早苗に案内され理久兎は町を歩いていく。やがて少し長い階段の前へと案内される。そこの光景を自分は知っていた。
理 (何年も時を重ね周りの風景が変わってもここ
は変わらずか……)
早苗「えっとその荷物どうしましょうかね?」
荷台ごと引っ張ってきた荷物だが階段を登れそうもない。そう思った自分は辺りを探しているとブルーシートを見つける。
理 「早苗ちゃんこれ少しだけの間だけど借りても
いいかな?」
早苗「いやそれ私達の物ではないので………」
理 「まぁちょっと貸して貰うか」
そう言い自分はそのブルーシートを1枚荷台のダンボールの上からかぶしてダンボールを見えなくさせると荷台の引っ張り棒に紐をくくり近くの鉄の棒にもくくりつけて固定させる。
理 「これで良しそれじゃ行こうか」
早苗「天理さん手先が器用ですね………」
理 「普通だよ♪」
と、そんな事を話ながら階段を登っていき鳥居を潜ると目の前の光景は少し修繕をされている所もあるが、かつてと変わらずの風景がそこにあった。
理 「いつぶりかな………」
早苗「えっ?何がですか?」
理 「ん?あぁ気にしなくていいよただ風情がある
なぁ~とね………何見てんだ彼奴ら」
そう言っていると自分は気づいてしまう。いや気づかないのが可笑しいぐらいに目の前の賽銭箱に八坂神奈子が座ってこちらを見ている。しかも隣にはロ‥‥小さな神様の洩矢諏訪子がニコニコと見ている。声をかけたくなるが変に声をかければ正体がバレてしまうため敢えて何も言わず見えないフリをすることにした。たが早苗は、
早苗「諏訪子様に神奈子様どうしたんですか?そん
なにニヤニヤして?」
と、自分がいるのを忘れて何時もみたいに言ってしまう。早苗はどうやら少し天然が入っているなと思っていると、
八坂「こら!早苗、私達は見えてないでしょ!」
洩矢「そうそう!」
早苗「はっ!しまった!」
早苗はこちらをチラッと見てくる。自分は諏訪子と神奈子が見えてはいるが見えないフリをして、
理 「早苗ちゃん………もしかして痛い子?」
早苗「ぐふっ!!!?」
何か矢印のような物が早苗の背中に刺さったような気がした。しかも演出なのか口から少し血のような物も見えた。
理 「ちょっ!悪かった!世の中には色々な個性が
ある子がいるよね本当にごめん」
早苗「ぐふっ!がはっ!」
謝罪をするがその優しさが返って早苗の心に心理的ダメージを与えていく。それを見ている諏訪子と神奈子は笑って見ている。
理 (彼奴ら…少し弄ってやるか……)
と、自分は思っていると早苗は自力で立ち上がり、
早苗「てっ天理さ~んお茶をご馳走…します…ね」
そう言い早苗はふらふらと歩いていく。これには自分も苦笑いをしてしまう。
理 「しかし風情があるなぁー」
棒読みでそう言うと神奈子と諏訪子は、
洩矢「ちょっ神奈子!理波にそっくりだよ!」
八坂「えぇ凄くそっくりね早苗ったらご先祖と同じ
でこういう男を引っ掻けてくるのね………」
と、言っているが理波も天理も全て理久兎という存在であり同一人物だ。ここで自分は少し悪ふざけをしたくなった。
理 「う~んそういえばここって何のご利益がある
のかな?‥‥何かご利益なさそうだな」
プッツン!
真顔からのその一言で諏訪子の眉間がよる。自分へと殴ろうと諏訪子がグーを作って挑もうとするが神奈子がそれを抑える。それを見た自分は心の中で笑いながら、
理 「………そういえば最近俺も年を取ったな無理し
て若作りしようとする老人ようにはなりたく
ないなぁ………」
プッツン!
今度は神奈子が御柱を自分へと向けて御柱を発射しようとするが諏訪子がそれをなだめる。そうして2人を弄って遊んでいると、
早苗「天理さんお茶とお菓子をお持ちしましたよ‥‥
っ!?」
早苗は見てしまう。半キレしている諏訪子と神奈子の姿を、
理 「あっ早苗ちゃんありがとうね♪移動するの面
倒だかここで食べていい?」
早苗「いっいえ!ここでは止めた方が……」
理久兔は諏訪子と神奈子がジーと睨んでいるのを見る。しかも顔ギリギリの超至近距離でだ。
理 (もう少し遊んでやるか♪)
と、思った自分は早苗のご厚意に反対することにした。
理 「いやあまりこんな風景で食べれないからここ
で食べてみたいと思ったんだけどね」
早苗「どうなって知りません………よ?」
理 「そんなお茶菓子を食べる前に取られるとか頭
に湯飲みのお茶やらが落ちてくる訳でもない
のにさ♪」
それを聞いたであろう諏訪子と神奈子の目はキラリと光だす。だがそれは自分の策略でもある事を彼女達は知らぬであろう。
八坂「早苗‥‥彼奴をここに座らせて」
洩矢「こけにした分は返さないと祟り神として名が
廃れるってもんだよ」
早苗「えっ!?」
と、言っている合間にも自分は御要望通りに賽銭箱の段差に座る。早苗も神奈子と諏訪子に言われるがままに隣に座りお茶菓子と熱々のお茶が入った湯飲みが乗っているお盆を自分と早苗の間に置く。
理 「しかしこういう風情があるのは良いものだね
ズズ………」
早苗「そうですね………」
早苗はお茶を飲んでる理久兔の話を聞きつつ後ろに目をやっていると、
洩矢「神奈子、ここは私がお茶菓子の大福を盗るか
らお茶をぶっかけちゃって」
八坂「いいわよ‥‥は早苗はこいつの注意をそらして
ちょうだい」
早苗「えっえぇ……」
もう早苗の表情はどうしてこうなったの表情だ。自分は今も心の中で笑いながら、
理 「早苗ちゃんどうしたの?」
半分ぐらいまでお茶を飲んでお盆にのせると、
早苗「いえ…えっとやっぱり場所を……」
と、言っていると諏訪子がこっそりと手を出して大福を取ろうとすると、
バチんっ!!!
洩矢「痛った~~!!」
大福を取ろうとした瞬間、諏訪子の手の甲へただめ押しをする。ちょっと強烈目にやったため諏訪子の手は真っ赤になっていた。
理 「この季節でもう蚊が出るんだね」
と、言っているが実際は蚊を叩いたというのは嘘で完璧に諏訪子の手を狙ったというのが事実だ。
八坂「今度は私の番ね………」
神奈子が熱々のお茶をこっそりと取るとそれを理久兎の頭にこぼしてやろうかとひっくり返そうとした瞬間、自分は当たるまいと思いながら、
理 「あっそろそろ時間だな」
ゴスッ!
八坂「熱っつ!」
理 「ん?ぷっ何かあっ当たったかな?」
大福を口にいれて一瞬で立ち上がると頭に湯飲みが当たるがそれが結果的に入っている熱々のお茶が神奈子に振りかかる。神奈子が熱いと言った時、自分はもう限界で笑いたくなった。
理 「く、ふふふ……早苗ちゃんそろそらおっ俺はく
くくく…行く……よ♪」
早苗「天理さん何でそんなに笑いを堪えているので
すか!?」
理 「くっいやハハハそれとささっきから俺にいた
ずらしようとしてる神奈子と諏訪子もまたい
つか会おうね♪」
それを聞いた3人は驚いた表情をした。何せ早苗は自分に2神の事を言っていない。なら何故知っているのかと、
早苗「待ってください天理さん何で2人のこ………あ
れ!?」
だが目の前にいた筈の理久兔は早苗達の目の前から忽然と姿を消した。早苗は直ぐ様階段の下を見るが理久兎はもういなかった。
洩矢「神奈子‥‥まさかあれって!」
八坂「私らの事を知っているまさか理波か彼奴は見
えててわざとやりやがったわね!」
早苗「えっ!理波さんって数億年昔に出会ったてい
うあの!?」
洩矢「……うん…まさか理波が生きてたなんて」
八坂「彼奴………まさか妖怪?」
と、3人は疑問に思うばかりだった。そして直ぐ様そこから離れた理久兎は荷台に足をかけてすいすいと移動しながら、
理 「さぁてと帰ってカレー作らないとな………」
そんな事を呟きつつ先程の路地裏までダッシュで向かうのだった。