そして今回は原作とはまったく違うお話。……だって初号機暴走してないし街への被害も最小限だしで批判出来る部分少ないですからね。仕方ないね。それに使徒戦じゃないのでシンジも成長出来ないし。
ちなみに強化パーツですが、自分は初号機にはミノフスキークラフトを装備させるのが常でした。後は……適当に余ったものを。イベント時は鋼の魂や勇者の印、ハロ辺りを装備する事もありましたけど。今作ではそれらは装備していませんのであしからず。そこまでするとチートではなくデウスエクスマキナですから。
あと、年末から年始にかけてランキングに載っていたそうで、皆様ありがとうございます。今後も細々と頑張っていきますのでよろしくお願いします。
その日、シンジは呆れていた。原因は彼の住む家の家主である。その存在、ミサトはだらしない格好のままリビングへ姿を見せた。
「おはよ~」
「おはようございます。あの、ミサトさん」
「ん?」
「何度も言いましたよね。せめて僕が見ても平気な格好で来てくださいって」
そう言われてミサトは自身の姿を見る。タンクトップにハーフパンツ。実に動き易く寝易い格好だ。それに、自慢のスタイルを如何無く発揮出来る素晴らしいものである。そう判断しミサトはシンジへ顔を向けた。
「どこが問題?」
「全部ですっ! ……僕だって年頃の男なんですから」
その呟きにミサトは嬉しそうに笑みを浮かべると、シンジへ近付き後ろから抱き締める。その豊満な胸をシンジの頭へ押し付けるように。
「ちょ、ちょっとっ! ミサトさんっ!?」
「あのね、シンちゃん。私だってこんな格好誰かれ構わず見せないわよ?」
「え……っと?」
どういう事だと、そう考えるシンジ。そんな彼へミサトは慈愛に満ちた表情で答えを告げる。
「家族みたいに思ってるから平気なの。じゃなかったらさすがに私も恥ずかしいわよ」
「…………嬉しいですけど出来れば止めてほしいです」
「しょうがないか。シンちゃんも年頃だもんねぇ?」
「っ! そうですよっ! 悪いですか!」
「ううん、むしろ嬉しいわ。そうね。中学生には刺激が強すぎるか」
そう言いつつ着替えようとはしないミサトにシンジはため息を吐く。こうやって誤魔化され、流されていくのだ。それでもシンジとしては複雑な気持ちがあるため、ミサトへの小言を止める訳にはいかない。思春期男子らしく、彼もまたそういう欲求を解消しているのだが、最近その時に身近な女性を思い浮かべてしまう事が増えたからである。その原因の筆頭が同居人のミサトだったのだ。
(綾波をああいう事には使いたくないし、ケンスケやトウジにそういうのを借りるのも抵抗あるし、そうなるとどうしてもなぁ……)
あのヤシマ作戦の後、レイとシンジはより距離が近付いていた。その最たるものを上げれば昼を共に食べるようになった事だろう。シンジが作った弁当を気に入ったレイが、自分でやってみようとして指に傷を作ってきた事がそのキッカケ。その理由を聞き、シンジがならば自分が作るとなったのだ。
―――綾波!? どうしたのその指!?
―――切ったの。
―――切った? 何で?
―――碇君のお弁当をもう一度食べたくて、自分で作ってみようと思ったから。でも無理だったわ。
―――綾波、レシピとかは? そもそも包丁とか使った事あるの?
―――どちらもないわ。
―――……無茶苦茶だよ。分かった。僕が作るから。ね?
その会話は、幸いにも学校ではなくネルフ本部で交わされたため大きな騒ぎにはならなかったが、シンクロテストの際だった事もあり、リツコとマヤのいる前だった。勿論、女性二人はそれぞれに反応を見せた。微笑ましいと思う者と、青春してると胸をときめかせる者とに。
そんな事もあって、今やシンジとレイはクラスメイトからは夫婦と揶揄されている。最初こそ反論しようとしたシンジだったが、レイの「下手に反応すると余計盛り上がる」との指摘もあり、渋々受け流す事にした。女子達は男子と違い冷やかしではなく本気で羨ましがっており、それもあってか余計男子達のからかいは熱を帯びるという結果になって、シンジとしては嬉しいやら困るやらと複雑であった。
「はぁ……」
「どうしたの?」
「うん、ちょっと朝の事がキッカケで色々思い出してさ」
並んで登校するシンジとレイ。そう、これもまた夫婦と揶揄されるようになった理由の一つ。あの戦いの後、極度の疲労で二日近く寝込んだシンジを心配したレイは、退院した翌日から彼の家を訪れ共に登校すると言い出したのだ。最初こそその気遣いを感謝し甘えたシンジではあったが、既に体調が回復したにもかかわらずレイへもう来なくてもいいとは言えなかった。そう、純粋に嬉しかったのもあるし、そう言う事でレイを傷付けてしまうのではと思ったからだ。勿論、中学生男子ならではの欲望もない訳ではないが。
「葛城一尉の事?」
「うん、そう。何度言ってもだらしない格好で起きてくるんだ」
「だらしない格好って、何?」
「えっと……人前に出ちゃいけないような恰好」
「どういうもの?」
「……例えばシャツと短パン一枚とかだよ」
レイのそういう知識の無さを恨みつつ、シンジは何とか無難な例えを出した。それにレイも納得するように頷くが、すぐにある疑問を抱いてこう問いかける。
「それの何が問題なの?」
「ええっ!?」
「裸ではないわ」
「そ、それは極論だよ。まさか綾波も部屋ではそんな恰好してないよね?」
この質問はある意味でシンジ自身の首を絞める事になる。
―――ええ。だって基本着ていないもの。
その答えにシンジはレイの顔を見つめ、無意識に視線を下げる。そしてまたレイの顔を見て真っ赤になった。その変化の意味が分からないレイは首を傾げる。
「どうしたの碇君。顔色が変だわ」
「あ、綾波が変な事言うからだろぉ!」
「そうなの? ……ごめんなさい。今後は気を付けるわ」
「……そうしてくれるかな。本当に、お願いだからさ」
「ええ」
今度リツコ辺りに女性として必要な知識や恥じらいというものをしっかり教えてもらおうと、そう固く心に誓うシンジだった。
「例の件はどうなっている」
『あの初号機のおかげで文句の付けようがないですからね。ここで下手な批判をすれば、逆に自分達の首を絞めるようなものです』
ネルフ本部の司令室。そこでゲンドウはある人物と電話をしていた。相手の声は男性であり、どこか飄々としている。そんな事は気にもせず、ゲンドウは淡々と返した。
「では問題ないな」
『ええ、あのお人形は役立たずの烙印を捺すしかないでしょう。こちらが提出した資料は従来の初号機ですが、それでも向こうは勝てませんし。ま、それもおそらく偽装と思うかもしれませんが、こちらとしてもあの初号機の性能は未知数ですからね。どれだけ調べてもないものはないので大丈夫でしょう。あちらさんが唯一勝てるのは稼働時間でしょうが、それもあの使徒戦の戦闘時間を考えれば無意味と言えますので』
「弐号機の方は」
『そちらも問題ありません。ただ、パイロットに少しだけ問題が……』
「……あの武器の事か」
『ええ。映像は見せていませんが、噂や怪文書の類は下手に手を出すと真実味が増すので阻止のしようが……』
男の口調はどこか楽しそうだ。おそらく意図的に流したのだとゲンドウは判断した。だが、それは今の彼にはどうでもいい事だった。
(今のシンジならば上手く扱えるだろう)
レイの急激な変化とその理由。それがシンジにある事は明白だった。ならば多少の衝突も構う必要はない。それがゲンドウの結論だった。
「それで、肝心の事はどうだ」
『そちらも全て抜かりなく。きちんとお望み通りお届けしますよ』
「当然だ。それがお前の存在価値なのだからな」
『ええ、せめて捨てられない程度には働きます』
それを最後に通話は終わった。ゲンドウは一人虚空を見つめ呟く。
―――老人共は慌てふためき初号機をどう扱うか頭を抱えている、か……。
そう呟いて、彼は口元を歪める。嬉しそうに、楽しそうに。それは誰一人として見た事のない、ゲンドウの顔だった……。
同時刻、遠く離れたドイツのある場所で一人の少女が荒れていた。
「使徒二体を一撃で撃破ぁ? しかも被害もほとんどなしぃ? 冗談じゃないわよっ!」
その彼女が騒いでいる部屋のデスクには、何故かぼやけてはいるが初号機が第三使徒や第四使徒を撃破している写真がある。それだけではなく、ご丁寧にドイツ語で書かれたその二つの戦闘での被害内容まで添えて。それは彼女が憧れる男性から密かに盗み出したものだ。彼女は知らない。それは彼の手によって用意され、最初からその手に渡るように仕組まれていた事を。
「有り得ないわよ。一番最新鋭の戦闘用エヴァは弐号機なのに……何なのよあの武器っ! 日本だからって日本刀とか……バカにしてっ!」
マゴロク・E・ソードの事を言っているのだろう。彼女が乗る弐号機は扱える武装も豊富なのが売りなのだが、そのどれにもない威力を有している事を少女は理解していた。だからこそ、彼女はシンジの事をこう結論付ける。
―――はんっ、どうせ武器の性能頼りで勝ってるだけの奴よ。なら、その鼻っ柱をへし折ってやるんだから。
少女、惣流・アスカ・ラングレーは知らない。最初こそそうだったが、既にシンジは性能頼りのパイロットではなくなりつつある事を。そして、このままでは鼻っ柱を折られるのは自分の方だと、彼女はまだ知る由も無かった……。
「レイに恥じらいを教えて欲しい?」
その日、リツコは突然の頼みに驚いていた。その頼みをしたシンジは本気で困っている顔を彼女へ向けている。
「はい、お願いします。ミサトさんじゃ変な事を教えそうで」
「……その心配はおそらく的中するわ。そうね、たしかにそうなると私ぐらいが適任かしら」
そう答えてリツコは自分の後輩へペケを打つ。彼女は潔癖症のきらいがあり、男性経験さえもないだろう。なのでシンジとの関係を進展させているレイへのアドバイザーには不向きだからだ。ちゃんと後輩の事を分かっているリツコである。
「でもシンジ君。レイが恥じらいを覚えたら残念に思わないの?」
「…………それが綾波のためですから」
からかうようなリツコの言葉にシンジは顔を赤くしながらもそう返した。否定せず、それでもレイのためにと男ではなく人として、もっと言えば漢として答えたシンジにリツコは小さく驚きを見せる。
(変わったわね。最初に出会った頃はもっと捻くれていた部分もあったのに……)
ふと思うのは彼女が深い関係にある彼の父親。こう考えると、精神的成長はシンジに劣っているのかもしれない。そう考えてリツコはため息。
(子は親を超えるものだけど、まさかこんな風に超えていくなんてね……)
(リツコさん、ため息吐いてるや。やっぱり綾波に恥じらいを教えるのって難しいからかな?)
すれ違う思い。まさかシンジも目の前の女性が父親とただならぬ関係とは露にも思わず、ただリツコの返答を待った。
「……そうね。どこまで出来るか分からないけれど、最低限ぐらいは教えてみせるわ」
「すみません。ありがとうございます」
「いいのよ。これもシンジ君が頑張ってくれたおかげだもの。知っておいて。貴方が使徒戦で被害を最小限に抑えているから、私達も仕事が少なく済んでるのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。でも、だからって被害を少なくしようと無理をしないで。本当に私達の事を思うなら被害よりもシンジ君自身の事を気にしてね。貴方が無事に帰ってくるのが、結果的に一番私達の負担を減らしてくれるのだから」
「リツコさん……」
優しく笑みを見せるリツコにシンジは胸が熱くなった。自分のやった事の成果を教えてもらい、それを感謝される。それだけでなく、だからと言ってそうしてくれとは言っていないのだ。まさに仕事をする者をどうやる気にさせるかを分かっている。無論、リツコにそういう打算があったのは事実だ。けれど、それが本心でもあるのもまた事実。故にシンジの心を打った。偽りなき気持ちが彼の心を揺らしたのだ。
「僕、頑張ります。出来るだけ被害を出さずに戦います」
「シンジ君……」
「可能な限りです。一番は僕が無事に生き残る事。でも、出来るなら最高の結果にしたいですから」
「……そうね。常に最高を求めるのは良い事だわ。ちゃんと守るべき最低限を分かっているなら、ね」
「はい」
互いに笑みを見せ合う二人。こうしてレイはリツコから最低限の女性らしさを身に着けるべく特別授業を受ける事となり、シンジはそのおかげで精神的疲労と苦労から解放される事となる。ただ、リツコの言った通り、多少の寂しさと悲しさはあったが。煩悩多き青少年には複雑な結果となった事を追記しておく。
その一方で、レイはレイでシンジの知らぬところで思わぬ動きを見せていた。
「お料理を?」
「ええ。前、言っていたから」
ヒカリはレイから相談があると言われ屋上へ来ていた。何となくだが、あまり人に聞かれてはいけない気がしたためである。その予感は当たっていたと、ヒカリはこの時確信した。
「そっか。碇君のため?」
「…………迷惑をかけたくないから」
「あー、今一緒に食べてるの、碇君が作ってるんだっけ」
その問いかけにレイは無言で頷く。心なしか嬉しそうな印象を受け、ヒカリは目を瞬かせる。
(綾波さん、本当に変わってきた。碇君と本当に付き合ってるのかな?)
彼女もクラスメイトに淡い恋慕を寄せる乙女。その夢を現在進行形で進めているレイへ思う事はあるのだ。
「うん、分かった。でも、その前に綾波さんの事を教えてくれる?」
「私の?」
「そう。お料理の経験とかそういうの。今までやった事はある? お手伝いとかでもいいけど」
「ないわ」
即答。それにヒカリは苦笑した。普通は恥らったり誤魔化したりするようなものだ。それを躊躇う事さえなく正直に答えられる事は、彼女にとって凄いという気持ちと何だかなぁという気持ちの両方を抱かせた。
「それじゃまずは誰でも出来る事から始めようか」
「誰でも?」
「うん、私の妹でも出来るもの。それでいて、絶対食べられない人がいないもの」
「……そんなものがあるの?」
「あるんだ。じゃあ、今日はさすがに何だから……明日綾波さんの家に行ってもいい?」
そこから始まるヒカリの苦労。何せレイの家には家電などはほとんどないのだ。初めて訪れたレイの部屋にヒカリは愕然とし、色々と無頓着な彼女へアドバイスを行った。結局お料理教室はヒカリの家でやる事となり、レイはそこで初めて炊事の基本を学ぶ事になる。そして、彼女の携帯に洞木ヒカリの名が追加された。彼女の初めて出来た同性の友人。その繋がりは初めてネルフと関係ない場所でのもの。それがレイにある言葉を思い出させた。
―――学校も絆。碇君の言った通りね。
こうしてレイはまた一つ大事なものを得る。それは奇しくもシンジが辿った道。ネルフ関係者だけでなく、この街を、この思い出を守りたい。そう思わせる何かを彼女も手に入れ始めていたのだ。リツコとヒカリ。この二人によってレイは少しずつ人らしく、更に言えば女性らしくなっていく事になる。それもまた、形を変えてシンジを苦しめ喜ばせる事となるのだが、それはまだ先の話。
その日、シンジとミサトは信じられない言葉を耳にした。
「「料理?」」
「そう、料理。私が碇君へ作りたいの」
休日の朝。いつものように朝食の支度を始めようとしていたシンジが、インターホンの呼び出し音を聞いたのはミサトが起き出す少し前だった。誰かと思えば表示されたのはレイ。何か大事かと、そう思って慌ててドアを開けてミサトを起こして告げられたのが先程の言葉だった。
「レイがシンちゃんに、ねぇ……」
「あ、綾波? 料理って一体何を作るつもりなの?」
「簡単なもの。碇君、キッチン借りても?」
「え、えっと……どうぞ」
「ありがとう」
スタスタと歩くレイを何とも言えない顔で見つめるシンジと興味深そうに眺めるミサト。レイはまず炊飯器からご飯をある程度茶碗へよそうとそれを手元に置き、次にボウルに水を汲んでそこへ塩を入れる。更に小さ目の皿を取り出してその横へ。それだけで二人はレイが何を作るのか察した。やがて二人の予想通り、レイは少し冷めたご飯を塩水で濡らした手で握り始めた。
「……おにぎりか」
「シンプルイズベストってとこね。でも、あれはたしかにレイにしか作れない味よ?」
「え? 塩むすびなら僕だって……」
「違うのよシンちゃん。ま、せっかくレイが作ってくれるんだからしっかり味わいなさい。あたしの朝ごはんはその後でいいわ。部屋で横になってるから出来たら呼んでね~」
「ちょ、ミサトさんっ!」
ニマニマしながらリビングを出て行くミサトを見送りながら、シンジは彼女の言った言葉の意味を考える。レイにしか作れない味という言葉の意味を。おにぎりならば正直余程でない限り誰でも作れる。なのにミサトはレイにしか出来ないと言った。それがシンジには分からない。
(塩むすびなら僕どころかミサトさんにだって出来るはず。でも、どうしてミサトさんは綾波にしかって言ったんだ?)
疑問が晴れないまま、シンジの視線の先でレイは不慣れな感じを漂わせながらご飯を握る。やがてそれはやや不格好ではあるが三角形の状態となった。それを皿へ乗せ、レイはシンジへ差し出した。
「食べて」
「う、うん……」
海苔も巻かれていないおにぎりを手に取り、シンジは戸惑いつつも口にする。その味は……。
(塩が少し薄いかも? 多分水が多かったんだろうな。少し強く握り過ぎな感じもするけど……)
咀嚼しながらシンジは不思議な感覚を覚えた。美味いか不味いかで言えば美味い方だろう。でも、それだけではない何かがある気がした。その何かを考えながら食べるシンジへレイが不意に尋ねる。
「碇君」
「ん?」
「どう?」
その瞬間、シンジはその何かとミサトの言葉の意味を理解した。
(そうか。だから綾波にしか作れないってミサトさんは言ったんだ。それにずっとひっかかっていたのも……)
誰かが自分のためだけに作ってくれた食事。レイが自分の手で直接握ってくれた物。そこに気付いてシンジは口の中にあった物を飲み込んで、心からの笑顔でこう答えた。
―――美味しいよ綾波。本当にありがとう。
―――……良かった。
その時シンジは見た。レイの微笑みを。微かな笑み。まさしくその言葉通りの、美しい表情を。それにしばらく見惚れる彼へレイは不思議そうな顔になって小首を傾げた。それがシンジを現実へ引き戻し、慌てるようにおにぎりを食べて喉に詰まらせそうになる。そんな彼へレイは冷静にグラスへ水を注いで手渡した。
「……っはぁ。ありがとう綾波」
「気にしないで。それと、ゆっくり食べた方がいいわ」
「う、うん。そうする」
「ええ。もし良かったらおかわりを作るわ」
「……お願い、しようかな?」
シンジの言葉にレイは小さく頷いて再びおにぎりを作り出す。その様子を眺め、シンジは心が温かくなるのを感じて微笑んだ。だが、ここでシンジはレイの一般常識の無さを痛感する事となる。レイはシンジがもういいと言うまでおにぎりを握り続けたのだ。結果、ミサトの朝食もおにぎりへ変更され、シンジはおにぎりだけでお腹いっぱいになるという人生初の経験をする事となった。
新戦記エヴァンゲリオン 第七話「彼女しか作れないもの」完