理の神様は何を見る   作:怠惰のクソ悪魔

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第160話 さらば総大将

写真を撮影して3日後の夜の事だった。その日、理久兎の容態は急激に悪化した。

 

理 「ゴッホ!ブフゥ!」

 

咳をすると同時に吐血しその血液が布団を汚し真っ白な布団が真っ赤に染色されていった。

 

風雅「早く!替えの布を!」

 

天狗「急げ!!」

 

美 「おい!早く拭いた布を回収しな!」

 

鬼 「分かってます美須々さん!」

 

ゲン「紫さんはまだか!」

 

そう言いながら風雅や美須々そしてゲンガイは布で理久兎から吐血した血液を拭くが拭いても拭いても口から吐血するため意味がない。するとスキマが開いてそこから紫と永琳そして輝夜姫と幽々子が飛び出してくる。

 

永琳「これは……」

 

輝夜「ひっ酷い……これが理久兎なの……」

 

幽 「ここまで酷いなんて……」

 

紫 「ねぇ!御師匠様は助かるのよね!」

 

紫は永琳に問いただすと永琳は首を横に振って、

 

永琳「今の私だと無理よ………それに私の経験上で

   こんな症状見たことがないわそれに恐らく

   だけど肺をやられてるわ……」

 

八意永琳でも理久兎の症状は見たことがなかった。全身が真っ白となっていき体が痺れ動かなくなりこの量の吐血をする病を永琳は見たことも聞いたことがない。故に理久兎の治療は完全不可能ということだ。

 

紫 「そんな…てことはまさか……」

 

永琳「今の私じゃ助けられない……」

 

永琳がそう言うと美須々は永琳のもとまで近づき永琳の胸ぐらを掴み、

 

美 「てめぇ!私らがここで諦められると思っ

   ているのか!!」

 

と、言うと隣にいる輝姫は理久兎のもとまで近づき、

 

永琳「あくまで今の()()()…と言うことよ……」

 

美 「何?」

 

輝夜「私の能力で何とかなれば……」

 

そう言い理久兎の隣に座り苦しむ理久兎の上に手をかざす。

 

風雅「何をしているんだ?」

 

永琳「姫様も能力持ちよ……姫様の能力は『永遠と

   須臾を操る程度の能力』分かりやすく言え

   ば物や人の時間を止めることが出来る……」

 

紫 「それってつまり………」

 

永 「えぇ貴方の御師匠様の時間を止めてこれ以

   上の悪化を抑えて薬が出来るまで現状維持

   をさせるわ……」

 

つまり理久兎の症状を止めて薬が出来るまで長生きさせようという方法だ。確かに今の打開策として良い案なのかもしれないが、

 

理 「がっは!ゴッフゥッ!ゴッフゥ!」

 

美 「おい!変わらねえぞ!」

 

美須々はそう言い永琳の胸ぐらを離し輝姫に近づくと、

 

輝 「嘘よ…理久兎に能力が通じない!」

 

そう輝姫の能力が通用しないのだ……かつて理久兎が創った理「相手からの能力による干渉は相殺する」という理が創られている。それにより輝夜姫の能力は理久兎に通用しない。つまりこの状態は何も変わっていない。

 

永琳「何ですって!」

 

美 「嘘だろ!おい!どうするんだ!」

 

美須々は永琳達に怒鳴ると、

 

理 「みっ美…()々……や…め…ろ…がはっ…」

 

理久兎は今の会話を聞いて何とか力を振り絞り美須々を止める。今の理久兎の声は、掠れて滑舌も悪くとても醜く酷い声だが美須々を止めるのには充分だった……

 

美 「なっ!理久兎!おい!」

 

永琳「凄い…この状態で話すなんて……」

 

理 「がはっ……かっ輝…夜…姫…お前も……もう(や…め)ろ…」

 

輝夜「貴方は助けるわ!何があっても!」

 

と、言うが言葉だけでは理久兎は助からない。そしてこの時紫と永琳は意を決し答えを出した。

 

紫 「皆…もう御師匠様を楽にしてあげて……」

 

永琳「姫様もういいのよ……」

 

美 「なっ紫!何でだよ!」

 

風雅「何故だ紫殿!」

 

輝夜「永琳!」

 

紫 「これ以上…御師匠様の苦しむ姿を見たく

   ない…の……よ…」

 

紫の目からは涙が溢れ顔がぐちょぐちょになる寸前だ。そしてそれを見てルーミアも涙を見せる。

 

ル 「紫……私もそれが良いわ」

 

紫 「ルーミア………」

 

永琳「私も…理千に似ているせいか…彼が苦しん

   でいる姿を見ると心が苦しいのよ……」

 

永琳は目を反らしている事からもう見たくないというのが分かる。そして理久兎はその掠れて醜く酷い声で、

 

理 「お…俺がはっ…もも…む…無()…だ……」

 

美 「理久兎……」

 

自分が言えることをただ今伝えたい。

 

理 「いっまま……で…最…高ゴホ!だっ…た…」

 

風雅「理久兎殿……」

 

例え肺が潰れ声が出なくても、

 

理 「俺…()しっ幸…せも…ものだ……」

 

ゲン「総大将…」

 

伝えたい。この胸に秘め続けた思いを、

 

理 「と…友やや……仲()…た達と…」

 

ル 「…………………………」

 

醜く聞いていて不快に思う声であったとしても、

 

理 「わ…笑い……あ…あえた…事……が…」

 

輝夜「理久兎さん……」

 

どうしても伝えなければならない。

 

理 「……こ(こっん)な…にも…楽しし…めた……」

 

永琳「理久兎……」

 

また何時会えるのかも分からないから。

 

理 「み……皆……あっあ…あり()……とう」

 

紫 「御師匠様……」

 

紫は必死に話そうとしている理久兎の側に座り手を握る。

 

理 「ゆ…紫…がはっ……おお前…をひ…1…人

   のの…残し…て逝く……ことゴホ!を

   ゆ…許……してて……くれ……」

 

理久兎は今出来る最大の力を振り絞りそう述べると、

 

紫 「大丈夫よ御師匠様………私にも親友や友達

   が沢山いるもの寂しくはないわ……だから

   もう無理しないで♪」

 

紫が笑顔でそう述べる。今の事を聞けて自分は幸せだ。で、

 

理 「あ…り……がと…う…ゆ…紫…じゃ…あ……な

   み…み……んな…」

 

そう告げ自分の目をゆっくりと閉じていき先程まで力が入っていた手にも力が入ることはなくなりとても寒くなった。目を瞑った先では紫や皆が涙を流す。

 

紫 「ぐすっ私こそありがとう…御師匠様♪」

 

紫は最後まで理久兎に笑顔を向けるために笑顔を振り絞るが目からは涙が溢れ落ち服に水滴のようについていく。

 

美 「ちきしょう……ちきしよう!」

 

風学生「理久兎殿…ぐっ……」

 

ゲン「総大将!!」

 

ル 「………………………………」

 

輝夜「そんな理久兎さん!」

 

永琳「ゆっくりと眠って理久兎」

 

この日妖怪達の英雄と称えられた妖怪総大将ぬらりひょんこと深常理久兎は皆に見送られながら眠りについたのだった。


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