幸せなネギ   作:スターゲイザー

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朝起きた時に布団の中でふと湧き上がったネタです。

村の襲撃時にナギの超絶的な力に魅せられ、力に魅入られたネギとどちらにしようかと迷いましたがとりあえず本作スタートです。





第一話 再会の父子

 

 

 バタフライ効果、という言葉がある。非常に些細な小さなことが様々な要因を引き起こしだんだんと大きな現象へと変化することを指す言葉である。

 蝶がはばたく程度の非常に小さな撹乱でも遠くの場所の気象に影響を与えるというのが最も分かりやすい引用であろう。

 

 ナギ・スプリングフィールドがフィリウス・ゼクトの体を乗っ取った造物主との決戦時に何の対策も取っていなかったのか。

 これは、殺せば造物主に乗っ取られる可能性に気付いて一つの策を施していたからこそ始まる物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イギリスのロンドン空港から日本の羽田空港に降り立ち、電車に乗って埼玉県にある目的地である麻帆良学園都市にやってきたネギ・スプリングフィールドは疲れ切っていた。

 

「よ、ようやく着いた……」

 

 事前に調べたはずなのに首が一回転しそうなほど悩みながら難解な日本の路線図を前に格闘したことを想起しながら、登校する為に走っていた生徒達を見送って一番最後に電車から降りる。

 

「日本の学生って凄い」

 

 電車から降りると走って改札を通過し、あっという間に遠くなっていく姿を見送ったネギも、無くさないようにスーツの胸ポケットに入れていた切符を取り出そうとした。

 

「あっ、ない!? って良かった反対に入れてたんだった」

 

 手に何も引っ掛からなかったので心臓がビクンと跳ね上がったが、反対側のポケットを探ったらちゃんと切符があったので大きく息をつく。

 しかし、改札を前にしてネギは固まった。

 

「切符をどうしたらいいんだろう?」

 

 自他共に認める田舎者であるネギは電車に殆ど乗ったことが無い。

 乗る時は買う段階で困っていたら親切な駅員に教えてもらって改札を通れたのだが、降りた後の改札を通る時も同じでいいのかと悩む。

 

「学生さん達は何かを押し当ててたけど……」

 

 人数が多すぎてしっかりと見たわけではないが学生達は改札に手の平サイズの何かを改札のところに押し当てていたように見えた。

 電子化が進んで通学時には通学定期代わりにICカードが使われているなどネギが知るはずもない。

 

「ど、どうしたら」

 

 しかもネギの目の前の改札機には電車に乗る前に切符を通した穴がない。

 ICカードが普及している麻帆良では、切符を通せる改札は一番端にある。

 目の前の改札機は利便性を考慮してICカード専用機になっているのでネギは更に悩む。

 

「おぉい、ネギ」

 

 涙目になって駅員に頼もうとした時だった。改札の向こうから成人男性の声がネギの名を呼んだ。

 

「…………お父さん!」

 

 困っていた時だけに、聞こえた声にホームにいる駅員の下へ行こうとしたネギは喜色満面になって振り返った。

 直ぐに改札の向こうにいる父の姿を見つけ、そちらに向かって走り出す。

 

「あだっ!?」

 

 当然のことながらICカードや切符を通さずに改札を通ろうとすればストッパーが発動するのも当然のこと。

 走っていた勢いもそのままにストッパーに激突するネギ。

 

「何やってんだ、ネギ」

「うぅ~」

 

 全く予想もしていなかった痛みに涙目になりながらナギを見上げながら切符を見せる。

 

「ああ、ここらのやつはICカード専用のばっかだかんな。そっちの端の奴は切符が使えるからこっちに来い」

 

 ナギに言われた通り、端にある移動して無事に切符を通すことに成功したネギは改札を通ることが出来た。

 

「ま、なんだ。久しぶりだな、ネギ」

「はい、お父さん」

 

 なんとも締まらない再会ではあったが、久しぶりなこともあって面映ゆいネギはもじもじとナギの前で指を擦り合わせた。

 

「…………って、何をやってるんですか?」

 

 魔法学校を卒業した時に祝いにナギがイギリスにやってきた時以来だから、実に半年ぶりの再会に何を言ったらいいか分からないネギが顔を上げると、ナギは腕を広げた姿勢のまま動かない。

 

「何って感動の再会を抱擁で分かち合おうっていう親心だよ」

「もう、僕はそんなに子供じゃありません」

 

 と、プリプリと言いつつも万言の言葉を費やすよりもこの気持ちを表す行動はないと信じているナギに絆されたネギはその胸の中に飛び込む。

 

「大きくなったな」

「半年じゃそんなに変わりませんよ」

「いいや、お父様には分かるね。また重くなった。つまりは大きくなったってことだろ」

 

 抱き抱えられて父の匂いを全身で感じながら、それは単純に背負っている鞄の重さもあるのではなかろうかという突っ込みをネギは控えておいた。

 感動の再会を喜び合いたのはネギも同じなので無粋なことはしないのだ。

 

「じっくり話し合いてぇけど、時間が時間なもんで急ぐぞ」

「それって僕が遅れちゃったから……」

 

 抱擁が解かれて下ろされたネギは、自分が電車を乗り間違えた所為でナギに迷惑をかけたのではないかと不安な表情を浮かべる。

 

「日本の交通が分かり難いことは俺も知ってたのに迎えにも行かなかったんだ。悪いのは俺だ。すまなかったな」

 

 割と早い段階で気付けたので予定時間よりも数十分の遅れで済んだが、迷いやすいことで有名な日本の交通事情を考えればそれだけで済んだだけで十分。分かっていながら迎えにも行かなかった自分の不手際だとナギは謝った。

 

「学校があるんだもの。仕方ないよ」

「だとしても誰かに迎えに行かせることぐらいは出来たんだ…………って、話してたら余計に時間が無くなっちまうか」

 

 このままでは堂々巡りになるだけだと察したナギは話を打ち切る。

 

『学園生徒のみなさん、こちらは生活指導委員会です。今週は遅刻者0週間、始業ベルまで十分を切りました。急ぎましょう。今週遅刻した人には当委員会よりイエローカードが進呈されます。余裕を持った登校を…………』

「こりゃ、いけねぇ。急ぐぞ」

「うわっ」

 

 突如として鳴り響いたアナウンスに顔を上げたナギは問答している時間の無さに気付いて、ネギを抱え上げておんぶする。

 

「揺れるかもしれねぇが我慢してくれ」

 

 ネギをおんぶしたままナギはそう言って走り出す。

 ネギを気遣って重心を全く揺らさないまま走り出したナギは瞬く間に最後尾を捉える。

 

「お父さん、凄く早い!」

「ははっ、偉大なお父様をもっと褒めろ」

 

 魔力や気で強化など全くせずに、純粋な身体能力だけで走るナギの背で快哉を上げるネギはどんどん流れていく風景に笑みを浮かべる。

 

「もっと早く!」

「任せろ!」

 

 ネギが喜んでくれるならばなんのその。

 限界近くだった速度を更に上げて、バイクの二人乗りをしながら肉まんを売る者やインラインスケートなどを履いて路面電車につかまっている者等を瞬く間に追い越す。

 

「日本って木造建築じゃないんだね。さっきの改札機もハイテクだったし、日本じゃないみたい」

「流石にサムライが刀を差してどうこうって時代じゃないからな」

 

 はぁ~、と息を吐き出して目の前に広がる麻帆良学園都市の光景に少し圧倒されているネギに苦笑するナギ。

 

「さあ、もっとスピードを上げるからしっかりと捕まってろよ!」

 

 更にグンと速度が上がり、ネギは振り落とされないようにナギの首にしっかりと捕まる。

 勿論、首が締まらないように持ち方には気をつけて。

 

「――――ていやっ」

 

 瞬く間に流れていく風景にネギがかんらかんらと笑っていると、どこか抑揚の薄い声が聞こえたと思ったら急に視界がクルリと回った。

 

「おっと」

 

 突然、足払いをかけられたナギは慌てることなく、走っている勢いもあって前方数メートル先に空中で五回転して足から着地する。

 

「なにすんだ、明日菜…………って、ネギィィィィ!?」

 

 足払いを仕掛けた少女に文句を言おうとしたナギは背負っているネギの手がダラリと垂れているのを見て異変を感じ取った。

 五回転をした当人はともかく、全く心の準備もしていなかった上に一瞬で回りきったことでネギが完全に目を回していた。

 

「私、悪くない。ナギ、悪い」

「なんで片言なん?」

 

 ネギを下ろして恋人が死んだかのように慟哭を上げるナギをドヤ顔で見下ろす明日菜に突っ込みを入れる関西弁少女の木乃香。

 

「理由はない」

 

 フンスー、と鼻息を漏らした明日菜の首にはカメラがかけられており、慟哭を続けるナギの姿をしっかりと写真に収めていたりする。

 

「これで一万は固い」

 

 とは、明日菜が漏らした物欲に染まった眼が見据えた未来であった。

 

「最近、明日菜が分からんわ」

「木乃香には三十分早い」

「微妙に現実的なのがムカつくわ。というか、なんでそんなに早いんや。三十分経ったら何が分かるん?」

「ひ・み・つ」

 

 このピースをする大親友のことが良く分かりません、とは木乃香の常日頃からの悩みである。

 

「おいおい、明日菜さんよ」

 

 地面に寝かせたネギから鞄を外させて枕にしつつ、どこぞのヤンキーの如くメンチを切りながら明日菜へと近づいていくナギ。

 

「いきなり人に足払いかけて来やがって、何やってんだオメェはよ」

「近い。無駄に近いから」

 

 麻帆良で抱かれたい男№1の称号を長年獲得している男に近づかれたからといってトキメキもしない明日菜は、ナギの顔をむんずと掴んで押し返す。

 

「何やってるって聞きたいのはこっちの方よ。周りの目を考えなさい」

「周り?」

 

 周りの目と言われてもナギには心当たりが全くない。

 取りあえず、首を巡らせてみれば登校途中のはずの生徒達が固まって自分達を凝視している。

 

「どうした、お前ら?」

 

 生徒らがどうしてか自分達、それも自分とネギを凝視していることに気付いたがその理由が分からなくて首を捻った。

 

「みんなの気持ちを代表してうちが聞くわ」

 

 明日菜を除いて一番彼らに近い場所にいた木乃香はみんなからの無言の圧力を受けて一歩前に出る。

 

「ずばり、聞くでナギ先生」

「おう、ドンと来い」

 

 なんとなく聞かなければならないと判断して身を正したナギはゴクリと息を呑む。合わせてみんなの緊張も高まって行く。

 

「そのナギ先生そっくりの子はなんなん?」

「何って……」

 

 手汗が滲んでいる木乃香に対して、聞かれたナギはそれがどうしたのかと逆に聞きたい気分で続きを口にする。

 

「俺の子だけど」

 

 子、俺の子、子供…………ナギの言葉がみんなの脳内でリフレインしたり、口に出したりして微妙に変わって行く。

 しかし、与えた衝撃はとても計り知れないもので携帯を取り出して何やら打ち込んでいる者もいて、ナギが有名人であることも考えれば一時間後には麻帆良中に広まることだろう。

 

「ほんまにそっくりやから疑う気はないんやけど、独身ちゃうかったんや」

「そんなこと一言も言ったことないぞ?」

「彼女や恋人はいないとは言ってたけどね」

 

 木乃香の驚きはこの場にいる少数を除いた全員の驚きであったが、分かっていて正さなかった明日菜のドヤ顔は留まるところを知らない。

 

「じゃあ、ナギさんは」

「結婚してるし、こいつは俺の子供のネギ・スプリングフィールドだ。仲良くしてやってくれ」

 

 明確な言葉として放たれた証明は静かに響き渡って行く。

 事実を呑み込む時間は十分にあって、どうしたのかと訝しむナギが首を捻った後に全員が受け止めた。

 

『ええ――ッ!?』

 

 その場にいる全員が異口同音に驚きを露わにした。

 

「はっ!? アップルパイなんて食べてないよ、お母さん!」

 

 まだ目を回していたネギは集団の大声に鞄から起きあがり、ここにはいない誰かに向かって何かの釈明を行う。 

 

「これでみんな遅刻が確定。しかし、私は進むのだ」

 

 木乃香の質問ターンに入った段階で、嵌めている腕時計で時間を確認した明日菜はドヤ顔のまま一人で先に進む。

 

「アリカのアップルパイは絶品だよな。盗み食いしたくなる気持ちは良く分かるぞ、ネギ」

 

 ネギの寝言っぽい何かに深い共感を示したナギの頭上遠い空の上で、アホーと烏が鳴いた。

 

 

 




次回から『魔法先生ナギま!』が始まるのだ…………………というギャグは置いておいて、

本作において、十年前の造物主との決戦時に憑依されても乗っ取られなかったIFの世界です。アリカも生きていてイギリスにいます。

だが、何故ナギだけは日本にいて一緒に暮らしていないのか、一切身体強化を使わなかったのか。それらは全て繋がっています。

本作はタイトル通り、ネギが幸せな物語であります(嘘じゃないよ!)

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