艦面ライダー『マスこれ』 〜ライダーよ艦娘よ、市民の平和を守り抜け〜 作:rockzero21
アマゾンが一人追加された状況に、ニューオメガ、水澤悠は困惑していた。いや、寧ろ其の対象は骸骨怪人のみだったかも知れない。変態時の熱風は一般的な其れより遥かに少なく、鎧らしき器官を持つのも又異色だった。然し彼女の捜査と狩りと、一体何方が優先すべきだろうか。答えは簡単、ニューオメガは烏賊怪人ーーイカアマゾンに攻撃を仕掛けた。
悠はアマゾンの中でも特に強力な個体である。抑も彼の腰にあるネオアマゾンズドライバーは其の性能の所為か、現在使用可能なのは彼のみである。其の上彼は長年戦い続けてきた、そして其れだけ戦闘センスもあるのだ。加え、理性で以ってアマゾンを狩るのは「脅威」という言葉を思い出させるには十分すぎた。
然し流石に今回は分が悪いと彼は読んだ。確か墨と擬態を用いる動物……趣味が此のような形で活用されるのは迚も不本意ではあるが、事は結果論だ。ニューオメガクローを相手に伸ばし、先制攻撃とする。案の定墨で煙幕をつくった所を、ニューオメガはアームカッターで襲いかかる。軈て煙幕が晴れると、倒れた二体がいた。然し、
(手応えに違和感があった。)
運悪くも、其の直感は無視できるものではなかった。
彼等は急に姿を墨と触手の破片に変えた。擬態だったのだ。更に彼を嘲笑うように死角から衝撃を受ける。此の儘じゃジリ貧だ、ニューオメガが思った其の時、骸骨型のアマゾンが動いているのに気付いた。
まさか、奴も仲間か、そう一瞬思ったが更に別の物に目が釘付けになる。銃だ、生物的なディテールはあるが見た目は無機質な銃だ。一体何をしようというのか。然し、現実が想像よりも異常な事を彼は正に知ることとなった。
「……撃ち落としている⁈」
彼女は其の手にした拳銃で、雑ながらも触手を弾で弾いていった。そして最後に自然に擬態したイカアマゾンに一弾放った。開幕攻撃を引きずっていた奴は避ける事は叶わず、更に其処をニューオメガに一突きされ、体を黒い粘性の液体へと変えた。そしてニューオメガと骸骨のアマゾンも姿を其々悠と瑞鶴に戻した。変身で解けたツインテールもしっかり結ばれていた。
「提督、 此れは如何いうことですか。」
「何度言われようと同じ事を答えるしかありません 。彼女には慰安と称して休暇を楽しんでもらってます。」
「そうですか、詰まり貴方は個人を優先して団体の利益を考えない人と。」
「彼女、瑞鶴さんの能力の低下は其れこそ集団の損失に繋がります。」
提督と加賀との論争に他の者達は全く加わることなどできなかった。少なくとも裏事情を知っている秘書艦叢雲、及び業務補佐艦秋月からしてみれば加賀に分があることは明白だった。監視カメラでも見たが、彼女は何かに引き摺られるように出て行ったのみで許可なんて取ってない。とはいえ一概に云々と言える訳でもない、特に最近は調子が出てない彼女の事を考えれば責められはしないだろう。然し、其れ等以前の問題として抑も会話に加われなかった。
「軍隊の規律を守れるような人間を、艦娘を仲間にしろと言うのですか。」
「なら解体願なり転勤願なり出せば良いだけの話です。いえ、僕は止めませんよ、そんな権利ありませんし。」
遂に出たか。
二人について大本営に出せば抜き打ちの監査が不定期に入り、問題があれば提督の権限なしにこうした行為が行える。然し何らかの悪徳行為を働いたのでもなければ特段気に障る訳でもない。もっと言えば、こうして強気で言っている加賀も瑞鶴を失いたくないのだ。此処迄読んでいる事に、いや、其れ以上に加賀の弱点を見抜いただろう事に秋月は舌を巻いた。何処でも転ぶし、年上の艦娘には敬語も使うし、一見弱々しい提督だが、こういう場面に於いては可也戦い慣れたような態度を見せる。何かしらの武道でもやっていたのかも知れない。
「まあ二人とも、喧嘩は其の辺りにしたら如何ですか。」
思わぬ援軍に秋月は顔を上げた。流石は鳳翔さんだ。鳳翔は提督と加賀の間に立ち、諭すように言った。
「先ずは加賀さん、確かに言い分は御尤もだけど、瑞鶴さんは私にも欠席を伝言しましたよ。何か切羽詰まったみたいだったし、此の儘じゃ増す増す支障をきたすばかりでしょう。そう考えれば提督の決断も正しかったんじゃないかしら。尤も二人には此れ以上働いてもらう必要があるみたいですが。」
鳳翔の言葉に加賀も渋々と言ったように身を引く。鳳翔は一言言った後部屋を出て、他の空母も其れについて行った。
「ったく、一時は如何なるかと思ったわ。」
「本当ですよ。正当性はあるんですが……』
「アハハ……まあ、『何か』はあったんでしょうね。」
何か、と聞く秋月に叢雲は一枚の写真を見せた。
「所謂蛸怪人って奴。深海棲艦との関係は、まあ無いでしょうね。先に入ってきた烏賊怪人の方は倒されたらしけど、同行していた此奴は行方知れず。今は如月が頑張っている筈。」
「ああ、確か『仮面ライダー』でしたっけ。あの此の前の代表戦も仮面ライダーの戦いでしたが、関係とかは……」
「正義と人々を守る戦士の事です。あのライダーも前は人助けをやっていたし。」
西都の襲撃、仮面ライダーローグ、そして黄羽の死は桐生戦兎他仮面ライダーと仲間を気落ちさせ、結託させるには十分すぎるほどだった。猿渡御一行のnascitaでの滞在を決定して数日後、突然会話を遮るようにチャイムがなった。代表して石動美空が戸を開けると
「済みません、桐生戦兎はいらっしゃいますか。」
其処に居たのは水澤悠だった。俺がどうかしたかと出てくる戦兎に悠トランクケースを渡した。
「此れを作って欲しいんです。料金は前払いで蹴ることもできる。決断は「作ろうじゃないの。」」
戦兎の決断は早かった。
「此処で断っちゃてぇん才科学者の名折れだ。受けてやるよ。」
悠は礼を言って帰っていく。其れを尻目に猿渡一海は質問する。
「戦兎、其奴は一体どんな代物だ。」
「ああ、如何やらアマゾン細胞を利用した武器だとか。」
其れを聞いた万丈龍我は機敏に反応した。
「おい戦兎、そんなモン受けちまって良いのかよ。確かアマゾン細胞ってアレだろ、何か人を喰うとかそんな感じの……」
戦兎は肯定し、続けた。
「万丈にしてはよく覚えてるじゃんか。其の通り、アマゾン細胞は野座間製薬の開発した人工細胞で、十年か其処等前に暴露し甚大な被害を及ぼした、らしい。だが使いようでは薬になる可能性だって大いにある。抑も物理学専攻の俺に託すのは機械か物質くらいだろ。そういった奴が細胞を食らうわけないでしょ。」
さて、此れもだけど
「尤も、善か悪かは使用者次第だが。」
瑞鶴は駆除班と一緒に山林を逃げていた。
移動をしているのは悠の判断であり、其処に志藤真他駆除班も同意していた。瑞鶴自身は其処迄大事とは思わなかったものの、今や其れを改めざるを得なかった。
「恐らく4Cは嗅ぎつけたんじゃないでしょうか……後は……」
悠の義姉妹、美月の言葉に衝撃を隠せずにいる。まさか政府から逆に追われる身になるとは思わなかった。提督には連絡は取った筈だが、駆除班曰く4Cは群を抜いてシークレット、そんな部署を提督がどうこうできる物か如何か。と、其の瞬間、バンが大きく揺れた
「……鷹山仁か。」
鷹山仁。元野座間製薬の研究員でアマゾン細胞の生みの親、そして自責の念から自らもアマゾンとなりアマゾン狩りを行っている。其の対象は勿論瑞鶴、悠、そして彼自身もである。
仁は……仮面ライダーアマゾンアルファは弾幕を突き進む事を悪手と捉えたのか、其の脚力で後ろに回り込む。そしてバンにいる水澤兄弟、高井望、瑞鶴を見つけると近づいていった。そして臆することなく瑞鶴の目の前に立った。
「へぇー、此奴が件のアマゾンか……しっかし妙だなぁ、実験体は全滅、残っているのは俺と
そう言うなり、殴りかかってきたアマゾンアルファの拳を済んでのところで躱す。尚も殴りかかろうとする彼をニューオメガが引き摺り出す。其の儘二人は乱闘に縺れ込んだ。
戦闘センスで言えばアルファに分があるが、手数とスペックでは悠も引けを取らない。一分半か其処等か、其の拮抗状態が破られたのは又別の要因によるものだった。
「マコさん、彼れ4Cじゃないですか!」
「まさかこんなに早く来るとはな……」
真、三崎一也、福田耕太、悠が其方に向き、自由になったアルファは今度こそと言わんばかりに瑞鶴に目を向ける。一方の瑞鶴も抵抗するかのように睨む。そして
「「ヴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎」」
双方ともに雄叫びを上げ、アームカッターと剣を打ち付けた。
「ああ、漸く判った。」
「何がよ!」
「お前の正体だよ。何か引っ掛かってたが、実験体製作で失敗作だって捨てられた奴だ。確か原型の動物は、
「ヒトですって!」
「そう、ホモサピエンス。食人本能の植わったアマゾンの中で本能的に人を狩ろうとしない唯一の個体。名付けるんならヒトアマゾンといったところか。よくよく考えればさっきから如何も理的な戦い方してるしな。オラッ!」
「其れが、如何したっていうのよ……ハァッ!」
アルファとヒトアマゾンの拳が激突する。持ちこたえたアルファに対しヒトアマゾンは其の姿を瑞鶴に戻してしまっていた。
双方とも戦況は駆除班の不利へと迫っていった。4C側は明らかな人員不足だし、瑞鶴側に至っては、殆ど押されている。寧ろアマゾンズドライバーを使わずに此処迄持ち堪えたこと自体奇跡に近いだろう。然し乍ら結局の所少なくないうちに皆倒される。殆ど信仰していないものの此処ぞとばかりに瑞鶴は祈った。如何か神様、私達を救って下さい……
其の瞬間流星のように光が迫ってくるのが見えた。果たして神の援護なのか其れとも自ら舞い降りなさったのか、其のメカメカしいボディからはそんな考えは浮かんでこなかった。代わりに瑞鶴には此間の新入りが思い出された。
「あんた……何でこんな所に。」
「何でって……司令官に瑞鶴の援護をしろって言われたからに決まってるじゃない。其れにダチの事は大切にしろって言うでしょ。」
「ダチって、別にそんな関係じゃないでしょ。」
「あら、言った筈ですよ。全員と友達になるって。」
「ハッ、全くそう言う奴だったわね……分かったわ如月、御願い!」
そうこなくっちゃと
瑞鶴が鎮守府にいなくなって数日後、西都対東都の代表戦前夜の事だった。
一人駆除班から離れてしまった悠は異様なものを目にした。幼生なのだろうか、未熟なアマゾンが数体屯している。此の所居る筈のないアマゾンとの遭遇が妙に多くなった。さっきからの不吉な予感は此の事かも知れない。
嗚呼、矢張りそうだ。彼等の周囲に落ちているものが人であろう事は悠からすれば直ぐに分かる事だった。悠はベルトを装着し……手を止めた。
歯向かえるのだろうか、という懸念が中で渦を巻いていた。単体なら未だしも、軍団戦、然も知らぬ敵ときた。果たして立ち向えるのか……
「行くのか行かないのか、何方だ。」
急に後ろから声を掛けられ、反射的に振り返る。其処には如何にも良いところの家で育った(悠も少なからずそうだが)、エリートらしい男が居た。
呉島貴虎と言う者だ。丁度此処に居るアマゾンを倒しに来たら偶然にも君、水澤悠、いや仮面ライダーアマゾンオメガと言うべきか、に会った。如何か私に協力して欲しい。」
貴虎だった。彼の話を悠は一蹴しようとする。
「人には危険です。」
「だからこそだ。確かに一般人は危険だろうな。だが誰かがやらなければならない。私は偶然にも力を受け取った人物、だから私は其の力を持った者として、責任を果たす必要がある。例え死のうとも、な。」
所謂『正義に溺れた男』とでもいうべきかと悠は思ったが、貴虎から感じる雰囲気は寧ろ正義から外れた立場から見下げた其れに感じられた。ある種のーーひょっとしたら母や天条よりも不気味だったが、何か一層清々しいような、そんな不気味さだった。
「分かりました、協力しましょう。」
「よし、決まりだな。」
そして二人は各々のベルトを装着する。
「変身!」
「
『メロンエナジー! ロックオン! ソーダ……メロンエナジーアームズ!』
『
ソニックアローから放たれた嚆矢が分裂し、其の全てを敵に当てる。怯んだ隙に更にニューオメガニードルも命中し、其の体力を直ぐに削り去っていった。逃走しようとするアマゾンだがライダー二人は既に必殺技を発動していた。
『メロンエナジー!』
『アマゾンブレイク』
エネルギーの奔流がアマゾンどもの背を貫いていく。そしてあとに残されたのは黒い体液と足跡が残るのみだった。想像以上にすばしっこかったが何体かを倒せただけ良かったと言えるかもしれない。いや、未だだ、『何か』ある。ふとそう思った悠は美月に電話をかける。
「悠だ。今何処にいる。」
「現在B4地区! タコアマゾンと戦闘中!」
「気を付けろ、援軍が来る!」
判った、と一言聞いて電話を切った。そうか……アマゾンの匂いというか、雰囲気というか、恐らく彼らは、
「二体の交尾によるオリジナル……か。」
貴虎が後を紡ぐ。悠はジャングレイダーに乗りメットを被る。と、しまおうとしていた携帯に通知か来ていた。「頼まれた物が完成した。直ぐに来い。桐生戦兎」何たる偶然か。今回が
「まさか駆除後にこんな多くのアマゾンを見るとはな……」
真の言葉も無理ない。現在道路はアマゾンに埋め尽くされていた。戦争中で多くの人が避難所生活となっていたのが逆に幸運だった。とはいえ今の状況は多勢に無勢という言葉が想像以上に似合いすぎていた。
「ごめん、待たせた!」
然し其処へ遂に悠も合流した。彼は瑞鶴に持ってるものを渡す。獣の真の姿を現し、其の牙となる道具を。
受け取った瑞鶴は先ず鳥を模した腕輪を左の二の腕に嵌める。中についた針が自身の肌を貫く感触を感じるが、高まった闘争本能の中では殆ど障害にはならない。そしてオメガのとよく似たベルトを巻き付ける。本能が暴れ出す。然し、其れすらも力に……自身のものへと変えていく。両手を右やや下前方に突き出し、右手を左腕に沿わせるようにバックル部分へ移動させていく。そして自身の本能が完全に自身の支配下に、自身が本能の支配下に入る。
「
グリップを握った瞬間、雄叫びに導かれるように獣 人其奴が目覚めた。
秋月
シャドームーンとは関係ない。丁度執務補佐の時に巻き込まれてしまった駆逐艦。元々適当に駆逐艦を嵌めようと思った(最初は艦種すら決めてなかった)所で思いついたのが彼女だっただけの話。隣の叢雲とは対称的に敬語が基本。あと倹約家。
加賀
真面目な初代一航戦の意外と食う方。人に厳しく自分にも厳しい質で、特に五航戦に食ってかかることが多いが別に大切に思っていないわけでもない。同じ一航戦の矢張り食う方よりも多くの資材を食うが、何故か何も言われない。
翔鶴
妹を大切に思う五航戦の姉の方。瑞鶴とは違い弓の扱いは抜群に良い(抑も瑞鶴も充分上手い方である、但し周囲は桁違いである)。一方でよく被弾する所為で厄介者として見られることもなきにしもあらずだが、特に表立って云々などとは聞かない。
鳳翔
国内初の空母設計だった軽空母(当時空母)。艦娘である現在は鎮守府のお母さん的な存在であり、空母系統を束ねる役割も務めている。基本的にこの鎮守府の彼女は敬語だが、提督のみ敬称なし、龍驤とはタメ口になる。
叢雲
しばふ村の出である吹雪型五番艦。基本戦艦か空母にしか敬語を使わない一方、可也のお姉ちゃん子でもある。一番艦である吹雪と一緒に第一艦隊に所属しており、吹雪の轟沈の後は旗艦を務めている。因みに本人は白雪が入ると思っていたよう。あと吹雪から此奴、磯波から敷波は顔が迚も似ている(他の雲型は知らん)。