エヴァだけ強くてニューゲーム 限定版   作:拙作製造機

1 / 28
ノリと勢いだけのものです。過度な期待はしないでください。

十五段階改造……第三次αのスペシャルモードでの改造段階。本来は十段階しか出来ないので、これを終えると元々高い性能が更に高くなって手が付けられない。その気になればゼルエルを単機で撃破出来るレベル。

フル改造ボーナス……上記のようにHPや装甲などを全て改造し終えると、移動力や地形適応、射程などを伸ばす事が可能になる。本来はどれか一つしか選べない。


第一話 F型、襲来

 碇シンジは目の前の物に目を奪われていた。それは巨大ロボットと表現するのがしっくりくる存在。紫色をしたそれは、静かに彼を見つめているように思えた。

 

「……これに乗れって言うの?」

「そうだ」

 

 振り向いて久方振りに再会した父へ問うシンジ。それに対する答えはあまりに短い。そこに感情らしい感情はない。それでも、シンジは不覚にも嬉しかった。自分へ父は関心を向けていると思えたから。

 

(これに乗れば、父さんはもっと僕を見てくれるのかな?)

 

 正直乗りたくはない。それでも、シンジにとっては唯一と思える父との繋がりであった。突然の呼び出し。唐突な話。どれも実の子にするようなものではない。それでもシンジは賭けてみようと思った。何故だが、傍にある謎の存在がそうしろと言ってくれた気がしたのだ。

 

「分かった。乗るよ。乗ればいいんでしょ」

「説明は赤木博士から聞け」

 

 それだけ告げ、少年の父は背を向けた。それでもいいと、そうシンジは思った。今はそれだけで十分だ。後はこの後の結果次第。と、その時その場が大きく揺れた。シンジの頭上へ巨大な落石が迫る。しかし、それは彼へ届く事はなかった。

 

「……え?」

 

 巨大な手が彼を守るように動いていたのだ。

 

「守って……くれた?」

 

 その声に呼応するように紫色の巨人はその手を戻す。周囲の者達も呆気に取られていた。だが、それも僅か。さすがに状況が状況だ。一刻を争う以上、いつまでも惚けていられない。そう慌ただしく動き出す周囲を余所に、シンジは自分を守ってくれた存在へ小さく呟く。

 

―――ありがとう。

 

 そして、彼は最低限でさえない説明を受け、その巨人へと乗り込む事となった。聞こえてくる声に返事をしながら、彼は不思議な感覚を覚えていた。

 

(知っている気がする……。いや、正確には教えてもらっている気がする)

 

 ゆっくりと自分ではない自分から操作などの情報をレクチャーされている。そんな感覚を覚えながら、シンジは赤木リツコや葛城ミサトの言葉へ返事を返していく。やがて、準備が整ったのか緊迫感が通信から漂い始める。

 

『シンジ君、何度も言うけど乗ってくれてありがとう』

「いえ、僕だって自分のために乗り込んだんです。気にしないでください」

『それでもよ。必ず生きて帰ってこられるように精一杯支援するわ』

「お願いします」

『シンジ君、まずは動く事だけ考えて。戦い方はこちらで指示を出すから』

「……分かりました」

 

 ミサトの凛々しくも美しい表情に見惚れつつ、シンジは謎の安心感を抱く。何があっても負けはない。そんな気がしてくるのだ。その根拠は分からないが、彼自身もそれを疑っていなかった。そして運命の時は来る。

 

「エヴァンゲリオン、出撃っ!」

 

 その声を合図に紫の巨人が地上へと打ち出される。その加速によるGに耐えながら、シンジは気付いた。乗る前まであった恐怖や不安が消えている事に。Gが消え、地上へと姿を見せた最終人型決戦兵器エヴァンゲリオン初号機。だが、その映像を見てミサト達は言葉を失った。中でもリツコとミサトは顔面蒼白だ。

 

「……嘘でしょ」

「有り得ないわ……」

 

 そこに映し出されていたのは、計画書さえまだ出来上がっていない初号機の強化案であるF型装備状態のエヴァだったのだ。

 

 一方、シンジはシンジで混乱していた。動く事を考えろとのアドバイス通りにやっているのだが、その動きが凄すぎて扱えないのだ。

 

「こ、これじゃ戦えないよっ!」

 

 仕方ないので動くではなく歩くに変える。するとやっとシンジでも扱える反応速度となった。だが、そうなると今度は使徒からの攻撃にさらされる。

 

「うわっ!」

 

 目の前から放たれる光線らしき攻撃。それが初号機を直撃する。だが、シンジは気付いた。痛みも衝撃もないと。

 

「……すごい。さすが切り札だけあるや」

 

 実際は十五段階ある改造全てを終えてあるからであり、実際の初号機では耐え切れないのだがそれを残念ながらシンジが知る事はない。そう、今、彼が扱っている初号機はある世界で改造を施された代物。そこの碇シンジが必要なくなったかつての愛機に「もしエヴァを必要としている場所があるなら、もしかつてと同じ状況に置かれる自分がいるのなら、助けてあげたい」との願いを込めた結果、碇シンジが戦闘する時のみ現れる状態なのだ。

 

「えっと……武器は……」

 

 目の前で攻撃し続ける使徒を無視し、シンジは誰にともなく呟く。何故か戦闘を開始した時から通信が途絶えているのだ。なので手さぐりに近い形で彼はエヴァの武器を探す。と、頭の中に浮かぶものがあった。

 

「マゴロクソード……? 剣か」

 

 その声に反応するように初号機が日本刀でいう太刀のような物を携えた。その瞬間、使徒が恐怖する。分かったのだ。アレに耐えうるだけの力は自分にないと。なので逃げる。何もない空中へと。飛ぶ事の出来ない初号機が追って来れない場所へと。本来であれば初号機を巻き込んで自爆するのだが、それさえ効果がないと分かっているのだ。フル改造ボーナス全部乗せは伊達じゃないのである。

 

「逃がすもんかぁぁぁぁっ!」

 

 だが、哀れな使徒は逃げる事さえ出来ない。マゴロク・E・ソードを振りかざし、シンジは無意識で初号機を動かしていた。その動きはミサト達や使徒でさえ分かる程洗練されていた。まるで何度も同じような事をしてきたように。その剣閃が使徒をATフィールドごと切り裂く。まるで時代劇やアニメのような動きでマゴロク・E・ソードを血振りする初号機。その背後で起きる大爆発。まさしく演出だった。誰もが言葉にならない光景。一人だけそうでない者がいるとすれば、それは彼以外に有り得ない。

 

―――あの、これからどうすればいいですか?

 

 聞こえてくる声に誰もが我に返る。シンジは生きている。ならばやる事は一つだ。まず帰還させる事。大人達は慌てて動き出す。その光景を眺め、二人の男は言葉を交わした。

 

「どうする碇。老人達が黙っておらんぞ」

「…………知らん」

 

新戦記エヴァンゲリオン 第一話「F型、襲来」完


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。