

 その日の夜、兄様が寝静まってから、ISのプライベート・チャンネルを開いた。

 

「クラリッサ、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ」

『クラリッサ・ハルフォーフ大尉です。どうなさいましたか、隊長』

「緊急事態だ」

 

 気を引き締めたのか唾を飲む音が聞こえた。

 

「来週、臨海学校がある」

『ええ。……そうらしいですね』

 

 部下にすぐに確認させたのだろう、少し間があった。

 

「重要なのはここからだ」

『……心の準備ができました。続けてください』

「初日は自由時間なのだ。そこでせっかくの海なのだ。兄様にも海水浴というやつを楽しませて差し上げたい」

『ええ、そのお心はよく分かります』

「しかしだ、私としたことが今朝までそのことを忘れていて兄様の水着を買っていないのだ」

『一大事ではないですか!!』

 

 クラリッサにも事の重大性がよく分かってもらえたようだ。流石クラリッサだな。

 

「そこでだ。今度の休日に私の水着を買うついでに、兄様の水着を買ってきて差し上げようと思うのだ。兄様には悪いが、私一人で。そこでクラリッサにアドバイスをもらいたい」

『隊長とライラ、どちらですか?』

「どちらもだ。そこには全員揃っているのだろう? 全員の意見を聞かせてもらいたい。なに、『タダで』とは言わん。出してくれた暁には、意見を出した奴に兄様の写真を好きなだけくれてやる」

 

 少し経ってから歓喜の叫びが聞こえた――ような気がする。

 しかしこれは限りなく事実に近い予測だ。何せ兄様は人気だからな。妹としては鼻が高い。

 

『満場一致で賛成です。暫くお待ちを、今考えさせているところです』

「焦ることはない。時間はまだある。兄様のものについては己の中で最高のものを出させるように指示しろ」

『はっ!』

 

 さて、どんなものが出てくるか楽しみだ。




とりあえず、原作でいうところの水着を買う話くらいまでは終わらせました。買い物のシーンは全く書いていないですけどね。
次回は臨海学校です。まだ少し感覚が戻っていないので少し時間が掛かるかもしれませんが、温かい目で見てください。
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