理の神様は何を見る   作:怠惰のクソ悪魔

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第192話 心を閉じる

旧都が復興してから約10年の月日が経った。旧都は鬼達に支配させてさとりは灼熱地獄と怨霊達の管理、理久兎は旧地獄全体の管理と地上に怨霊達が湧き出ないように増えたら掃除をするという仕事をしていた。

 

理 「はぁ~報告書はこんなもんか」

 

亜狛「やっと終わりですね」

 

理 「亜狛さとりの方に行かなくて良いのか?」

 

理久兎はさとりの仕事の手伝いをしなくて良いのかと聞くと亜狛は笑顔で、

 

亜狛「大丈夫ですよ耶狛も耶狛なりに出来ますか

   ら……」

 

ここだけの話だが仕事を効率よくこなすために亜狛は理久兎の手伝いを耶狛はさとりの手伝いをする事が殆どだ。黒にいたってはこいしの遊び相手と従者達はそれぞれの仕事をこなしていた。

 

理 「そうかい‥‥それなら仕事を頑張ってくれてい

   るさとり達には久々にご褒美を作るか♪」

 

亜狛「女性陣達は喜びますねマスター♪」

 

そう言うとデスクから離れて理久兎は厨房へと向かい亜狛は資料の片付けなどの整理を行うのだった。厨房へと向かっていると、

 

黒 「あっすまぬが主よこいしを見なかった?」

 

そう言いながら黒が理久兎に近づいて訊ねると理久兎は首を横に振って、

 

理 「いや知らないぞ居なくなったのか?」

 

理久兎が聞くと黒は首を縦に振る。

 

理 「う~んこいしちゃんの事だから迷子はないだ

   ろうけど問題はさとりだよな」

 

黒 「あぁ彼奴こいしの事を溺愛してるからな」

 

さとりにとって唯一の血を分けた妹のためさとりはこいしを溺愛しているのはよく分かる。

 

理 「そうだなしょうがない俺も捜すから黒お前も

   協力してくれ」

 

黒 「分かった……」

 

理久兎は断罪神書を広げてその中から地底の分布が示された魔法の地図を取り出すとそれを広げてこいしを捜す。

 

理 「こいしは…いたここだ……」

 

Coisiと書かれている矢印を見つけてそこに指を指して黒に教えると、

 

黒 「ありがとうな主よ迎えに行ってくる」

 

理「なら俺も行くよ……ちょっとばかし買いたい物

  があるからさ♪」

 

黒 「そうかならそれも買いながら行こう」

 

理 「オーライだ♪」

 

こうして理久兎と黒はこいしの迎えに行くのだった。

 

神様、従者移動中……

 

地底で唯一妖怪達で賑わう小さな都市10年前に妖怪達の手によってふたたび活気が現れたこの場所は旧都と呼ばれる場所で理久兎と黒はこいしを探す。

 

黒 「マスターこいしは本当にここに?」

 

理 「あぁ地図だとここなんだがなぁ」

 

そう言いながら理久兎と黒は辺りを見渡すと近くに細い裏へと続く路地が見える。そこに膝を抱えながら座っている帽子を被った少女、こいしを発見した。

 

理 「黒いたぞ」

 

黒 「そんな所に…お~いこいし早く帰るぞ」

 

そう言いながら黒がこいしに近づくとこいしの目は光を失っていた。

 

こい「黒おにいちゃん……」

 

黒 「こいし何があった?」

 

声も元気がなくこれまでのこいしとはうって変わってとても奇妙に見えた黒はこいしに何があったかを聞くと、

 

こい「皆の心を見るのが怖い……もう見たくない」

 

理 (っ!……こいしに何があったんだ……ひとまずは

   ここから離れるか……」

 

そう考えた理久兎は黒に指示を出す。

 

理 「黒こいしを早く地霊殿に連れて行くぞ」

 

黒 「分かった!」

 

黒はこいしをだっこすると自分についていく。

 

理 「ひとまず何があったかだが……」

 

そう考えながら歩いているとヒソヒソと声が聞こえてくる。

 

妖怪「(おいあいつ……)

 

妖怪「(あぁぬらりひょんにとりいった覚妖怪だろ?)

 

妖怪「(何であんな奴らを気に入ったんだか)

 

妖怪「(ぬらりひょんも地に落ちたな……)

 

などと小声ではあったが明らかにこいしに対しての悪口なのは明白だ。これには流石の自分もぶちギレたし黒も眉間にシワを寄せていた。

 

理 「黒…お前は先に行け……」

 

黒 「主よ俺も奴らを破壊したいんだが?」

 

理 「いや今はこいしを連れていけ」

 

そう言うと黒は自身の服を引っ張って泣いているこいしを目にして、

 

黒 「分かった主よキツいのをくれてやってくれ」

 

理 「分かった…そっちは頼むぞ……」

 

理久兎のその言葉に頷いた黒はこいしを抱き抱えて地霊殿へと戻る。とりあえず陰口をたたいた妖怪の1人に笑顔で近づいて、

 

妖怪「なっなんだよ!!」

 

ガシッ!

 

その妖怪の首を片手で掴み握力を込めてその妖怪の首を締め上げつつ腕の筋力で持ち上げる。流石の妖怪も力で振り払おうとするが自分の方が力が強く振りほどけそうもないのかバタつかせる。

 

妖怪「あがっ!あぁ!!」

 

妖怪「ひっひぃ!!」

 

この光景を見ていた妖怪達は尻餅をついてその光景を見るしかなかった。それほどまでに自分の逆鱗に触れたのだから。

 

理 「てめぇら………ここのボスは確かに美須々だが

   本来は俺がボスだもしここで俺の身内の陰口

   や悪口をほざいてみろよ?」

 

妖怪「あっあぁ!!!」

 

理 「てめぇらの存在を理の名の元に根絶するぞ

 

どさっ!

 

妖怪「げほっ!げほっ!」

 

理久兎はそう言うと腕に込めていた力を緩めて首を締めて持ち上げていた妖怪を離す。

 

理 「さっさと失せろ……もしまた俺の目の

   黒い内に悪口、陰口を言うならば……

   その時は存在を消されると思え!」

 

妖怪「ひっひぃ!!!」

 

こいしの悪口をたたいた妖怪達は理久兎に恐れをなして逃げ出した。この光景を見ていて、

 

理 「所詮は口だけの雑魚か………」

 

もうこれしか言えなかった。元々は美須々と勇儀の提案で地上で嫌われた妖怪達を保護する場所へとなった。それ故に元々嫌われやすい覚り妖怪は更に陰口を叩かれる存在となっていた事にようやく気がついたのだ。

 

理 「…今はこいしを助けないとな……」

 

そう述べてこいしが運ばれた地霊殿へと急いで向かうのだった。

 

神様帰宅中……

 

地霊殿ではこいしの症状が深刻なため、さとりに亜狛と耶狛そして黒がこいしから何があったのかを聞いていると、

 

理 「黒!こいし!」

 

そう言いながら理久兎が駆け足で帰ってくると目の前の光景は旧都の片隅で膝を抱えてうずくまっていた時と同じようにこいしが椅子に座り光を失った目で理久兎を見る。

 

さと「理久兎さん」

 

亜狛「マスター……」

 

耶狛「マスターどうしよう……」

 

黒 「すまない俺がしっかり見てれば………」

 

理久兎はうずくまっているこいしに近づいてこいしの目線に合うように片膝をついて座り、

 

理 「こいし心を見るのは怖いかい?」

 

と、こいしに聞くとこいしは黙ったままその首を縦に小さく振った。

 

理 「さとり‥‥こいしに何があったか分かるか?」

 

そう言われたさとりは頷いてこいしの心の声を理久兎に伝える。

 

さと「………新参者の妖怪達に出ていけや消えろなど

   の陰口を言われたみたいですその他にも………

   っ!こいしに石を投げつけた者までいる何て

   許せない!」

 

それを聞いて自分以外のこの場の全員が怒りを露にし殺気を放出させた。普段は笑顔の耶狛や物静かな亜狛そして兄と慕われていた黒や冷静なさとりまでもが怒った。

 

耶狛「マスター雑魚いやゴミは潰していい?」

 

亜狛「それだけじゃ生ぬるいかな灼熱地獄の炎で灰

   にしてやらないと……」

 

黒 「あの頃のように残酷かつ惨たらしく引き裂い

   てズタズタにしてやる」

 

さと「秘密を全て暴いて永遠のトラウマにしてあげ

   ないと気がすまない……」

 

そんな4人に理久兎は大声をあげて、

 

理 「お前ら落ち着けまずはこいしを助けるのが先

   だろうが!」

 

そう述べると全員はその殺気をしまいこんだが怒りが消えたわけではない。

 

理 「……こいし…もう他人の心を読みたくないの

   かな?」

 

先程、黒に連れていかれるまえに述べた「皆の心を見るのが怖い……もう見たくない」これを聞いていたためこいしに聞くとこいしはまた小さく頷いた。

 

理 「なら心を読めなくする方法はあるよ………」

 

さと「……どういうことですか?」

 

理 「自分の心を閉じればいい」

 

こい「心を…閉じる……?」

 

こいしは小さな声でそう言うと理久兎は頷いて、

 

理 「あぁ…その手助けなら俺は出来るだけどデメ

   リットもある……」

 

さと「デメリット?」

 

理 「感情の一部が欠落する事とさとり君はこいし

   の心を読むことが出来なくなる」

 

それを聞いてさとりは驚いた。自分の妹とこれまでとっていた心での会話が出来なくなると聞けばさとりも驚くだろう。

 

理 「俺はこいし…君の意見を聞きたい……」

 

それを聞いたこいしは理久兎に、

 

こい「お願い…理久兎お兄ちゃん…私の心を閉じて

   もう聞きたくも見たくもない!」

 

理 「さとり………」

 

確認のためにさとりを見るとさとりは理久兎に頭を下げて、

 

さと「お願いします理久兎さん妹を…こいしを助け

   て下さい………」

 

更にそれに黒と亜狛そして耶狛も頭を下げて、

 

黒 「頼むマスターこいしを救ってくれ」

 

亜狛「お願いします」

 

耶狛「こいしちゃんを助けたい」

 

この場の全員がこいしを助けたいと願っているのは充分に分かった理久兎はもう一度こいしに顔を向けて、

 

理 「それじゃやるよ」

 

理久兎はこいしに言うとこいしはずっと同じように頷く。

 

理 「それじゃ俺の目をよく見てね」

 

理久兎はこいしの頭を優しくを両手で掴みこいしの目を見て、

 

理 「ルールを制定する目の前にいる少女の心は閉

   ざされる」

 

そう述べてこいしの瞳を見つめるとこいしのサードアイがどんどん閉じていきやがて完全にその目を閉じた。

 

理 「こいしちゃん、さとり達の心を読めるか?」

 

そう聞くとこいしはさとりや亜狛や耶狛、そして黒を見ると気がつく。4人の心が読めないことに、

 

こい「心が読めない……」

 

理 「さとりはこいしの心を読めるか?」

 

理久兎に聞かれたさとりはこいしの心を読もうとするが、

 

さと「読めません……」

 

理 「なら成功かな………こいしちゃん君は覚妖怪だ

   けど覚妖怪ではなくなった今の君は特異な存

   在だそれを忘れちゃダメだよ?」

 

そう言われたこいしはうずくまっていた状態から理久兎に抱きついて、

 

こい「理久兎お兄ちゃん…ありがとう……」

 

そう述べるとこいしは目を閉じて眠ってしまった。サードアイの目を閉じるのに力を使い果たしたのだろう。寝てしまったこいしを理久兎は抱き抱えてこいしをベッドへと連れていき寝かせる。

 

理 「4人共この件に関しては俺にも責任はある

   済まなかった……」

 

理久兎は4人に背中を向けて言うと4人は、

 

黒 「いや主だけが悪い訳ではない」

 

亜狛「この事にもっと早く気がついていれば」

 

耶狛「起きなかったんだよね……」

 

さと「理久兎さん私は仕返しがしたいです妹をこん

   な仕打ちをした妖怪達に!」

 

と、各々の事を述べると理久兎は、

 

理 「今回の件は俺から美須々に話しておくだから

   お前らは手を出すな」

 

黒 「何でだ主!俺らにとってこいしは妹みたいな

   もんだそれを黙って見てろって言うのか!」

 

理 「そうは言っていない………今はまだ待てと言っ

   ているだ」

 

亜狛「マスターはただではやられない……」

 

耶狛「やるときは徹底的にやるそれがマスターの

   心情だからね……」

 

さと「えっ?」

 

この時、長く従者として使えていた亜狛と耶狛は感ずいていた。自分の主がただではやられなかったことを。そしてそれはさとりにも聞こえていた。

 

理 「それじゃ俺は美須々に掛け合ってくるから暫

   くは待っててくれ」

 

そう言い理久兎は出ていった。そして残った4人は寝ているこいしを心配しながら看病するのだった。その数時間後ここ旧都の一角の居酒屋で美須々と秘密裏に話をしていた。

 

理 「てことだ……少し騒ぎになるが許してくれ」

 

美 「いや構わんないよ…こちらも少々だが新参者

   には困っててねこれで少しは治安が良くなる

   だろ?それに今回の件は私や勇儀にも非はあ

   るからねぇ所でその帽子のチビはどうしたん

   だい?」

 

理 「今はゆっくりと寝ているよ……」

 

美 「そうかい………とりあえずは分かったから後は

   こっちに任せな」

 

理 「頼んだ……」

 

理久兎は美須々にそう言うと席から立ち上がり居酒屋を後にした。

 

美 「さてと私もいっちょやりますか……」

 

美須々もそう言い酒を飲み干すと立ち上がり理久兎と同じように居酒屋を後にした。その後、美須々の激励によって覚妖怪に対しての悪口を言う事べからずと言い陰口は少なくはなった。だがここ路地裏では2人の妖怪が愚痴をこぼしていた。

 

妖怪「ちっ!忌々しい何でここの奴は覚妖怪なんぞ

   の肩を持つんだよ!!」

 

妖怪「本当だぜ!」

 

妖怪「こんなことならもう少し石を投げておけば良

   かったとつくづく後悔した」

 

妖怪「俺も投げておけばよかったぜ」

 

妖怪「あぁ!イラつく!!」

 

ガスッ!

 

等と言ってその内の妖怪が近くにあった小石を蹴飛ばした。すると蹴飛ばした方向に1人の男が立っていた。

 

理 「ほう…美須々に言われてもなお陰口を叩くか

   この雑魚は……」

 

妖怪「てってめぇは!!」

 

妖怪「やべぇ!!」

 

妖怪2人は逃げようにも理久兎が立っている方向でないと出られないため袋の鼠状態となっていた。

 

理 「よく見ればお前‥‥俺が首絞めて脅した奴じゃ

   ないかそれに石投げたのお前か?」

 

妖怪「ひっひぃ!!」

 

理 「俺は忠告したはずだ…次はないと……♪」

 

かつて紫を助けたい時のように残忍な笑みを浮かべて怯える妖怪達に近づいていく。

 

妖怪「おっお助け!」

 

妖怪「やっ止めてく……!!」

 

妖怪達は必死に助けをこうが今こ理久兎には関係なかった。

 

妖怪達「ギャーーーーーーーー!!!!」

 

この後悲鳴を聞いて駆け付けた者達が見た光景は異様だったとされている。妖怪2名が地面に頭から埋められて周りには血が飛び散り気絶していたと述べられるのだった。


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