突然の魔女からの手紙に一同は固まっていた。しかし、秋楽おじさんが声を荒げた。
「どう言うことだ。どうしてこのような手紙が読まれたのだ。」
「落ち着け、秋楽。これは紛れもなく私とクロノエルが契約を終了された証だ。現に私は当主の指輪をしていない。」
確かにお祖父様は右手の中指に当主の指輪をしていなかった。当主の間は絶対に外さないと言っていた指輪が外されたということは、お祖父様が当主の権利を手放したということだ。本当にクロノエルに渡してしまった可能性もある。
それについてお祖父様が語った。
「私は先代が傾けた家を復興させるために魔女と契約をして7トンの黄金と5トンの白金、そして沢山の宝石を貸し与えてもらった。契約内容に関してはクロノエルとの契約で言えんがな。この魔女からの手紙には碑文の謎を解けば全ての権利を放棄するとあっただろう。つまり、私は謎を解いた者を時期当主にするつもりだ。」
お祖父様の言ったことは誰もが理解できた。しかし、魔女の碑文は何人もの人が挑戦しても解けないほどの難解な物だった。
「お祖父様、碑文を解くのに時間制限はあるのですか?」
「それはクロノエルしか分からないことだ。みんな解く気になったようだから私は書斎に戻らせてもらうよ。」
そう言ってお祖父様はゆっくりとした足取りで食堂を後にした。
「親父も居なくなったし、大人は大人で挑戦するから子供はゲストハウスに行きな。」
「分かったわ。お休みなさい、お父様。」
「あぁ。ゆっくり休めよ。優妃。」
魔女から挑戦を受けることにしてから、お祖父様と大人と子供はバラバラになった。私は思った。
『魔女を馬鹿にする者には勝ち目のないゲーム』だと思った。
私達はゲストハウスに着くといとこ部屋で碑文の謎に挑戦することにした。
「誰か碑文の内容を覚えていないかな?」
「薫お兄ちゃん、莉亜がメモってるよ。莉亜、偉いでしょう。」
「うん。莉亜は偉いね。優妃お姉ちゃんが頭撫でてあげましょうか?」
「うふふ、ありがとう。優妃お姉ちゃん。」
姉が妹の頭を撫でるような感じで、兄妹のいない私からしたら本当の妹のように感じた。
「さて、碑文をよく見ると物騒なところがあるね。」
「薫兄さんが言ってるのって、魔女の儀式のところか?」
『第1の生贄に偉大なる者の心臓を抜きて燃やし捧げよ。第2の生贄に対になる者が選びし者を捧げよ。第3の生贄に腹を切られし者を捧げよ。第4の生贄に手足を外されし者を捧げよ。第5の生贄に額を貫かれし者を捧げよ。第6の生贄に杭を打ちて捧げよ。第7の生贄に首を落とされしものを捧げよ。第8の生贄に血を抜かれし者を捧げよ。第9の生贄に魔女への手向けに6人を捧げよ。そして魔女は復活する。』
「兄貴、これだと軽く見積もっても14人は色々な方法で殺されることになるぜ。」
奏太の言う通りだ。この儀式には大人数の生贄が必要になる。それにこれだけ多彩な殺し方だと、凶器は一種類では不可能だ。もしも、この儀式を行うなら親族会議は最高のタイミングだ。通常ならこのお屋敷には13人しか居ないわけだから少し人数が足りない。
「何度見てもこの部分だけでも分からないわね。」
「今日はもう寝よう。頭を使い過ぎて気づかなかったが、もう11時だ。」
「仕方ねえ。今日はこれで切り上げるしか無いな。」
こうして謎解きは中断されて全員が寝ることになった。
ついに始まったゲーム。本番はこれから始まるのだ。