皆さんは男子大学生の一人暮らしというものをどんなふうに想像するだろうか?まあ腐っても大学生、ある程度大人であるのだから多少は汚くてもそれは笑って済ませる程度のものかなと思う。俺の場合は現在大学2年生。大学にも慣れてきて手の抜きどころさんが分かってきた所謂「中弛み」の時期である。そのため一年生の時には自炊、家事などを一生懸命やっていたのだが今では必要最低限以外全くやらなくなってしまった。
ある休みの日、布団の上でゴロゴロ寝転がりながらソシャゲの周回をしていると玄関のチャイムが鳴った。
「ピンポーン」
そういえばこの前母さんが俺の一人暮らしの生活を気にして訪ねてくるって言ってた気がする。完全に忘れてた。さすがに母さん来るんだったら多少は片付けておけばよかった。うちの母さんは普段は優しいけどこと掃除に関しては滅茶苦茶厳しい。なんでも掃除をすることが楽しいらしく、俺が掃除めんどい、やる意味わかんないとでも言おうものなら掃除の大切さを淡々と語られてしまう。あの時の母さんは本当に怖い。
「ピンポーン」
どうやら長いこと回想にふけっていたらしい。そろそろ覚悟を決めるか。怒られるのはやだけどまあなんだかんだ言って母さんも俺のこと心配してくれてるわけだしな。俺は玄関に向かった。
「はーいどちら様?」
ドアを開けると目の前にいたのは。髪の毛をサイドテールにまとめた女の子だった。
「お久しぶりです!お兄さん」
「お兄さん?俺君みたいな可愛い女の子の知り合いなんていないはずなんだけど」
「かわっ!?」
女の子は急に顔を下に向けてしまった。俺高校生くらいの女子の知り合いなんていないはずなんだけどな。なんだか顔も赤いみたいだしもしかしたら俺が思い出せないことが頭にきているのかもしれない。やばい。早く思い出さないといけないのに見当もつかない。俺が思い出すのに必死になっていると女の子が不思議そうに話しかけてきた。
「もしかしておばさんからお話聞いてないんですか?」
「母さんから?ちょっとごめんね?」
スマホを確認してみると母さんからのメッセージが届いていた。
「忙しくてそっちにいけないので響子ちゃんに頼みました。迷惑かけないようにね。」
響子ちゃん?なんか聞いたことがあるような。俺の中の脳内データベースをフル稼働させてみる。あっそういえば昔、親戚の集まりでやけになついてきた女の子がいたような?
「もしかして響子ちゃん?」
「思い出してくれましたか?そうです!響子です!」
嬉しそうに笑っている姿はあの時の女の子の姿と重なった。なんだか急に思い出してきたぞ。確かフルネームは五十嵐?響子ちゃんだったかな。母さんの弟の娘、簡単に言うと従妹ってやつだ。思い出してくれたことがうれしいのか響子ちゃんがうれしそうに話しかけてきた。
「実はですね!おばさんに頼まれてお兄さんがちゃんと生活してるかどうか見てきてほしいって頼まれたんです!」
「そうだったんだ。わざわざ悪いね?って響子ちゃん関東に住んでるの?確か関西の方じゃなかったっけ?」
「鳥取ですよ。まあ今は私も関東に住んでるんですけどね。」
「そうなんだ。ということは家族で引っ越してきた感じ?」
「いえそういうわけではないんですけど。」
「へー、ああごめんね。玄関先でとりあえずあがってよ。」
「はーい、お邪魔します!」
響子ちゃんを家にあげる。とここで思い出してしまった。そういえば掃除してなかったんだった。母さんだと思って気抜いてたけどこの状況まずくないか。案の定響子ちゃんも廊下を見て固まってしまっている。
「いや響子ちゃんこれはね....」
上手い言い訳が出てこない。いくらなんでも片していない男の家に女の子を通すのはやばすぎる。もし俺が知らない男の家に行ってその家が汚かったらそいつの印象は最悪だ。しかもあんまり親しくない人だったらもうあんまり関わりたくないだろう。そう考えていると響子ちゃんが話しかけてきた。
「お兄さん...」
「はっはい!」
「...これは...どういうことですか?」
やばい。どう見ても怒っているようにしか見えない。
「いや、最近忙しくて(ソシャゲの周回が)、どうしても掃除が」
「これカップラーメンのごみばっかりですけどご飯はどうしてるんですか?」
「つくる時間がなくて、めんどくさいしカップラーメンでいいかなって。」
「そうですか....」
あーこれは完全に幻滅されてしまったかも。響子ちゃんもプルプル震えてるし、これもう飛び出しちゃうんじゃないかなぁ。家が汚くてごみにカップラーメンって汚部屋の代表やん....せっかく思い出したっていうのに印象が最悪って....本当にどうするか....
「あのっ!私の趣味って家事全般なんです!」
「えっ。」
「だからこのおうち丸ごと掃除しちゃいますね!」
響子ちゃんは何故か嬉しそうにそういった。
・・・・・3時間後・・・・・
まさかほんとに掃除を始めるとは思わなかった。俺がだらけて放置していた部屋は瞬く間にきれいになっていった。いや、俺ももちろん手伝ったよ。凝り始めたらちゃんとやる派なのでめんどくさがりだけど。
「ふー、やっぱりお掃除は楽しいですね。」
「なんかごめんね。母さんの代わりに来てもらっただけでもなく掃除までしてもらって。」
「いいんですよ♪私お掃除大好きですし。」
「面目ない。」
本当に嬉しそうな響子ちゃんをみてたらなんか頭をなでたくなってしまった。昔はやってあげてたような気がするし。一応断りを入れとくか。
「響子ちゃん。ちょっとごめんね?」
「はい。なんです...えっ?」
「今日はありがとうね。」
「ふにゃぁぁ。」
響子ちゃんが猫みたいになってしまった。目を細めてて本当に気持ちよさそうだ。
「よしっ、じゃあラストスパート頑張ろうか?」
「はい♪」
・・・・・さらに2時間後・・・・・
「終わりました!」
「いやーこんなにきれいになるとは。」
「そうです。お掃除するとこんなにきれいになるんです♪」
響子ちゃんと掃除した部屋は見違えるほどきれいになっていた。というか目をこすってもう一度見直したくらいだ。これを機に忙しくてもこまめに掃除しないとな。そう思いながら響子ちゃんの頭をなでる。
「ふにゃぁぁ。」
響子ちゃんは嬉しそうにまた目をほそめている。そんな響子ちゃんを見て朗らかな気持ちになっていると突然ケータイの着信音が聞こえてきた。その着信音はどうやら響子ちゃんのものだったらしく慌てた様子で電話に出た。
「はい。わかりました。卯月ちゃん連絡ありがとうございます。では、またあとで。」
「どうかしたの?」
「はい。実は今日のミーティングで時間が変更になったって友達が教えてくれたんです。」
「へー、ミーティングって部活か何か?」
「ええとまあそんなところです。」
「そっか?ちなみに変更になったって言ってたけど時間は大丈夫?」
「そうでした。すみませんお兄さん。名残惜しいですけど今日は帰りますね。」
「お礼もしたかったし残念だけどしかたない.....そうだ!今度一緒に出掛けようか?もし響子ちゃんが嫌じゃなければだけど。」
「本当ですか♪嬉しいですっ♪楽しみにしてます♪」
連絡先を交換し響子ちゃんは帰っていった。今度出掛ける約束もしたしその時はしっかりとお礼をしないとね。