12月24日。
おそらくは一年で最も人が賑わう日。
それはここ京都、古き良き都でも例外ではなく。
辺り一面を雪が包む
赤、緑、白に彩られた街並みは、普段とはまた違った趣を魅せる。
今日ばかりは例の適当神父も忙しく、まさに"師走"と言えよう。
「師匠〜!ツリーはどこに置けばいいですか〜!」
いつものように弟子が叫ぶ。
「ああ、それは窓際に置いといてくれ。それと、執務室に近所に配る用のお菓子、…そうそう、ハロウィンの余り物だけど、それがあるから持ってきてくれないか?」
…訂正、やっぱり適当だった。
「了解しました〜!」
そして相変わらずの師匠バカである。あるいは盲目とも。
「神よ、いと聖なる主よ、ここに、その恩寵と祝福を…。」
部屋の中央ではシスターが祈りを捧げていた。
「鈴音、どう?何か御導きでも?」
「ええ。貴方を除く全人類に幸福がもたらされるようですよ、清慈くん?」
こちらも相変わらずであった。
「はは、これはまた手厳しいな。…まあ主も来年は見逃してくれるでしょう。」
「そう、ですね。今年はいろいろありましたから。」
2人の視線の先には、急遽補修したと思われる天井。
かの聖杯戦争の爪痕の一つである。
「やれやれ、あの子ときたら随分と派手にやってくれたんだから。」
「でも、それももう…。」
暗い顔をする鈴音の頭に手を乗せる。
「大丈夫、きっと、…きっと、元気でやってるさ。…じゃあ、早速クリスマスパーティーでも始めようか。」
そして皆が寝静まった夜、唐突に電話か。鳴り響く。
「おや、珍しいな。番号は…なるほど、これはまさしく偶然、いや奇跡だ。…もしもし?」
相手は、これまた相変わらずの人間だった。
『もしもし、工太郎です。清慈さん、ですよね?』
「ああ、そうだとも。どうだい、そっちは。その感じだと、まだまだ忙しいみたいだけど。」
『ええ、それはそれは。でも毎日充実してます。"彼女"もしっかりやってますよ。』
「…そうか、それはよかった。そうだ、今年は雪が降ってね、これまた幻想的なんだ。今度写真でも送るよ。」
『それはどうも。ところで、アイツは元気にしてますか?顔も合わせてないもんで、できれば写真も…』
「…あの子は元気にしてるよ。ええ、そりゃもう。何せキミの娘なんだから。だから心配しないでくれ。」
『はは、そうですか。ありがとうございます。ではまた。年明けには日本に帰る予定です。』
「…はあ。何てタイミングなんだ、まるで直感か啓示じゃないか。…いや、でも案外間違いじゃないかも。工父は時に神子をも超える、か。これこそ、奇跡そのものだろうな。」
溜息をつき、そして空を見上げながら、彼はこう祈るのだった。
「メリー・クリスマス、どこかの誰かさん。キミにもきっと、主の加護がありますように。」
そしてそれは確かに、
「…ええ、受け取ったわ。メリークリスマス、」
最後の言葉は深雪に吸い込まれていった。
これは一夜限りの奇跡。聖なる夜に顕れた、幻想による現実の回想。
純白の天使は、冬の空気に融けた。