エヴァだけ強くてニューゲーム 限定版   作:拙作製造機

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バルディエル襲来。そしてまさかのシンジ君が松代行き。さて、初の少女二人での使徒戦です。そして母は子のためなら鬼にも仏にもなります。今回は……そっち一択です。


第十八話 命の選択は

「じゃ、最終日はよろしくね」

「はい、ミサトさんも仕事頑張ってください」

 

 玄関先で靴を履き、ミサトはシンジと向き合っていた。今日から彼女は松代へ出張となる。シンジも最終日の参号機起動実験はそこへ行き、もしも失敗した場合搭乗する事となっていたのだ。

 

「あ、一応それまではあいつに来てもらう事になってるから」

「はい、男二人で気楽に過ごします」

「おやおや、シンちゃんも言うようになっちゃって」

「それと、ちゃんとミサトさんの部屋へは近づけさせませんから」

「……ま、最悪中覗くぐらいは大目に見てやるわ。一緒に暮らしてた事もあるの」

 

 さらりと告げられた内容にシンジは驚く。さすがに中学生には同棲が持つ意味は重かったのだ。

 

「そ、そうなんですか……」

「ん。でも、自由に出入りはダメよ。シンちゃん、お願いね」

「はい。当分掃除もする必要ないですからね」

「このぉ、そんな事言うのはこの口かぁ」

「や、やふぇふぇくだふぁいみひゃふぉひゃん」

 

 じゃれ合うミサトとシンジ。その姿はまさに姉と弟と言った雰囲気。そんな賑やかで和むやり取りをし、ミサトはシンジに見送られ部屋を出た。そして、彼も学校に行く支度をしようと自室へ向かい鞄を手に取る。すると聞こえる呼び出し音。ミサトが忘れ物でもしたかなと、そう思いながら彼は玄関へと向かう。

 

「はーい」

 

 面倒だったので誰か確認する事もせず、シンジはドアを開けた。するとそこにいたのはレイとアスカだった。

 

「え?」

「おはよう碇君」

「ハロー、シンジ。迎えに来たわよ」

 

 それは久しぶりの出来事だった。ルームシェアをするようになったのを機に、レイはシンジとの登校を止めていたのだ。それはシンジが、レイがミサトの部屋まで来るのが遠くなったという理由を見つけたためである。なので、今までレイはアスカと共に登校していたのだが……。

 

「ど、どうして?」

「どうしても何も、あんたはまだ病み上がりでしょ? 聞いたわ。以前もレイが一緒に登校してたらしいじゃない」

「だから、念のため私達と一緒に登校」

「そ。喜びなさい。こーんな美少女二人が付き添ってあげるんだから」

 

 アスカの発言に完全同意のシンジではあったが、そうなれば以前の比ではない冷やかしを受ける事は自明の理。だからといって二人の好意を無にするのも気が引ける。冷やかしか二人の悲しみか。そんな選択肢になれば、結局シンジが選んだのは言うまでもない。

 

「じゃ、じゃあ戸締りしてから行くよ。先にマンション前で待ってて」

「「分かったわ」」

 

 こうしてシンジは両手に花で登校するようになり、当然男子達の嫉妬混じりの冷やかしはこれまでにない程の規模になったのだが、意外にもそれは「男やったら、ひがんどらんで自分磨いて女捕まえんかい!」とのトウジの一喝で鎮圧される事となる。後日、何故彼がそうしたのかの理由を彼らは気付く事になるのだが、それはまた別の話。

 

 一方、ミサトは移動中のヘリ内で、リツコから参号機が来る事になった背景をシンジへ教えていない事を軽く責められていた。

 

「あのね、彼だってどこかで疑問に思っているはずよ。どうしてタイミング良くエヴァがやってくるのかって」

「でも、あの事故の事は機密でしょ?」

「一口に機密と言ったって、彼はエヴァパイロットなのよ? 一般人への機密、一般スタッフへの機密、機密の種類だって色々あるの。そんな事、貴女だって分かってるでしょうに」

「それは……」

 

 正論だった。更に言えば、シンジは扱いとしてはかなり上の位置に置かれているため、大抵の機密は教えても構わない。リツコが言っているのはそういう事である。そこには、彼女なりのシンジへの心配があった。ゲンドウが正直に全てを説明するとは思えない。だが、自分が彼へそれらを話すよりも、彼とより親しくその身を案じているミサトが話した方が信頼感は増すと考えていたからだ。

 

「最終日、こっちに来る時にちゃんと教えてあげなさい。エヴァに乗るのは彼なのよ」

「……そう、ね。本格的に乗り込む前に自分で判断させてあげないといけないわ」

「ええ。起動実験でダミーが失敗したら乗り込んでもらう可能性もあるのだし、その事も踏まえて彼の意思を固めてもらうべきね」

 

 リツコの言葉にミサトも頷いた。最悪シンジが拒否してもいいと思っているからだ。そもそも、今回はダミーシステムを使った起動実験。なのでシンジが乗り込んで動かす必要はないとも言えた。松代へ来てもらうのは、いわば参号機との顔合わせのようなものだったのだ。だが、それとは別にミサトは思った事があった。リツコがシンジの身を案じる事の背景である。しかし、どうそれを切り出そうかと迷い、結局彼女はストレートに問いかける事を選んだ。

 

「ね、司令と何かあった?」

「っ……どうして?」

 

 急な質問にリツコは珍しく動揺を見せる。ミサトはそれに気付くも指摘する事はせず、ただ黙って話を始めた。それは、以前聞いたMAGI関連の話から派生するものだった。

 

「前、リツコは言ったわ。お母さんの事、女としては憎んでいたって。悪いとは思ったけど、少し調べたのよ。ほら、あたしも今面倒な男と付き合ってるから」

「……それで? 何か分かった?」

「リツコのお母さん、男の趣味がいいとは言えないわね。ただ、それでも本気で愛していたんだと思う。だからこそ、リツコはお母さんを憎んでしまったんでしょ?」

 

 そこでミサトはリツコへ顔を向ける。

 

―――同じ男を好きになったから。

 

 思わずリツコはため息を吐いて宙を見上げた。以前までであればどうにかして隠そうとした事だった。あるいは誤魔化しや開き直りなど、ゲンドウのために動いただろう。だけど、今の彼女にそんな気はなかった。

 

(どうやら、私のMAGIは砂糖が足りなくなったみたいね)

 

 かつての喩えを思い出し、彼女は小さく苦笑する。その笑みがどこか嬉しそうに見えたのか、ミサトは意外そうな表情を浮かべた。そんな彼女へリツコは顔を向けて頷いた。

 

「そうよ。だけど、それはもう過去の話。ええ、過去の話になったわ。良くも悪くも、ね」

「……別れたの?」

「そうじゃないけど、それに近いかもしれないわ。今の私は砂糖少なめのカフェオレよ」

「えっと……?」

「いいの。こっちの話。で、それは加持君の情報?」

「まさか。あたしが自力で調べたわよ。この手の噂って、女は良く覚えてるもんね」

 

 そこでリツコは理解した。かつての母の同僚達が出所だろうと。人の口に戸は立てられないと言うが、それは本当だと思い知ったのだ。軽く息を吐き、リツコは両手を小さく挙げる。降参という事だ。ミサトもそれに苦笑し、少しだけ肩から力を抜いた。

 

「どうして別れたの?」

「あの人の本音が見えたからよ。いざとなったらこの人は私を捨てる。そう確信してしまった。だからもう付き合えないの」

「……シンジ君も?」

「可能性はあるわ。それもあってより一層ね。せめて家族だけは守るって、そんな人ならまだ愛想も尽きなかったのだけど」

 

 リツコの疲れた声にミサトは息を呑んだ。唯一の肉親であるシンジさえ犠牲にする事を厭わないのかと、そう思って。彼女の父は、娘である自分に好かれていなくても最期には己を盾にして守った。それがあるからより一層ゲンドウに対する落胆と怒りは大きい。

 

(自分を慕っている息子を犠牲にしてまで、司令は何をしようとしているの? あの時見たもの。あれがきっと関わっているんだわ。リツコはそれを知ってるのかしら?)

 

 もしそうなら加持を止められるかもしれない。そう思ってミサトは一縷の望みを託してリツコを見た。その眼差しの真剣さに気付き、彼女は大きく息を吐いた。

 

「何が聞きたいの?」

「司令は何を考えているの?」

「……リョウちゃんのため?」

 

 刹那、静寂が二人を包む。愛する男のために危険へ足を踏み入れようとする女と、愛した男のために秘密を守るか迷う女を。そして、その静寂を破ったのは恋に破れた者だった。

 

「最愛の相手を取り戻すつもりよ」

「最愛って……シンジ君のお母さん?!」

「そう。碇ユイ。彼女は厳密には死んではいない。今も生きているのよ。エヴァの、初号機の中で」

 

 その発言の衝撃にミサトは頭が真っ白になった。絶句する彼女を見て、リツコは自虐的に笑う。

 

―――おかしいでしょ? 最初から私はあの人に見られていなかったのよ。ただ、自分の目的を果たすための便利な道具。母さんもそう。ホント、母娘揃ってダメな女。

―――……それでも、きっとレイがリツコをお母さんにもしてくれたんでしょ? なら、レイのためにも生きなさい。

 

 返された言葉にリツコがミサトを見た。彼女はどこか優しげな笑みを浮かべている。気付いたのだ。あのカフェオレの意味を。コーヒーとミルクに砂糖。それをリツコのMAGIと喩えたのは彼女。そして、リツコが言った表現は砂糖少なめのカフェオレ。今までの会話で砂糖が何に当たるかをミサトは察した。ならば残るのは科学者と母である。

 

「好きな男のために生きるのが女なら、慕ってくれる子のために生きるのが母よ。まだリツコに生きてて欲しいと思う相手はいるわ。ここにも、ね」

「……科学者として?」

 

 ちょっとした意地悪だった。あるいは照れ隠しだったのかもしれない。そんなリツコの質問に、ミサトは躊躇う事なく頷いてこう言い切った。

 

―――そして親友として、よ。

 

 

 

 この日、昼休みの屋上にはシンジ達三人しかいなかった。ヒカリとトウジはおらず、ケンスケも悲しくなるだけと言って辞退していた。

 

「トウジ達、上手くいってるかな?」

「大丈夫でしょ。ヒカリのお弁当、完全に気に入ってるし」

「ヒカリも勝負に出たのね。二人きりでお昼を、だから」

 

 そう、今日から彼ら二人は校舎裏で密かな食事会を開く事になったのだ。しかも、それはトウジからの提案。表向きはシンジ達の邪魔をしないようにとの意図であるが、実際にはトウジなりのアピールである。彼とて年頃の男だ。碌に親しくもしていなかった女子が手作り弁当をいつもくれるとなれば、嫌でもその裏に希望的観測をしてしまうもの。それが今回は大当たりなのだから分からないものだ。

 

「でも、実際ケンスケの反応が普通なんだよね。他の人がこれを見たら」

「ま、あいつの場合はより一層よ。かつて隠し撮りして売りさばいていたんだから」

「そういえば、私の水着写真があるって聞いた事があるわ。碇君、知ってる?」

「うぇっ?!」

「……その反応だと事実か。レイの水着って言うと……スクール水着か」

「そうね。でも、別に平気」

「ダメよ。いくら露出が少ないからって、男子共は猿なんだから!」

 

 その表現に内心ザクリと刺されるシンジ。彼もまた同年代の男子である。何とかレイやアスカをそういう対象にしないでいるが、どうしても頭を過ぎる事は増える一方なのだ。特に両手を繋いだあの時からは。

 

(ぼ、僕もアスカや綾波に嫌われたくないからなぁ。でも、仕方ないんだよ。二人だって、僕へ無防備な時が多いのが悪いんだ)

 

 あの使徒を受け止めて倒した日。あの日、彼は自分の恋心を自覚した。しかも、それ以前から彼女達の言動が好意を示しているように思えるものが増えていた事もあり、余計シンジの妄想は加速させられてしまったのだ。

 

「そんなものなの?」

「そんなもんなの!」

「碇君もそう?」

「シンジは…………知らないわよっ!」

 

 内心しっかりと傷を負いながら弁当を食べるシンジ。それでも顔を赤らめて会話を打ち切るアスカに癒され、不思議そうに小首を傾げるレイに癒され、その傷はあっさりと塞がって行くのだが。これも年頃なればの回復力と言える。

 

「そういえば、碇君、参号機に乗り換えるって本当なの?」

「うん。初号機はもしもの時の切り札にするんだって」

「切り札ねぇ。考えは分かるけど、それホントに出来ると思ってんのかしら?」

 

 アスカの疑う声にシンジとレイの意識が向く。彼女はその視線を受けながら鶏の唐揚げを一つ口へ入れた。生姜醤油で下味を付けられたそれに顔を綻ばせながら、アスカはシンジ達へこう告げた。

 

「ん~、美味し。で、話の続きだけど、そもそもあの初号機じゃないと勝てない使徒相手に、シンジが参号機で生き残れるかって事よ。あ、忘れてたけど、これはあくまで仮定の話よ。だって、まず戦ってみないと使徒の能力も強さも計れないじゃない。で、次に、ならシンジを出さずにあたし達だけで対処となると、こう思う訳よ。ああ、あたしやレイはシンジと違って死んでもいいんだって」

 

 アスカの淡々とした説明にシンジとレイは黙って弁当へ箸を伸ばす。レイは金時豆を、シンジはうずらフライを掴み、口へと運ぶ。

 

「要するに何が言いたいかって言うと、あの初号機を封印する意図は理解出来ても納得出来ないって事よ」

「……でも、段々使徒もあの初号機に対応してきてる。完全に対応されて、しかも超えられたらどうするのさ?」

「そん時はそん時でしょうが。もしもを考えてその時一番有効な手を打たないなんてナンセンスよ。例え一時凌ぎになるとしても、それをしなきゃ一時だって凌げないの。で、その一時が何に当たるか言えば、最近ならこの前のシンジ救出作戦の考案と準備。どう? これでも封印するべき?」

「あれは従来の初号機でも同じだけ耐えられると赤木博士が言っていたわ」

「レイ、その後リツコが言ったじゃない。だけどN2の爆発に耐えられるとは思えないし、そもそもシンジが生きてると分かる証拠も無かったって」

 

 その完璧な反論にレイも納得しお茶を口にした。シンジとしても、納得するしかない論理だった。あの救出作戦はF型でなければ無理。そう思う材料が揃い過ぎていたのだ。N2の威力への耐久度やシンジの生存を証明する事。これらはあの初号機だからこそ満たした条件だった。

 

「とにかく、あたしは不安よ。参号機を信じない訳じゃないけど、あの初号機に比べたら言うまでもなくあたしはシンジを初号機に乗せる。参号機は……予備機か、あるいはレイが乗るべきね」

「私?」

「そ。零号機よりも性能は高いだろうし、武装だって強化されてる。戦力アップを図るならそうするべきよ。で、零号機こそ封印ね」

 

 断言したアスカは残っていた最後の唐揚げを食べ終わると同時にお茶を飲む。満足そうな表情を見せ、彼女はシンジへ視線を向けてこう告げた。

 

「もう一度司令と、シンジのパパと話すべきよ。起動実験が終わった後でもいいわ。必ず真意を問い質すべき」

「う、うん。時間を取れないかメールしてみる」

「それがいいわ。ま、きっと司令にも何か考えがあるんでしょうけどね」

 

 そう言いつつアスカはどこかで疑っていた。自分が思うような事をゲンドウが気付かぬはずはないと。そう仮定するとシンジには聞かせたくない話になる。そう思ったからこそ、彼女は真意を問い質すだけに表現を留めた。

 

(まるであの初号機を使いたくないみたい。あるいは、初号機を失いたくないとか? どちらにせよ、絶対初号機には何かある。リツコ辺りは知ってるかしら?)

 

 彼女は知らない。既に自分がある意味でゲンドウの思惑の核心部分へ辿り着き始めているとは。アスカは元々この年齢にして大学を卒業出来る才女である。しかも、本来であれば思考を狭める性格もこれまでのシンジやレイを中心とした関わりで改善されており、その視野は広くなっていた。そうなれば、その聡明な頭脳は十二分の働きを見せるというものだ。

 

「碇司令の考え。碇君はそれを知りたい?」

「え? う、うん。出来れば、かな?」

「そう。なら、私からも聞いてみるわ。最近また会う事が増えているから」

 

 その発言にシンジとアスカがレイを見つめる。どういう事だと思ったのだ。レイはそんな二人へいつものような無表情で答えた。

 

「ダミープラグの件。私、あれに関わっているから」

「そうなんだ」

「へぇ、じゃああのダミーとやらはレイのデータで出来てんの?」

「ええ、そのはず」

 

 どこか他人事のようなレイの反応に相変わらずだなと感じて二人は笑う。そしてそんな二人にレイも笑う。和やかな食事風景がそこにはあった。その一方でトウジとヒカリは静かな昼食時間を送っていた。

 

「……ね、ねえ鈴原?」

「何や?」

「どうしてここなの? ここじゃちょっと戻るの時間かかっちゃうよ?」

「……ここなら人目気にせんで済むやろ」

「えっ?」

「センセと綾波の時やってそうや。女子はええかもしれんけど男は真正直にやっかむからな」

 

 それは暗にヒカリとの事をとやかく言われたくないという意思表示だった。彼は自分が言われるだけなら耐えられるが、ヒカリが何か言われるのが嫌だったのだ。特にこれまでそれなりに硬派な雰囲気で通してきた反面、その自分が学級委員長であるヒカリと懇意になったとなれば、下手をするとシンジ達以上の冷やかしが待っているとトウジは思ったからだ。

 

「で、でもそれならアスカ達と一緒にいれば」

 

 それなら周囲の目も誤魔化せると、そうヒカリが言おうとした時だった。

 

―――ワイがいいんちょと二人になりたかったんや。

 

 言いよどむ事無く告げられたのは、ある種の告白。あまりの事に声が出ないヒカリへトウジは弁当を置いて彼女へ向き直る。その表情と眼差しは真剣そのものだ。

 

「その、ワイもそこまで鈍感やないと思いたい。でも自惚れてんのかもしれん。こうやっていいんちょが弁当作ってくれる事、特別やって思いたいんや。ワイを、男として見て意識してくれとんちゃうかって、そう思っとる」

「鈴原……」

「もしそうやないなら次から弁当はいらん。でも、もしそうやったら……」

「そうだったら……?」

 

 思わず息を呑むトウジ。緊張が彼の全身を駆け巡る。だから気付かなかったのだ。ヒカリもどこか熱っぽい目で彼の事を見つめている事を。

 

「わ、ワイと付き合ってくれ! 頼むっ!」

 

 頭を下げて彼女へ片手を差し出すトウジ。彼の心臓はもう張り裂けんばかりに動いている。そして、彼にとってもっとも長い沈黙が訪れる。聞こえるのは自分の吐息と鼓動の音。感じるのは、周囲の暑さと額や首筋を流れる汗。やがて、差し出した手にも汗をかき始めた頃、その手がそっと何かに包まれる。思わず顔を上げたトウジが見たのは、真っ赤な顔で微笑むヒカリの姿だった。

 

―――私でよければ喜んで。

 

 この日、一組の可愛いカップルが誕生した。それをシンジ達が知るのはその日の放課後の事となる。

 

 

 

「ほう、じゃあその彼は見事に彼女持ちって事か」

 

 シンジの作った夕食を食べ終え、加持は洗い物をしながらそう言って笑う。ミサトの言葉通り、彼女が留守の間の保護者代わりとしてシンジの元へ彼は現れたのだ。

 

「はい。で、何故かトウジが僕へどうしたら委員長に喜ばれるか教えてくれって聞いてくるんですよ」

「ふむ」

「そんなの、僕が知る訳ないじゃないかって、そう言ったらそんなはずはないって」

「だって、アスカ達と普段から接してるだろ?」

「……すごい。よく分かりますね。そうなんですよ。でも、委員長とアスカ達は違うと思うし、別にアスカ達にも何か特別な事をしてる訳じゃないんですけど……」

 

 その返しに加持は苦笑しながら洗い物を終える。彼にはシンジとトウジ、双方の気持ちが分かったのだ。

 

「シンジ君、その彼から見るとそうとは思えないんだ。あのアスカとレイの性格は周囲からは癖の強い女の子だと思われる。それと君は上手に付き合っているんだ。少なくても、そのトウジ君とやらには、ね」

「でも、だからって委員長は」

「ああ、別人だ。でも、女性である事に変わりはない。丁度良い。彼女とはどういう意味だと思う?」

 

 突然の質問にシンジは戸惑うも、それでも答えを考えて頭を悩ませる辺り、彼も中々素直なようだ。あるいは律儀と呼ぶべきだろうか。とにかくある程度考えて、シンジは軽く息を吐いて項垂れた。降参という事である。それを見て加持は小さく微笑む。自分が同じ年の頃はここまで素直ではなかったと感じて。

 

「正解は彼方の女さ。つまり、向こう岸の存在だ。俺達男にとってはな」

「……だからそれと上手く過ごしてる僕からアドバイスを?」

「ま、そういう事だろうな。男同士だって分からない事があるんだ。女性相手なんて分かるどころか理解する事さえ難しいってもんだ」

 

 加持の説明に納得するシンジだったが、そうなると逆にアドバイスが難しい。心がけている事など特になく、彼としては自分が上手くやっている意識はなかったのだ。全てレイやアスカの側に成功要因はあるとさえ思っていたぐらいに。

 

(僕がトウジに出来るアドバイス……何だろう? 言うべき事はちゃんと言うって事かな?)

 

 彼にとって一番の少女達との転機となったのは、紛れもなくあの共同生活初日。あそこでしっかり二人へ自身の考えと立場を明確にした事がその後の関係に大きく影響したのでは。そう思い返しシンジは小さく頷く。そんな彼を見て加持は答えが出たと察したのだろう。こんな事をシンジへ告げた。

 

「何はともあれだ。相手は君に答えを求めている訳じゃない。参考意見が欲しいのさ。今のままでは何も分からず海に出るのと同じだからな。せめて地図ないし羅針盤ぐらい欲しいんだろう」

「……そっか。僕の答えは僕だから行き着いた、僕のための答えだ。トウジにとっての答えとは限らない」

「そういう事さ。どうだい? そう考えれば少しは気楽になるだろう?」

「はい、トウジにもそう言って伝えます」

 

 そこで一旦会話は終わった。シンジは風呂へ入り、加持はテレビを見ながら時間を潰す。ややあってからシンジが風呂から上がり、加持が風呂へ向かう。シンジは弁当のおかずをどうするかを考えながら料理本を眺め、そんな事をしている内に加持が風呂から上がってビールを冷蔵庫から取り出す。ちなみにそれは彼が自費で購入してきた物である。ミサトの好きなビールも嫌いではないが、彼は別の銘柄が飲みたかったのだ。

 

「あっ、そうだ。加持さん、教えて欲しい事があるんですけど」

「何だ? 女のイロハか?」

「っ!? 違いますよ! ……それも興味がない訳じゃないですけど」

「なら、それはまた別の機会にな。で、一体何だ?」

「父さんの事です。加持さんから見た父さんって、どんな人ですか?」

 

 その問いかけに加持は意外に思いつつも、どこか納得していた。今のシンジが一番知りたい相手はゲンドウに他ならないと思っていたからだ。だが、加持がシンジへ教えられる事はそこまで多くない。知っている事は多くあっても、それら全てを聞かせる程彼は愚かではないし酷くもなかった。なので、自然と答えはこうなった。

 

「何を考えているか分からない人だな」

「……そう、ですか」

「そして、臆病な人でもある」

「臆病? 父さんが?」

「意外かい? あの人を寄せ付けない雰囲気はその現れだと俺は読んでる。誰かと深く関わるのが嫌なのさ。それも自分からはね。相手から寄ってくるなら考える。だけど、その相手に好かれようとする努力はしない。何故ならそれをして嫌われたら自分が傷付くからだ。だから、常に無愛想で無表情。きっと、あれが君の親父さんなりの処世術なのさ」

 

 加持の分析にシンジは返す言葉がなかった。かつての彼も似た部分があったからだ。それは好かれようと努力しない事。その理由は加持が指摘した通りだったのだ。だからこそ、シンジはよりゲンドウが自分の父であると強く認識した。

 

「僕も、昔は同じように人に好かれようとしていませんでした。似てるんですね、僕達」

「だが、君には司令以外の血も入っている」

「……母さん」

「そう。それが君と司令の現状の違いなのかもしれないな。あるいは、また別の何かがあるのかもしれない。とにかく、俺から見た碇ゲンドウはそういう人だよ。参考になったかい?」

「はい、ありがとうございます。何か、父さんへ親近感が湧きました」

「そりゃあ良かった。この世に二人だけの家族だ。仲良くなれるならそれに越した事はないしな」

 

 その言葉に嘘はなかった。彼とて真実は知りたいが、そのためにシンジとゲンドウの不和を願うような下衆ではなかった。出来るだけ少年の想いが叶えばいいと思っているのだから。その気持ちが伝わったのだろう。シンジは一瞬言葉を失い、すぐ嬉しそうに笑顔で頷いたのだ。

 

「はいっ!」

「ん。じゃ、寝るか?」

 

 加持としては何の他意もない問いかけだった。どちらかと言えば確認のような意味合いだからだ。だが、それがシンジには別の意味に聞こえた。彼は少しだけ恥ずかしそうにこうおずおずと話を切り出したのだ。

 

「……えっと、出来ればさっきの話も教えて欲しいなぁって。ダメですか?」

「くくっ、本当に素直になったもんだ。ああ、いいぞ。俺で分かる事ならな」

「あっ、じゃあアレの着け方も教えてください」

 

 こうして男二人の夜は過ぎていく。その様も兄弟のように見えなくもない。ただ、実の兄弟ではなく、姉の彼氏にそういう事を教えてもらう弟のような構図ではあったが。

 

―――で、こうやって……。

―――べ、勉強になります……。

 

 碇シンジは男としてのレベルが上がった。もしその時が来たら、彼女を大事にしようと強く思った。日々の煩悩がより強まった。

 

 

 

 目の前にそびえる巨人を見つめ、ミサトはシンジとこれからの事を話し合っていた。いよいよ、起動実験の時が迫っていたのだ。

 

「いい? この参号機が来る事になった経緯は今話した通り。それでもシンジ君はこれに乗ってくれる?」

「……とりあえず父さんへもう一度会って話をする事になってます。それから答えを出していいですか?」

「今日は乗らないって事でいい?」

 

 ミサトの確認へシンジは一度だけ参号機に視線を向ける。その顔が若干怖く見え、シンジは思わず息を呑んだ。

 

「……ダミーで起動しなくて、どうしても起動させたい時は考えます」

「そ。じゃあ、そうやってリツコにも伝えておくわ。まぁ、とりあえずはこれから乗るかもしれない相手との顔合わせと思って頂戴」

 

 そんな軽い口調にどこか気が抜けたのか、シンジは彼女へ顔を向けると小さく苦笑しながら頷いた。こうして準備が整っていく。聞こえてくるオペレーター達の声を聞きながら、プラグスーツに着がえたシンジは無言で参号機を見つめていた。

 

「どう? 最新鋭機の感想は?」

 

 突然掛けられた声にシンジは振り向く。そこには微笑むリツコがいた。

 

「……何だか怖い顔をしてる気がします」

「怖い顔、ね。そういうところは本当にシンジ君らしいわ。やっぱり初号機の方がいい?」

「正直言えば。でも、父さんの言う事も分かるんです。あの初号機より強い使徒が出て来たらって、そう思うと僕も怖いから」

 

 掌を見つめ、一度だけ握り締める。あの使徒内部へ飲み込まれた時、漠然と感じた不安感。それを思い出せばゲンドウが想定している状況の不安はそれ以上だった。

 

「ダミーって、綾波のデータを基にしてるって聞きましたけど、本当なんですか?」

「ええ。ダミーシステムは、レイのパーソナルを基にしているわ。これは、本来なら貴方達の代わりにエヴァを動かすためのもの。だから、こういう使われ方はまさに本懐なの」

「えっと、何でも最初にやる時が一番危ないからですか?」

「その通り。何事も最初は情報も知識もない。そこで事を起こすというのはどうしても不安と危険が付きまとうわ。実はね、シンジ君。この参号機の起動実験をダミーの実験にもしたいと言ったのは私なの」

 

 その発言にシンジはどこか察していたのか寂しそうに笑う。それがリツコには何の笑みが分かってしまった。シンジはどこかでゲンドウが自分の事を考えてくれたと思いたかったのだとも。

 

(やっぱり君はあの人をまだ慕っているのね。健気に、一途に、父の愛を信じて……)

 

 シンジの反応に心を痛めるリツコ。教えてやりたい。それは届かないと。だが、どこかでこうも思うのだ。もしかしたらシンジならば届かせる事が出来るのではと。ゼロではない。その言葉がリツコの頭を過ぎる。そして、ならば今の彼女がどう答えを出すかは決まっていた。

 

「でもね、シンジ君。まだダミーは不安がない訳ではないのよ。それを知っていても司令はそれを許可した。その真意は私には分からないわ」

「……人の気持ちはロジックじゃない、でしたっけ」

「覚えていたの。ええ、そうよ。だから、君が信じたい方を信じなさい」

 

 リツコの優しい声にシンジは思わずはっとした。加持の述べたゲンドウの人物像。リツコの告げた考え方。それらが彼に一つの答えを導き出す。

 

「分かりました。僕、今度父さんに会ったらちゃんと聞いてみます。気になってる事や疑問に思っている事、全部」

「それがいいわ。決して逃がしちゃダメよ?」

「はい!」

 

 こうして、参号機起動の瞬間は刻一刻と迫っていく。その頃、アスカは本部で初号機のエントリープラグ内にいた。かねてからの希望通り、彼女と初号機のシンクロテストが行われていたのだ。

 

「どう? あたしと初号機の相性は?」

『そうだなぁ。悪くはないが良くもないってとこか』

 

 シゲルの正直な答えにアスカはやや不機嫌な顔をするも、それも仕方ないかと思ってため息を吐く。何せ彼女はこれまで弐号機しか乗ってこなかったのだ。更に言えば、それ以外に乗る気も関わるつもりもなかったのである。シンジやレイのように他人のエヴァへ乗る事へ躊躇ない方が、かつての彼女からすれば異常だったのだ。

 

「動かす事は出来る?」

『ああ、それは問題ないみたいだ。これで初号機は一応誰でも動かせる事になったな』

「ま、でもそれも今日まででお役御免なのよね。出来る事ならシンジにはこれを使い続けて欲しいけど」

『俺や日向も同じだよ。でも、使徒が対応しつつある事を考えるとな……』

「不安なのは分かるわ。第五使徒と第七使徒。あいつらは一度あの初号機を撤退に追い込んだ事があるんだもの。これから先、あれらと違ってあの初号機を大破させるような奴が出ないとも言い切れないし」

 

 そんなアスカの不安を煽る言葉にシゲルが苦笑いしながら返答しようとした時だった。突然初号機が咆哮したのだ。

 

『なっ!? これは……どういう事だ?!』

「何よ!? どうしたっていうの?!」

『ちょっと待っててくれ!』

 

 そこで通信が切られた。アスカは初号機が叫んだ事への疑問符を浮かべながらも待つ事にした。何故かそこまで不安を感じなかったのだ。そこで何となく彼女も気付いたのだ。何かが先程までと違うと。

 

(何……? 何かさっきまでと違って安心する? これがシンジの言ってたやつかしら?)

 

 と、そこで彼女も気付いた。もし仮にそれがそうなら、何が原因でそうなっているのかも。

 

「シンジに何かあったのねっ!?」

 

 その声に返ってきたのは、二度目の獣のような咆哮。それがアスカの耳へ響き渡る。同時刻、発令所は松代で起きた事故の報告で大騒ぎになっていた。早急に救助の手配などをする一方で、その事故現場に謎の移動物体を確認していたからだ。それを聞いたゲンドウは直ちに総員へ第一種戦闘配置を発令。そこへシゲルからの初号機咆哮の報が入る。

 

「何だって!? 初号機が叫んだ!?」

『ああ! 今も、俺の目の前でなっ!』

「司令、セカンドチルドレンが出撃を願い出ています! 初号機パイロットの身に何か大変な事が起きていると!」

「……どうする碇」

 

 冬月の問いかけにゲンドウは躊躇う事なく頷いた。それが出撃を意味すると理解し、冬月は内心ため息を吐きながら指示を出した。

 

「初号機を出せ。パイロットはそのままで構わん。それと零号機もだ」

「っ! 了解しました!」

 

 苦虫を噛み潰したような冬月の表情にマヤも何か言う事はなく、内心の動揺を隠しながら仕事をこなす。そう、誰もがどこかで想像しているのだ。初号機が咆哮した理由と、その意味を。アスカを乗せたまま出撃する初号機。その後に続いて零号機も出撃する。二機のエヴァは野辺山でこちらへ接近する謎の存在を待ち構える事となった。すると、両機の最大望遠状態で見えてくる物があった。

 

『あれが……目標?』

「……あれってエヴァよね?」

『……ええ、だと思うわ』

 

 問いかけるアスカにも返すレイにも緊張が走る。ゆっくりと彼女達へ近付いてくるのは、紛れもなくエヴァだった。それも、シンジが搭乗する事になるはずの参号機。そして、それは二機のエヴァを確認した瞬間、全身を大きく震わせると雄叫びを上げた。更に、それと同時に初号機が変化したのだ。

 

「何!?」

『分からないわ。ただ、初号機が変化した。それと本部との通信が取れない』

「何ですって!?」

 

 二機のエヴァとの通信断絶は発令所に若干の困惑を生んでいた。

 

「ダメです! 初号機、零号機、共に応答ありませんっ!」

「どうなっているんだ?」

「おそらく参号機による通信妨害と思われます!」

「奴め。こちらの操作を寄せ付けないためか」

 

 その冬月の考えは当たっていた。使徒は使用されたダミープラグから得た情報で、エントリープラグの射出や活動停止信号などをさせまいとしたのである。それは阻止出来ないからではなく、別の目的のためだ。そう、全ては最大の脅威へ全力を出させないために。

 

「……現時刻をもってエヴァンゲリオン参号機は破棄。目標を第十三使徒と識別する。通信が回復次第、エヴァパイロットへ殲滅せよと伝えろ」

 

 そのゲンドウの言葉に誰もが息を呑んで彼を見た。彼は相変わらず無表情でモニタを見つめている。

 

「本気ですか!? まだ、あの中にはシンジ君が乗っているかもしれないのに!」

「そうだ」

「司令、せめてパイロットの安否確認だけでもっ!」

「無駄だ。今の我々では調べようがない」

「ですがっ!」

 

 オペレーター三人がゲンドウへ食い下がる。冬月はそんな三人を見つめ、一度だけゲンドウへも視線を動かして息を吐いた。

 

「落ち着きたまえ。まず、今は通信を回復させる事が第一だ。それに現場へ向かった救助からの連絡が聞けないのも困る。まずは自分達の出来る事を優先せよ」

 

 そう諭すように告げた後、冬月はゲンドウへも言葉をかける。

 

「碇、せめて誤解を生まないように命令を出せ。通信が回復次第、パイロットの生体反応の確認及び活動停止信号とプラグの強制射出を試したのちに殲滅せよと伝えろとな」

 

 冬月の言葉に三人は先程よりはまだ理解出来るのか、そのまま無言で手を動かし続けた。それを横目で見ながら冬月はゲンドウへ呟く。

 

「乗っていると思うか?」

「……でなければ変化しないだろう」

 

 その返ってきた声には、微かな感情の色があった……。

 

 

 

 襲い掛かる使徒に初号機と零号機はまともな反撃が出来ないでいた。それもそのはず、彼女達は相手の中に想い人がいると思い、その引き金を引く事が出来なかったからだ。

 

「っ! シンジっ! 返事しなさいよシンジぃ!」

 

 使徒の攻撃を何とかかわし、初号機はその動きを封じようとする。両腕を抑え、零号機に背後からエントリープラグを取り出してもらうためだ。だが、使徒もそれを分かっているのだろう。初号機が接近すると距離を取る。そうして既に何度も同じ展開が繰り返されていた。

 

「碇君っ! お願い、返事をしてっ!」

 

 足元をパレットガンで狙う零号機だが、それはあっさりと避けられてしまう。だが、それを待っていたかのように初号機が参号機へ掴みかかった。今この場にいるパイロットはアスカとレイ。二人の連携は既にシンジとのそれを越え始めている。しかも、今のアスカが扱っているのはあの初号機だ。その性能差も活かして二人は使徒を遂に捕えた。

 

「よしっ! これで……」

 

 両腕を力付くで抑え付ける初号機。その圧倒的な強さにアスカは内心で恐怖していた。分かったのだ。これが弐号機ならこうされているのは自分だったと。

 

(何て馬鹿力なのよ、この初号機。そうか。だからこそシンジはこれを封印する事に同意なんだわ。これを超える使徒なんて、あたしだって戦いたくないもの)

 

 乗って使って初めて分かる気持ち。これだけの性能を誇る初号機を使ってきたからこそ、シンジは誰よりも怖いと分かったのだ。この力を超える相手の出現が何を意味するのか。だからこそ、アスカは思うのだ。

 

「シンジの気持ちは分かったわよっ! でもね! だからシンジが必要なのよっ! この初号機を一番上手く扱えるの、シンジなんだからぁ!」

『アスカ、背後に回るわ』

「お願いっ! あたしはこいつを抑え付けておく……からっ!」

 

 完全に使徒の両腕を捻じ伏せる初号機。それを見ながら零号機は背後へ回り、エントリープラグを引き抜こうと試みた瞬間、突然空中へ叩き上げられた。

 

「何……?」

 

 レイが視線を下げてみたものは、使徒の背中から出現した二本の腕だった。まるで阿修羅のようなその腕が使徒を抑え付けていた初号機へ襲い掛かる。

 

「くっ! このぉ!」

 

 咄嗟に地面を蹴り上げ、使徒を支えにしてのムーンサルトキックでその腕を撥ね退ける初号機。それと同時に使徒から一旦距離を取るために腕を離す。使徒を挟む形で着地する二機のエヴァ。だが、状況としては彼女達の方が追い詰められ始めていた。

 

「レイ、プラグは?」

『ごめんなさい』

「……そう。いいわ。なら、あたしがマゴロクであの腕叩っ斬る」

『っ!? でも、それじゃ碇君が』

「あたし達を苦しめてるって聞いた方があいつは嫌がるわよ! なら、多少痛いのは我慢してもらうわっ!」

 

 マゴロク・E・ソードを構える初号機。それがアスカの本気を示している。レイも一瞬言葉に詰まるも、その心中を察したのだろう。何も反論せず、ただこう告げた。

 

―――なら、私も一緒にやるわ。マステマ、貸してくれる?

―――……あたしが斬りかかると同時に上へ投げるわ。後は上手くやって。

 

 それが合図だった。使徒へと斬りかかる初号機だが、その直前にマステマを取り出し上空へと投げる。それを既に飛び出していた零号機が掴み、そのまま頭を下にするような体勢でガトリング攻撃を使徒へ行う。その射撃を回避したところへ踏み込んだ初号機が使徒の背中から生えている腕を一本斬り落とした。

 

「どうよっ!」

『アスカ、まだ!』

 

 痛みに呻く使徒へしてやったり顔のアスカだが、レイの声で意識をすぐに切り替える。何と使徒は斬り落とされた腕を再生させていたのだ。

 

「へぇ、つまり一撃必殺以外は効果なしって事か……っ!」

 

 その意味する事が分かり、アスカは奥歯を噛み締める。それはシンジを殺せと言っているのと同じ事。人質を取った使徒への怒りと憎しみが彼女の中を駆け巡る。当然だ。シンジはアスカにとって本当の意味での初恋の相手だ。それを盾にし、しかも彼が一番嫌がるであろう事をさせている。それがアスカの逆鱗に触れた。

 

「レイっ! 短時間であたしがあの腕全部斬り落とすわ! そっちは絶対にシンジを助けてっ!」

『分かった。アスカ、気を付けて』

「ええ、レイもね!」

 

 通信を終えるやマゴロク・E・ソードを上段に構え、初号機は使徒を睨みつける。

 

「シンジを…………返せぇぇぇぇぇっ!!」

 

 アスカの叫びと共に初号機の目が光る。その振り下ろされる一撃を使徒は何と四本の腕で受け止めた。白刃取りである。だが、それはアスカにとって好都合だった。腕が全て塞がる事で零号機が背中からエントリープラグへと接近出来たからだ。

 

「碇君、今助けるから」

 

 エントリープラグへ手を伸ばす零号機。するとそこから突然液体が噴射された。咄嗟に回避するレイだが、それが零号機の右肩を焼いた。

 

「うあっ!」

「レイっ!」

 

 それはかつて本部を襲った第九使徒と同種の溶解液であった。痛みにもがきながら一旦距離を取る零号機。そちらへ使徒が攻撃を加えようとしているのを察し、アスカは全力でその腹部へ蹴りを叩き込んだ。

 

「どりゃあぁぁぁぁっ!」

 

 その衝撃でマゴロク・E・ソードから手を離して後ろへ倒れ込む使徒。アスカはそれを見てすぐさま零号機へと初号機を近付けた。

 

「レイ、大丈夫?」

『え、ええ……これぐらい平気』

「……神経系がカットされない。そうか、これも使徒の狙いね」

 

 普段であれば本部で神経系の操作をし、パイロットへのダメージを遮断出来るのだが、今回はそれを受け付けないように使徒が妨害している。アスカは忌々しげに起き上がる使徒を睨み付けた。すると、使徒は一本の腕を背中へ回して何かをした後、再びその腕を彼女達へ見せた。

 

「「っ?!」」

 

 そこには、エントリープラグが握られていた。その瞬間、二人は悟る。使徒が何を狙っているのか。そして、何をしようとしているのかを。だからこそ、アスカとレイは互いに見合うようにエヴァの顔を動かした。

 

―――レイ、分かってるわね?

―――ええ、分かってる。

 

 最後にどちらともなく小さく苦笑し、二機のエヴァは武器を捨てた。そこからは、一方的な蹂躙だった。初号機も零号機も使徒に殴られ続けた。それでも二機は反撃どころか防御さえしなかった。分かっているのだ。少しでも抵抗する素振りをみせれば使徒がプラグを握り潰すと。腹を、腕を、足を、全身を余すとこなく殴られる二人。痛みは遮断される事なくその身を襲い、呻く暇もなく痛みが継続的に走る。そんな中、二人は耐えた。いや、耐えるしかなかった。

 

(シンジを……殺したくないのよっ!)

(碇君を殺すぐらいなら殺された方がいい。それに……)

(絶対、絶対チャンスは来る……)

(使徒の注意が少しでもプラグから逸れてくれれば……)

((その時は覚えてなさいっ!))

 

 まさしく耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍びという心境だ。来るか分からない好機を待ち、二人はただただ暴力に耐えた。聞こえてくるアラートを無視し、叫びたくなる声を必死に押し殺し、アスカとレイは待った。使徒が仕留めにかかる瞬間を。わずかにでも気を抜くだろうその時を。そして、その時は来た。

 

「っああああああっ!」

『アスカっ!』

 

 使徒の右足での踏みつけ攻撃が初号機の胸部装甲へ遂にヒビを入れたのだ。それによる激痛がアスカを襲い、彼女はその痛みで声を殺せず悲鳴を上げる。それを聞いたのか、使徒はほくそ笑むように口元を歪め、もう一度全力の踏みつけ攻撃を行った―――瞬間、初号機が目を光らせその逆の左足を払ったのだ。堪らずバランスを崩す使徒。そしてアスカは叫ぶ。

 

「レイっ!」

「これでっ!」

 

 素早くプログナイフを取り出し、零号機がプラグを掴む腕を刺した。そのダメージで使徒がプラグを手放すと、落下するそれを初号機が回収して素早く離れる。

 

「アスカ、そのまま碇君を安全な場所へっ!」

『分かってるわよっ! 少しだけ耐えてね、レイ!』

 

 ダメージを負いながらも、それでも素早い機動で戦場を離脱する初号機。それを見送る事なく零号機はマステマとマゴロク・E・ソードを手にして使徒を睨む。

 

「あなたは絶対許さない……っ!」

 

 シンジを人質にした事、アスカを痛めつけた事、そして自分を苦しめた事。それらを怒りに変え、今、静かにレイは燃えていた。

 

 一方、エントリープラグを手にした初号機は、戦場からある程度離れたところでその動きを一旦止めた。アスカも本音としては本部まで戻りたいがレイも気掛かりなためである。

 

「ここならいいわね」

 

 手にしていたプラグをそっと下ろし、アスカはシンジの安否を確認したい衝動を抑えながら再び戦場へと戻るべく初号機を動かす。

 

(ごめんシンジ。でもレイが危ないのよ。だから、許してよね!)

 

 そう判断した方が彼も喜んでくれるはず。アスカは痛む体で初号機と共に先程までいた場所へと戻る。すると、その視線の先に使徒に追い詰められる零号機の姿が見えてきた。

 

「っ! レイっ!」

 

 アスカの叫びに呼応するように初号機が武器を取り出す、それはプログダガーと呼ばれるもの。それを初号機が使徒へと投擲したのだ。その事に気付き、咄嗟に零号機から距離を取る使徒。窮地を脱した零号機だが、既にその機体は戦闘を継続するのが難しい状態となっていた。

 

「レイ、無事っ!?」

『アスカ……ええ、大丈夫。それより碇君は?』

「それなりに離れた場所へ置いてきたわ。レイが心配だったから」

『……碇君もそうするでしょうね。じゃ、使徒を倒しましょう』

「あんたバカっ?! そんな状態で戦える訳ないじゃないっ!」

 

 襲い来る使徒へ立ち向かう初号機。それを援護しようとする零号機だったが、その機体はもう上手く動かなくなっていた。それでも手にしたマステマによる射撃で使徒を狙い、初号機から距離を取らせる。

 

「お願い、戦わせて」

『でもっ!』

「許せないの! この使徒だけは……私の手で倒したいっ!」

 

 それは、初めて使徒戦でレイが見せた自我。彼女の初めての我が儘だった。それを理解し、アスカは息を呑むものの、仕方ないとばかりに大きく息を吐いた。

 

『分かったわ。でも、とどめを譲るつもりはないわよ?』

「それでもいいわ。……ありがとう、アスカ」

『どういたしまして。……来るわよっ!』

 

 弾かれるように動き出す初号機。零号機も何とか射撃による攻撃を続けた。それでも、蓄積されたダメージのためか、両機共に最初の頃の勢いはない。再生能力を有する使徒に対し、エヴァとそのパイロットは長期戦に不利。その事が徐々に戦況にも表れ始めていた。

 

「ぐっ……このぉぉぉぉぉ……」

 

 最初は押し込んでいた初号機が力負けを始め……。

 

「そこ……っ!? 弾が……」

 

 マステマのガトリングは遂に弾切れを起こし……。

 

「嘘でしょ? まだ再生するの?」

『向こうはダメージを回復出来てもこちらは蓄積される。攻撃は肉弾戦のみで弾切れなどとも無縁。こちらに不利な条件ばかりね』

 

 もう何度めかのマゴロク・E・ソードによる腕の切断。それでも使徒は再生を繰り返す。既にアスカとレイの息も上がっていた。プラグを巡る攻防で消耗したのが響いているのだ。それさえなければ、二人であろうと目の前の使徒を相手に勝利出来ただろう。

 

「レイ、何か考えがあったら聞くわ」

『……ごめんなさい。何も思いつかないわ』

「そっか。どうやら頭を使うのは諦めた方が良さそうね」

 

 どこか自嘲気味に呟き、アスカは使徒を見つめる。すると、突然使徒がその場から大きく跳んで移動を始めた。突然の事に対応が遅れるアスカとレイ。だが、その意識が使徒の向かった方を見て覚醒する。

 

「『シンジ(碇君)っ?!』」

 

 それは、エントリープラグをアスカが置いた方向だった。疲れた体に鞭打つようにエヴァを動かすアスカとレイ。そして、使徒がエントリープラグへ手を伸ばそうとしているのを見て、アスカは迷う事なく手にしていたマゴロク・E・ソードを投擲した。

 

「触るんじゃないわよっ!」

 

 それは使徒の腕を直撃し、ダメージを与える事に成功する。だが、痛みに呻いた使徒がよりにもよってプラグへと倒れ込んだのだ。

 

―――っ!?

 

 心臓が止まったかと思った。そうアスカとレイは感じていた。全てがスローモーションのようになり、見たくないのに視覚が目の前の光景を記憶していく。倒れ込む使徒。上がる砂煙。なぎ倒される木々。そして、潰され砕けるエントリープラグ。

 

「いやあぁぁぁぁぁぁっ!」

「碇君っ!? 碇君っ!?」

 

 半狂乱になるアスカと動揺しながら何度もシンジへ呼びかけるレイ。使徒の下から流れ出る赤い液体。それはL.C.Lなのだが、それさえ二人にはシンジの血にしか見えなかった。そして、聞こえてくる発令所からの通信。使徒はエントリープラグを利用し、そこから本部へアクセス。他のエントリープラグへの通信などを妨害していたのだ。

 

『通信、回復しました!』

『初号機、零号機、聞こえますか? 状況を教えてください』

 

 マコトの声に続いて聞こえてくるマヤの声。それにアスカは答える事なく項垂れていた。

 

「こちら零号機! 碇君が、碇君が使徒にっ!」

『っ!? お、落ち着いてレイ。状況を』

「だからっ! 碇君が使徒に殺されたんですっ!」

 

 レイの怒声。それに発令所が静まり返る。何もレイが怒鳴った事だけではない。告げられた内容の衝撃もあったからだ。映像自体は発令所にも送られていた。だけど、どこかで信じたくなかったのだ。シンジの乗るエントリープラグが潰れたなど。

 

「絶対、絶対あの使徒は許さないっ! アスカ、戦ってっ!」

『……しが……んだ……』

「アスカ?」

 

 怒りに身を委ねていたレイだったが、普段であれば自分よりもそうなるはずのアスカの様子がおかしい事に気付く。

 

『シンジはあたしが殺したんだ。あたしが、あの時マゴロクソードを投げなければ……』

「っ?! 違うわ! あれが悪いんじゃないっ!」

『でも! それで使徒がシンジへ倒れこんだんだものっ!』

「私が逆でも同じ事をしたわ! だから今は使徒を」

『嫌っ! シンジを殺したあたしなんか生きてる意味なんてないっ! ここであたしもシンジと一緒に死んでやるわっ!』

「アスカっ!?」

『もう一人ぼっちは嫌っ! 大好きな人に見てもらえないのは嫌ぁ! 嫌なのぉぉぉぉぉぉっ!』

 

 アスカの自棄になった言葉にレイも返す言葉を失う。発令所の方も誰も何か言う事は出来なかった。好きな相手をよりによって自分の手で殺してしまった。そんな事になればアスカの気持ちは分からないでもなかったからだ。使徒が目の前にいるとはいえ、それを忘れる程にアスカの取り乱し方は凄かった。そんな中、一つの通信が聞こえる。

 

―――勝手に殺さないでやれ、アスカ。

 

 その声はかつて彼女が憧れた男の声。松代の事故現場へ出向いていた加持だった。

 

『こちら加持。現場で葛城、赤木両名を発見。二人とも怪我をしていますが命に別状はなく、既に病院へ搬送しました。それと』

「それと!? 加持さん、教えてよ! シンジはそっちにいるの!?」

 

 アスカの目に光が微かに戻る。それに気付いたのか、加持は力強くはっきりと言い切った。

 

―――ああ、生きている! 彼も怪我をしていたがプラグスーツのおかげで命に別状はない。それと、その彼からの伝言だ。一緒に戦えなくてごめん、だそうだ。

 

 その瞬間、アスカの目に炎が灯る。その輝きに呼応し、初号機もまた目を光らせた。そして、同じくレイと零号機も。その視線の先にいる使徒は、まるで脅しのネタが露見したように怯えていた。それもまた二人の怒りへ薪をくべる。使徒は分かっていて、さもエントリープラグに誰か乗っているように振舞っていたのだ。それが少女二人の逆鱗に触れた。沸々と沸き上がる怒りを感じながら、アスカとレイは目の前の相手を睨む。

 

「レイ、あいつ絶対ぶっ倒すわよ」

「ええ、決して逃がしはしない」

 

 眼前の相手は二人に気圧されるように後ずさる。その動きがいけなかった。使徒は再度潰れたエントリープラグを踏みつけたのだ。それが、二人に先程の光景と感情を呼び起こさせる。気付けば、二人は同時に目を見開き声の限りに叫んだ。

 

「「よくもあんな想いさせてくれたわねぇぇぇぇぇぇっ!!」」

 

 吼えた。体を包んでいた疲労感や痛みなど吹き飛ばすように吼えた。気迫が違った。手負いの獣こそが一番怖い。それを使徒へ見せつけるような迫力と勢いで襲い掛かる二機のエヴァ。どれだけ辛くてもいい。どんなに苦しくてもいい。大事な少年が生きていてくれた。それだけで二人は全てを忘れて戦えた。

 

(シンジっ! シンジが生きてたっ! 生きていてくれたっ!)

(良かった! 本当に良かったっ!)

 

 彼の伝言は敵討ちを願うものでも、激励でもない。共に戦えない事への謝罪だった。それもまた彼らしく思い、二人は嬉しく思っていた。本当に生きていたのだと強く信じられたからだ。先程の流れと完全に逆転していた。再生しようとする暇を与えないように攻め立てる初号機と零号機。既に機体の損傷が限界まできていた零号機は、当分戦えなくても構わないとばかりに無理をさせ続けていた。

 

「アスカ、これで!」

「ええっ! 終わらせるわ!」

 

 マステマを近接戦闘用にし跳び上がる零号機と、マゴロク・E・ソードを大上段に構えて斬りかかる初号機。その一撃を四本の腕で止めようとする使徒だったが、それを待っていたように初号機は縦一文字にマゴロク・E・ソードを振り下ろす。それをまたも白刃取りする使徒だったが、それこそがアスカの狙いだった。

 

「レイっ!」

「そこっ!」

「これでっ! ラストぉぉぉぉぉっ!」

 

 零号機のマステマによる一撃が使徒の頭部から背中までを切り付け傷を刻む。そのダメージで刃を押さえる力が弱まった瞬間、初号機が更に踏み込んでその体をコアごと貫いた。それをキッカケに使徒は動きを止め、初号機もその姿を戻す。こうして参号機を乗っ取った使徒は倒された。しかし、零号機は大破寸前。初号機さえも中破という、今までで一番の激戦となってこの日は終わった。

 

 

 

(知らない天井だ……)

 

 ぼんやりと目を開けたシンジは視界に映る景色にそう思った。それは無理もない。今、彼は集中治療室にいた。プラグスーツがあったとはいえ、彼があの参号機起動の際に負ったダメージは小さくないものだったのだ。ダミープラグで起動した参号機が使徒となった瞬間起こした爆発から、彼は咄嗟に近くにいたミサトを守ったのである。結果、ミサトは軽傷で済み、少しだけ離れた場所にいたリツコも同じく軽傷。しかし、当然のように庇ったシンジは重傷ではないものの全身に強い衝撃を受けたため、こうして念のために集中治療室行きとなっていたのだ。

 

(ミサトさんは……アスカ達はどうなったんだろう……?)

 

 霞んでいる意識の中、彼は大事な人達の事を案じていた。だが、その目はゆっくりと閉じていく。今はおやすみと体が言っているようにも思え、シンジはそこで意識を手放す。この後、シンジは無事一般病棟の個室へ移される事になった。それを聞いて喜ぶアスカ達。しかし、まだ誰も知らなかった。最大の危機と思っていた今回を凌ぐ危機が、すぐそこまで迫っている事を……。

 

 

 

新戦記エヴァンゲリオン 第十八話「命の選択は」完




ここでシンジの現在のステータスを。

精神コマンド……気迫 直感 集中 不屈 ??? ???

特殊技能……底力LV6 見切り ガード 気力限界突破 アタッカー ???

さて、これでいよいよゼルエル戦です。お気付きかもしれませんが、彼、攻撃的な精神コマンドを一切覚えていません。これがどうなるか……(汗

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