幸せなネギ   作:スターゲイザー

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古本屋で『ぐらんぶる』を立ち読みした結果、近年ないぐらいに笑ってしまいました。
大人買いをしてじっくり読んだ結果、ギャグ物が書きたくなった影響で今話は出来、ネタに走っています。



第四話 ネタに走ってはいけない

 

 

 

「ん?」

 

 放課後、西欧文化の流れを汲んだ石像を中心に置いた広場でサイドポニーの少女とすれ違った時、ふいにネギは顔を上げた。

 

「あれは、27番の宮崎のどかさんだったけ。たくさん本持って危ないな」

 

 見覚えのある少女にクラス名簿を取り出して確認したネギが不安を帯びた顔で見つめる視線の先で、宮崎のどかは手すりの無い階段を大量の本を持ってヨロヨロフラフラと危なっかしく階段を下り始めた。

 

「っ!? やっぱし!」

 

 ネギの危惧通り、足を踏み外したらしく大きく本が散らばり姿勢を崩したのどかが階段の外側に落ちた。手摺がないので十メートル近い高さから真っ逆さまに落ちていく。

 

風よ(ウェンテ)!」

 

 ネギは咄嗟に手に取った杖を落ちていくのどかに向け、魔法を発動して風を生み出した。そして自身もまた風になったかのように疾走する。

 地面に落下直前ののどかを風が押し留め、その間に走り寄ったネギは見事に受け止めた。肩とスカートの下の剥き出しの太腿を抱き留め、走る勢いを止める為に足を踏ん張ってブレーキをかける。

 

「危なかったぁ……」

 

 土下座の近い姿勢で安堵するネギの腕の中でのどかは目をパチクリとさせていた。どうやら現実を認識できていないようだ。

 

「大丈夫ですか、宮崎さん?」

 

 父親を見ても将来はイケメン確定の、現在は可愛い系の顔立ちのネギに微笑みながら聞かれたのどかの目の前には、夢心地から現実に引き戻されても夢のような人物の顔があった。

 自分でも確実に死んだと思われたのを救われたこともあって、コテコテ系の少女漫画の愛読者であるのどかの精神は上下左右に振りきれた。

 

「王子様……」

「へ?」

 

 世が世ならば、それほど離れていない敬称で呼ばれたネギはのどかが頭を打ったかと、髪の毛ごと頭を撫でながら心配する。

 それがのどかの印象を更に上昇させることなど考えもせず、うっとりとしたその表情に困惑していたネギは顔を上げて固まった。

 

「あ」

「…………」

 

 ネギの視線の先には先程すれ違ったばかりの、同じようにのどかを助けようと駆けつけたらしいサイドポニーの目付きが鋭い見覚えのある少女――――桜咲刹那が立っていた。

 

「あ……いや、あの……その」

 

 のどかが落ちてネギが飛び出してから数秒程度しか経っていない。

 ネギが魔法を使ったところは、距離的に刹那も見ていただろう。

 

「…………あなたは!!」

 

 のどかがうっとりとし、ネギと刹那は互いに動かなくなったまま見つめ合いが続いていたが、遂に状況が動いた。

 魔法を目撃してしまった刹那がネギの襟首を掴み、有無を言わせずに走り出した。

 確実に魔法を見られたタイミングであったネギは固まってしまって、上手く抵抗することも出来ずに攫われて行ってしまった。

 

「せ……先生?」

 

 視界からネギが消えたことで、ようやくのどかが現実に帰還した頃には子供を抱えて全力疾走するという力技を成し遂げた刹那。

 街路樹が生い茂る場所にまでやってきた刹那はネギを木に押し付ける。形的には壁ドンみたいな感じで。

 

「あ、あなたは人前で、い、一体何をやってるんですか!」

「ちがっ」

 

 太目の幹に背を当てて、刹那の両腕によって逃げられない状態のネギは必死に抗弁しようとした瞬間、刹那の背後から流れた風が彼女の髪の毛を揺らした。

 

「は」

「は?」

「は、は……ハッ」

 

 揺れる髪の毛はまるで計ったかのようにネギの鼻先を擽った。

 

「ハクチンッ!!」

「っ!?」

 

 目の前のネギから急激な魔力の高まりを感じ取った刹那は咄嗟に気のオーラを纏ったが、あまりにも遅すぎた。

 くしゃみによって暴走した魔力に反応したネギの得意属性である風の精霊が反応して激風を放ち、気のオーラで守られた刹那の服をはだけさせる。

 制服のボタンが弾け飛んで前が全開になり、スポーツブラもずり上がって片乳が露出し、スカートのホックも外れてずり落ちた。

 

「なっ、え、あ……」

 

 今の状況をジワジワと認識した刹那が露出している片乳を手を隠した正にその瞬間だった。

 

「なんだろう今の風は?」

「スカートが捲れてもうたわ」

 

 丁度、通りかかった神楽坂明日菜と近衛木乃香が草むらを掻き分けて顔を覗かせた。

 

「……………」

 

 刹那が壁となったことで返って来た風がネギのスーツのボタンを吹っ飛ばしていた。前が全開となり、くしゃみをしたことでズズズと鼻水を啜って涙目になっているネギの顔の直ぐ横には刹那の手。そして刹那は半裸に等しい状況で羞恥で顔を赤らめていた。

 しかし、見方を変えれば別の状況にも見える。

 

「襲われている少年と襲っている痴女」

 

 明日菜が見た状況から類推出来る考えを述べた。

 ネギが顔を横に向けながら涙目になっている姿は襲われている恐怖で泣いていると見ることも出来るし、刹那の顔が赤いのは興奮の為で片乳を隠しているのもスポーツブラを自分で上げたからだと邪推することも出来る。

 

「ち、違います!!」

 

 当然ながら刹那にそんなつもりはなく、必死に否定するが口下手なこともあってそれ以上の否定の言葉が咄嗟に出て来ない。

 

「何が違うの?」

「これは――」

 

 絶対に分かっているであろうニヤニヤ顔で訊ねた明日菜に、真実を話そうとした刹那はピタリと動きを止めた。

 

(魔法のことを言えない!?)

 

 不用意に使用した魔法のことを怒ろうとして、更に魔法の暴発をしたネギによって半裸状態にされた今の状況を誤魔化して説明できるほど刹那は頭も要領も良くなかった。

 

「ぅ、ぁ……」

 

 刹那の口からまともに言葉が出ない。それに比例して最初は驚愕を驚愕そのものといった木乃香の顔から感情がどんどん抜けていく。

 何かを言わなければ、何かを言わなければ、と思うほどに刹那の唇は上下で張り付く悪循環。

 

「せ、先生も何か言って下さい!」

「えぅ!?」

 

 階段を転げ落ちるように混乱を深めた刹那が縋ったのは、未だに顔の横に刹那の右腕があるネギは突如として話の嘴を向けられて目を見開いた。

 

「…………桜咲さんは何も悪いことはしてませんよ! 悪いのは全部僕なんですから!!」

 

 ネギとしては魔法を使ったのは自分で、魔法を暴発させて半裸にさせたのも自分だからそう言うのも当然だった。

 ただ、日本に来てから花粉症気味のネギの目から涙が一筋零れ落ちなければ。

 

「木乃香」

 

 ますます面白そうな展開にニヤニヤが止まらない明日菜は、混乱を深めていく刹那に比例して能面の如く無表情な木乃香の名を呼んだ。

 

「判決は?」

有罪(Guilty)

 

 親指を立てて首を掻き切る動作をした後、その親指を下へと向けた木乃香の顔を見た刹那はこの世の終わりを見たかのようだったと後に明日菜は語ったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体、桜咲に何があったんだ?」

 

 ネギの歓迎会の場で2-Aの担任であるナギは口から魂が出ている刹那を見て率直な感想を漏らした。

 

「僕にも何が何だか」

「ぷくく……わ、私にも……さ、さっぱり……」

 

 本気で分からない様子で頭をコテンと傾けるネギに、絶対にお前は分かっているだろうとばかりに思い出し笑いをする明日菜の横で菩薩の如き表情を浮かべている木乃香。

 

「取りあえずネギは悪くないぞ。うん、絶対」

 

 生徒よりも息子を優先することにしたナギはそう言ってネギの頭を撫でる。断じて木乃香を見ているだけで寒気がしてくるのから逃げたわけではない。

 

「それでいいんかい教師」

「生徒間の問題に、下手に男の俺が首を突っ込むとセクハラだなんて言われかねないしな」

 

 ナギが関わってくれた方がもっと面白くなりそうだと明日菜が唆そうとするが、女生徒間の問題に異性が首を突っ込むとややこしい問題になることは新人教師時代の経験で痛感したナギは二の足を踏んでいた。

 

「つうわけで、頼んだぞタカミチ」

「なんでそこで僕の名前が出て来るんですか」

 

 出張帰りでネギの歓迎会に参加した高畑が突然のフリに突っ込みを入れる。

 

「副担任は担任の補佐をするものだろう?」

「え、僕がおかしいんですか? というか、自分で男が関わるとセクハラに言われかねないって言いましたよね。僕も男です」

「んなむさ苦しいオッサンを女と間違える奴はいねぇよ…………別にお前なら何言われたっていいだろ、結婚するんだし」

 

 謎の超理論に額を抑えた高畑は自分が間違っているのかと自問自答し、間違っていないと確信して手を離す。

 

「その理屈はおかしいですよ」

「幸せな奴は死んだ方が世の中の為じゃないか」

 

 冷静に言ったら、また変な超理論が返って来た高畑は考える人になった。

 

「ナギ先生、その理屈で言うと私も死んだ方がいいですか?」

「いや、これはタカミチにだけ適用される方だから、源先生はもっと良い奴を見つけた方がいいぞ」

「高畑先生以上の人は私にはいませんよ」

「またまた、冗談を」

 

 あらあらうふふ、と左手の薬指に嵌められた結婚指輪をこれ見よがしに周囲に見せることで最近評判の源しずな(近々、源から高畑に苗字が変わる予定)の問いに対する返答は、バッサリと高畑が抱くナギへの憧れを失わせる十分な物であった。

 

「な、ナギさん、な、何を、言ってるんですか」

「俺のことを知ってるくせに幸せになろうとするお前が悪い」

 

 歯に衣着せぬ率直過ぎる妬みに、息子か娘が出来たらナギからあやかって『凪』か『薙』とでも名付けようかと先走っていた高畑を現実に叩き落とした。

 

「ナギさん、あなたには失望しました。心底からね」

「はっ、俺は昔から失望していたさ。具体的にはタカミチが婚約した時からな!」

 

 二人共に立ち上がって虎と龍のイメージをバックに対峙する。

 

「本当にあの二人は仲が良いわね」

「え、そうなんですか?」

「このやり取りも、これで二十八回目だったかしら? 二、三日に一回はしてるのよ」

 

 二人の間でオロオロとしていたネギをしずなが招き寄せ、サラサラの髪を撫でながら自分もこんな子供が欲しいなと思いながら教える。

 

「亡きガトウに代わってお前に教育を施してやろう!」

「勝手に人の師匠を殺さないで下さい!!」

 

 高度な肉体戦術の武闘に武闘派の古菲と長瀬楓が最前席で齧り付きで見ようとして吹っ飛ばされていた。

 

「男の友情って女には入れないのよね」

 

 少し寂しいわ、と言いながらも幸せそうなしずなの後ろで、楓が天井に穴を開けて首から宙ぶらりんになり、古菲が窓を割りながら外へと飛んで行っている。

 

「本当に止めなくていいんだろうか……」

 

 更に肉体闘争を高めている二人にネギは頭を捻りまくっているが、他の生徒達は煽り立ててどっちが勝つかの賭けをしているぐらいで、多少なりとも交流がある明日菜の方を見てみた。

 

「なんのつもりなん?」

「私の、誠意です」

「土下座が誠意って凄いわね」

 

 仁王立ちする木乃香の前で土下座をしている刹那の姿に、腕を組んで遠い目をする明日菜を余所に「ジャパーニズドゲザ!」と日本にカブれたネギの目が輝いた。

 

「足らんわ」

 

 木乃香は近くにあった椅子にドカリと座り、スカートをヒラリとさせながら足を組む。

 舞い上がったスカートの奥の白い布をしっかりと見逃さなかった刹那の顔が、性欲が滾って表面化した男子中学生みたいな顔になってしまった。

 

「その顔、誠意を見せる気あるん?」

 

 鼻下を伸ばした刹那に、人を舐めているのかと、木乃香の顔面に青筋が浮かぶ。

 

「勿論です! かくなる上は」

 

 過ちに気付いても性欲が暴走する年頃の刹那の頭の中には木乃香のパンツしかなかった。

 

「…………久しぶりにキレたわ」

 

 土下座から足を伸ばして土下寝の体勢に移行した刹那に木乃香の青筋は全身に広がっていた。

 

「な、何が悪かったというのですか!? 長の友人という方から教わった最上級の謝罪のポーズなのに……」

「それ、おちょくられてるだけだから」

 

 恐らくあの筋肉ダルマだろうな、と以前に京都に共に足を運んだことがある明日菜はのほほんとして突っ込んだ。

 

「ば、馬鹿な!?」

「せっちゃんが性犯罪者になる前に、うちが真人間に矯正したる」

 

 本気で信じていた刹那はガバッと体を起こしながら驚愕し、木乃香は闇のオーラを纏ってどこからか『一トン』と書かれた巨大なハンマーを取り出している。

 刹那は考えた。考えて、考えて、考え抜いた。

 

「大丈夫や。きっと痛くない。小さな男の子に興味を示す悪いところも一発で吹っ飛ぶで」 

「矯正どころかあの世へ吹っ飛びそうよね」

 

 考えに考え抜いた果てに刹那に名案が浮かんだ。

 

「私が興味があるのはこのちゃんだけです!!」

 

 迷案だったようだが、叫んだ本人は気付かなかったらしい。

 

「せ、せっちゃん……」

「このちゃんの足、手、胸、尻、顔、耳、鼻、口…………私が興奮するのはこのちゃんの物だけなんです、信じて下さい!!」

 

 それは信じてはいけないだろう、と面白そうだからツッコミを自制した明日菜は笑いそうになる口を必死に抑える。

 

「寝る前にこのちゃんがプリントされた抱き枕にキスをして! 葉加瀬さんにお金を積んで作ってもらったこのちゃんの声を切り貼りして作った目覚まし時計で起きる時にはこのちゃんの『おはよう、せっちゃん。早くお・き・て♪』の声で起き! 日中も五分に一回はこのちゃんの裸を想像して興奮して欲情しているこの私が!」

 

 人間として終わっている告白に明日菜がドン引きしている最中にも刹那の叫びは止まらない。

 

「ネギ先生如きなど襲うはずがあるわけがないじゃないですか!!!!」

 

 一世一代の告白の如き全力のシャウトは教室中に轟き、肉体闘争をしていた高畑とナギも動きを止めた。

 

「せっちゃん……」

「このちゃん、信じてくれるんですか?」

 

 一瞬で氷河期が来たかの如く固まった教室の中で、体を起こしている刹那の肩に手を置いた木乃香はフッと笑った。

 

「――――正直、キモい」

「ガフッ」

「けど、気持ちは伝わったで」

 

 五分に一回は欲情していると言われて嫌悪感も露わに吐き捨てた木乃香に、ショックで血を吐いて心臓が止まって床に倒れ込んだ刹那はその後に続けられた言葉を聞くことはなかった。

 

「あ、あの桜咲さんは何を言ったんですか?」

「子供はまだ知らなくて良いことよ」

 

 教育上、子供が聞くにはよろしくない言葉の羅列にネギの耳を塞いでいた明日菜は、倒れ込んだ刹那に敬礼をして真実を話す為に木乃香へと近寄る。

 

「あの、ネギ先生」

 

 また刹那の半裸写真で買収、もとい説得しようとしている明日菜を見ていたネギに声がかけられた。

 

「宮崎、さん?」

 

 振り返ったネギはヘアピンで目がハッキリと見えている少女が最初は誰だろうと思ったが、先程の明日菜達のやり取りで深く関わった宮崎のどかであると直ぐに思い当たった。

 

「さっきは危ないところをありがとうございました」

 

 男が苦手なのどかは担任・副担任のナギ・高畑にも理由がなければ近づけないにも関わらず、この急接近に教室中の関心が集まっていた。

 

「い、いいえ、お怪我がなくて何よりです」

 

 魔法のことに気付かれていないかと内心動揺していたから、のどかの目に宿る熱情に気付けない。

 

「それでなんですけど」

 

 日本人は礼節に拘ると聞いていたので、その通りなのだなとネギが感心しているとのどかは決心を固めたように一歩前に出た。

 

「私と一緒の墓に入って頂けませんか?」

 

 一瞬、世界から音が消え去った。

 

『ん?』

 

 音は直ぐに戻って来たが、あまりにも予想外過ぎるのどかの発言に全員が目から黒目を消失させながら頭を捻った。

 

「…………のどか、それは流石に先走り過ぎではないのですか?」

 

 先走るどころか最後のゴールにまで到達しているのどかに、唆した綾瀬夕映すら動揺していた。

 

「どうして? 最終的には一緒なのに」

 

 宮崎のどかは混乱していた、暴走していた、トチ狂っていた。

 

「こう、世の中には段階というものが」

「よくぞ言ったな、宮崎」

 

 白魔法使い・夕映の状態異常治療は間に合わず、魔王・ナギが闇のローブを纏って君臨する。

 

「ネギを俺から奪おうとは片腹痛い。やはり人間とは度し難いものだ」

「で、出てる!? なんか出てますってナギさん!!」

 

 人間に絶望した所為でナギの足下から造物主の触手が這い上がってローブの形を形成しているのに気づいた高畑が戦々恐々としていた。

 

「宮崎さん、お待ちなさいな!!」

 

 そこへ賢者・雪広あやかが委員会の都合で遅れて教室に現れた。

 

「ネギ先生はわたくしの物ですわ!」

 

 魔王・ナギが第二形態へと移行し、高畑が闇に捕まった。

 

「いいんちょ、いいんちょ」

「なんですのハルナさん。わたくしは宮崎さんを止めなければ」

 

 勇者・のどかと敵対しようとしている賢者・あやかに遊び人・早乙女ハルナが背後に現れる。

 

「合法的にネギ先生に『おねえちゃん♪』って呼ばせる方法があるんだけど」

「聞きましょう」

 

 遊び人に賢者は惑わされるものである。

 

「のどかと養子縁組したら、のどかとネギ先生が結婚したら法律上で義姉弟になるじゃない。ほら、合法的にお姉ちゃんじゃない」

 

 魔王は第三形態へと移行し、高畑は魔王の眷属にされてしまった。

 

「し、しかし、のどかさんを雪広家の養子するのは彼女の親御さんのことを考えれば」

「何を言ってんの? いいんちょが宮崎家の養子になればいいのよ」

「はっ!?」

「これで誰も悲しまないでしょ」

「確かに……」

 

 自分の親はいいんかい、と冗談でこうなったら面白いなとハルナに話した夕映が遠い目をして現実逃避をする。

 

「あなたに協力いたしますわ、宮崎さん! わたくしの誇りにかけてネギ先生を結婚させてみせますわ!!」

「ありがとう」

 

 勇者・のどかは仲間となった賢者・あやかに強く頷き、遂には最終形態へと至った魔王・ナギと中ボスとなった高畑に向かってゆく。

 

「ネギ先生は頂きます」

「させんぞ、小娘」

 

 勇者と魔王の世紀の一戦が始まる……。

 

「…………バカばっかりですね」

「原因の一端を担ってるお前が言うな」

 

 何も見なかったことにして黄昏ている夕映に、最初から現実逃避をしていた長谷川千雨が壁の花に成り切れずに突っ込んだ。

 

「止めて下さい! 僕の為に争わないで!!」

 

 世紀の一戦はぶつかり合うその一瞬前に、囚われの姫・ネギの懇願で止まった。

 魔王・勇者の一行は最終的に囚われの姫・ネギのハーレムに入ることで合意し、一時休戦を決めたらしい。

 

 

 





最近、古本屋に行っても昔の本が無い。電子書籍の影響なのかもしれませんが、紙で読みたい派としては悲しい限りです。

ぐらんぶるの原作の人の『バカとテストと召喚獣』を買うか迷い中。

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