理久兎が唱えた仙術十九式に月の民達は困惑していた。
依姫「理久兎之大能神……ですって……」
豊姫「確かそれって!」
依姫「太古の神にして月読様や天照様の伯父に
あたる神にして災厄の神……」
神を降ろすことの出来る依姫やその姉の豊姫は驚いていた。
太古から存在する神の理久兎之大能神を神降ろしをしたからだ。そして他の者達から見てもそれは絶望の一言しか浮かばない。それほどまでに危険な存在だということだが、
理 「………そんな絶望する程かこれ?」
この程度で絶望するのかと疑問に思った。仙術十九式理久兎之大能神、自身の分霊を神降ろし作り上げた集合体にすぎない。その場に存在する人もその巨大な龍も理久兎という存在なのだ。
依姫「御姉様!すぐに止めないと月の都が!」
豊姫「何とかしてあのお面を追い出さないと!」
力 「仲瀬!兵士達を避難させないか!」
仲瀬「どういうことだ?」
仲瀬は周りの兵士達を見ると皆、手が震え、足が震え、顔は見るからに絶望し、中には腰が抜けて地面にへたりこんでいる者は恐怖という感情に染められた顔となっていた。
仲瀬「細愛親王様兵士達を避難させたいと思い
ます!」
仲瀬は細愛親王に言うとすぐにそれについての指示が出される。
細愛「許そう……すぐに避難させよ!」
豊姫「なら私が!」
その一言によって豊姫は自身の海と山を繋ぐ能力を使い兵士達をその場かは退却させる。
理 「ほう良い判断だ………無駄に命を使わせない
その心意気は良しだ仮にそんな状態で戦わ
せようものなら俺はお前らから始末してい
たかもな?」
と、冗談混じりに言うが他の者達は冗談に聞こえていなかったのか、
御花「……何怖い……何で……ただ怖い……」
幸 「……てっ手が……ふっ震えて……」
蒼 「なっ何なんだいったい……!」
月影の白兎達3人は理久兎の凄みに圧倒され感情には出てはいないが体にその恐怖が刻まれ精神を蝕んでいっているみたいだ。つまり皆からすれば絶対的存在過ぎて震えるみたいだ。
仲瀬「皆!俺らが頑張んないで誰が民を護る!
あの人が俺らに託してくれた願いがある
だろ!」
力 「そうだ!あの腐れ隊長が残した仲間を
守るんだ!だから怖じ気つくな!」
そしてその腐れ隊長と言われた元月影の白兎隊長である自分は心の中で、
理 (力の野郎…誰が腐れ隊長だ……)
心の中で力に対してツッコミをいれる。ついでに思うがそこまで腐ってはいない。だが2人の言葉によって3人は決心したのか顔つきが変わる。
幸 「そうだ!理千隊長が残してくれた俺達の
仲間を守るんだ!」
御花「こんなお面ごときにやらせはしない!」
蒼 「絶対に皆を死なせはしない!」
月影の白兎達は理久兎にそれぞれの武器を向けて構える。
依姫「私も精一杯に戦う!」
豊姫「サポートはするわ!」
細愛「貴殿の墓場はここだ!!」
3人は理久兎に向かい武器を構えてそう言う。恐怖を忘れようと必死なのは分かるがそれでは意味などない。
理 「そうかその威勢がどこまで続くかな?」
黒椿を頭上に上げて能力を解放する。
理 「ルールを制定するこの戦の間相手1人に
つき力を百開放する」
理久兎のその一言によって背後にいる龍に変化が訪れる。
ジャキンッ!
龍を取り巻く鎖が何本かがぶちぎれる。
理龍「グギャァーーーーーー!!」
その龍は咆哮を上げ依姫達を睨むわ。龍を取り巻くその鎖はこれまで理久兎が抑制している力を現す。今現在は10億分の1しか使えないということは、その鎖の数はざっと9億9999万9999本の鎖があるということだ。その内、理久兎は800しか開放してない。だが、それでも相手からしてみれば恐怖そのものだ……だがそれよりも酷いのは理久兎が力を開放したせいで周りに力の圧が生じた……
細愛「がぁーー!!」
仲瀬「うっ動かない……」
力 「何だ……これ…!」
御花「うぐっ……!」
幸 「あがっ……!!」
蒼 「こんな…のあり…か……」
豊姫「重い…立ってられない……!!」
依姫「これが理之大能神の力……」
8人はこの力の前で立ち上がることも難しくなったのか自分の目の前で脆く。そして今いる場所が新しくクレーターとなるぐらいまでの圧が生じた。この場の依姫達はこれで分かったはずだ。自分という絶対的な実力者がいるという事を。だがあくまで自分がやる事は恐怖を与える事ではない。恐喝まがいかもしれないが無事紫達の元に戻ることだ。
理 「なぁ君達今この場では2つの選択肢があ
るけどどっちを選ぶ?」
依姫「ぐっ……妖怪の提案などに乗るものか!」
依姫は強情をはっているが昔からこんな感じなため構わずに話を続ける。
理 「その動けない状態で恥を晒すのかそれとも
俺を黙って見逃すかのどちらかだけど………
どっちがいい?」
豊姫「依姫の話しは無視?!」
豊姫は依姫の話を無視した事にツッコミをいれるが、そんなの関係なく更に話を進める。
理 「それでどうする?個人的にはさっさと帰っ
て馬鹿弟子とこれに加担した奴等に説教を
したいんだけど……」
俺もさっさと帰って紫達に説教したい。もうこんな愚かな事をさせないためにも。
細愛「聞いてなるものか!我らは誇り高き月の
兵だ!妖怪の脅しには屈せんぞ!」
と、細愛親王よくもこんな状況下で言えたものだ。
理 「ふぅ~んまっ良いけどね…でもさ……」
そこまで言うと今までの崩した言葉から一言一言に力を込めて、
理 「君らのそんな下らない誇りのせいで月の
民が死ぬって言ったらどうする?」
仲瀬「どっ…どういうことですか!」
理 「簡単だよ君らも見えているこの鎖これは
理久兎之大能神の力を抑制するための物
って言ったらどう思う?」
依姫「それって……まさか!!」
依姫は今の状態でも説明で気づいてしまったようだ。今置かれている危機的な状況に、
理 「御察しの通り今の状態で鎖は約10億本
ある内のたったの800本しか開放して
いない……」
力 「これで800だと!!」
幸 「ばっ馬鹿げてるだろ!」
蒼 「でも…これが……伝説の神の力…」
細愛「止む終えん……そこのお面!」
細愛親王はついに折れたのか先程よりも言葉は強くはなかった。
理 「ん?どうしたの?」
細愛「不本意だが…貴殿を……見逃そう……」
細愛親王のその一言によって周りの依姫達も驚く。
依姫「なっ!!」
豊姫「本気……みたいですね……」
仲瀬「畜生……妖怪に負けるなんて!!」
御花「あの人が消えた日から誓ったのに……」
力 「負けてなるものかってよ……」
幸 「それをこんなふざけたお面ごときに!」
蒼 「くっ…………」
そんな光景を見ていてただ思った。
理 (うわ~昔の俺のことを相当引きずってるよ
何だか悲しくなってくるなせめて……少し
だけでも喜んでくれればな)
これには流石の自分も同情を覚えそうになった。だからせめてもと思い、
理 「君らの選択はとても賢い選択だよこれで
誇りを優先するなら確実に滅ぼしてたか
もな……」
全員「……………………」
悔しさのせいか全員無口だ。心の中ではさっさと消えろと言っているに違いない。だがそんなの計算内だ。
理 「そういえば確か永琳さんが言ってたな」
永琳の名を言うとその場の全員が反応する。
依姫「貴方…御師匠様を知っているのですか!?」
理 「あぁ1度お会いしたからねそれで話を戻す
けど永琳さんが確か……」
そう言い理久兎は自身が着けている面を外し素顔を見せる。
するとその場の全員が驚きの顔をした。
理 「君らの元隊長と顔が瓜二つって聞いたん
だよね……」
お面に隠れたその素顔の笑顔を見せるが顔は同じなのは当たり前だ。だって理千も自分なのだから。
仲瀬「瓜二つ過ぎるの……」
力 「野郎そっくりじゃねぇか……」
依姫「嘘…理千さん……」
豊姫「そっくりまるで…本物みたい……」
幸 「でも左目の傷とかがやっぱり違う……」
蒼 「だけどそれを除いても本物みたいだ」
細愛「何故、我らにその素顔見せたのだ!」
細愛親王は何故素顔を見せたのが分からないのか質問してくる。
理 「それは逃がしてくれるせめてものお礼に
と思ってね………君らが一番会いたい人に
近いこの顔を見せたんだよ♪」
笑顔を見せながらそう語る。見た感じはもう戦意喪失はしてくれたみたいだ。
理 「戦いは終了だね……」
その一言と共に理久兎の背後にいる巨龍はまた鎖に繋がれその姿が消えると共にその場にかかっていた圧も消えて依姫達は立ち上がる。
理 「さてと……エアビデ」
そう言いエアビデで体を浮かせる。
理 「そんじゃ俺は帰るね♪それと此度の戦いを
計画した馬鹿弟子達にはしっかりと説教を
与えるから御安心をそれじゃね♪」
理久兎はそう言い残し地球まで飛び立つのだった。
依姫「くっ………妖怪を逃がしたのは屈辱ですが
あの妖怪の顔を見たらどうでもよくなり
ましたね…御姉様……」
豊姫「本当ね……いまも生きていたらあんな
笑顔を見せながら稽古をつけてくれた
かしらね……」
力 「あの野郎の訓練……嫌いじゃなかった
けどな……」
仲瀬「そうだね……あの人のお陰で僕達はこうして
胸を張れるもんな」
御花「また…会いたいですね…」
幸 「会うとしたら俺らが死んだらかな?」
蒼 「いや僕らは死ぬわけにはいかないよ」
細愛「お前達帰るぞ……此度の戦いのことを
報告しなければならぬからな」
細愛親王の一言に依姫達は、
依姫「わかりました……」
豊姫「それでは行きましょう……」
力 「あいよおっさん……」
仲瀬「力さん…いくら親戚だからって」
御花「力らしくていいんじゃない?」
幸 「ハハハ確かにね♪」
蒼 「早くいこうよ皆!!」
こうして月の兵士達と妖怪達による第一次月面戦争は、ある1人のお面の妖怪によって終結されたのだった。一方理久兎は、
理 「はぁ~彼ら前はよりかは強くなってるのか
それとも俺がそろそろ死ぬからか弱くなっ
ているのか…いや彼らは強くなったのかな」
昔の友の多くが強くなったことに感心を示すと共に自身がもうじき死ぬことを覚悟していた。
理 「いやとりあえずは紫達に説教をするのが
先かな……」
そう独り言を述べエアビデを止めて、
理 「仙術一式龍我天昇!」
そう唱えると自身の体から翼が生え、尾が伸び、体の一部一部には鱗が生え、頭には龍の象徴である角が伸びる。
理 「さてとさっさと帰りますか!!」
理久兎はその翼を羽ばたいてエアビデを越える速度で地球へと帰るのだった。