第148話 近づく寿命
白玉桜から帰ってきてもう1年という人間達からしてみれば永く妖怪達からしてみればあっという間の時間が過ぎた。
理 「……マジでヤバイ手が動かなくなってきた」
1年前に使った仙術のせいで寿命を縮めてしまったことに焦りを感じていた。もう白粉は首もとの殆どを白くし手や体は痺れを感じていて1、2年前まで出来ていた細かな作業の裁縫だったり筆で文字を書くことが出来なくなっていた。
理 「……これは紫の作った出来たての世界を見
る前に死ぬかな……」
せめてその世界が出来るのを目にはしたいと思った。だがもう無理かもしれない。せめて後100年あれば見せそうなのに。すると玄関の門が開き亜狛と耶狛が入ってきた。
亜狛「マスター言われた仕事は終わりました」
耶狛「終わったよマスター♪」
今の自分ではもう出来ないような作業は現在2人にやってもらっている。今の自分よりも遥かに効率が良いためだ。だがこの時に思った今なら2人にある事を伝えられると。
理 「紫の気配はないかな……なら丁度良いの
かもな……亜狛、耶狛こっちに来てくれ」
亜狛「何ですかマスター?」
耶狛「マスターどうしたの?」
2人に聞かれ自分は改まりながら2人の顔を見て、
理 「今から2人に話すことは口外には話すな」
亜狛「……分かりました」
耶狛「分かったよ♪」
もう一度回りを見て様子を伺いつつ2人に小声で、
理 「まずこの首もとが白い理由を話すこれは
俺の寿命を表している……」
亜狛「えっ……」
耶狛「マスター死んじゃうの?」
これまで伝えてなかった事を伝えたため2人は驚いていた。だがただ死ぬわけではない。
理 「いや死んでも蘇るが何年か先になる」
耶狛「なんだ……」
亜狛「そうですか……ですがマスターが言いたい
のはそれだけでは無いですよね?」
理 「いや2人には俺が死んだ後やって貰い
たいことがある……」
自分がいなくなれば恐らく2人はどうすればいいのか分からないと思いある計画を経てていたのだ。
亜狛「やって貰いたい事ですか?」
耶狛「どんなこと?」
理 「あぁそうだやって貰いたいことだ亜狛に
耶狛俺が死んだらそこの引き出しの上か
ら3番目を開けろするとそこは2重底に
なっているから1枚板をどかすとそこに
俺が死んだ後やって貰いたいことが書か
れている紙があるそれを頼りにしばらく
は行動して貰いたい…」
死んだ後のことを聞いた亜狛と耶狛は結構な真顔で、
亜狛「やけに用意周到ですね……」
耶狛「うん私も驚くぐらいに……」
理 「それを見られると俺の正体がバレる恐れが
あるからな……」
自分の出来るだけ隠し通したい。嘘をつく形になったとしてもそれは明かしたはない事なのだから。
亜狛「でもマスター何で正体を隠すのですか?」
耶狛「あっ私もそれ気になってたよお兄ちゃん」
隠す事に対して気にはなっていたみたいだ。口を開きそれについても答えることにした。
理 「そうだな………2人には前に生と死を繋げ
たってのは話したよな?」
亜狛「えぇそうですね……」
耶狛「うんマスターはそう話したよ」
理 「それによって生きる者には大きく分けて
二極存在する……」
亜狛「二極ですか?」
理 「あぁそうだ1つはそれを良しと思い必死
に生きる者達………そしてもう1つはその
理を良しと思わない者達だ……」
耶狛「良しとしない?」
顔を見た感じまだ分からないといった疑問符を浮かべていたのでもう少し詳しく話そうと思い考えながら口を開き、
理 「そう良しとしない者達だ………前の亜狛が
言ったことそのままだ」
亜狛「前に言ったことって恨んだとかの事です
よね?」
理 「そうそれだ…大事な人が死んだら皆は死
とその理を恨むのは当たり前だ……」
誰しも死というのは悲しいもの故に恨まれる。別れをしたくはないがために。
亜狛「しかし恨まれたからといって……」
耶狛「正体を隠す程じゃ……」
2人がそう言うと理久兎は更に話を進める。
理 「もし大事な人の葬式でその理を創った奴
が目の前にいてみろ?皆は必ず人殺し!
死ね!顔を見せるな!そんな罵声を浴び
せてくるしかも下手をすると殺しにかか
ってくるぞ?」
それを言われた2人はハッとする。どうやらようやく分かったみたいだ。2人の主人である自分は常に
理 「まぁ他にも色々と理由はあるが一番の理
由はそれかな……」
亜狛「なんか……すみません……」
耶狛「ごめんねマスター嫌なこと聞いて……」
2人が謝ってくるが理久兎は笑顔で、
理 「いや分からないことは聞かないと駄目だ
からな………お前らは悪くないよそれに恨
まれるのはもう慣れてるし」
だがそれはまた少しの嘘である。慣れてはいるというのは本当だが気持ちの良いものでは決してない。出来るものなら恨まれたくはないものだ。
理 「おっと話がそれたな‥‥‥とりあえず説明
した通り2人共お願いするよ♪」
亜狛と耶狛にお願いをすると2人は笑顔で、
亜狛「分かりましたマスター♪」
耶狛「うん!」
理 「ありがとうな……」
そんな話をしていて自分はある事を思った。
理 「そういえば紫、全然来ないな………亜狛
紫の気配は感じるか?」
亜狛「いえ空間の境界は弄られてはいないので
まだ来てないだけかと……」
理 「う~んだいたいこの時間辺りには「御師匠
様ご飯を食べにきましたわ♪』なんて言い
ながら来るのにな……」
耶狛「言われて見るとそうだね……」
亜狛「何をしているのでしょうかね……」
自分達が不思議に思っている一方で紫達はというと。
美 「紫……本当にやるのか?」
風雅「私共、天狗達は構いませんが………」
ゲン「大丈夫ですかい紫さん?」
幽 「本当にやるの紫?」
4人に聞かれた紫は空を見つめながら答える。
紫 「えぇ………私はこれまで御師匠様に色々な
事を教えてもらい色々な物を貰いました
わだけど………私はまだ1つも返すことが
出来ていない」
紫は悩んでいた。自分に色々なことを教えてもらい色々な物をくれた理久兎に恩返しが出来ていないことにだから紫は決心した。理久兎も無理だと言うことにチャレンジをして自分がここまで成長したと言わせるために見せるために。
紫 「だからお願い協力をしてちょうだい」
紫はこの場にいる美須々、風雅、ゲンガイ、幽々子に頭を下げる。すると頭を下げた紫以外の全員は、
美 「私は賛成だね!たまには理久兎にギャフン
と言わせたいからね!」
風雅「我も問題はありません天狗達の底力を見せ
ましょう」
ゲン「俺らも微力ながらお手伝いします」
幽 「私も良いわよ友達の頼みだもん♪」
そしてこの場の全員は賛成をしてくれた。
紫 「ありがとう…なら時間は今日の夜開始するわ」
美 「しかし紫よ何で今日なんだ?」
紫 「あそこに行くには満月じゃないと意味
無いからよ……そう月の都へ行くには…」
紫達がやろうとしていたのは月へ侵略だ。かつて理久兎が止めろと言ったことをしようとしていたのだ。
紫 「それと勿論だけど御師匠様には内緒でお
願いしますわね」
紫に言われたこの場の全員は、
美 「分かってるよ……なら私は行くとするよ
メンバーを集めないといけないからね」
ゲン「俺らの方も集めないといけないんで失礼
しますよ後勿論言いませんよ♪」
そう言って美須々とゲンガイは部屋から出ていく。
風雅「我も仲間を集めてくる紫殿と幽々子殿は
ここにいてくれ……」
そう言って風雅も部屋から出ていった。
幽 「やれるからしらね紫?」
紫 「多分……いえ絶対にやるわ」
そう言いながら紫はまだ昼間の薄い月を眺めるのだった。