艦面ライダー『マスこれ』 〜ライダーよ艦娘よ、市民の平和を守り抜け〜 作:rockzero21
海岸に6人の戦士が立っていた。一人はヘラクレスオオカブトの意匠が施された青い戦士。一人はクワガタの意匠が施された赤い戦士。一人はカマキリの意匠が施された黒い戦士。一人はクモの意匠が施された緑の戦士。一人は逆立った前髪の意匠が特徴的なピンクの戦士。そして残る一人はバイクの各部のような意匠が施された黄色い戦士。
今彼らが退治するのは赤と黒のまだら模様な双頭の怪物。その禍々しさは元より、体の三倍以上の羽ととてつもない臭気、何より口からの業火は紅蓮の龍のごとく襲いかかる代物だった。然し乍ら彼らに降伏する気はさらさらなかった、それが自分のやるべきことだから、自身のためだから、そして今までの戦いがあるから。彼らは腕の機器にカードをスキャンし、ベルトにカードをスキャンし、ゲームカセットをベルトにセットした。
『『『Absorb Queen Evolution King』』』
『Evolution King』
『ドッキーング!パッカーン!ムーテーキー!輝け!流星の如く!黄金の最強ゲーマー!ハイパームテキエグゼイド!』
『ガッチャーン!レベルアップ!爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク!アガッチャ!ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナーイト!ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンター!Z!』
黒い戦士は体を赤緑金に染め、青赤緑の3人の戦士は金の装甲が追加、青い戦士はさらに全身に十三の紋章をまとった。ピンクの戦士は彼の頭部を模したロボに吸い込まれ上から飛び出し星をまとった金の姿に変わった。黄色い戦士も黒いドラゴンを装甲として纏い、竜騎士のごとき姿となった。彼らはまるで共通意識でも持つかのように連携した動きで、圧倒的に強いはずの怪物を追い詰めていった。そして赤、緑の戦士も十三の紋章を身に纏いそれぞれの武具にカードをスキャンしていった。星を模した戦士はベルト中央の釦を二度押し、竜騎士の戦士も金のカセットを左腰のスロットに刺し釦を二度押した。
『Spade 2, Spade 3, Spade 4, Spade 5, Spade 6, Spade 7, Spade 8, Spade 9, Spade 10, Spade Jack, Spade Queen, Spade King, Spade Ace, Royal Straight Flash』
『Dia 2, Dia 3, Dia 4, Dia 5, Dia 6, Dia 7, Dia 8, Dia 9, Dia 10, Dia Jack, Dia Queen, Dia King, Dia Ace, Royal Straight Flash』
『Heart 2, Heart 3, Heart 4, Heart 5, Heart 6, Heart 7, Heart 8, Heart 9, Heart 10, Heart Jack, Heart Queen, Heart King, Heart Ace, Wild』
『Club 2, Club 3, Club 4, Club 5, Club 6, Club 7, Club 8, Club 9, Club 10, Club Jack, Club Queen, Club King, Club Ace, Royal Straight Flash』
『キメワザ!
『キメワザ!
其の発声と同時に戦士たちは、飛び蹴りをドロップキックを、ドリルキックを、はさみ蹴りを、回し蹴りを同時に打ち込んだ。技を喰らった怪人は其の姿を赤と黒、二つの石版に変え飛んでいった。尤も撃破されたとはいえ所謂『アンデッド』なのだからいつでも復活できるはずだった。然し場所が悪かった。彼らが飛んでいったのはスカイウォールの上部。そこは物理的な壁の代わりに万物を消す赤い光線が其の役を果たしている。そこに石版が当たったらどうなるかは想像に容易い。結果怪物は復活することなく虚空に消えていった。
6人の戦士たちはベルトを外すと、青年の姿へと変わった。そして節足動物を模した戦士だったものは各々の方向へ別れ、黄色い戦士はポリゴンとなり消えていった。其れを見届けたのち、残った青年も帰路に着いた。
高速戦艦金剛型第三番艦榛名は、不思議な物体について思いを巡らせていた。そもそもここは個室であり鍵が付いてないとはいえ(尤も『金剛型の部屋』は鍵が付いているが其の中の個室は鍵がないため金剛型の部屋なら自由に移動できる)
島風型駆逐艦島風はいつもの日課として走り込みをしていた。否、其れは日頃の鍛錬というよりも寧ろ事実から目を背けたいがためのものだったのだろう。もともと彼女には友達と呼べるものがいなかった。史実においての駆逐艦島風は其の出力をアップさせた代わり、装備は一品ものが多く其の特殊性も相まって、同型艦が作られていない。ならば他の駆逐艦に友達がいないのかということだがそういうわけにもいかない。彼女は抜き出て速い、逆に言えば彼女についていける人はいないのだ。尤も少し前まで友人がいたが沈没してしまった。其のような経緯があった所為でまるで相対性理論に憑かれたかのように、彼女が速くなっていくほど彼女の時間は止まっていった。然し彼女は知っていた、同じ『速くて強い』がモットーの艦を。走り込みを終えた彼女は一目散に戦艦寮へ向かい、高速戦艦金剛型の部屋を敲いた。そして出てきた部屋の主であり一番艦、金剛に一緒に遊んでもらうよう頼んでみた。ただ島風は人の事情というのを知らない。もっと言えば自分の事情だけで精一杯なのだ。そんな彼女を金剛三姉妹は放っておく訳にもいかず、かといって此方の事情も外せない、其の板挟みに困っていた。と、つかの間、末っ子の四番艦…ではなく三番艦の榛名が部屋からでてきた(彼女らは四姉妹である)。そして真に末っ子である霧島に呼ぶのに構わず、一目散に部屋を出て行った。彼女の名を呼ぶ金剛の声だけが後には残った。のちに帰ってきた榛名が此の状況を見てあたふたするのはまた別の話。
朝、というのは幾人かの人にとっては憂鬱なものだろう。其れは、微睡みから現実へ引き戻されることへの抵抗か、または其のあとの業のためか。翔鶴型正規空母二番艦瑞鶴は其のどちらでもなかった。彼女にとって一番嫌だったのは明くる日がくる、其のことだった。
彼女は簡単に言えばあまり優秀ではなかった。先輩からはなぜできないのかと怒られ其れに対し八つ当たりしていた。本当はわかっていた、力不足だと。其れは後輩ができても同じことで遂に指導することはなかった。起床喇叭と朝とで二重の苦しみを味わった彼女は隣の薄幸な姉、翔鶴の顔を覗き込んだ。幸運ステータスが高めな自分に対し姉は低かった、だがそれがどうしたというのか。其れくらいのもの実力でカバーできるし、事実それで翔鶴は登って行った。然し自分の所為で連帯責任を負わせられていたが。それに対し幸運艦なんてのは蔑みの言葉でしかない。真に実力のある者もいるだろうが、だとしたら何故名誉艦などといった呼び方をされないのか。少なくとも私の場合答えは簡単だ。私という足手まといをみんなが庇って死んでいき、ただ一人私は無傷で残される…これが真実だ。別の言い方をすればスパイ、反逆者、人でなし…WWIIの時はどうだったか知らないが今の私はそうだ。もっと佐世保とか呉とかにはもっといい私がいるはずなのに、何故中心の横須賀には此の私なのだろうか。どうせそんな文句を言えるほど戦績を挙げられているわけでもないが。尤も弓の使いようが下手、と言う訳ではない。其れすらなかったら戦闘にすら出してもらえないだろう。然しながら先輩は彼女にダメ出しをするし、実際彼女は本の僅かの敵を撃墜したのち、同じ艦隊のメンバーを傷つけて帰っている。其れが何がダメなのか、どうすればいいのか、彼女には知る由もなかった。
机の上にあるのは解体申請書、世に言う退職届である。数日前思いつめた彼女は遂に其れを書き、提督に出そうとしていた。然し其の矢先、彼女も懇意にしていた駆逐艦の子が一人、波に飲まれていった。すなわち轟沈である。自ら国の力になろうとして死んでいった彼女のことを思うとどうにも居た堪れなかった。其の結果地獄を味わうような困難をしているわけだが、彼女にしてやれたことはこれくらいだろう。
そんな瑞鶴が日課にしているのは自身の装備の手入れだった。現実の空母と違い人が乗り込めない艦娘は飛行機を式神として、あるいは妖精に操縦してもらう形で操作している。弓の腕前はなくとも妖精さんと仲を深め合うくらいならできる、一番重要なのは彼らとのコンビネーションだ、彼女の持論ではあったが、妖精さんは実際それに答えてくれているし、空母の黎明期の艦である龍驤さんも同じことを言っていた気がする。この日も同じように整備しながら妖精に話しかけてみた。ねぇ…どうしたら強くなれるかな…どうしたら皆んなの力になれるかな…
此の職についてから長らく立ったが未だこの喇叭起床には慣れないと提督は思った。一体何回此の音を聞いたか考えてみると、入ったのが去年の師走中旬で今は二月のはじめのはじめだ。意外や意外、まだ1ヶ月半ほどしか経っていなかった。さらに彼は非常勤なのだからもっと少ないのだろう。
非常勤ということについて解説を入れておくと、彼は防衛大や防衛医大の出ではなく、普通の大学を現役合格して出て行ったいわゆる一般人だった。ならば何故提督なんぞやっているかといえば提督の適性診断に引っかかったからである。深海棲艦と言う敵が出現してから、其の対応が可能な提督が必要になってきた。然し、艦娘の指揮や建造には妖精さんが見れなければならない。当時の海自には数えるほどしかおらず、一般の人間から引き抜く策がとられた。この提督不足は志願者多数の現在においても変らず、彼自身も此の引き抜きにあって晴れて提督となった。尤も最近は鍛えれば誰でも妖精さんを見れるようになり、さらに徴兵なんぞというシステムは存在しないのだが、正義感の強い、そしてごく普通の性的趣向を持つ彼は進んで提督となった。では何故非常勤かといえば、彼がもともと勤めていた部署が特殊で彼を含め数えるほどしかいなかった。そこで其の部署が政府と通じていたために彼はコネを使ってどうにか二つの職を両立できるようにした、というわけだ。
さて、海自指定の服に着替え、今日の業務をまとめるため提督は執務室へ向かった。すると鍵がかかった其の部屋の前に先客がいた。榛名だ。
「榛名さん、おはようございます。今日の業務補佐艦はあなたでは…」
「はい。確か今日は雷ちゃんですね。私が来たのは別の用件で…」
「あっ、今開けますね詳しい話は中でしましょう。」
と提督は鍵を開け、榛名を中へ入れる。彼女としてもできるだけこの話は広めたくなかったので助かった。
「えーっと、それで何の相談ですか?」
「はい、今朝起きたら机の上にこんなものが…」
と言って榛名が取り出したのは、今朝の何とも言えない物体だった。多くの人は此れを見て、使い方以前にこのようなものがあったというところから学ぶことになるだろう。然し提督にとって其れはひどく見慣れたものだった。提督は其の物体を榛名から借り、刀を模したパーツがある方を右半身側にして絵がある方を前面に腰に当てた。然し何も起こらない、ここまでは提督の認識と一致していた。確か其れはイニシャライズ機能が搭載されていて最初につけた者にしか反応しない。当てた状態で左半身側にある柄はすでに装着者が設定されている証拠だ。そして次に榛名にもそうするよう促した。本来なら彼女にも反応しないはずである。然し彼女が腰に当てた瞬間、其の物体から銀のバンドが伸び、物体は一転、ベルトのバックル部分となった。同時に正面から見て右、左半身のほうにある鎧武者の柄も、オーラが桃色になり女性的になった。そしてバックル部分を外すとベルトは格納され、携帯可能となった。
「えっと…此れはどうすればいいですか。」
「そうですね…榛名さんが神様からの恵みとでも思って持っておくのがいいと思います。」
「何の神様が送って来たんでしょうか。」
そう言って榛名は失礼しましたと一礼、部屋に戻っていった。そして一人残った提督が書類を整理していると本の数分前に発信された速報が来ていた。本来海に現るはずの深海棲艦が陸に出たという情報、其れが本来彼らにない能力を所持していたこと。何れも心に留めておく程度のことだったがそれが提督には何かの運命のようにも見えた。そして今朝の榛名、あれはこのためだったんだろうか。そう思いつつ提督が目を落とした先には、蛍光イエローとショッキングピンクで彩られたゲーム機器のようなものが置かれていた。
睦月型駆逐艦二番艦如月は夜行列車の中で目を覚ました。狭い車内とはいえ小柄な彼女には十分広かった。此れで何回めの転勤だろうか。もともと艦娘ではなかった頃に親の用事で幾度となく転校しており、艦娘になってからも作戦等で何度も鎮守府を渡り歩いてきた。其れは友人との悲しい別れでもあり、同時に新しい出会いでもあった。何かの同様に友達100人できるかななどとあったが、今や千や二千は優に超えているだろう。少なくとも其れが良い友だけでなく、柄の悪そうな連中も大多数を占めているのは難点かもしれない。そんな彼女は次の鎮守府でも全員と友達になると決意を心の中で決めつつ手に持つクリアホワイトの操作盤らしきものを見つめた。
夕張型軽巡洋艦夕張は一人崖の上に立っていた。本来であれば鎮守府にいるか出撃するべき時間なのになぜそこにいるのか。答えは簡単、彼女の鎮守府は壊滅してしまったからである。彼女はそこの古株で長らくそこの提督に付き従っていた。辺境の基地であり金も資材も十分とは言えなかったが二人は精一杯頑張っていた。然し他の艦娘はそうではなかった。来るものは皆やれ低賃金だとか、やれ遠征ばっかだとか不平を言っていった。夕張とて不満がなかったわけではないが、提督の強い責任感と優しさを信じていたが故にそんなことはできなかった。然し不満の声は日に日に増し、其の結果提督が殺され其れを誰も責めなかったのは自然な流れだろう。結果としてここは既に鎮守府ではなく艦娘のたまり場とでもいうべき形になっていた。然しそんな中、身寄りのない提督の遺産を彼女が整理していると、おかしなことに気づいた。彼の口座がここ最近全く更新されてなかったのだ。それだけではなかった、提督に変わって業務を行っていると、何故かどうしても今まで通りの賃金では赤字になってしまう。改めて計算をすると艦娘の賃金を全て足した時点で既に人件費が赤字になっていた。其れどころか資材を全て金にしても足りなかった。あとは食堂代だけ…そう考えた夕張にある一つの推理が浮かんだ。まず、講座で彼が最後に下ろした全財産から提督の薄い財布の中身を引く。次に賃金の不足代を、提督への不平がました頃からの期間分かけてみた。するとどうだろう、両者は驚くほどマッチしていた。そうか…と彼女は思った、足りなかった分はどうなったか、提督が自分の財産から工面していたのだった。さらにおそらく提督のところには給料なんぞなかったに違いない。あの常に笑顔で自分より私たちのことを気にかけていた提督を真に瀬戸際で働いていた提督を殺したのは私だ。そう思った夕張は一人ここに来ていた。そして今は亡き提督に感謝と謝罪を伝え…其の崖から身を投げた。
然し天はどうしても其れを許せないらしい。夕張の遺体の周辺に合羽を着た男たちが現れ、彼女を回収していった。そしてそんな中、一人スーツを着用した男が現れ、夕張の顔を覗き込みこう囁いた。
「軽巡夕張、お前はこちらで有効活用させていただく。」
彼女が死んで苦しみから逃れるのは許されなかったのだろう。然し
「安心しろ、お前の意志は俺たちが継ぐ。」
彼女の願いは伝わったのかもしれない。